呼吸音聴診ガイドブック
見る・聴くWeb付録付

もっと見る

気道が狭くなっている? 誤嚥を起こしているかも? 呼吸音の聴診によって、患者さんの身体の中で起きていることを予測できます。呼吸音の聴診で必要なのは、異常な呼吸音5つ、正常呼吸音3つをしっかり頭に入れておくこと。それぞれの音の特徴がわかれば、呼吸音の聴診は確実に身につけられる技能です。ステップに沿って学び、自信を持って聴診に臨みましょう。呼吸音が生じるメカニズムを繰り返し見て、聴けるWeb付録付。

山内 豊明
発行 2018年04月判型:B5頁:96
ISBN 978-4-260-03159-2
定価 2,530円 (本体2,300円+税)

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 特典・紹介動画
  • 序文
  • 目次
  • 書評
  • 正誤表

開く

動画
読者の皆様へ 見る・聴くWeb付録のご案内

本書付録の巻頭に記載されたIDとパスワードをご用意のうえ、左のアイコンからお入りください。

●動画配信中!

著者による本書の解説です!


【サンプル動画 配信中】

●本書のレビューが掲載されています!
京都科学WEBマガジン SimSim「その呼吸音、なんの音?」

開く

はじめに

 交差点にある交通信号は,何色で,それぞれ何色と言いますか?
 3色で,赤・黄・青,これは全国どこでも同じですね。みんなに共通すべき情報は地域によってその数や呼び名が違ったら困ります。
 交通信号は道路を使う場合に必要となる情報です。そして呼吸音は身体のケアに関わる際に不可欠な情報です。

 呼吸音の聴診とは,呼吸音という音情報を聴くことで身体の様子を判別することです。
 「判別」とは判じて別々に扱うことですから,情報源を白か黒のようにきっぱりと線引きをすることであり,グラデーションのように境界が曖昧なままにしておくのでは判別とはなりません。その後どのように振り分けるか,そのためにはどのように線引きをするかを先に定めておき,その場ではあらかじめ用意した受け皿への振り分け作業を行うこと,それが判別という行為です。
 「音」という材料はその場で扱うことはできても,材料自体を自分の中に残すことはできません。聴きたい音だけを頭の中に録音することは不可能です。音を判別材料にするためには,同時に鳴っている様々な音の中から聴くべき音を扱うために,それ以外の音を聞き流す必要があります。なぜならば,判別を担当する脳は1人1つしか持っておらず,並列処理は不可能だからです。
 これらのことから聴診技能の必要条件が明確になります。残せない「音」という材料を,どこに振り分けるかを,その場で即断即決する必要があるのです。そのためには,「振り分け先」を正しく知っていること,そのための「振り分け方とその線引き」を正しく運用できること,そしてその振り分け先に「正しい共通用語」を当てがうこと,となります。

 本書では,身体ケアに関わる際に,その場で間髪入れずに判断しなければならない呼吸音について,正しく振り分けをし,ケア行為に結び付けるために正しい共通用語を当てがうための方法を,この原理に基づいてステップ・バイ・ステップで習得できるように構成しています。
 呼吸音をどう分けて,それをどう線引きし,何と呼ぶかを明確にするということは,交通信号を,「赤っぽい色」「黄色っぽい色」「青(ないしは緑)っぽい色」の3つに分け,それぞれを「赤信号」「黄色信号」「青信号」と呼んで扱うのと同じ原理です。
 呼吸音の聴診は,道路で交通信号に戸惑うことなく安心して道路を通ることができるのと同じように,容易で確実な技能です。
 さあ,自信を持って呼吸音聴診に臨めるように進みましょう。

 2018年2月
 山内豊明

開く

はじめに
本書の構成&使い方

聴診の目的を確認する
 (1)呼吸音の聴診をする目的
 (2)聴診をケアにつなげるために
 (3)呼吸音のアセスメントが大切な理由

呼吸器系の働きを理解し,呼吸音の「カタログ」を整理する
 (1)呼吸器系の働きと,呼吸音の聴診によってわかること
 (2)呼吸音をどこで聴取するか
 (3)聴診の基本
 (4)聴診器の使い方
 (5)正常呼吸音と副雑音の分類
 (6)実際の呼吸音を聴いてみよう

復習テスト
聴診テスト
解答・解説

副雑音を聴き分け,患者さんの状態を推測する
 (1)連続性副雑音が示すのは「気道の狭まり」
 (2)低調性と高調性の違いは「気道の狭まり具合」
 (3)連続性副雑音は「変化」に注意
 (4)細かい断続性副雑音が示すのは「肺胞の伸びの悪さ」
 (5)細かい断続性副雑音が聴取された場合の考え方
 (6)粗い断続性副雑音が示すのは「気道に過剰な水分があること」
 (7)粗い断続性副雑音が聴取された場合の考え方
 (8)胸膜摩擦音は肺を包む膜から生じる音
 (9)副雑音の判断の仕方
 (10)副雑音の重複

復習テスト
聴診テスト
解答・解説

「呼吸音は正常」と言い切るための道筋を理解する
 (1)正常呼吸音 気管(支)音
 (2)正常呼吸音 肺胞音
 (3)正常呼吸音 気管支肺胞音
 (4)「呼吸音は正常である」とはどういうことか
 (5)「呼吸音は正常」と言い切るために(1) 副雑音と左右差
 (6)「呼吸音は正常」と言い切るために(2) 気管支呼吸音化

復習テスト
聴診テスト
解答・解説

聴診のためのコラム
 (1)呼吸に関連する解剖用語の整理
 (2)肺の「どのあたりか」を正しく伝えるために
 (3)長期臥床していると換気効率が悪くなる理由
 (4)人工呼吸器装着時の聴診
 (5)胸部疾患と聴診所見

