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DSM-5 児童・青年期診断面接ポケットマニュアル


原著:Robert J. Hilt /Abraham M. Nussbaum 
監訳:高橋 三郎
訳:染矢 俊幸/江川 純

  • 判型 B6変
  • 頁 368
  • 発行 2018年06月
  • 定価 4,860円 (本体4,500円+税8%)
  • ISBN978-4-260-03602-3
子どものこころを診る医療者、必携! 診断面接の進め方、評価尺度、各種治療法を網羅
精神疾患の世界的な診断基準DSM-5の米国精神医学会オフィシャルシリーズの1冊。子どもの患者やその家族と面接しながらDSM-5診断をどのように進めるかを平易に解説する。15分、30分で面接をまとめる方法や疾患ごとの具体的な質問例など実践的なノウハウが満載。日本語版DSM-5マニュアル、手引への参照ページも掲載する。成人版の姉妹書「DSM-5診断面接ポケットマニュアル」と合わせて活用したい。
※「DSM-5」は American Psychiatric Publishing により米国で商標登録されています。
序 文
訳者序


訳者序

 本書は,American Psychiatric Association Publishing(米国精神医学会出版部)が2016年に上梓した,ワシントン大学精神科准教授Robert J. Hiltとコロラド大学精神科助教...
訳者序


訳者序

 本書は,American Psychiatric Association Publishing(米国精神医学会出版部)が2016年に上梓した,ワシントン大学精神科准教授Robert J. Hiltとコロラド大学精神科助教授 Abraham M. Nussbaumによる“DSM-5 Pocket Guide for Child and Adolescent Mental Health”(2016)の全訳である.著者のうちHiltは,Seattle Children's Hospital の部長を兼任しており,Nussbaum はこの本の姉妹書である「DSM-5診断面接ポケットマニュアル」〔高橋三郎監訳,染矢俊幸,北村秀明訳,医学書院,2015(The Pocket Guide to the DSM-5 Diagnostic Exam, 2013)〕の著者である.原著はポケットサイズ(20.5×11.5 cm)で,医師が常時携行しDSM-5による診断面接を実践できるようにした文字どおりのマニュアルである.しかし,その内容は355頁に細かくぎっしりと書かれており,教科書1冊に匹敵するだろう.研修医から専門医までの方々が,子どもの患者と家族を面接しながらDSM-5による診断をどのように進めていくべきかの具体的な質問を示して,現実の診療にただちに役立つよう書かれている.
 すでに,本書の姉妹書をご愛読の方も多くおられるだろうから,本書の構成を詳しく紹介するまでもないが,第I部では診断面接の全体的な要点を解説しており,特に精神科で子どもと青年を診療するときの心がけを示すだけでなく,第3章では患者と保護者に対しての具体的な問診の例をあげながら,要点をわかりやすく示している.第4,5章では子どもの診断面接を15分,30分でまとめるやり方と,その限界を示している.
 第II部の各論で,第6章では,子どもの各精神疾患の診断面接の仕方が逐一解説されるが,限られた疾患のみに対応してきたわが国の子どもの精神科医が大いに啓蒙される内容である.つまり,知的能力障害,自閉スペクトラム症,注意欠如・多動症から,統合失調症,双極性障害,抑うつ障害,不安症,強迫症,心的外傷後ストレス障害,身体症状症,摂食障害,排泄症は言うまでもなく,睡眠・覚醒障害,性別違和,素行症,物質使用障害まで具体的な問診の仕方を示して解説している.第III部では,今日使用できる医薬品の適応や著者自身の使用経験まで示されている.
 1980年にDSM-IIIが出版され,私がこれを「精神障害の分類と診断の手引き」としてわが国の精神科医に紹介した当時の大きな反響を思い出しているが,当時,わが国ではまだまだ欧州学派が主流とみなされており,実証主義から出てきたDSM-IIIがどれほどのエビデンスに裏づけされたものかに気づく者はなく,ただ診断基準をめぐってその支持,不支持の議論ばかりだったようである.2013年にDSM-5が出版され,とにかくその膨大なデータに裏打ちされたマニュアルを見たとき,米国精神医学会が総がかりで取り組んだ事業であったことを見せつけられたものである.ところで,「複雑な人間の問題を過度に単純化し,重要な個人差を無視し,個別の臨床的治療のための診断を目的とするにはDSM-5はまだまだ発展途上のものであり,特に発達途上の子どもにDSM-5のような診断を下すことに抵抗感がある」という意見が後を絶たない.米国精神医学会出版部は,本書のような解説書をいくつか出版しているが,私はとうとう関連書の8冊目を翻訳出版することになってしまった.この5年間の作業で感じたことは,どの本もDSM-5の各側面を上手くとらえて実際の診療に役立つよう工夫が凝らしてあることである.その中でもこの2冊の姉妹書であるポケットマニュアルは出色である.DSM-5の臨床有用性に疑問をもつ人は,このマニュアルを読めば誤解は氷解するだろう.
 本書の翻訳作業は,新潟大学大学院医歯学総合研究科精神医学分野の21名の方々の訳を染矢俊幸教授と江川純特任准教授が見直したものに,最終的に私が手を入れた.第一線の子どもの精神科の診療にただちに役立つように工夫されており,読者諸兄姉の日常の診療のコンパニオンとして用いていただければ幸いである.

