第2600号 2004年9月13日


MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


産婦人科学を学ぶ学生や医師に推薦する,教科書に徹した教科書

標準産科婦人科学 第3版
丸尾 猛,岡井 崇 編

《書 評》吉川裕之(筑波大教授・産科婦人科)

正確な内容で勉強しやすい教科書

 この本を読んでまず気づくことは,医師国家試験や産婦人科学会専門医試験をめざす医学生,研修医,レジデントにとって勉強しやすい教科書であるということである。医師国家試験向けの本では,理解しやすい代わりに間違いが多いが,この本は理解しやすく,正確である。Minimum Essentialを含み,必要十分な内容を徹底してわかりやすく説明している。多くの執筆者が関与しながら,内容が全体として実に統一がとれており,編者としての丸尾教授,岡井教授の徹底したこだわりがよく理解できる。

 専門家だけしか興味を持たないような記載は省かれている一方,図解,表,写真が豊富で十二分のスペースを割き,手にとるように理解しやすい。特にMRI,CT,超音波断層法についての記載が豊富なこと,知識を整理するための表も多い。症例問題に使われやすい画像,組織像などはすべて網羅しているように思われる。国内外の論文,教科書から,最もすぐれた図表を積極的に引用している点も注目される。オリジナルの図解としては,顕微授精,子宮奇形手術,脱疾患手術,子宮内膜細胞診・組織診,体癌の主な進展経路,屈位・反屈位の分娩経過,骨盤入口撮影法などが優れており,医学生,研修医の中には,この図解ではじめて実感できる人も少なくないと思う。

読者の理解を助けるための努力と工夫

 特筆すべき特長として,「主訴,主症状から想定すべき疾患一覧表」がある。この表では,好発年齢,診断のポイント,参照ページがまとめられ,鑑別診断に役立つのみならず,産婦人科疾患を二次元的に理解するうえで他に例を見ない工夫である。診断・治療・管理などの手順をフローチャートとしてまとめているのも特長であるが,これも臨床の現場での思考過程を示しており,豊富な図解,表,写真とともに深い理解に役立ち,三次元的理解を可能にするための努力が感じられる。

 また,母子保健の項では,環境汚染物質,薬剤,放射線による胎児障害,法規を含む母子保健制度,出生率,妊産婦死亡率,周産期死亡率,新生児死亡率などの母子衛生統計についてもよく整理して記載されている。産婦人科学と他領域との境界領域の記載も本格的で,乳癌,骨粗鬆症,尿失禁,心身症,高脂血症,アルツハイマー病,マタニティーブルー,産褥精神病,血栓性静脈炎,HIV感染症,妊娠中に合併する内科,外科などの疾患の記載は,これで他領域の学習も兼ねることができるほど優れた記載である。これらは,三次元的に構築された産婦人科学と周辺領域,他領域とのネットワークを形成させようという狙いが感じられる。

 多少ほめすぎた感はあるが,他のいくつかの教科書を分担執筆している立場からは,妬みと尊敬の念を持って,読ませていただいた。また,試験問題を作成する立場でいえば,一見細かすぎるような記載も,試験に必須の内容である。教科書に徹した教科書として推薦する。

B5・頁624 定価8,610円(税5%込)医学書院


学生だけでなく現役作業療法士も学べる高齢期作業療法の教科書

標準作業療法学-専門分野-
高齢期作業療法学

松房利憲,小川恵子 編

《書 評》望月秀郎(長野医療技術専門学校 作業療法士)

 今日,急速に増えつつある高齢者と高齢障害者に対して,高齢期作業療法は分野として確立されつつあるものの,専門書は少なかった。このような背景の中,本書が刊行された意味は大きい。

主体的な学習に焦点を当てたわかりやすさ

 本書の特筆すべき点は,全体を通して豊富なデータに基づいた図表が多く使われていることである。膨大な資料をもとに見やすい2色刷りの図表を作成し,本文とともに学生にも容易に理解できるよう書かれている。時間にゆとりのないときなどは,図表だけ拾い読みしてもおよその内容が把握できる。

 本書は表題のシリーズのうちの1冊である。シリーズ全体の編集方針として,学習者の主体性を求めて,学習内容の到達目標すなわち「一般教育目標(GIO)」と「行動目標(SBO)」を各章ごとに表記し,さらに,自己学習のための「修得チェックリスト」を掲げた点が特筆される。また,各章の最後に「本章のキーワード」としてその章での重要語句の辞書的解説があり,言葉の定義を確認しながら学習できるようになっている。

