理学療法ジャーナル Vol.56 No.10
2022年 10月号

ISSN 0915-0552
定価 1,980円 (本体1,800円+税)

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子どもの成長・発達を支える理学療法

 子どもは成長に応じて,医療機関,通所施設,公的学校,在宅など,主として理学療法を行う場所が変化する.また,広く発達障害と捉えた場合には,この十数年で概念的な捉え方も変化してきている.本特集では,成長・発達を支えるという視点から,乳児,幼児期から学童期を主なターゲットとして,子どもの成長・発達に関する知識の整理とアップデートを行うとともに,さまざまな年齢や介入場面での理学療法を示していただき,子どもの成長・発達を支える理学療法士の役割について述べていただいた.

子どもの成長・発達に寄与する理学療法に必要なこと 新田 收
 発達障害領域の理学療法に対する社会的にニーズは変化している.地域における小児運動発達促進,健康増進事業への参加が求められている.背景には,発達障害発症率の増加が影響している.発達性協調運動障害は,姿勢と運動の障害を主症状としており,理学療法士が早急に取り組む課題となっている.また,自閉症スペクトラム障害,注意欠如・多動障害,限局性学習障害も同様の身体運動の問題を有しており,理学療法の介入対象となる.

子どもの運動・動作の発達とその特徴 吉田伊津美
 乳幼児期から児童期にかけての運動発達は青年期とは異なる特徴がある.神経系の発達が著しいこの時期は基礎的運動パターンの獲得と洗練に特徴づけられる.多様な運動パターンを身につけやすく,それらの質的な変容が見られる.これらの発達は運動活動のみならず生活習慣の形成とも密接に関連している.運動発達は運動経験に依存する.近年の子どもの運動発達は1980年代半ばをピークに低下し,低い水準のまま推移している.

子どものこころと言葉の発達とその特徴 小関俊祐,他
 子どものこころの発達についての主な理論として認知発達段階説を整理した.さらに,子どもの言葉の発達に関して,就学までの発達について整理を行った.これらを基準とし,定型発達の子どもと,発達障害や知的障害のある子どもとの発達上の異同について整理した.そこから子どもに対する支援方針の立案の仕方について検討を行った.最後に,具体的支援方略として応用行動分析を取り上げつつ,理学療法に対する提言を行う.

障害児の成長・発達に関する医療・福祉制度 又村あおい
 障害の有無にかかわらず,子どもの成長・発達には各種の支援が必要である.なかでも障害児については,一般的な子育て支援制度に加えて,障害の状況に応じた個別支援が不可欠となる.本稿では,障害児の成長・発達に関する医療・福祉制度について,その概要を紹介する.

低出生体重児のディベロップメンタルケアと理学療法 藤本智久
 近年,新生児集中治療室,新生児回復室における低出生体重児に対し児の発達と家族のかかわりを支援するディベロップメンタルケア(developmental care:DC)の考え方が導入されている.そして低出生体重児に対する理学療法も,DCの考え方に基づいて展開していく必要がある.本稿では,DCとそれを包括的に展開するnewborn individualized developmental care and assessment program(NIDCAP)の考え方を紹介し,NIDCAPの根拠となるsynactive theoryに基づいた理学療法について述べる.

子どもの呼吸ケアと成長・発達支援 横山美佐子
 子どもの呼吸器は運動発達とともに成長する.その発達途上に呼吸が困難になった場合,もしくは,呼吸ケアが必要となった場合は,呼吸状態の維持とともに,子どもの成長発達を考えていく必要がある.本稿では,理学療法士が知っておくべき子どもの呼吸器の発達と解剖生理学的特徴のポイントと呼吸に関する医療的ケアとリスク管理を概説し,子どもの呼吸ケアと成長・発達支援について症例を通じて述べる.