 2018年4月
 訳者を代表して 高橋三郎




 DSM-5の刊行は精神的苦痛に悩んでいる人が精神疾患に罹患しているかどうかを評価する方法についての新たな関心をもたらした(例:米国精神医学会, 2015;Lieberman, 2015;Phillipsら, 2012a, 2012b, 2012c).そのような評価は不可能に思えるかもしれない.結局,ある1人の人が精神疾患に罹患しているかどうかを決める場合,その人の文化,民族,信仰,家族歴,性別,既往歴,性的嗜好,気質を含めた多くの側面を考慮している.子どもや青年にそのような決定を下す場合,その評価はしばしば,さらにいっそう複雑なものとなる.その人の年齢と発達年齢を知らなければならない.その人の気質およびその人の両親の気質も知らなければならない.その人の健康状態とその人の家族の健康状態も知らなければならない.
 DSM-5はある特定の人の精神疾患の診断のためのマニュアルであるように作られているので,それを子どもや青年に使用するには彼らが生活する地域や家庭が彼らの健康に不可避的に結び付いているため,翻訳作業を必要とする.本書それ自体はDSM-5の実用的な翻訳である.本書はDSM-5それ自体や多くの小児精神科面接テキスト(例:Cepeda, 2010;MashとBarkley, 2007)のどちらの代用品でもなく,治療計画の指針となる診断面接の一部として,DSM-5の基準を効率的かつ効果的に使用する1つの方法である.
 著者らは毎日,学生,研修医,そして同僚の医師とともに患者を面接しており,臨床経験の異なるレベルのあらゆる面接者に向けて本書を執筆した.本書の第I部では診断面接,その目標,どのくらい多くの面接時間があるかに応じての面接の構成の仕方を紹介する.第II部では,DSM-5の診断基準を臨床診療のために操作的に運用できるようにした.第III部では付加的情報,表,そして手段を含めた.全体として,本書は治療同盟を確立していく間に,子どもや青年に対して,精神疾患の正確な診断を下すことの助けとなるだろう.それはどの精神科の対応においても目標としていることである.
 前おきとして,本書で用いる言語について手短に述べる.可能であれば,人や面接者については性的に中立な用語を用いるが,それが文法上ぎこちない場合,奇数番号の章では一般女性語を,偶数番号の章では一般男性語を交互に使用する.
 可能な限り,著者らは,子どもや青年の世界で活動する主体性と能力に重点をおく.この重点の目印として,著者らは精神的健康評価の対象を表現するのに(person)という用語を使用する.著者らは,医療的ケアの対象は,医療専門家に治療されている病気の患者なのか,またはこれら専門家のサービスを自発的に受ける消費者と解釈するのがよいのかについて,根強い議論が存在することは認めるが(EmanuelとEmanuel, 1992を参照),人であることが病気や消費よりも優先されるので,「人」という用語を選んだ.しかし,精神科治療を受けている人について話す場合は,その用語が治療中のその人の脆弱性と,患者を治療する際の精神保健専門家の責任の両面が認められることから,著者らは患者(patient)という用語を使用する(Radden とSadler, 2010を参照).医療的恩情主義を裏書きするためではなく,臨床的対応の中で発展する特別な保護的関係が,治療契約としてよりも治療関係としてよりうまく説明されることを強調するために,著者らはこの用語を使用する.
 子どもと青年はしばしば,彼らの要求を満たすのにさまざまな大人(両親,親戚,大人の友人,教師,信仰指導者,コーチなど)に頼るため,著者らは医療関係者以外の大人で子どもや青年の世話をする者を表現するために養育者(caregiver)という用語を用いる.
 最後に,著者らは2人とも医師であるが,子どもや青年は,支援の専門職として訓練されたさまざまな人達との医療的関係において,治療を受ける.この多様性を受け入れるために,子どもと青年を治療する医学的専門家に対して治療者(practitioner)という用語を使用する.提供者(provider)はより一般的な婉曲語句であるが,「治療者」という用語が,患者としての子どもと青年に接する専門家が継続的に治療し,技術を磨くという職業範囲を強調しているため,著者らは治療者という用語のほうを使用する.

