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運動機能障害の「なぜ?」がわかる評価戦略

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「今日の理学療法はこれで終わりです」。しかし、どんな効果があったのだろうか? まだ痛むのはなぜか? 今後の見通しは? 患者と理学療法士の間に浮かぶ「?」の数々。本書の3つのステップで患者の状態を評価し、理学療法を実施することで、これらの「?」を確実に解決できる。思考過程を示したフローチャートで、たどるべき行程が明らかに!(1)どんな時?(動き)+(2)どこが?(解剖学)+(3)なぜ?(運動学)=評価戦略OK!

編著 工藤 慎太郎
発行 2017年05月判型:B5頁:360
ISBN 978-4-260-03046-5
定価 5,720円 (本体5,200円+税)

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本書の編著者である工藤先生が、本書の使い方を解説します!

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「なぜ,理学療法士を目指したのか?」

 学生に尋ねることがある.「高校の部活で怪我をして…」「祖母が脳梗塞になって…」「お母さんに勧められて…」などといろいろな答えが返ってくるが,とても印象に残る答えをした学生がいる.

「だって,手で人を治すってスゴくないですか?」

 彼女はそう答えてくれた.理学療法士になって10年以上,当たり前になっていたが,確かにすごい.しかし,本当に治す理学療法士になるのは,簡単な道のりではない.多くの理学療法士が自分の休日に,お金を払って,新しい知識を学び,自身の技術を研鑽している.しかし,せっかく学んできた技術も,タイミングや順序をまちがえてしまうと,効果が出ない.なぜ,効果が出ないのかがわからず,悔しい思いをすることも多い.

「患者さんの痛みが変わらないのですが,なぜでしょうか?」
「理学療法の後は状態がよいのですが,次回の理学療法の際には元に戻っています.なぜでしょうか?」

 おそらく理学療法評価がまちがっているか,技術が未熟か,その両方かであろう.技術を短期間で改善することは難しいが,評価は解剖学や運動学を理解して,丁寧に所見をとれば,できるだろうと思っていた.幸いにも,理学療法評価で重要となる触診技術に関しては,よい書籍が多くあり,検査測定方法に関する書籍も多い.しかし,臨床実習に行った学生は,必ずと言っていいほど,評価がうまくできず,新人の理学療法士も評価でつまずいていることが多い.
 3年前,私は,大学で臨床理学療法評価学という講義の運動器系理学療法分野を担当することになった.初年度はすでに指定されていた教科書でスタートしたが,教科書には検査方法と診断的解釈が掲載されているにとどまり,臨床的思考過程がわからない.2年目になり,適切な教科書を探したが,臨床的思考過程を解剖学や運動学に基づいて解説している書籍は見当たらない.どういう思考過程に基づいて,何を評価するのかはどこにも載っていないのである.

「動作分析をしっかりやりなさい」「ちゃんと触診しなさい」

 私自身,これまでの臨床での指導を思い返すと,こういった漠然としたアドバイスをしていた.しかし,指導される側は,「動作分析」と「触診」の間がつながっていないのである。これではいつまで経っても,理学療法評価ができるようにはならない.
 また,治す理学療法士の思考過程は,教科書からは読み取れない.これまで,臨床的思考過程は,先輩から後輩へon the jobで伝えられることが多く,その過程で解剖学や運動学などの基礎知識を限定的に説明していたのではないだろうか.たとえば「この筋の収縮とこの筋の収縮がつながるから…」などである.これでは,自ら問題点を見つけ,患者さんに説明できるようにはならない.

