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運動機能障害の「なぜ?」がわかる評価戦略


編著:工藤 慎太郎

  • 判型 B5
  • 頁 360
  • 発行 2017年05月
  • 定価 5,616円 (本体5,200円+税8%)
  • ISBN978-4-260-03046-5
リハの成果、毎日確認していますか? 今後の見通し、ちゃんと説明できていますか?
「今日の理学療法はこれで終わりです」。しかし、どんな効果があったのだろうか? まだ痛むのはなぜか? 今後の見通しは? 患者と理学療法士の間に浮かぶ「?」の数々。本書の3つのステップで患者の状態を評価し、理学療法を実施することで、これらの「?」を確実に解決できる。思考過程を示したフローチャートで、たどるべき行程が明らかに!(1)どんな時?(動き)+(2)どこが?(解剖学)+(3)なぜ?(運動学)=評価戦略OK!
序 文


「なぜ,理学療法士を目指したのか?」

 学生に尋ねることがある.「高校の部活で怪我をして…」「祖母が脳梗塞になって…」「お母さんに勧められて…」などといろいろな答えが返ってくるが,とても印象に残る答えをした学生がいる.

「だって,手で人を治すってスゴくないですか?...


「なぜ,理学療法士を目指したのか?」

 学生に尋ねることがある.「高校の部活で怪我をして…」「祖母が脳梗塞になって…」「お母さんに勧められて…」などといろいろな答えが返ってくるが,とても印象に残る答えをした学生がいる.

「だって,手で人を治すってスゴくないですか?」

 彼女はそう答えてくれた.理学療法士になって10年以上,当たり前になっていたが,確かにすごい.しかし,本当に治す理学療法士になるのは,簡単な道のりではない.多くの理学療法士が自分の休日に,お金を払って,新しい知識を学び,自身の技術を研鑽している.しかし,せっかく学んできた技術も,タイミングや順序をまちがえてしまうと,効果が出ない.なぜ,効果が出ないのかがわからず,悔しい思いをすることも多い.

「患者さんの痛みが変わらないのですが,なぜでしょうか?」
「理学療法の後は状態がよいのですが,次回の理学療法の際には元に戻っています.なぜでしょうか?」

 おそらく理学療法評価がまちがっているか,技術が未熟か,その両方かであろう.技術を短期間で改善することは難しいが,評価は解剖学や運動学を理解して,丁寧に所見をとれば,できるだろうと思っていた.幸いにも,理学療法評価で重要となる触診技術に関しては,よい書籍が多くあり,検査測定方法に関する書籍も多い.しかし,臨床実習に行った学生は,必ずと言っていいほど,評価がうまくできず,新人の理学療法士も評価でつまずいていることが多い.
 3年前,私は,大学で臨床理学療法評価学という講義の運動器系理学療法分野を担当することになった.初年度はすでに指定されていた教科書でスタートしたが,教科書には検査方法と診断的解釈が掲載されているにとどまり,臨床的思考過程がわからない.2年目になり,適切な教科書を探したが,臨床的思考過程を解剖学や運動学に基づいて解説している書籍は見当たらない.どういう思考過程に基づいて,何を評価するのかはどこにも載っていないのである.

「動作分析をしっかりやりなさい」「ちゃんと触診しなさい」

 私自身,これまでの臨床での指導を思い返すと,こういった漠然としたアドバイスをしていた.しかし,指導される側は,「動作分析」と「触診」の間がつながっていないのである。これではいつまで経っても,理学療法評価ができるようにはならない.
 また,治す理学療法士の思考過程は,教科書からは読み取れない.これまで,臨床的思考過程は,先輩から後輩へon the jobで伝えられることが多く,その過程で解剖学や運動学などの基礎知識を限定的に説明していたのではないだろうか.たとえば「この筋の収縮とこの筋の収縮がつながるから…」などである.これでは,自ら問題点を見つけ,患者さんに説明できるようにはならない.

