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シミュレーション教育の効果を高める

ファシリテーター Skills & Tips


著:内藤 知佐子/伊藤 和史

  • 判型 A5
  • 頁 264
  • 発行 2017年03月
  • 定価 2,808円 (本体2,600円+税8%)
  • ISBN978-4-260-03014-4
教育の効果を高めたい! これからの看護教育を担うすべての指導者必読の1冊
主体的に学ぶ人材を育成するには——準備段階から振り返り(シナリオ作成~デブリーフィング)まで、年間300以上のシミュレーションを行う著者による指導者のためのスキルとコツが満載。アクティブラーニングに関するキーワードは、実際の活用法のみならず知識としてコラムで解説。「つい、誘導してしまう」「思うように動いてくれない」というお悩みに答えてくれる1冊。
序 文
はじめに

シミュレーション教育は「人」が教材
 この本を手にとっていただき、ありがとうございます。
 最近は、なんでもシミュレーションだなと感じることも多いのではないでしょうか。シミュレーション教育を新しい教育手法としてとらえている方もいると思いますが、実は看護...
はじめに

シミュレーション教育は「人」が教材
 この本を手にとっていただき、ありがとうございます。
 最近は、なんでもシミュレーションだなと感じることも多いのではないでしょうか。シミュレーション教育を新しい教育手法としてとらえている方もいると思いますが、実は看護の世界では以前からシミュレーション教育を取り入れ人材育成を行っていたのです。
 現代のシミュレーション教育の過去との大きな違いは、教授システム学や教育学、心理学などさまざまな他領域の学問を積極的に取り入れ、理論やモデルに基づいた教授設計がなされている点です。また、技術の進歩に伴いシミュレーターも高度化し、人工知能の搭載で会話ができるものまで登場しました。さらには、医療安全への意識が高まる中、各施設においてシミュレーションセンターが開設され、よりリアルな環境でのトレーニングが可能となりました。
 海外では、シミュレーションで急変対応トレーニングを行っている診療科を対象に、医療過誤保険の掛金を減額する保険会社もあり、その地位が確立してきています。
 ただし、あらゆるハイレベルな環境が整っていたとしても、それを使いこなす指導者が育っていなければ、十分な教育効果を引き出すことは難しいのです。そこで、今注目されているのが「ファシリテーター」であり「ファシリテーション」なのです。
 ファシリテーターとは教師でも指導者でもなく、「集団による知的相互作用を促進させるようプロセスを管理し、チームの成果が最大になるよう中立的立場で支援する人」のことをいいます。
 当然、「教えてやる」という上から目線はNGです。ファシリテーターはあくまで黒子であり、そこに関わる一人ひとりが自分で考え、学び、気づき、想像する“きっかけ”を投げかけることによって、学習者が主体的に取り組めるよう環境を調整していきます。最終的に学習者が「自分たちで成し遂げた!」と思えることこそが、シミュレーション教育における大成功なのです。
 ファシリテーションという概念を、日本に広めた中野民夫氏は、ファシリテーターを「愛をもって見守る人」と表現しています*1。参加者(学習者)に対し愛情、つまりは関心をもちつつ、関わるべきときには関わり、待つべきときには待つという姿勢が大切なのです。
 それでは、その「見守る愛」を発揮するために、教育におけるファシリテーションには具体的にどのようなスキルが必要なのでしょうか。いわゆる、一般的な教育のファシリテーションスキルとしては、大きく3つ、(1)場づくり(関係構築力)(2)“きく”スキル(傾聴力と発問力)(3)デザインする力(構成力)が挙げられています*2
 本書では、これらファシリテーションスキルを、「看護教育におけるシミュレーション」のファシリテーターに求められるスキルとして焦点化し、私自身の実践に基づいてまとめました。もちろん、本書の内容も、シミュレーションだけでなく日常の指導場面や会議、授業、または旅行や子育てなど日常生活の中でも広く活用できるスキルになっています。
 シミュレーションも教育も、「人」こそ宝であり、あなた自身が貴重な教材です。ぜひ、ファシリテーターとしてスキルアップしていきましょう。

 2017年2月
 内藤知佐子


*1 中野民夫:ファシリテーション革命,岩波書店,2003
*2 石川一喜,小貫仁編:教育ファシリテーターになろう!——グローバルな学びをめざす参加型授業,弘文堂,2015

目 次
はじめに…シミュレーション教育は「人」が教材

Prologue 学習者の主体性を引き出す指導者像
 1 今、なぜ看護教育に「ファシリテーターマインド」が必要なのか
 2 指導者の樹——やっぱり根っこが大事
 3 ファシリテーター型指導者になるための7つの心構え
 4 知っておきたい成人教育の5つのコツ
  本書の構造と読み方