「1つの所見をとったら,次に何を考えるのか?」

 この思考過程を,解剖学や運動学を使って説明し,フローチャートにまとめて示したら,うまくいかない症例に対して,自分が見落としている所見を見つけられるのではないか? そこで,運動機能障害に対する評価の思考過程を,解剖学や運動学を使って,体系的にまとめた書籍が必要ではないかと考えた.
 イメージはできたが,フローチャートを作ってみると,想像以上にまとまらない.「そりゃ,治せんわな」などとぼやきながら,改めて考え,文献を読み込んでいく.この繰り返しで頭を整理していくと,的確な評価ができるようになってきた.臨床に出たばかりの理学療法士に指導するときも,順を追ってわかりやすく説明できるようになってきた.
 もちろん,本書に記載していることがすべての患者に当てはまるわけではない.臨床症状も,運動療法の効果も,多種多様である.それが,今日まで臨床的思考過程を体系的にまとめたものがなかった理由であろう.
 本書が,運動機能障害の理学療法に悩む学生や理学療法士にとって,不完全ながらも,評価の指南書のようになれば幸いである.私たちの考えが及んでいない疼痛発生機序があれば,自分で書き加えて,よりよいオリジナルの1冊にしてほしい.

 最後に,本書をまとめるにあたり,多大なご尽力をいただいた医学書院の金井真由子氏に,心から感謝申し上げる.また,ご執筆の先生方には,よりよいものにするための議論に,多くの時間を費やしていただいた.納得するまで話をやめない私に,いつも付き合ってくれていることに感謝している.そして,遅くに帰宅しても,健やかに育つ息子の寝顔を見ることで,翌日も頑張れている.長男 圭一郎と育児を一手に引き受けてくれている妻 美知,素晴らしい人生を与えてくれた母に感謝を捧げたい.

 2017年4月
 工藤 慎太郎

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序章 運動機能障害の評価戦略
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
   各ステップで求められる知識と技術
   トリガー組織判別テスト(DTTT)
   本書の使い方

第I章 上肢帯
 1.肩
  肩の構造と機能
  1 肩上方の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
  2 肩前上方の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:伸張ストレスが加わっている場合
   [step 2]どこが痛むのか?:肩甲下筋と腱板疎部の解剖学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:圧縮ストレスが加わっている場合
   [step 2]どこが痛むのか?:関節唇の解剖学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:摩擦ストレスが加わっている場合
   [step 2]どこが痛むのか?:上腕二頭筋長頭腱の解剖学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
  3 肩外側の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:伸張・摩擦ストレスが加わっている場合
   [step 2]どこが痛むのか?:三角筋・三角筋下滑液包の解剖学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:圧縮ストレスが加わっている場合
   [step 2]どこが痛むのか?:腋窩神経の解剖学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
   症例ノート(1)
  4 肩後方の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:伸張ストレスが加わっている場合
   [step 2]どこが痛むのか?:上腕三頭筋長頭・後方関節包の解剖学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:摩擦ストレスが加わっている場合
   [step 2]どこが痛むのか?:広背筋の解剖学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
 2.肘関節
  肘関節の構造と機能
  1 肘内側の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:伸張ストレスが加わっている場合
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
  2 肘外側の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
   症例ノート(2)
 3.手関節・手部
  手関節・手部の構造と機能
  1 手部のしびれ
   [step 1]どこがしびれるのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこで絞扼されるのか?:解剖学的評価
   [step 3]なぜ,しびれるのか?:運動学的評価
  2 手関節尺側部の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
   症例ノート(3)
  3 手関節橈側部の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価

第II章 体幹
 脊柱総論
  脊柱の構造と機能
 1.頸部
  頸部の構造と機能
  1 頸部の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
  2 頸部由来のしびれ
   [step 1]どこがしびれるのか?:発生部位の明確化
   [step 2]どこが絞扼されているのか?:解剖学的評価
   [step 3]なぜ,絞扼されるのか?:運動学的評価
 2.胸腰部
  胸腰部の構造と機能
  1 胸腰部の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
   症例ノート(4)
   症例ノート(5)

