標準産科婦人科学 第3版

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Bedside learningを重視して,まず婦人科診療の基本を学べる構成とし,「主訴,主症状から想定すべき疾患」を充実させた。婦人科編は女性性器の概要と性機能の解説から入り,より女性医学を理解しやすくし,産科編では正常の生理に続いて異常を解説するなど,目次建の変更を行った。今版より全頁2色刷。
シリーズ 標準医学
編集 丸尾 猛 / 岡井 崇
発行 2004年06月判型:B5頁:624
ISBN 978-4-260-13067-7
定価 9,020円 (本体8,200円+税)
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  • 目次
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第1章 産婦人科診察
○婦人科編
第2章 性分化と女性性器の発生
第3章 女性性器の構造
第4章 女性の性機能
第5章 月経
第6章 不妊
第7章 女性性器の異常
第8章 女性性器の疾患
第9章 加齢と疾患
第10章 女性性器の位置異常
第11章 女性性器の損傷と瘻
第12章 性感染症
第13章 避妊・ファミリープランニング
第14章 婦人科検査
第15章 ホルモン療法
第16章 婦人科手術
○産科編
第17章 妊娠の生理
第18章 妊娠の異常
第19章 合併症妊娠
第20章 妊娠の管理
第21章 分娩の生理
第22章 分娩の異常
第23章 分娩の管理
第24章 産科処置
第25章 産褥期
第26章 新生児
第27章 母子保健
主な略語一覧
索引

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記述がよく整理され,産婦人科を専門とするすべての医師に使いやすい教科書
書評者: 深谷 孝夫 (高知大教授・生殖加齢病態学)
 いわゆる教科書と称される書物は,1つは教育を受けている学生がその分野を系統立って理解するためのstudy―aid book,1つは実践に携わっている人々が知識を確認するためのtext bookとして存在意義がある。これはすべての領域で言われてきた当たり前の普遍的な考え方で,医学の世界も同様である。

 しかしながら,医学教育の現場にいると昨今の学生の教科書に対する考え方が変化していることがわかり,なかなか面白い発見をすることがある。今回この『標準産科婦人科学 第3版』を通読しているうちに,昨今の学生教科書事情が頭に巡ってきた。

 1つは,すべての学生ではないが教科書は代々先輩から受け継ぐものと考え,使用していることである。綺麗に色分けしたアンダーラインが施された教科書を見ると,きわめて系統立って勉学していると勘違いしてしまいそうである。しかし,学生にその内容を尋ねると,教科書のアンダーラインとは異なり知識が系統立っていない。答えは簡単である。綺麗に色分けしたアンダーラインは何人もの手を経ているためで,教科書の見かけと現在所有している学生の知識とは並行してはいない。なぜ教科書を受け継ぐのかは判らないとしても,学生には5年たっても教科書の内容は変わらないと考えている可能性は十分ある。医学教育を行っている立場の人間としてわれわれが反省しなくてはならないと痛感させられる。

 学生教科書事情のもう1つの特徴はできるだけ簡単に記述してあるもの,絵が豊富であるもの,「いい国作ろう鎌倉幕府(1192年)」ではないけれども医師国家試験を乗り切るための暗記法が記述しているものを選ぶ傾向がある。それはそれで悪いとは言えないが,35年前に医学教育を受けていた者にとっては何となく寂しい感がある。

 本書をあらためて熟読してみたが,その内容の豊富さに驚かされた。また,本書であればわれわれはもとより,学生でも充分満足できるのではないかと考えた。その特徴は後述するが,内容が豊富ですべての事項に関して記述がよく整理されている感があったことに驚いた。われわれでも専門外の知識の整理のため,年に一度は最新版の教科書を紐解くべきと痛感させられた。

