症状・経過観察に役立つ
脳卒中の画像のみかた

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脳卒中では、診断・経過観察において、脳画像検査は欠かせません。本書では、たくさんある脳画像のうちkeyとなる7つの画像に絞って、その読み方をわかりやすく解説しました。脳の中で何が起こり、それが目の前の症状とどうつながっているのか、脳の解剖・病態・症状が脳画像を通して1本の線でつながります。
市川 博雄
発行 2014年08月判型:B5頁:120
ISBN 978-4-260-01948-4
定価 2,750円 (本体2,500円+税)

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本書を読まれる皆様へ

 現在,一部の病院では脳卒中ケアユニット(SCU)などの専門病棟が設置されていますが,脳卒中は国民病ともいわれる極めて一般的な疾患であり,医療に携わる者としては避けて通ることができないものです。脳卒中診療には医師による内科的治療,外科的治療のみならず,看護やリハビリテーションが重要な位置を占めます。よって,多職種によるチーム医療が不可欠であり,それぞれの職種で疾患についての十分な知識と理解が求められます。脳卒中の診断に欠くことのできない脳の画像検査の知識もその1つといえます。
 しかし,脳の画像を見慣れないうちは,どの画像をみたらよいのか,どこに注目したらよいのか,わからないことも多いでしょう。そこで本書では,数ある画像の中から,代表的な7つのスライスに絞って,その読み方をわかりやすく解説しました。まずは,「ここが白い」,「あそこが黒く写っている」と画像に慣れるところから始めるとよいでしょう。
 脳卒中の最も一般的な症状は片麻痺ですが,障害部位によっては失語,失行,失認などさまざまな症状が出現します。これが脳疾患の大きな特徴であり,神経症状は非常に複雑で難しいと敬遠されがちなゆえんでもあります。そこで,実際の脳卒中患者の脳画像と,そのときの神経症状・経過などを記載し,それらを関連付けて理解できるよう工夫しました。診療場面では,症状に変化が現れた際,また経過観察の目的で脳画像検査を行いますので,脳画像と症状をセットでみていくことが大切です。
 本書は,診療現場で脳画像をみる機会のある研修医,看護師,理学療法士などの医療スタッフだけでなく,脳画像初学者の医療系の学生にも理解しやすいように記述したつもりです。脳の画像と敬遠しがちな神経症状の理解を深めることができ,さらには脳卒中診療を実践するにあたっての一助になれば幸いです。
 最後に,脳卒中患者の診療とともに本書の作成に大きな力を貸して頂いた昭和大学藤が丘病院脳神経センターのスタッフや関係者各位に感謝するととともに,本書の刊行にあたりご尽力頂きました医学書院の山内 梢様に深謝申し上げます。

 2014年6月吉日
 市川博雄

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第I章 押さえておきたい7つの画像
 概論-押さえておきたい7つの画像
  基底核レベル
  放線冠レベル
  半卵円中心レベル
  頭頂部の脳溝が目立つレベル
  中脳レベル
  橋レベル
  延髄レベル

第II章 脳画像検査の基本
 概論-脳画像検査の種類と特徴
  CTの読みかた
  MRIの読みかた
  MRA・CTAと脳血管

第III章 脳卒中と脳画像
 概論-脳卒中における画像検査
  脳梗塞
   1.心原性脳塞栓症
    1)内頸動脈塞栓症
    2)中大脳動脈塞栓症
    3)後大脳動脈塞栓症
    4)前大脳動脈塞栓症
    5)椎骨脳底動脈塞栓症
   2.アテローム血栓性脳梗塞
   3.ラクナ梗塞
  一過性脳虚血発作
  脳出血
    1)被殻出血
    2)視床出血
    3)橋出血
    4)小脳出血
    5)皮質下出血
  くも膜下出血
  その他の脳血管障害
    1)静脈洞血栓症
    2)高血圧性脳症

第IV章 症候と脳画像
   1.意識障害
   2.めまい
   3.痙攣発作
   4.失語
   5.失行
   6.失認
   7.半側空間無視
   8.運動麻痺
   9.運動失調
   10.不随意運動
   11.血管性パーキンソニズム
   12.眼球運動障害と眼症状
   13.視力・視野障害
   14.構音障害
   15.嚥下障害
   16.体性感覚障害
   17.血管性認知症

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眺めて楽しく,知識が自然と身に付く一冊
書評者: 原 元彦 (埼玉県立大教授・リハビリテーション医学・神経内科学)
 この本を手に取って,帯をみて驚いた。「病巣がわかるだけじゃない!」と書かれている。脳卒中の画像診断の入門書として画像の病巣を示すだけでなく,症状と徴候を画像と対比して,これだけコンパクトにまとめるのは大変なことだと思う。写真はきれいでカラー刷りの色もおしゃれで読みやすい。解説は簡潔だが的確で,臨床上の問題点やUp to dateな内容が含まれており,画像は経時的な経過がわかるように記載されている。病巣,症状・徴候から脳卒中の疾患概念まで理解できる見事な本である。

 第I章「押さえておきたい7つの画像」では,基底核,放線冠,半卵円中心,頭頂,中脳,橋,延髄の7つのレベルを選び,特に注目してみるべき画像として指定している。画像を見る際に,力を発揮する羅針盤のような位置付けである。7つの画像のそれぞれに,ユーモラスな愛称と愛らしいマスコットが与えられているのが面白い。第II章「脳画像検査の基本」,第III章「脳卒中と脳画像」は実用的な記載で,視覚に訴える図表と簡潔な解説が自然に頭に入ってくるように工夫がなされている。どの条件で撮影された画像で,どのように梗塞や出血が見えるのか,また,どのように経時的に変化していくのか,視覚的なイメージで理解しやすい構成になっている。第IV章「症候と脳画像」は圧巻である。意識障害や血管性認知症など17の症候がおのおの,1~3ページにまとめられている。それぞれの症候でみられる画像の特徴や代表例が示され,図表と解説は簡潔で親切である。One Point,MEMO,columnのコーナーでは,症状に応じたケアの要点や用語の解説も示されている。

 また,画像から得られた所見と診察所見を対比して診断と治療に結び付ける力が,読めば自然に身に付くように書かれており,脳卒中の基本的知識を身に付けることもできる。多職種間で大量の画像情報を共有できるようになった電子カルテ時代において,初期研修医や若手医師,医療系専門職の脳卒中画像診断の手引きとして,また,保健医療福祉系の学生の脳血管障害,神経症候学の入門書として役立つと思う。

 市川博雄先生は博識・博学で,ユーモアと工夫に富む柔軟な発想をされる度量の広い神経内科医である。私は市川先生と米国中西部の大学の研究室で1年ほど机を並べさせていただく機会があったが,市川先生のちょっとした工夫やひと言が実験や研究のハードルを越えるきっかけになることが多かった。本書は,市川先生だからこそ書き得た「どこでも,誰でも,眺めてきれいで楽しく,読んで役に立つコンパクトな」一冊である。本書が脳卒中の臨床に関わる全ての人の役に立つことを願っている。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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