理学療法ジャーナル Vol.56 No.7
2022年 07月号

ISSN 0915-0552
定価 1,980円 (本体1,800円+税)

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人工関節置換術後の理学療法

 人工関節置換術は,医学の進歩とともに,生体力学や材質工学分野といった周辺分野の進歩も加わって改良され続けている.人工関節の構造そのものやその術式,術後の予後に関する研究報告も多く存在し,進化し続けてきた治療法でもあり,当然ながら手術後を担当する理学療法も進化していく必要がある.そこで,本特集では人工股関節置換術と人工膝関節置換術に着目し,理学療法のポイントを対比させながら,最新知見を解説していただいた.

人工関節置換術後の歩行分析と理学療法──人工股関節 対馬栄輝
 人工股関節全置換術後の症例に対する歩行分析と歩行練習の例を挙げて解説した.対象者の障害像はさまざまであり,典型的な分析方法や運動療法は考えられない.常に個別対応を念頭に置く基本は忘れてはならない.歩行分析では,いくら現象を正しく捉えられても目的は達成できない.経験と推論過程に委ねるほかはないのである.観察に基づく原因探索のための推論,確認のための機能的評価を繰り返す作業が必要である.

人工関節置換術後の歩行分析と理学療法──人工膝関節 井野拓実,他
 良好な歩行動作の獲得は症状の改善のみならず,人工膝関節全置換術の長期の耐久性にも寄与する.このためには基本的な膝関節機能の再構築が必須である.また術前より破綻している,運動連鎖の再構築やアライメントコントロール練習が重要である.

人工関節置換術後疼痛──人工股関節 山崎 肇
 近年,人工股関節全置換術(total hip arthroplasty:THA)の進歩やクリティカルパスの導入により,早期離床,早期退院が可能となっている.一方でTHA 後に約10%の割合で術後慢性疼痛が発生している.これは,術後急性期の不適切な疼痛管理や術前からの身体心理的問題が十分に改善しないままの活動が影響している.器質的な問題ばかりではなく非器質的な問題に対しても,術後急性期からではなく,術前から取り組むことが術後疼痛管理に重要である.

人工関節置換術後疼痛──人工膝関節 岡 智大
 人工膝関節置換術の術後疼痛について,急性期,回復期,慢性期に分類して説明する.急性期では徹底した炎症管理と膝関節周囲筋の筋スパズム改善,回復期では退院後の自己疼痛管理,創部や腫脹部位の癒着・滑走不全の改善,慢性期では他部位の疼痛・機能の改善,認知行動療法を併用した理学療法が有効である.各時期の術後痛の要因を正確に把握し,要因に適した理学療法を展開する必要がある.

人工関節置換術後の軟部組織への考慮──人工股関節 小林弘幸,他
 変形性股関節症の代償的な術前運動パターンの改善には単関節運動の獲得が重要である.エコーで術前や術後の軟部組織の状態を把握することは,理学療法を進めるうえで非常に有益であると考える.エコー画像を通じて股関節症の特徴的なエコー所見および人工股関節置換術の進入路,股関節周囲のエコー解剖を観察した後,股関節の単関節機能改善を目的とした軟部組織に対する運動療法を述べる.

人工関節置換術後の軟部組織への考慮──人工膝関節 池野祐太郎
 変形性膝関節症(knee osteoarthritis,以下,膝OA)は関節軟骨や半月板,関節包,靱帯,筋などを含む関節構成体の退行性変化であり,軟部組織も影響している.膝OA に対する観血的治療では人工膝関節全置換術(total knee arthroplasty:TKA)が安定した長期成績であり,多く行われる.
 TKA は軟部組織バランスを考慮して施行されるが,軟部組織の状態は個々の症例で異なるため,手術時の内容も確認する必要がある.術前から軟部組織の状態を評価,予測することは,術後の理学療法を行ううえで重要である.

人工関節置換術後の患者満足度──人工股関節 神戸晃男
 人工股関節全置換術後の患者満足度の関連因子と推奨される理学療法について解説した.近年,医療従事者による客観的評価のほかに患者立脚型の主観的評価が重要視されている.本邦において股関節疾患の主観的評価としては,Japanese Orthopedic Association Hip Disease Evaluation Questionnare が広く用いられている.患者満足度に関係する因子は,手術,身体機能(痛み,筋力,可動域など),歩行,ADL,QOL,社会参加,人生の目的,生きがいなどがあり,個別性,多様性を考慮した理学療法が推奨される.

人工関節置換術後の患者満足度──人工膝関節 池田 崇,他
 人工膝関節置換術後の患者満足度は近年注目を集めている.患者が期待することは個人で異なり個別的な対応が必要になる.患者満足度に関連する要因は,①痛み,②破局的思考やメンタルヘルス,③患者の期待,④ 膝関節の機能と報告されている.痛みや膝機能は術後の理学療法に密接にかかわっているが,そこに注力すれば満足度が得られるわけでない.年齢や術前機能を考慮した患者の自己実現に向けた介入が必要である.

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特集 人工関節置換術後の理学療法

人工関節置換術後の歩行分析と理学療法──人工股関節
対馬栄輝

人工関節置換術後の歩行分析と理学療法──人工膝関節
井野拓実,他

人工関節置換術後疼痛──人工股関節
山崎 肇

人工関節置換術後疼痛──人工膝関節
岡 智大

人工関節置換術後の軟部組織への考慮──人工股関節
小林弘幸,他

人工関節置換術後の軟部組織への考慮──人工膝関節
池野祐太郎

人工関節置換術後の患者満足度──人工股関節
神戸晃男

人工関節置換術後の患者満足度──人工膝関節
池田 崇,他


■Close-up 脳卒中の装具療法
長下肢装具と運動療法
辻本直秀

回復期以降の装具療法
田代耕一

上肢装具の適用
竹林 崇


●とびら
理学療法士としての「志」
千葉 恒

●画像評価──何を読み取る? どう活かす? 7
肺炎
有薗信一,他

●理学療法のスタート──こうやってみよう,こう考えていこう 7
・プログラムへどう活かすか?──生活歴・社会背景情報
・老いていることと病んでいることを理解しよう
長谷川真人

●臨床実習サブノート 
退院後から振り返るゴール設定──推論を事実と照合して学ぶ 2
職場復帰 歩行自立
河﨑由美子,他

●症例報告
終末期原発不明がんの若年成人男性に対する理学療法の経験
薄井さとみ,他

長下肢装具による介入に難渋し,恐怖心に配慮したチルトテーブルによる介入への変更が,座位バランス戦略の改善に奏効した左前大脳動脈塞栓症の1症例
森 公佑,他

●紹介
感染症(ポリオ)と物理医学ならびに理学療法技術の発展
姫野吉徳

●私のターニングポイント
積み重ねの先にあったターニングポイント
田坂厚志

●My Current Favorite 4
運動方法の違いが骨格筋に及ぼす生化学的影響──予防理学療法
白谷智子

●新型コロナウイルス感染症──現場からの報告
レッドゾーン内でのリハビリテーション科スタッフ活動の工夫と臨床教育
萬代陽介,他

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