理学療法ジャーナル Vol.55 No.5
2021年 05月号

ISSN 0915-0552
定価 1,980円 (本体1,800円+税)

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目標に基づく理学療法のための臨床推論――症状・疾患別の実際

 目標を実現するための臨床推論について,症状・疾患別の視点から臨床で実際に行える,行っている内容を取り上げた.これまで主に取り上げられてきた病態と検査・測定の解釈とともに一連の理学療法過程を組み立てる専門職のコア・コンピテンシーとして立体的な理学療法を視覚化するものである.

脳卒中 村井直人,他
 病前から介護力の乏しく基礎疾患の多い虚弱高齢者が脳卒中にて重度障害を呈し回復期に入院した場合,自立困難で退院後は施設への入居が想定される.施設職員も患者自身の家族のように考え,家族の介護負担軽減を目標設定にした理学療法プログラムが重要になる.二次的な機能障害の改善と残存機能を活用した動作方法の再学習を図るプログラムを早期から実施し,施設基準や環境を想定した動作指導や患者教育を行うことで,目標達成が可能になると考える.

変形性膝関節症 伊藤智崇,他
 変形性膝関節症患者の術後においては,術前よりも機能や能力の回復が見込まれるため,歩行能力の向上という目標では不十分であり,理学療法士は患者と具体的な目標を共有し,臨床推論を展開する必要がある.本稿では,論理的思考に基づいた臨床推論を行うためのツールとして三角ロジックを用い,治療戦略を練るための病態仮説の立案プロセスや参加レベルの具体的な目標設定のプロセスを解説した.

心不全 野崎康平,他
 心不全は増悪を繰り返すことが多く,そのたびに心機能のみならず身体機能も低下していく.心不全患者に対して理学療法を行うとき,このことを考慮しつつ重症度や心身機能,個人環境因子を勘案して目標設定を行う.目標を達成するためには,心不全治療の病期に応じた理学療法治療戦略を立案し,フィジカルアセスメントをしつつ実施する.本稿では,症例を通して目標や病期に応じた治療戦略立案に対する臨床推論について解説する.

急性呼吸不全 有薗信一
 特発性間質性肺炎の急性増悪による急性呼吸不全患者に対して,ICUにおける救命と急性期管理,病棟での回復過程とリハビリテーション室での退院に向けての理学療法に分け,目標を達成するために効果的なプログラムを立案,実行する過程に焦点を当てた.

脳性麻痺――学童期児への援助の糸口 彦田龍兵
 学童期の脳性麻痺がある児について,理学療法の目標に基づき検討したことを述べる.病院の外来で理学療法を行う場合,対象児者の生活の多くを実際に見ることは難しく,情報は限られるかもしれない.個々人の生活環境や実際はそれぞれであり,個別の援助,その一部としての理学療法を提供することになる.目標設定から目標達成のための理学療法プログラムを組み立てる根拠の1つは,児の示す姿勢筋緊張の状態である.

関節可動域制限 高村 隆,他
 肩関節周囲炎後に起こる関節可動域制限への理学療法では,周期によりアプローチが変化するため,現段階での病態把握が重要となる.また,疼痛や初期の強い拘縮期では,複数の病態仮説を立てて,プログラム立案を実行する必要がある.家庭内での作業や仕事に必要な動作や機能について患者と共有し,治療プログラムの内容,目的を最適なものにしていく.常に現在の病態仮説を検証し,患者に合った機能,動作改善に対するアプローチを繰り返し臨床推論することが大切である.

立ち上がり動作制限 田邉龍太,他
 大腿骨頸部骨折後,自宅のソファから立ち上がり動作が困難になった症例について,立ち上がり動作のバイオメカニクスに基づいて環境調整,動作の改善を行った.立ち上がり動作は生活のなかで何度も繰り返される動作であり,立ち上がり動作ができないことで活動制限や参加制約を引き起こす.機能的な対策にとどまらず,その方の生活に沿った環境調整が極めて重要になる.

バランス低下 臼田 滋
 腰部脊柱管狭窄症,心不全,脳梗塞の既往を有し,受傷前からバランスの低下を生じていた大腿骨転子部骨折の術後の症例を提示した.経過に対する詳細な分析を中心とした臨床推論を展開し,家事動作や友人との交流などへの参加を目標として,入院中のバランス低下に対する多面的なアプローチと自宅環境の整備や退院後のフォローアップの継続が必要であった.

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脳卒中
村井直人,他

変形性膝関節症
伊藤智崇,他

心不全
野崎康平,他

急性呼吸不全
有薗信一

脳性麻痺――学童期児への援助の糸口
彦田龍兵

関節可動域制限
高村 隆,他

立ち上がり動作制限
田邉龍太,他

バランス低下
臼田 滋


■Close-up 行政で働く理学療法士
行政で働く理学療法士の役割
小森昌彦

いきいき百歳体操はどのように生まれたか
川村明範

行政のお仕事

行政分野への挑戦
田中大地

行政での働きと気づき
西下卓美

行政における一次予防から三次予防までの取り組み
夏原さゆり

リハビリテーション専門職と行政の協働――区リハビリテーション連絡協議会の取り組み紹介
久保かおり


●とびら
ある日の振り返り
柳根建博

●目で見てわかる 今日から生かせる感染対策・10
感染予防の常識を今一度確認しましょう①
高橋哲也,他

●再考します 臨床の素朴な疑問・5
「過剰努力」の「過剰」とはどの程度?
潮見泰藏

●診療参加型臨床実習・5
診療参加型臨床実習の取り組みの現状と展望
急性期大学病院
南角 学

急性期基幹病院
福迫 剛

●国試から読み解く・17
摂食・嚥下障害のステージを推測しよう!
藤田裕子

●臨床実習サブノート 診療参加型臨床実習――「ただ見ているだけ」にならないように!
骨接合術後の大腿骨近位部骨折症例
川端悠士

●私のターニングポイント
刹那的欲求から見出す本然の生き方
大北 潤

●症例報告
Camptocormiaを呈する脳深部刺激療法後パーキンソン病患者にリドカイン筋注と体重免荷式トレッドミルトレーニングを併用した1 例
坂井登志高,他

●症例報告
高齢心不全症例に対する通所リハビリテーションを活用した多職種介入の一考察
平野康之,他

●文献抄録
藤野雄次・宮森隆行・中島拓哉・秦 綾花

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