基本に忠実な内容と広範な知識を集積した展開

 内容的な面では,序章から1,2,3章の4部構成で,序章の「高齢期作業療法学を学ぶ皆さんへ」では,冒頭に学習マップを示し,どんな内容をどのように学んだらよいかをわかりやすく解説している。

 第1章「高齢期作業療法学の基礎」では,高齢者や高齢社会の基本について記載し,高齢期作業療法の概論的内容と特徴を身体機能・精神心理機能の両面から説明,さらには高齢期に多い疾病やリスクの解説をしている。この基礎知識の部分は,基礎医学的知識を具体的に引用しながら説明しているためわかりやすく説得力がある。

 第2章は「高齢期作業療法の実践」と題して,高齢期作業療法の枠組み,対象者ごとの基本的考え方,痴呆高齢者の評価法・作業療法の実践・アクティビティなどについて解説している。ともすれば障害を持った高齢者に偏りがちな面を,加齢そのものもひとつの障害として,治療・援助の違いや病期に応じた対応,さらには健康・虚弱・身体障害・寝たきり・精神障害をもつ各高齢者の作業療法について広範な面から書かれている。病気や障害そのものでなく「人間」に焦点を当て,生活障害,その要因分析,治療的対応を展開しており,作業療法士ならではの視点で述べられている。

 最後に第3章「高齢期作業療法の実践事例」として4名の臨床作業療法士が6つの実践例について書いている。かなり詳細な症例報告で,随所に筆者の工夫や発想が織り込まれた内容は,読んでいて思わず引き込まれてしまう。この章では,作業療法の展開の仕方やかかわり方のポイント,また,重要な視点といったことを学べる。学生にとってはハンドブック的な示唆に富んだ章である。

入門書と専門書を併せ持った書

 全編通じて平易な文章で理解しやすいことを念頭に,専門用語についてはキーワードとして解説を加えるなど,学生に対して親切な教科書といえる。本書は,入門書と専門書を併せ持った1冊であり,高齢者を理解するうえでも作業療法士として治療・援助を進めるうえでも,ぜひお勧めしたい書である。

B5・頁216 定価3,780円(税5%込)医学書院


日野原重明氏と福井次矢氏が語り合う,勇気ある変革の軌跡

あなたとともによい医療を
日本の医療と教育の勇気ある変革

日野原重明,福井次矢 著

《書 評》阿部正和(慈恵医大名誉教授)

読まないと損をする

 「平成の怪物」,「日本のウィリアム・オスラー」と私が勝手に呼んでいるわが師・日野原重明先生が,いったいどういう道を歩いてこられたのか,医療に対してどういう考えを持っておられるのか,ぜひとも知りたいと望む人は決して少なくないと思う。これらの方々に一読を薦めたい本,それが『あなたとともによい医療を』である。しかも対談のお相手が,私が日頃敬愛してやまない,わが国のプライマリ・ケアのパイオニアで,しかも日野原先生の薫陶を受けた福井次矢先生ときては,読まないと損をしたような気持ちになる,そういう本である。

 日野原先生はオスラー先生と同じように牧師の息子であり,キリスト教のバックボーンのある方である。実は,私も牧師の倅であり,先生にあやかりたいと思って先生の後を追いかけてきたが,落伍してしまった。私より8年年長の先生が現在でも,若者を凌ぐほどの気力を横溢させて,ひたすら前へ前へと歩み続けておられる。これを怪物と言わずしてなんと言おう。

 2003年の夏,聖ルカ・ライフサイエンス研究所が企画した,軽井沢での「臨床疫学ワークショップ」終了後,お二方が数時間にわたって語り合われた記録が本書である。日野原先生の言を借りれば,「福井教授が引き出すままに,蚕が糸を吐き出すように,あるいは渓流の流れのように軽やかに,または淀みに憩って語り合った」という。この言葉を聴くだけで,読みたいという衝動にかられるのは私だけではあるまい。

常に新しいことに挑戦する意欲

 医師および看護師の教育改革の断行,一般人への新しい健康教育の推進,習慣病の提唱,人の生き方,死に方への提言,さらには75歳以上の,先生の言う「新老人」の会の創設などなどが,先生自らの口で語られている。先生には常に新しいことに挑戦する意欲がみなぎっており,しかもご自分の考えを果敢に断行する実行力に満ちあふれている。そしてウィリアム・オスラー先生の精神を伝承しようという強い気持ちを持って,今なお日夜活動を続けておられる。すばらしい,お見事という以外に先生を讃える言葉を知らない。