Chapter 1 シナリオ作成
 シナリオ作成の手順とスキル活用マップ
 シナリオサンプル
 シナリオ作成に必要なスキル
  Skill 1 学習者のニーズとレディネスを的確にとらえるスキル
   -1 インシデントレポートを調査する
   -2 具体的なアンケートをとる
   -3 「現場が何を求めているか」を調査する
  Skill 2 ニーズにフィットしたシナリオを作り上げるスキル
   -1 教材を見直す
   -2 既存シナリオを使いこなす
   -3 目標の「動詞表現」にこだわる
   -4 スモールステップを抽出する
   -5 学習環境をコーディネートする
   -6 グループサイズを考える
   -7 空間デザインを考える
  Skill 3 振り返り(デブリーフィング)の準備をするスキル
   -1 デブリーフィングガイド作成のポイントを押さえる
   -2 構造的な枠組みを活用する
   -3 失敗例を知っておく
   -4 「問い」の切り口を具体的にしておく
   -5 評価方法を選択する
   -6 学習者目線でテストランしてみる
  Skill 4 ファシリテーター側でビジョンを共有するスキル
   -1 指導者間でゴールを共有しておく
   -2 協力的ではない人の協力を引き出す

Chapter 2 ブリーフィング
 ブリーフィングの手順とスキル活用マップ
 ブリーフィングに必要なスキル
  Skill 5 積極的な参加を促すスキル
   -1 安心・安全な学習の場をつくる
   -2 チームで学ぶ雰囲気をつくる
   -3 体験型学習のための姿勢を整える
   -4 消極的な学習者をフォローする
  Skill 6 緊張をほぐす・集中を高めるスキル
   -1 テーマにつながるアイスブレイクを選択する
   -2 学習者の状況でアイスブレイクを使い分ける
   -3 チームビルディングを意識する
   -4 学習の意義とグランドルールを伝える
   -5 学習環境の説明を十分に行う
   -6 シミュレーターや模擬患者に触れてもらう
  Skill 7 関心を引き出すスキル
   -1 学習者に「ワクワク」を起こす
   -2 目標を意識しやすくする
   -3 目標を復唱してもらう
  Skill 8 心理的負担を和らげるスキル
   -1 トップバッターを適切に指名する
   -2 「作戦会議」をしてもらう
  Skill 9 学習の場の価値を高めるスキル
   -1 学習者に対する期待を示す
   -2 「振り返り」を意識させる

Chapter 3 セッション
 セッションの手順とスキル活用マップ
 セッションに必要なスキル
  Skill 10 集中できる学習環境を維持するスキル
   -1 スムーズにストーリーを始める
   -2 タイミングよくキューイングを行う
   -3 威圧感を与えない
   -4 説明の抜けをフォローする
   -5 想定外のアドリブに対応する
   -6 積極的すぎる学習者をうまくフォローする
  Skill 11 学習者の動きを読む・促進するスキル
   -1 動きが止まったら「促進」する
   -2 「待つ時間」を大切にする
   -3 模擬患者の演技で促進する
   -4 セッションを止めるべきときを見極める
  Skill 12 振り返り(デブリーフィング)につなげるスキル
   -1 学習者の「感覚」を引き出す声掛けをする
   -2 ビデオ/メモを活用する

Chapter 4 デブリーフィング
 デブリーフィングの手順とスキル活用マップ
 デブリーフィングに必要なスキル
  Skill 13 学習姿勢を切り替えるスキル
   -1 感情を吐き出してもらう
   -2 目標を再確認する
  Skill 14 行動や思考を「見える化」するスキル
   -1 枠組み(Plus/Delta、GAS法)を使う
   -2 整理するツール(ホワイトボード等)を活用する
   -3 ビデオ映像は部分的に活用する
   -4 図解のツールで整理する
   -5 問題解決のプロセスを段階的に振り返る
  Skill 15 問いを投げかけるスキル
   -1 「構造」と「軸」を意識して問いを展開する
   -2 発言の多様性を受け入れる
   -3 認識していない思考に焦点を当てる
   -4 感情に焦点を当てる
   -5 生活体験を土台に問いかける
  Skill 16 「場の力」を利用するスキル
   -1 協同学習の技法で全員を巻き込む
   -2 承認欲求を満たす声掛けをする
   -3 発言する学習者の様子を見極める
  Skill 17 看護実践につなぐスキル
   -1 行動レベルで確認する
   -2 「間違い」はもち帰らせない
   -3 看護のプロは何をするのかを伝える
   -4 成功体験として研修を締めくくる
   -5 事後課題を投げかける

Epilogue ファシリテーターの質向上のために
 1 ファシリテーターのガイドラインと評価ツールの紹介
 2 ファシリテーター自身の振り返りで大事にしたいこと

協力者一覧
謝辞
付録 アイスブレイク集
索引
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