索引

開く

快刀乱麻の聴診本
書評者: 倉原 優 (国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科)
 私は研修医のころ,受け持った患者さんの呼吸音を聴かせていただこうと思い,なけなしの金をはたいて買った新しい聴診器を持って,呼吸器内科病棟をウロウロしていた。そんなとき,喘息発作の男性の担当医になった。私は彼の胸にすかさず聴診器を当てて,「グォー,グォーという音が聴こえます」と指導医に伝えた。

 また,私自身が指導医として研修医を受け持ったころ,特発性肺線維症の患者さんから特徴的な音が聴取できるだろうと思い,研修医に聴診器を当てさせた。彼は,その音を聴いて「パチパチと聴こえます」と答えた。

 これらの聴診所見は,前者が低調性連続性副雑音(rhonchi:ロンカイ)で,後者が細かい断続性副雑音(fine crackles:ファインクラックル)と呼ばれている。私のような呼吸器内科医にとってはそれなりに名の知れた所見であるが,これらの用語は残念ながらいまだに全ての医療従事者に浸透していない。私が研修医になった時代からあまり進歩していないように思う。

 特にベテラン看護師は,後輩に我流の聴診を伝道していることも多く,病棟によってはこれらが公用語としてまったく成立しないことだってある。現場では「ギュー音が聴取される」などという看護記録はまだ存在する。そのため,この音がどういう音なのかがわからず,スタッフ間にうまく情報が共有されないことがある。

 大事なのは医師だけでなく,その患者さんにかかわる全てのスタッフがその聴診所見を共有することにある。この本は,まさにこれまでのジレンマを氷解させてくれる存在である。特筆すべきは,音の成り立ちがわかりやすく書かれている点である。随所に登場する比喩もわかりやすい。古くて硬くなった風船を膨らませるときの音,コップに入った水にストローで息を吹き込むときの音。そして,小難しい呼吸生理についてはあえて深掘りせずに,初学者にもわかりやすくイラスト付きで説明されている。私も含めてだが,聴診が好きな医師というのは,どうも呼吸生理の難しい話に脱線してしまうものである。筆者はこれをうまくこそぎ落としている。それもそのはずだ。筆者は内科医として臨床を経験した後,「まずは患者さんの生活をみるべき」という理念のもと米国に渡り看護師免許を取得しているというのだから。「現場で何が必要・不要か」という優先度の高いポイントをおさえているのだ。まったくもって,快刀乱麻である。

 ちなみに,私は聴診器を直接患者さんの肌に当てるときには,チェストピースを手で少し温めておく,といったことをあまり教えられなかった。そういう細かな配慮が随所に散りばめられているのも嬉しい。

 聴診器を買った人は,現場で聴診するために買っているはずだ。であれば,その翌日にでも本書を手に取って,まずは聴診について学ぶべきである。
書評(雑誌『訪問看護と介護』より)
書評者: 広瀬 純子 (看護師)
 衝撃です。知識欲のままに購入し、それだけで満足して本棚の飾りになってしまう……そんな本ではありません。山内先生の語り口そのままに“なぜ?”が解き明かされていく楽しさで、もう最後までページをめくる手が止まらない! めくるめく山内ワールドへ、さあ飛び込んでみましょう。

◆山内先生の講義をご自宅でも!

 「呼吸音の聴取」と聞いて、どんなイメージをもちますか? 難しい? わかりにくい? いえいえ、山内先生の言葉をお借りすると、「交通信号に戸惑うことなく安心して道路を通ることができるのと同じように、容易で確実な技能」なのです。

 交通信号に戸惑うことがないのはなぜでしょうか。信号の色をどのように見分けて(振り分け方とその線引き)、どのような名称で使うのか(正しい共通用語)を知っているからです。これは全国どこでも共通です。

 同様に、呼吸音の名称も明確な振り分けがあるのです。これをただ覚えるのではなく、こういう理由で分かれていて、それはこういう音ですよと、音のカタログ(見る・聴くWeb付録)までついている親切さ。もう、脱帽です。

◆聴診の4つのSTEP

 山内先生の講義には「目的を見失わない」という言葉が多く出てきますが、本書もSTEP 1「聴診の目的を確認する」から始まります。聴診をただの“行為”で終わらせないよう「身体の中で何が起こっているのかを突き止めるために、聴診をしているのだ」と目的を明確にするのです。そして適切なケアにつなげるために、どのような知識と判断の過程が必要なのかという流れで、疑問をクリアにしていきます。

 STEP 2は「呼吸器系の動きを理解し、呼吸音の“カタログ”を整理する」。呼吸器系の機能と評価方法、肺の構造や聴診部位と方法、聴診器の使い方など、基本のキをおさらい。そして、正常呼吸音と異常呼吸音(副雑音)のカタログを整理します。

 STEP 3では「副雑音を聴き分け、患者さんの状態を推測する」。それぞれの音はどういう機序で音をたてているのか、イラストを交えて解説しています。“なぜ?”がわかるとケアに結び付きますね。

 STEP 4は「“呼吸音は正常”と言い切るための道筋を理解する」。これで呼吸音聴取は完璧! ……なのですが、さらに「復習テスト」も用意されています。学習した気になっただけでは終わらせない、そんな山内先生の愛のむちが見え隠れしている作りこみなのです。

 山内先生の講義を受講されたことがない方はもちろん、講義を受けた方にこそ本書を手に取っていただきたい。先生の講義が紙上で再現される衝撃を、味わってください!

 命を守るプロフェッショナルとして、必読の1冊であると断言いたします。

(『訪問看護と介護』2018年7月号掲載)

開く

本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

正誤表はこちら

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。