「1つの所見をとったら,次に何を考えるのか?」

 この思考過程を,解剖学や運動学を使って説明し,フローチャートにまとめて示したら,うまくいかない症例に対して,自分が見落としている所見を見つけられるのではないか? そこで,運動機能障害に対する評価の思考過程を,解剖学や運動学を使って,体系的にまとめた書籍が必要ではないかと考えた.
 イメージはできたが,フローチャートを作ってみると,想像以上にまとまらない.「そりゃ,治せんわな」などとぼやきながら,改めて考え,文献を読み込んでいく.この繰り返しで頭を整理していくと,的確な評価ができるようになってきた.臨床に出たばかりの理学療法士に指導するときも,順を追ってわかりやすく説明できるようになってきた.
 もちろん,本書に記載していることがすべての患者に当てはまるわけではない.臨床症状も,運動療法の効果も,多種多様である.それが,今日まで臨床的思考過程を体系的にまとめたものがなかった理由であろう.
 本書が,運動機能障害の理学療法に悩む学生や理学療法士にとって,不完全ながらも,評価の指南書のようになれば幸いである.私たちの考えが及んでいない疼痛発生機序があれば,自分で書き加えて,よりよいオリジナルの1冊にしてほしい.

 最後に,本書をまとめるにあたり,多大なご尽力をいただいた医学書院の金井真由子氏に,心から感謝申し上げる.また,ご執筆の先生方には,よりよいものにするための議論に,多くの時間を費やしていただいた.納得するまで話をやめない私に,いつも付き合ってくれていることに感謝している.そして,遅くに帰宅しても,健やかに育つ息子の寝顔を見ることで,翌日も頑張れている.長男 圭一郎と育児を一手に引き受けてくれている妻 美知,素晴らしい人生を与えてくれた母に感謝を捧げたい.

 2017年4月
 工藤 慎太郎
目 次
序章 運動機能障害の評価戦略
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
   各ステップで求められる知識と技術
   トリガー組織判別テスト(DTTT)
   本書の使い方

第I章 上肢帯
 1.肩
  肩の構造と機能
  1 肩上方の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
  2 肩前上方の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:伸張ストレスが加わっている場合
   [step 2]どこが痛むのか?:肩甲下筋と腱板疎部の解剖学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:圧縮ストレスが加わっている場合
   [step 2]どこが痛むのか?:関節唇の解剖学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:摩擦ストレスが加わっている場合
   [step 2]どこが痛むのか?:上腕二頭筋長頭腱の解剖学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
  3 肩外側の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:伸張・摩擦ストレスが加わっている場合
   [step 2]どこが痛むのか?:三角筋・三角筋下滑液包の解剖学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:圧縮ストレスが加わっている場合
   [step 2]どこが痛むのか?:腋窩神経の解剖学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
   症例ノート(1)
  4 肩後方の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:伸張ストレスが加わっている場合
   [step 2]どこが痛むのか?:上腕三頭筋長頭・後方関節包の解剖学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:摩擦ストレスが加わっている場合
   [step 2]どこが痛むのか?:広背筋の解剖学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
 2.肘関節
  肘関節の構造と機能
  1 肘内側の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:伸張ストレスが加わっている場合
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
  2 肘外側の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
   症例ノート(2)
 3.手関節・手部
  手関節・手部の構造と機能
  1 手部のしびれ
   [step 1]どこがしびれるのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこで絞扼されるのか?:解剖学的評価
   [step 3]なぜ,しびれるのか?:運動学的評価
  2 手関節尺側部の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
   症例ノート(3)
  3 手関節橈側部の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価

第II章 体幹
 脊柱総論
  脊柱の構造と機能
 1.頸部
  頸部の構造と機能
  1 頸部の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
  2 頸部由来のしびれ
   [step 1]どこがしびれるのか?:発生部位の明確化
   [step 2]どこが絞扼されているのか?:解剖学的評価
   [step 3]なぜ,絞扼されるのか?:運動学的評価
 2.胸腰部
  胸腰部の構造と機能
  1 胸腰部の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
   症例ノート(4)
   症例ノート(5)

第III章 下肢帯
 1.股関節
  股関節の構造と機能
  1 股関節前面の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
  2 股関節外側の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
   症例ノート(6)
  3 股関節の運動学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
 2.膝関節
  膝関節の構造と機能
  1 膝内側の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
  2 膝外側の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
  3 膝前面の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
   症例ノート(7)
   症例ノート(8)
  4 膝関節の運動学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
 3.足関節・足部
  足関節・足部の構造と機能
  1 足関節後方の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
  2 足関節前方の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
  3 足底の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
  4 足関節・足部の運動学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
   症例ノート(9)
   症例ノート(10)

索引