総合リハビリテーション Vol.49 No.10
2021年 10月号

ISSN 0386-9822
定価 2,530円 (本体2,300円+税)

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複合性局所疼痛症候群とリハビリテーション

 外傷や手術後に四肢の激しい疼痛や腫脹を生じることは,反射性交感神経性ジストロフィーや肩手症候群として知られており,近年,複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome;CRPS)として名称が統一されました.CRPSの原因は不明で,早期診断と治療が重要ですが,CRPSを疑う状況が発生すれば,投薬や神経ブロック,リハビリテーションなどの集学的治療を開始すべきとされています.本特集では,CRPSのリハビリテーションにかかわるさまざまな専門家に,その現状と課題を解説していただきました.

リハビリテーション医療の役割 韮澤紀文氏ら
 CRPSの原因は未だ不明で,組織の損傷が治癒したにもかかわらず,疼痛が遷延するもので,一つの疾患というよりはむしろ病態として捉えることが望ましい.筆者らは,CRPSの疫学と症状,診断,治療,具体的な取り組みなどについて解説している.

外傷や医療行為を契機に生じた痛みが長く続く患者のリハビリテーション 高橋紀代氏ら
 疾病及び関連保健問題の国際統計分類(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems;ICD)‒11では,CRPSは,慢性一次性疼痛症候群の一つに挙げられているが,「外傷の既往があるか,不動化の原因がある」ことが前提となっており,分類上は慢性二次性疼痛症候群の「外傷や医療行為を契機に生じた痛み」に入る場合が多い.筆者らは,痛みが続く要因,動作ADLとの関連,リハビリテーションの実際などを症例を交えて解説している.

ハイブリッド型運動療法 森岡 周氏
 CRPS患者において,患側空間への気づきの低下や患肢の身体イメージ障害が報告されている.こうした障害と疼痛には関係がみられることから,単純な運動療法のみでは効果が得られにくい.ゆえに,病態の特徴に応じたハイブリット型の運動療法を展開する必要がある.本稿では,CRPSに対して,なぜハイブリッド型運動療法を適応すべきなのかを病態メカニズムから概説している.

慢性疼痛診療におけるアクセプタンス&コミットメント・セラピーの実際 酒井美枝氏
 2021年6月に発行された「慢性疼痛診療ガイドライン」では,推奨度・エビデンスレベルの比較的高い(2B:行うことを弱く推奨する)心理的アプローチとして,「認知行動療法(cognitive behavioral therapy)」,「マインドフルネス(mindfulness)」,「アクセプタンス&コミットメント・セラピー(acceptance and commitment therapy;ACT)」が挙げられている.本稿では,ACTの特徴に焦点を当て,名古屋市立大学病院いたみセンターでの実践について解説している.

精神科病院における取り組み 平林万紀彦氏
 “患者のニーズ”と“治療者が提供したいこと,提供できること”は必ずしも一致せず,両者に乖離が生じることも少なくない.「痛みの原因を知りたい」,「痛みを治したい」という患者のニーズに十分には応えられない場合,「痛みはあるが充実した生活を送れるようになった」という回復像を治療者から提示し,両者の乖離への擦り合わせが必要となる.その際,CRPS患者の重症化に関与する精神障害や環境問題の是正など精神医療が重要な役割を担う.本稿では,難治性疼痛患者に対する精神科病院における集学的治療の取り組みについて紹介している.

難治性神経障害性疼痛に対する反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)の現状 齋藤洋一氏
 欧州からのガイドラインでは,疼痛治療としての高頻度反復経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation;rTMS)はレベルAとされている.Responderの患者を特定し,繰り返しrTMSを実施すれば,非侵襲な治療となり得,rTMSを在宅治療に持ち込むことは新たな治療戦略と考えられる.筆者は,rTMSによる疼痛治療の現状について概括し,在宅で簡便にrTMSを繰り返すシステムの開発の取り組みについても紹介している.今後の技術的なブレークスルーで,小型で,安価なrTMS装置が登場することが期待される.

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医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。

リハビリテーション医療の役割
韮澤紀文,他

外傷や医療行為を契機に生じた痛みが長く続く患者のリハビリテーション
高橋紀代,他

ハイブリッド型運動療法
森岡 周

慢性疼痛診療におけるアクセプタンス&コミットメント・セラピーの実際
酒井美枝

精神科病院における取り組み
平林万紀彦

難治性神経障害性疼痛に対する反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)の現状
齋藤洋一


●巻頭言
「コロナと散歩の脳科学」について考える
降矢芳子

●入門講座
どう選ぶ? 介護保険のリハビリテーション・機能訓練③
通所介護(デイサービス)
森 剛士

●実践講座
医療機関における治療と仕事の両立支援③
両立支援コーディネーターの養成状況
豊田章宏

●研究と報告
手指屈筋腱腱鞘炎に対するA1 pulleyストレッチの有効性
上田剛史,他

●集中講座
評価法の使い方 シリーズ2 各論(疾患別篇)⑩ 神経発達症
橋本圭司

●新専門医制度における研修プログラム 第3回
地域医療を担う広島大学病院のリハビリテーション研修プログラム
牛尾 会,他

●Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
森鷗外の『渋江抽斎』――明治初期の脳卒中患者
高橋正雄

●Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「14歳の栞」――子供から大人に切り替わる〈14歳後半〉のリアル
二通 諭

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