謝辞
 精神的苦痛をもつ子どもと青年をどう治療するかをともに学んだ(今もなお学んでいるが)先生方や学生達,この仕事をすすめてくれた学術的および臨床的施設,そしてこの取り組みに寛容であった著者自身の家族達に感謝したい.

*著者らに公表すべき利益相反はない.
書 評
  • ポケットサイズに詰まった子どもの精神医療のエッセンス
    書評者:丸山 博(松戸クリニック院長・小児科/児童精神科)

     本書を読むと,全く精神医学の知識のない人でも児童・青年期の精神医療について知ることができる。著者は若者の教育に熱心な人であると感じる。自分の世界を伝えたかったのだと思う。それを最新のDSM-5と結合して,診断治療のばらつきをなくそうとの試みでもある。質問の仕方まで書いてあるので,念が入っている。翻...
    ポケットサイズに詰まった子どもの精神医療のエッセンス
    書評者:丸山 博(松戸クリニック院長・小児科/児童精神科)

     本書を読むと,全く精神医学の知識のない人でも児童・青年期の精神医療について知ることができる。著者は若者の教育に熱心な人であると感じる。自分の世界を伝えたかったのだと思う。それを最新のDSM-5と結合して,診断治療のばらつきをなくそうとの試みでもある。質問の仕方まで書いてあるので,念が入っている。翻訳はよくこなれており,誰にでもすぐに使えるので,患者との面接の前にちらりと見ておくと役に立つ。

     第I部では,簡潔に精神科治療の概略が書いてある。治療同盟の形成から始まり,地域社会状況で多い行動的・精神的問題に触れている。精神的苦痛の認識,精神的苦痛のスクリーニング,特定の精神疾患の診断,精神科治療についての教育,患者と養育者に自助的方策を教えること,カウンセリングと治療の開始,適切な医薬品の処方などである。次いで,小児期,青年期によく遭遇する精神的異常を挙げ,該当する可能性がある疾患の簡単な診断と解説が試みられている。その中では,著者の特技と思われる「相手の顔を立てるような説明も役に立つ」などの記載もある。最後に,時間が不足している一次医療や救急部門の治療者も念頭に置いて,15分間診断面接と30分間診断面接が書かれている。後者では,分刻みに何をすべきかが書いてあるが,もちろんこれは一種の基準で,その通りにはいかないものである。

     第II部では,これまでの仮診断とDSM-5との突き合わせが解説される。この中で当事者やその家族に質問する言葉などが記載されている。多くはこれに従えばよいのだが,評者が専門とする自閉症スペクトラムについていえば,その大部分を占める重い知的障害を持つ自閉症では,質問を理解しないし発語もないので,役に立たない部分もある。以上の「DSM-5子どもの診断面接」の項が,本書の半分を占めている。

     その後には第III部として,診断に当たっての注意事項,他の疾患分類―例えばICDなどの紹介が簡単になされ,子どもの身体的・心理的および社会的発達の簡単な表もある。「精神保健の治療計画」の章ではDSMの現在的意義が示されており,それは現在の時点での“障害”の目録であり,できるだけ特異性を高めるように使っていくべきであるとされている。また身体医学的問題や心理社会的問題も記載が必要としている。その後,心理社会的介入として主に行動療法的技法の例を挙げたり,各種の精神療法的介入や,薬物療法の一部を紹介したりしている。

