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BRAIN and NERVE Vol.77 No.6
2025年 06月号
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特集の意図
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精神科と脳神経内科は,扱う疾患や症候が重なり合う場面も多く,どちらの科で診ることが患者さんにとって最良なのか迷うことが少なくない。本特集では,精神科と脳神経内科の「狭間」にある疾患を中心に取り上げ,それぞれの専門家がどのような診療を行っているのか,私見を交えながら紹介している。両科の視点が交差する臨床の現場に着目し,日常診療の迷いや悩みに対し,新たな知見や実践のヒントを提供することをねらいとしている。
機能性神経障害(機能性神経学的症状症)—精神科の立場から 眞島 裕樹
機能性神経障害(機能性神経学的症状症)の診断は,前身の転換性障害で必要であった心理的要因の特定が不要となり,神経学的に説明できない徴候によって積極的に下される。しかし,生物学的な治療法が確立したわけではなく,心理社会面の統合的な評価と介入は依然重要である。認知行動療法などの構造化される精神療法を提供できない現場でも,Conversionに関する伝統的な理解,ジャネや森田の理論は治療に活用できる。
機能性神経障害(機能性神経学的症状症)—脳神経内科の立場から 大平 雅之
機能性神経障害(functional neurological disorder:FND)は,随意運動または感覚機能の変化を伴う症状である。症状が他の疾患では説明困難で,症状による機能障害をもたらしていること以外に,いわゆる陽性徴候の存在が診断には重要である。FNDはこれまで,ヒステリー,転換性障害などさまざまな名称で呼ばれ,現在も変遷の途中である。しかし近年,FNDは有効かつ治療可能な障害として認識されつつあり,頻度としても稀な病態ではない。しかし,詐病と区別されない誤解など,FNDの診療には問題も多い。陽性徴候を含む積極的な診断がFNDのスタンダードになりつつある現在,FNDの診療において,脳神経内科医は重要な役割を担わざるを得ない。
レビー小体型認知症—精神科の立場から 池田 学
レビー小体型認知症の症状は多彩で,その組合せや出現順序も多様である。患者ごとに治療の主要な標的症状を見定め,治療方針を立てることになるが,本論では精神科医の立場から,認知症の重症度に沿って,治療標的となる症状,精神科と脳神経内科の連携のポイントを中心にまとめた。レビー小体型認知症患者と介護者の治療ニーズに対する主治医の認識の合致率は低く,精神症状,認知障害,パーキンソニズムだけでなく,睡眠関連障害,自律神経障害,食行動異常の治療の必要性に目を向けることも重要である。
レビー小体型認知症—脳神経内科の立場から 本井 ゆみ子
レビー小体型認知症は激しい幻視,妄想,徘徊などを示すことがあり,脳神経内科単独の診療では困難であることも多い。脳神経内科からの紹介は精神心理症状が顕著な場合,心理学的アプローチを患者家族が希望する場合が多い。精神科からの紹介はパーキンソニズムの治療が主体である。両症状が強い場合は電気痙攣療法の適応になることもあり,両科が協力して診療していくことが,最善の診療となる。
てんかん—精神科の立場から 渡邊 さつき
精神科と脳神経内科の狭間で,てんかんはしばしば課題となる。診断は問診と脳波検査が基本で,他疾患との鑑別が重要である。特に失神や心因性非てんかん発作との違いを見極めるためには,経験と適切な判断が求められる。精神科では,てんかんと併存する精神症状への配慮が必要で,薬剤選択にも慎重を期す。加えて,神経疾患との鑑別やてんかん重積の対応には脳神経内科との連携が不可欠であり,両科の協力体制が求められる。
てんかんと心因性非てんかん発作との鑑別—脳神経内科の立場から 赤松 直樹