第III章 下肢帯
 1.股関節
  股関節の構造と機能
  1 股関節前面の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
  2 股関節外側の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
   症例ノート(6)
  3 股関節の運動学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
 2.膝関節
  膝関節の構造と機能
  1 膝内側の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
  2 膝外側の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
  3 膝前面の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
   症例ノート(7)
   症例ノート(8)
  4 膝関節の運動学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
 3.足関節・足部
  足関節・足部の構造と機能
  1 足関節後方の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
  2 足関節前方の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
  3 足底の痛み
   [step 1]どう動かすと痛むのか?:力学的ストレスの明確化
   [step 2]どこが痛むのか?:解剖学的評価
  4 足関節・足部の運動学的評価
   [step 3]なぜ,痛むのか?:運動学的評価
   症例ノート(9)
   症例ノート(10)

索引

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“臨床推論迷子”になっているセラピストへの道標
書評者: 谷口 愛美 (高岡病院リハビリテーション部・理学療法士)
 本書は,工藤慎太郎先生の『運動器疾患の「なぜ?」がわかる臨床解剖学』,『運動療法の「なぜ?」がわかる超音波解剖』に続くシリーズ第3弾目であり,運動機能障害に対する解剖・運動学的知識・評価方法・治療の思考過程がフローチャートにまとめられている。部位ごとの訴えに対応できるため,さまざまな疾患に使用できる一冊だといえる。若手セラピストに向けた書籍ということもあり,臨床7年目の理学療法士の視点から述べたいと思う。

 本書の帯にこのような文面がある。
 「『今日の理学療法はこれで終わりです。お大事になさってください』果たしてどんな効果があったのだろうか? よくなっているのか? それはなぜか? あとどれくらいで治るのだろうか? その見通しは?」

 この言葉を投げかけられて,自信を持って答えられるセラピストは,どのくらいいるのだろうか。
 若手セラピストはまず答えられないだろう。ベテランセラピストのみが答えられる。果たしてこれでよいのだろうか。患者はセラピストを選べず,どのセラピストが診ても同一の医療費が発生する。つまり,支払いが生じている以上,私たちには,「担当患者に行った治療に効果があったのか? よくなったのか? 悪くなったのか? それはなぜなのか?」を理解し,説明する責任がある。

 私が新人理学療法士の頃,担当患者の治療結果が出せないときは,解剖学書や疾患に関する書籍,文献などを調べた。しかし,まずどんな本を見て,何から調べたらよいのかがわからず,答えにたどり着けないことも多かった。なぜか。それは,自分の知りたい答えがさまざまな書籍・文献などに分散していたからだ。

 本書は,いま治療に悩んでいるセラピストに「どんな知識が必要で,何を考え,何を行えばよいのか」を教えてくれる。患者の訴える部位・症候に応じて,力学的ストレスや触診から痛みのもととなる組織の鑑別,痛みが生じる原因までをフローチャートに沿って導き,“臨床推論迷子”になっているセラピストが辿るべき道筋を明らかにしてくれる。さらに,複雑に考えがちな臨床推論を,本書に沿って繰り返すことで,段階を踏んだ思考が可能となり,さまざまな患者の訴えに対応できるようになる。

 私が新人や学生のころに本書を手にしていたら,患者にもっと質の高い理学療法を提供できたであろう。そして,理学療法をもっとシンプルに捉えることができたのではないだろうか。

 学生や若手セラピストはもちろんのこと,多くのセラピストに手に取ってもらいたい一冊である。
臨床の「なぜ?」を紐解く評価戦略が身につく一冊
書評者: 町田 志樹 (臨床福祉専門学校・理学療法学)
 本書は,工藤慎太郎先生(森ノ宮医療大)が手がける『なぜ?』シリーズの第3作である。同シリーズはこれまで『運動療法の「なぜ?」がわかる臨床解剖学』(医学書院,2012),『運動器疾患の「なぜ?」がわかる超音波解剖』(医学書院,2014),と医療の原点となる解剖学を中心に展開されており,いずれも“臨床に活かすための実践的な解剖学”をテーマとして構築された良著である。そして本作では,理学療法士であれば誰もが苦心する“評価戦略”が主題となっている。