 医学生,研修医,家庭医,専門医,さらに看護師,官僚の方々にはもちろんのこと,一般の国民の方々にもぜひお読みいただきたい本である。

B6変・頁238 定価1,365円(税5%込)インターメディカ


肝疾患の実地診療における座右の書

肝疾患レジデントマニュアル
柴田 実,関山和彦,山田春木 編

《書 評》戸田剛太郎(せんぽ東京高輪病院院長)

 本書は肝疾患診療に直接携わる医師のために書かれた実践の書である。編者はレジデントなど医師としての一歩を踏み出した若手医師を対象にして編纂したとしているが,肝疾患を専門としないベテラン医師にも十分に役に立つマニュアルである。11×18.2×1.5cmと白衣のポケットに入る程度のサイズである。小さいながらも肝疾患診療に必要な事項は十分に盛り込まれている。

肝疾患診療の進歩をわかりやすく

 肝疾患の診療は近年目覚ましい進歩を遂げた。特に画像検査の進歩は著しい。レジデントあるいは肝疾患を専門としない医師は自分で超音波検査を行うことは少ないと思われる。また,肝組織診断は病理医の領域である。CT,MRI,血管造影は多くの施設では放射線科の医師の守備範囲である。したがって,CT,MRI,血管造影の所見は放射線科の医師の所見を参考にすることが多いのではないかと思う。しかし,患者に説明するのは主治医の役割である。本書では約1/3が肝組織所見を含めた画像検査(方法,所見の読み方など)に割かれており,画像検査専門医の読んだ所見を理解し,自分のものとして自信を持って患者に説明するのに大いに役立つものと思う。肝病理学の用語についても懇切丁寧な説明がある。肝細胞濃縮など肝臓病理学の用語についてもわかりやすい説明がある。

「肝機能検査」という用語は使われていない

 いわゆる肝機能検査所見の読み方についても同様である。私はAST,ALTなどの肝細胞障害のマーカーまで肝機能検査に含めてしまうのに常々抵抗を感じているが,本書では肝機能検査という用語は使われていない。これは編者,著者も肝臓病学に関する理解が深い証左である。血液生化学,血液凝固検査などは肝の病態をリアルタイムでフォローするには欠くことのできない検査である。肝生検を除く形態学的な変化の把握は確実な診断法ではあるが,び漫性の肝疾患では肝細胞障害,肝機能障害を反映する検査に比較すると肝病態の把握という点では感度も低く,時間的には遅れることがある。このような意味ではもう少し血液生化学,血液凝固検査に注目すべきであると思っている。付録にFENaなどの肝疾患診療に必要な計算式,またより詳しい情報,最新の情報を得るためのサイトの説明があるのも親切である。

 本書の編者はいずれも市中病院で肝疾患の診療にあたっている若手の医師であり,着眼点もよく,肝疾患の診断と治療に必要な知識,現時点での到達点が要領よくまとめられている。肝疾患の実地診療における座右の書としてぜひともお薦めしたい書である。

B6変・頁388 定価4,725円(税5%込)医学書院


糖尿病診療に携わる全医療スタッフ必携の書

糖尿病診療事典 第2版
繁田幸男,景山 茂,石井 均 編

《書 評》立川倶子(鹿児島県栄養士会会長)

「糖尿病患者の心理と行動」の章が新設

 今般,『糖尿病診療事典 第2版』が医学書院から出版された。本書は1996年初版以来,糖尿病診療にかかわるすべての医療スタッフに重宝された『糖尿病治療事典』の改訂第2版である。

 今回,「診断基準」,「病型分類」を時代に即したものに一新し,「経口薬療法」を全面改訂,「インスリン療法」,「食事療法」の章をはじめ160名の執筆者による最新の情報が記載されている。編集代表者の繁田幸男先生(滋賀医科大学名誉教授)の第2版の序によると「糖尿病に関する考えられる限り広範にわたる項目を再検討し,最新の知識を提供した」とある。書名も「糖尿病診療事典」に改題したものである。

 繁田幸男先生は,現在,日本糖尿病学会の重鎮としてご活躍中の先生で,日本糖尿病学会の教育セミナーでご講演を拝聴する機会に恵まれた折,その糖尿病診療への熱い情熱と明快な格調高いご講演に感銘を深くし,魅了されたものである。