医療的ケアが必要な子どもの訪問理学療法 齋藤大地
 2022年現在人口減少社会であり,少子化も進んでいくわが国であるが,そのなかでも医療的ケアが必要な「医療的ケア児」と呼ばれる子どもの割合は年々増加傾向にある.小児専門の訪問看護ステーション事業を運営し,在宅でのリハビリテーションを行っている立場から,医療機器や医療情報とのかかわり,年齢や生活のステージごとの具体的な支援について整理する.

児童発達支援・放課後等デイサービスにおける子どもの発達支援 久保田麻紀
 児童発達支援・放課後等デイサービスは,事業所によって提供される支援の内容は多種多様であり,利用する子どもや保護者のニードもさまざまである.理学療法士は,その状況に合わせて,理学療法士の視点から子どもの身体状況や生活環境を把握し,活動内容の検討・実施,福祉制度などの社会資源の情報提供などを行っていく.理学療法士が介入することで,活動が充実したり,できるようになったりする活動がある.事業所で理学療法士に求められる役割を考察した.

学校保健,特別支援教育における子どもの成長・発達支援と理学療法 竹田智之
 学校教育においては特別支援学級,特別支援学校など,個のニーズや状態像に応じて多様な学びの場が用意されており,それぞれの場で,柔軟な教育課程や環境面などへの配慮がある.学校保健や特別支援教育において理学療法士がかかわるパターンはいくつか存在しており,かかわり方にはポイントがある.各自治体でどのようなニーズがあるか知っておくことが肝要である.専門職としてどのような役割が果たせるのかという自己紹介の工夫や,学校教育で教員が実践可能なアドバイスになるための配慮が必要となる.

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特集 子どもの成長・発達を支える理学療法

子どもの成長・発達に寄与する理学療法に必要なこと
新田 收

子どもの運動・動作の発達とその特徴
吉田伊津美

子どものこころと言葉の発達とその特徴
小関俊祐,他

障害児の成長・発達に関する医療・福祉制度
又村あおい

低出生体重児のディベロップメンタルケアと理学療法
藤本智久

子どもの呼吸ケアと成長・発達支援
横山美佐子

医療的ケアが必要な子どもの訪問理学療法
齋藤大地

児童発達支援・放課後等デイサービスにおける子どもの発達支援
久保田麻紀

学校保健,特別支援教育における子どもの成長・発達支援と理学療法
竹田智之


■Close-up 心不全パンデミック
心不全パンデミック
網谷英介

心不全パンデミックと理学療法
櫻田弘治

心不全パンデミックと訪問理学療法
大浦啓輔


●とびら
想定外の出来事
宮地由起子

●画像評価──何を読み取る? どう活かす? 10
慢性心不全 軽症~中等症
西原浩真,他

●理学療法のスタート──こうやってみよう,こう考えていこう 10
・日常カルテ記載のポイント
・自分が休む際の「申し送り」,どう書けば?
多々良大輔,他

●臨床実習サブノート 
退院後から振り返るゴール設定──推論を事実と照合して学ぶ 5
在宅復帰 歩行自立
村中 晃

●報告
女子ジュニアスポーツ選手の片脚ドロップジャンプ着地後のバランス能力と下腿・足部傷害の関係
貴志真也,他

地域在住高齢者における緊急事態宣言後のロコモ25,抑うつ状態の変化
今岡真和,他

●症例報告
大動脈弁狭窄症手術待機患者に対して運動・栄養療法を実践した1例──術前の身体機能改善をめざして
大西悠太朗,他

●私のターニングポイント
成長し続け,次世代を盛り上げる
大西健太

●My Current Favorite 7
メタバース×リハビリテーション
山本周平

●臨床のコツ・私の裏ワザ
松葉杖歩行の指導におけるコツ──グリップ把持から良姿勢へ誘導するポイント
清水正一

●新型コロナウイルス感染症──現場からの報告
メンタルヘルスの観点からみる当院のCOVID-19リハビリテーションチームの特徴──安心で安全な取り組みとは
村岡法彦,他

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