BRAIN and NERVE Vol.75 No.8
2023年 08月号

ISSN 1881-6096
定価 2,970円 (本体2,700円+税)

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アルツハイマー病の疾患修飾薬であるaducanumabとlecanemabが相次いで米国食品医薬品局(FDA)に迅速承認され,後者は本年7月に正式承認された。しかし,アミロイドβを標的とした薬物の有効性は疾患初期に限定されることが徐々に明らかにされ,アルツハイマー病の“早期診断”の重要性は,単なる掛け声ではなく喫緊の課題と言える。本特集では,アルツハイマー病の“早期診断”は本当に可能か,どこに解決すべき問題点が残されているかをテーマに,それぞれのエキスパートに現時点での知見を述べていただいた。アルツハイマー病治療の新時代が始まろうとするなかで,適切な対策を模索することが求められている。             

病歴聴取と身体診察だけで前臨床期のアルツハイマー病をどれほど疑えるか  福武 敏夫
前臨床期アルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)を発見するための臨床的バイオマーカーは脳脊髄液やPETなどのバイオマーカーに比してまだまだ研究が遅れている。現在までのAD早期発見のチェックリストは前臨床期ADの発見には概してあまり役立たない。むしろ日常生活活動や言語能力を評価することが推奨される。さらに,AD発症のリスクとされている因子(独居・社会的孤立や難聴,嗅覚低下,歯の喪失,体重変化,アパシー/抑うつ,これらの組合せ)に着眼する。

血液/脳脊髄液マーカーはどれくらい役に立つか  徳田 隆彦
アルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)の早期診断には客観的なバイオマーカー(biomarker:BM)が不可欠である。脳のアミロイド・タウ病理の確定診断がPET検査によって可能になっており,スクリーニング検査に最適な血液BMが求められている。ADの脳病理を反映するATN-BMについては,血液中のAβ42/40比(A-BM),p-tau(T),NfL(N)が早期診断に有用であるが,単独でAD診断に使用するにはさらなる検討が必要である。

脳MRIはどれくらい役に立つか  安池 政志 , 赤澤 健太郎 , 山田 惠
アルツハイマー病のMRI画像診断では,構造的MRIでの視覚評価に加え,定量的画像統計解析が行われる。Advanced MRI techniqueである拡散MRI,機能的MRI,arterial spin labeling,MR spectroscopyなども有力な画像バイオマーカーの候補であり,これらの手法を用いたアルツハイマー病の早期診断の現状を概説する。

核医学診断法はどれくらい役に立つか  石井 賢二
アミロイドPETやタウPETなどの病態特異的な検査手段の登場により,アルツハイマー病は早期診断さらには発症前診断(発症予測)が可能になりつつある。アルツハイマー病の病態理解と疾患修飾薬開発を加速するうえで核医学画像バイオマーカー検査は中核的な役割を果たしている。アルツハイマー病の早期発見による病態進行遅延や予防を視野に入れた核医学診断法の現状と展望について述べる。

嗅覚検査はどれくらい役に立つか  武田 篤
嗅覚障害は認知機能障害と密接に関連しており,認知症発症のリスク要因としても知られている。しかし病理学的な検討からアルツハイマー型病理変化の重症度とはあまり関係せず,むしろレビー小体病理の程度と密接に関連することがわかってきた。臨床的にアルツハイマー型認知症と診断された症例の半数以上にレビー小体病理が随伴することが知られており,嗅覚低下はそれを示唆する重要な症候である可能性がある。

神経心理学的検査はどれくらい役に立つか  緑川 晶
​​​​​​​認知症を発症する以前から実施されている神経心理学的検査の縦断的な検討からは,記憶や遂行機能を中心に,診断よりも数年から長いもので20年ほど前より変化が生じることが確認されている。このことからも,神経心理学的検査はアルツハイマー病の早期発見に有効な手法の1つであると言える。ただし,一般的に用いられるようなスクリーニング検査だけでは検出に不十分であるため,検査の適切な選択が不可欠である。

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特集 アルツハイマー病は本当に早期発見できるのか

病歴聴取と身体診察だけで前臨床期のアルツハイマー病をどれほど疑えるか
福武敏夫

血液/脳脊髄液マーカーはどれくらい役に立つか
徳田隆彦

脳MRIはどれくらい役に立つか
安池政志,他

核医学診断法はどれくらい役に立つか
石井賢二

嗅覚検査はどれくらい役に立つか
武田 篤

神経心理学的検査はどれくらい役に立つか
緑川 晶


■総説
オキシトシン可視化手法の開発と動態解析──オキシトシンの「見える化」とそこから見えてきたこと
塗谷睦生

パーキンソン病の病態進展と甲状腺
斉木臣二

■症例報告
脊髄空洞症を呈したCurrarino症候群の一手術例
根本卓也,他


●医師国家試験から語る精神・神経疾患
第8回 抗うつ薬の情動面での副作用
菊地俊暁

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