総合リハビリテーション Vol.49 No.7
2021年 07月号

ISSN 0386-9822
定価 2,530円 (本体2,300円+税)

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小児運動障害(運動症)のリハビリテーション

 小児分野のリハビリテーション医療の対象疾患は,神経疾患,筋疾患,骨・関節疾患,脳血管疾患,発達障害,内部障害など多岐にわたります.そのなかでも運動障害(motor impairment)に対するリハビリテーションは,従来の重度脳性麻痺や重症心身障害児を対象とした伝統的なアプローチにとどまらず,精神疾患の診断・統計マニュアル,第5版(Diagnostic & Statistical Manual of Mental Disorder, 5th ed;DSM‒5)の運動症群(motor disorders)に含まれる発達性協調運動症への対応など,時代のニーズに合わせて刻々と変化しています.またコロナ禍による子供の体力低下も強く懸念されています.本特集では,小児の運動障害(運動症を含む)のリハビリテーションにかかわるさまざまな専門家に,その現状と課題を解説していただきました.

脳性麻痺 瀬下 崇氏
 脳性麻痺を早期に診断しリハビリテーションを開始することが推奨されている.特に早産や周産期異常のある症例ではスクリーニングを実施し異常を認めれば,早期リハビリテーションを開始する.運動機能予後については2歳を過ぎるとほぼ確定し,粗大運能能力分類システム( Gross Motor Function Classification System;GMFCS)を用いて現在の年齢と既に獲得されている機能から運動機能予後を予測できる.本稿では,脳性麻痺の運動機能予後に加えて股関節脱臼や側弯などの合併症,ボツリヌス療法などについても解説している.

骨関節疾患――小児スポーツ障害のリハビリテーション 亀ヶ谷真琴氏
 骨関節の小児運動障害(スポーツ障害)例は,千葉こどもとおとなの整形外科においては毎年200例以上が受診する.その原因の約90%は過度の運動によるものである.子供のスポーツ障害は,時に肉体的・精神的な後遺症を残す可能性があり,各個人の状態に合わせた適正な練習量やプログラムの作成が必要となり,現在幅広く利用されている国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health;ICF)を利用した生活機能モデルの概念を当てはめ,健康状態,生活機能,背景因子の相互関連をみることはその一助となる.本稿では,小児運動障害におけるリハビリテーションについて事例を交えて解説している.

ダウン症 真野英寿氏
 ダウン症児は新生児期に著明な低緊張を呈するが,ダウン症児が他の疾患と異なるのは運動能力が回復することである.本稿では,米国の理学療法士Patricia C. Winders の著書Gross Motor Skills for Children with Down Syndrome を紹介し,ダウン症児の運動障害にどのように向き合えばよいかを解説している.ダウン症児の動作に影響しているのは低緊張である.そしてダウン症児が見せるさまざまな動作は,発達の段階ではなく,動作のバリエーションである.昭和大学リハビリテーション科におけるダウン症児の足の管理の実際についても紹介している.

発達性強調運動障害のアセスメントと支援の視点 池田千紗氏ら
 本稿では,DSM‒5における定義,発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder;DCD)の有病率,アセスメントツール,支援の視点,DCDに関するトピックスなどを解説している.DCへの支援を行う際には,養育者や保護者,一緒に活動する仲間のかかわりが重要であり,セラピストや支援者はDCD児・者の周囲にいるすべての人に対して,運動や学習を習得する際の指導方法や環境の整え方を教示し,家庭・学校・地域の活動へ参加する機会を提供できるように支援体制を整えることが求められる.

子どもの体力 内藤久士氏
 現在のコロナ禍における新しい生活様式は,人々のスポーツ活動や体を動かす機会に影響を与えると考えられる.本稿では,子どもの体力低下とその要因についてその背景を紹介し,現代の子どもの体力の現状と取り組むべき課題について解説している.実際には日本のすべての子どもの体力が一様に低下しているわけではなく「体力・運動能力の二極化」が生じている.運動不足に関連した肥満・高血圧・糖尿病などの生活習慣病は中高齢時に発症するが,その基礎的な背景は子どものころに確立される.子どもの体力向上を実現することは,国民の生涯にわたる健康づくりの観点から必要不可欠な取り組みである.

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価格については医書.jpをご覧ください。

脳性麻痺
瀬下 崇

骨関節疾患――小児スポーツ障害のリハビリテーション
亀ヶ谷真琴

ダウン症
真野英寿

発達性協調運動障害のアセスメントと支援の視点
池田千紗,他

子どもの体力
内藤久士


●巻頭言
リハビリテーション科医師として臨床に向き合う
尾関 恩

●入門講座 認知行動療法⑤
整形外科疾患――慢性疼痛
稲熊成憲,他

●実践講座 治療効果判定に役立つ病的歩行の診かた③
パーキンソン病患者の歩行障害評価
澤田 誠,他

●紹介
入浴支援評価シートと訓練用シミュレーターを用いた自宅内入浴動作自立に向けた支援の1例
渡邉翔太,他

●調査
回復期リハビリテーション病棟における嚥下リハビリテーションへの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響
佐藤俊彦,他

●集中講座 評価法の使い方 シリーズ2
各論(疾患別篇)⑦ 呼吸器疾患
千住秀明,他

●リハビリテーションにおける退院支援 第2回
在宅復帰支援システム
槌田義美

●Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
島崎藤村の『夜明け前』――幕末・維新期における脳卒中患者
高橋正雄

●Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「夜明け前のうた 消された沖縄の障害者」――私宅監置という闇の世界を白日の下に晒す
二通 諭

●特別連載
リハビリテーション論文の正しい書き方 第4回
「総合リハビリテーション」編集委員会

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