 本書の160名にものぼる膨大な執筆者は,日本糖尿病学会における各分野のエキスパートの先生方である。特に編集者に糖尿病の心理学についてのわが国の第一人者である石井均先生が新たに参加され,現在,最も注目される「糖尿病患者の心理と行動」の章が新設されていることも本書の魅力となっている。また,EBMの時代に対応し「糖尿病診療の大規模臨床試験」を網羅しての記載など,最新の情報を得ることができる。

診療や患者教育の現場で必要な知識が即座に得られる

 本書は,糖尿病診療や患者教育の現場で,必要な知識が即座に得られる項目立てがしてあり,疫学と予防から患者組織に至るまで,きめ細かい24のカテゴリー別に330項目に分類した本文と資料で構成されている。各項目は1-2頁でまとめられ,必要なときにコンパクトな知識を得ることができるばかりでなく,本文中に参照ページが入り使い勝手のよい編集となっている。さらに,特色として目次はカテゴリー別のものと,五十音順電話帳式に配列したキーワード目次の両者を設け,略語一覧が巻末にまとめてある。

1万人超えた糖尿病療養指導士

 日本糖尿病療養指導士認定機構による日本糖尿病療養指導士(CDEJ)も,2004年6月現在,1万人を超す10,026名が認定された。21世紀における国民健康づくり運動「健康日本21」では,2010年の糖尿病有病者数を生活習慣が改善されない場合,1,080万人と推定している。糖尿病有病者の目標減少率を7%として,80万人の減少を掲げている。DPPスタディによる一次予防のための生活習慣改善群の効果は明らかである。1万人以上になったCDEJの活躍が期待される。

 本書が,糖尿病診療に携わる全医療スタッフ必携の書であると同時に,糖尿病療養指導士すべての座右の書として活用されることを願うものである。

A5・頁584 定価5,880円(税5%込)医学書院


腰痛についてきわめて論理的な記述で貫かれた名著

図解 腰痛学級
日常生活における自己管理のすすめ 第4版

川上俊文 著

《書 評》豊島良太(鳥取大教授・整形外科)

腰痛患者に一言ずつ語りかけるような文章

 本書は,腰痛を患う人に一言ずつ語りかけるように書かれている。どの頁もこのまま読み上げれば,患者への十分な説明になるほどやさしく,わかりやすい。見開きの左頁は図とイラストで,そのすべてが的を射たもので余分な説明はなく,右頁の解説と見事な調和が図られている。この見開きの2頁は独立した1つの項目となっているため,必要に応じて拾い読みにも便利である。その上に,全体の構成もよく考えられており,章(本書では課と称してある)の流れも緩急巧みである。

 第1課「なぜ自己管理が必要か」で腰痛に対して自己管理の必要性に触れ,まず本書を読破する意欲を高めたあとで,第2課「腰痛を知るために」と第7課「腰のしくみ」では腰痛をきたす疾患を理解するために必須の解剖,バイオメカニクスや診断方法についてわかりやすい言葉で説明している。第4課「慢性腰痛の原因となる病気」,第5課「下肢症状を伴う腰痛」と第6課「重篤な脊椎病変に発展する可能性のある腰痛」では,さまざまな疾患について噛んで含めるように解説し,第8課「病院で行う治療」では文字通り医療機関の実際の治療方法について触れたのち,第9課から第11課の「腰痛の自己管理その1~3」で,この書のメイントピックスである腰痛体操について生活指導とともに詳述している。特に生活指導では,さりげなくその理論に触れてあり,理解を助けている。さらに終章の第13課「こんな時はどうする?」では,症状から考えられる診断と治療の指針を詳述している。

著者の診療の集大成というべき内容

 著者,川上俊文先生は敬愛する先輩のお一人である。本書の初版を発刊された昭和60年頃,精力的に脊椎手術をしておられたことを記憶している。同時に,保存療法にも目を向け,自ら腰痛学級を開いておられた。自序に「手術を必要とするような腰痛でさえ,患者自身が自己管理を正しく行えば克服できると思うようになりました」そして,「医学は科学であると同時に,経験であり倫理であるように思われてきました」とあるように,保存的治療と医療における愛情の重要性を最も強く感じておられる先生のお一人ではないかと思う。本書第4版は先生のこれまでの診療の集大成というべき内容である。

 本書は,表向きは患者向けの家庭書とあるが,その内容は腰痛に関する事項についてきわめて論理的な記述で貫かれた医学書である。整形外科医のみならず広く一般医家向けにきわめて有用な書であると確信して,お勧めしたい。

B5・頁296 定価3,780円(税5%込)医学書院