 さて,本書の特徴を紹介したい。まず主な症状とそれに対応する疾患の表が診察法の次に記述されていることは斬新である。特にこれから産科婦人科を学ぶ学生にとって,どのような症状と疾患がリンクするのかを理解することは,それに引き続く産婦人科解剖学・生理学が学びやすいと考えられる。個々の分野について感想を述べることは字数の関係上できないが,今日的な産婦人科検査法,画像診断法の充実が図られており,実際の写真はもとより図表もきわめて理解しやすい。学生にとっても本教科書は使いやすいのではないだろうか。また,加齢あるいは妊娠など経時的に生理あるいは病態が変化する分野では,時間経過に即応した記載がなされ,われわれ臨床医にとってもきわめて有用である。なかんずく,EBMが確立された最先端の診療が述べられており実践的である。

 最近,内容豊富な素晴らしい教科書も次々と出版されてきた。新しく改訂された『標準産科婦人科学 第3版』もその中の1つであり,内容の充実さの観点から学生・研修医はもとより産婦人科を専門とするすべての人々に満足感を与えてくれるものと思われる。座右の書の1つではないかと考えられる。

産婦人科学を学ぶ学生や医師に推薦する,教科書に徹した教科書
書評者: 吉川 裕之 (筑波大教授・産科婦人科)
◆正確な内容で勉強しやすい教科書

 この本を読んでまず気づくことは,医師国家試験や産婦人科学会専門医試験を目指す医学生,研修医,レジデントにとって勉強しやすい教科書であるということである。医師国家試験向けの本では,理解しやすい代わりに間違いが多いが,この本は理解しやすく,正確である。Minimum Essentialを含み,必要十分な内容を徹底してわかりやすく説明している。多くの執筆者が関与しながら,内容が全体として実に統一がとれており,編者としての丸尾教授,岡井教授の徹底したこだわりがよく理解できる。

 専門家だけしか興味を持たないような記載は省かれている一方,図解,表,写真が豊富で十二分のスペースを割き,手にとるように理解しやすい。特にMRI,CT,超音波断層法についての記載が豊富なこと,知識を整理するための表も多い。症例問題に使われやすい画像,組織像などはすべて網羅しているように思われる。国内外の論文,教科書から,最もすぐれた図表を積極的に引用している点も注目される。オリジナルの図解としては,顕微授精,子宮奇形手術,脱疾患手術,子宮内膜細胞診・組織診,体癌の主な進展経路,屈位・反屈位の分娩経過,骨盤入口撮影法などがすぐれており,医学生,研修医の中には,この図解ではじめて実感できる人も少なくないと思う。

◆読者の理解を助けるための努力と工夫

 特筆すべき特長として,「主訴,主症状から想定すべき疾患一覧表」がある。この表では,好発年齢,診断のポイント,参照ページがまとめられ,鑑別診断に役立つのみならず,産婦人科疾患を二次元的に理解する上で他に例を見ない工夫である。診断・治療・管理などの手順をフローチャートとしてまとめているのも特長であるが,これも臨床の現場での思考過程を示しており,豊富な図解,表,写真とともに深い理解に役立ち,三次元的理解を可能にするための努力が感じられる。

 また,母子保健の項では,環境汚染物質,薬剤,放射線による胎児障害,法規を含む母子保健制度,出生率,妊産婦死亡率,周産期死亡率,新生児死亡率などの母子衛生統計についてもよく整理して記載されている。産婦人科学と他領域との境界領域の記載も本格的で,乳癌,骨粗鬆症,尿失禁,心身症,高脂血症,アルツハイマー病,マタニティーブルー,産褥精神病,血栓性静脈炎,HIV感染症,妊娠中に合併する内科,外科などの疾患の記載は,これで他領域の学習も兼ねることができるほどすぐれた記載である。これらは,三次元的に構築された産婦人科学と周辺領域,他領域とのnet workを形成させようという狙いが感じられる。

 多少ほめすぎた感はあるが,他のいくつかの教科書を分担執筆している立場からは,妬みと尊敬の念を持って,読ませていただいた。また,試験問題を作成する立場でいえば,一見細かすぎるような記載も,試験に必須の内容である。教科書に徹した教科書として推薦する。

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