総合リハビリテーション Vol.51 No.4
2023年 04月号

ISSN 0386-9822
定価 2,530円 (本体2,300円+税)

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特集 転倒 どう防ぐ?

 リハビリテーションにかかわるいずれの分野・職種であっても,患者・利用者の転倒問題と無関係ではいられません.転倒を避けるためには動いていただかないようにするのが簡単な対策ですが,リハビリテーション支援を行う立場ではそうはいきません.いかに転倒を予防しながら活動範囲や強度を高めていけるかがポイントであり,腕の見せ所です.本特集では,転倒リスクの評価などを総論として述べていただいたのち,障害・疾患別の転倒の現状や特徴,転倒予防策などについて解説をいただきました.

安全管理・転倒リスク評価 尾﨑 まり 氏
 病院での転倒予防は喫緊の課題であり,要介護認定される原因疾患で「骨折・転倒」は全体の13.0%を占めている.しかし,高齢化が進み転倒リスクが上昇しているなかで,転倒率の著しい悪化は認めておらず,改善活動を続けている結果であると考察されている.病院での転倒防止は,①転倒リスクの評価,②個人に合わせた予防計画の作成,③一貫した計画の実行,という3段階のプロセスが大切であり,そのために種々のアセスメントツールが用いられている.その一方で,リスクアセスメントの負担から逆にアセスメント不足となり,転倒・転落リスクを正確に評価できていない可能性はないか,新たな取り組みが検討されている.

身体障害──病院での対策 井上 靖悟 氏ら
 転倒の種類で最も多かったのは,患者の自己判断で許容範囲を超えた動作や行動を行った結果による転倒であったという報告がある.その原因として,自身の能力への過信やチャレンジ精神,助けを求めることへのためらいなどさまざまな心理的側面が影響しているとされている.支援としては,患者に対する教育活動や転倒リスク評価に基づく個別化された多因子転倒予防介入を実施することが強く推奨されている.患者とスタッフが共通認識を持ち,リスクに対する両者の認識のずれを最小限にすることが重要である.しかし,患者の状態は日々変化しているため,どのように認識や対策をアップデートしていくのかは課題であろう.

身体障害──在宅や施設での対策 栗林 環 氏
 転倒の要因には,身体機能などの内的要因と環境などの外的要因があり,それらは複合的にかかわっている.また運動プログラムひとつとっても,そのエビデンスとしては,グループでも個別でも転倒予防効果はあるが,筋力増強訓練単独ではなく,歩行やバランス訓練など複数の要素を複合したプログラムが有効とされている.環境整備も重要だが,初めに患者の生活様式を十分に評価してから整備を行うことや,まずは整理整頓から始めることも大切である.また患者の転倒だけでなく,社会福祉施設における労働災害としての転倒について,その防止策を厚生労働省が提案しているとのことであり,確かに重要な視点であると思われる.

視覚障害への対策 清水 朋美 氏
 駅のホームからの転落のニュースを目にすることがある.ホームドアの設置が都市部では進められているが,全国の鉄道駅の10%弱にとどまっているという.これら公共インフラを整備しつつ,視覚障害者への正しい声かけの方法を知ってもらうことが重要と著者は述べている.視覚障害者の転倒・転落防止策の基本は,日頃から視覚障害者の接し方に慣れておくことに尽きる.接し方の基本を机上の知識のみならず,まずは体得しておくことが肝要であり,具体的な方法を図示していただいた.参考にしながら体得したい.高齢視覚障害者に対する転倒対策は,リハビリテーションにかかわるスタッフにとってもますます重要かつ不可欠なものとなっている.

認知症への対策 鈴木 みずえ 氏ら
 認知症高齢者はそうでない人に比べて8倍転倒しやすいとの報告があり,転倒には多様な要因が複雑に絡んでいる.認知症の行動・心理症状の悪化には認知症高齢者のニーズに対応していない不適切なケアなどが絡んでいることが指摘されており,転倒を引き起こす行動は認知症高齢者が何かをしたいという意思の表れである.1日1日をトータルに考えた転倒予防として,高齢者がしたいこと(ニーズ)に対応するケアを1日でどう満たしていくのか,食べる,寝る,排泄する,楽しみなどのケアを充実させて日常生活の質を高めることが重要である.本人の視点を重視し,認知症高齢者の行動の意図を先取りして援助する対策が求められる.

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医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。

特集 転倒 どう防ぐ?

安全管理・転倒リスク評価
尾﨑 まり

身体障害──病院での対策
井上 靖悟,他

身体障害──在宅や施設での対策
栗林 環

視覚障害への対策
清水 朋美

認知症への対策
鈴木 みずえ,他


●巻頭言
自分の老いについて
和田 勇治

●入門講座
リハビリテーションロボット ④
介護ロボット
近藤 和泉

小児リハビリテーションに必要な評価法 ④
ウェクスラー式知能検査(WISC-IV)
中村 美奈子

●実践講座
リハビリテーション治療に生かすエコー ④
排泄ケアにおけるエコーの活用
玉井 奈緒,他

●研究と報告
背臥位におけるヒラメ筋エコー評価の再現性
澤井 翔太,他

●紹介
浜松市リハビリテーション病院における自動車運転再開支援
昆 博之,他

●YouTubeの使えるコンテンツ/アプリの紹介 ⑨
コミュニケーションを支援するアプリ
高橋 宜盟

●物理療法update ⑦
水治療法──上肢部分浴を中心として
畑中 康志,他

●摂食嚥下機能障害のリハビリテーション治療の倫理的な葛藤 ③
摂食障害症例の倫理的課題における法的背景
稲葉 一人

●専門職からみた第49回 H.C.R.(国際福祉機器展)レポート vol.2
③トイレ・排泄用具
中川 淳一郎

④入浴関連用具
右田 真里衣

●Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
狂言『月見座頭』──障害者との対等な関係
高橋 正雄

●Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「仲代達矢“役者”を生きる」・「役者として生きる 無名塾第31期生の4人」──生涯修行を唱える役者・仲代達矢の教育者としての姿に光を当てる
二通 諭

●学会印象記
第38回 日本義肢装具学会学術大会
花山 耕三

●学会報告
第88回 神奈川リハビリテーション研究会
長澤 充城子

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