心因性非てんかん発作(PNES)は,てんかん発作に類似する異常な運動,感覚,意識,認知などの変化をきたす発作で,精神・心理的要因が原因となるものである。現在,PNESという用語が最も一般的に使用され,受け入れられているが,functional seizure(機能性発作),dissociative seizure(解離性発作)などの用語もある。PNESは,『精神障害の診断・統計マニュアル(第5版)』では,機能性神経症状障害(FND)または転換性障害に分類されている。PNESの有病率はてんかんより低いが,てんかん外来で約10%,入院てんかんモニタリングユニットで約20%の頻度でみられる。PNES診断後の医療資源利用は,診断検査,抗てんかん発作薬(ASM)の使用,外来受診,救急外来受診など大きな負担があり,治療へのアクセスにも困難がある。治療においては,認知行動療法(CBT),神経行動療法(NBT)など,PNES治療のエビデンスは増えつつある。
NMDAR脳炎を中心とした自己免疫性脳炎—精神科の立場から 髙木 学 , 酒本 真次
精神科領域で扱う自己免疫性脳炎は,脳神経内科領域で発見された脳炎症状を呈するNMDAR脳炎などの細胞膜表面抗体が原因で生じる精神症状と,主に統合失調症患者の血清で発見された神経自己抗体の報告が混在する概念となっている。自己免疫性脳炎は急性期の自己抗体による液性免疫の異常に加え,慢性期を含む細胞性免疫の異常が関係する。精神疾患患者に免疫療法を行う根拠を得るためには,これに追随する知見が必要である。
精神症状を呈する自己免疫性脳炎のレッドフラッグ—脳神経内科の立場から 大野 陽哉 , 木村 暁夫 , 下畑 享良
精神症状が主症状となる自己免疫性脳炎は自己免疫性精神病と呼ばれ,本疾患を示唆する所見(レッドフラッグ)を認識することは早期診断に重要である。具体的には,先行感染,急速進行,腫瘍の合併,他の自己免疫性疾患の合併,重度の頭痛,変動のあるカタトニア,不随意運動,局所神経徴候,意識レベル低下,認知機能障害,自律神経障害,言語機能障害,痙攣,低Na血症,抗精神病薬による悪性症候群の誘発などが挙げられる。
薬剤性パーキンソニズム—精神科の立場から 北田 晨人 , 坪井 貴嗣
薬剤性パーキンソニズムは,主にドパミン受容体遮断作用のある薬剤が原因で発症するパーキンソン症候群である。症状は動作時振戦,筋固縮,動作緩慢,姿勢反射障害などであり,左右差が少ない。診断には薬剤投与歴の確認が必要であり,治療としては原因薬剤の中止や減量が推奨される。統合失調症においては,原因となる抗精神病薬の変更も治療として推奨され,中でも第二世代抗精神病薬の使用が望ましく,予防においても同様である。
薬剤性パーキンソニズム—脳神経内科の立場から 冨山 誠彦
薬剤性パーキンソニズム(DIP)は頻度の高い医原性運動障害疾患である。診断には,先行するドパミン遮断薬の使用が必要となる。本邦の脳神経内科でみるDIPの多くは,スルピリドが原因であり,抗精神病薬によるものは少ない。DIPの発症の背景には,前臨床期パーキンソン病が関係している。前臨床期パーキンソン病に生じたDIPであるか否かは,治療上重要である。ドパミン遮断薬投与時にDIPを疑った場合にはすみやかな対処が望まれる。
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特集 精神科と脳神経内科の狭間で
機能性神経障害(機能性神経学的症状症)──精神科の立場から
眞島裕樹
機能性神経障害(機能性神経学的症状症)──脳神経内科の立場から
大平雅之
レビー小体型認知症──精神科の立場から
池田 学
レビー小体型認知症──脳神経内科の立場から
本井ゆみ子
てんかん──精神科の立場から
渡邊さつき
てんかんと心因性非てんかん発作との鑑別──脳神経内科の立場から
赤松直樹
NMDAR脳炎を中心とした自己免疫性脳炎──精神科の立場から
髙木 学,酒本真次
精神症状を呈する自己免疫性脳炎のレッドフラッグ──脳神経内科の立場から
大野陽哉,他
薬剤性パーキンソニズム──精神科の立場から
北田晨人,坪井貴嗣
薬剤性パーキンソニズム──脳神経内科の立場から
冨山誠彦
■総説
遺伝性脳小血管病CADASILの新亜型──出血指向型CADASIL
石山浩之,他
●日本人が貢献した認知症研究の足跡
第3回 運動ニューロン疾患を伴う認知症
三山吉夫
●原著・過去の論文から学ぶ
第14回 アルツハイマー病に対する疾患修飾薬の歴史的背景と現状
下濱 俊
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