     最後の章では,著者らの治療,教育,研究に対する提案が述べられている。いずれも,もっともなことが書かれているが,特に「子どもの発達について,家庭や学校でのありきたりな習慣の利益を親や養育者に指導すること」というのが心に残った。
     これだけの内容がこの小さなポケットブックに収載されており,ちょっと手元におけるというのがありがたい。
目 次
第I部 児童と青年の診断と治療
 1 序論
 2 地域社会状況における行動的・精神的問題
 3 共通する臨床的懸念
 4 子どもの15分間診断面接
 5 子どもの30分間診断面接

第II部 児童や青年へのDSM-5の使用
 6 DSM-5子どもの診断面接
  神経発達症群/神経発達障害群
   1 知的能力障害(知的発達症/知的発達障害)
   2 自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害
   3 注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害
  統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群
   1 統合失調症
  双極性障害および関連障害群
   1 双極I型障害
   2 双極II型障害
  抑うつ障害群
   1 うつ病(DSM-5)/大うつ病性障害
   2 重篤気分調節症
  不安症群/不安障害群
   1 限局性恐怖症
   2 パニック症/パニック障害
   3 全般不安症/全般性不安障害
  強迫症および関連症群/強迫性障害および関連障害群
   1 強迫症/強迫性障害
   2 身体集中反復行動症/身体集中反復行動障害
  心的外傷およびストレス因関連障害群
   1 心的外傷後ストレス障害
   2 反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害
  解離症群/解離性障害群
   1 解離性健忘
   2 離人感・現実感消失症/離人感・現実感消失障害
  身体症状症および関連症群
   1 身体症状症
   2 病気不安症
  食行動障害および摂食障害群
   1 神経性やせ症/神経性無食欲症
   2 回避・制限性食物摂取症/回避・制限性食物摂取障害
  排泄症群
   1 遺尿症
   2 遺糞症
  睡眠-覚醒障害群
   1 不眠障害
   2 過眠障害
   3 ナルコレプシー
   4 閉塞性睡眠時無呼吸低呼吸
   5 レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)
  性別違和
   1 子どもの性別違和
   2 青年の性別違和
  秩序破壊的・衝動制御・素行症群
   1 反抗挑発症/反抗挑戦性障害
   2 間欠爆発症/間欠性爆発性障害
   3 素行症/素行障害
  物質関連障害および嗜癖性障害群
   1 アルコール使用障害
   2 アルコール中毒
   3 アルコール離脱
   4 カフェイン中毒
   5 カフェイン離脱
   6 大麻使用障害
   7 大麻中毒
   8 大麻離脱
   9 フェンシクリジンまたは他の幻覚薬使用障害
   10 フェンシクリジンまたは他の幻覚薬中毒
   11 吸入剤使用障害
   12 吸入剤中毒
   13 オピオイド使用障害
   14 オピオイド中毒
   15 オピオイド離脱
   16 鎮静薬,睡眠薬,または抗不安薬使用障害
   17 鎮静薬,睡眠薬,または抗不安薬中毒
   18 鎮静薬,睡眠薬,または抗不安薬離脱
   19 精神刺激薬使用障害
   20 精神刺激薬中毒
   21 精神刺激薬離脱
   22 タバコ使用障害
   23 タバコ離脱
   24 他の(または不明の)物質の使用障害
   25 他の(または不明の)物質の中毒
   26 他の(または不明の)物質の離脱
   27 ギャンブル障害
  臨床的関与の対象となることのある他の状態
 7 DSM-5診断早見表

第III部 診断ツールと臨床ガイダンス
 8 鑑別診断のための段階的解決法
 9 精神状態検査:精神医学用語集
 10 DSM-5評価尺度の抜粋
 11 評価尺度と代替診断システム
 12 発達の里程標
 13 精神保健の治療計画
 14 心理社会的介入
 15 精神療法的介入
 16 精神薬理学的介入
 17 治療,教育,研究に対する提案

文献
索引