 臨床における評価の重要性に対して,異論を唱える理学療法士はいないだろう。また,その修得に苦心した経験は卒前・卒後を問わず,誰もが有すると思う。その苦心の背景にはさまざまな要因が挙げられるが,解剖学・運動学の正しいエビデンスと検査測定結果とをつなぐことに難渋する場合が多い。本書は学生・現職者の誰もが抱える,そのニーズに応える一冊に仕上がっている。

 本書の特徴は,以下の2点に集約される。
 まず1点目は,本書の構成にある。本書は運動器の各部位ごとに章立てされており,さらに各章が「力学的ストレスの明確化」「解剖学的評価」「運動学的評価」の3ステップで構成されている。段階を踏んで一考察を行うことによって,評価戦略の過程が整理され,読者の理解をより深める構成となっている。

 そして2点目は,評価戦略を裏付ける膨大な量のエビデンスである。本書には随所に国内外の解剖学・運動学のエビデンスが組み込まれ,その記述の信頼性を一層高めている。これまで解剖学・運動学の数多くの研究に携わってきた工藤先生でなければ,ここまで信頼性の高い記述はできないと,個人的には思う。

 平日は臨床に臨み,週末には講習会へと足を運ぶ理学療法士の姿をよく目にする。自らの余暇と身銭を削り,日々の臨床のために自己研さんを積む姿には崇高さすら感じる。しかしその反面,近年では根拠の定かではない講習会も乱立しており,そのような講習会へ向かう理学療法士の姿を見ると,教育者として胸の痛くなる思いがする。

 やみくもに講習会に向かう前に,ぜひ本書を手に取ってほしい。本書には講習会数回分にも勝る,素晴らしい知見が随所に散りばめられている。特に若い先生方には,本書のような秀逸な著書から実践的な臨床力を学び取る力を身につけていただきたい。そのための最良の一冊になりうると,強く確信する。
「どう治すか?」の前に「何を治すか?」を明らかに
書評者: 林 典雄 (運動器機能解剖学研究所・所長)
 このたび,森ノ宮医療大の工藤慎太郎先生の編著による,『運動機能障害の「なぜ?」がわかる評価戦略』が上梓されました。まずは,書籍の編集ならびに執筆にかかわられた先生方の情熱と労力に敬意を表します。
 
 工藤先生ならびに執筆者の一人である森田竜治先生(おおすみ整形外科)は,私が岐阜市にある平成医療専門学院(現・平成医療短期大学)で教員をしていた頃の教え子です。学生時代の工藤先生と森田先生は,たぶん(笑)……優秀な学生だったと思うのですが,詳しい成績までは覚えていません。当時の教え子たちの顔を思い浮かべますと,よい意味での野心家で,現状に満足しない向上心と強い探求心を持った,原石のような学生が毎年いたような気がします。このような原石が臨床に出て,自己研さんし,さまざまな努力を積み上げて磨かれることで,自ら光を放つ「真のリーダー」になると信じています。そのリーダーとしての証が,書籍の執筆という作業です。工藤先生は,これらのプロセスを,先頭に立って実践している若き理学療法士であり,今後ますます活躍が期待される理学療法士の一人と言っても過言ではないと思います。

 本書のキーワードは,「動き」「解剖学」「運動学」です。この中で「解剖学」と「運動学」は,運動器理学療法を実践する上で必須の学問であり,解剖学と運動学の文章化を試みた本書は,ある意味「王道の書籍」と言えます。

 加えて,本書の重きが,「評価」に置かれているところも注目に値します。往々にして,「どう治すか?」が臨床の中で重要だと錯覚されがちですが,「どう治すか?」の前に,「何を治すか?」を明確にする必要があります。これこそが運動器障害の評価であり,治療の適応を決めるプロセスです。

 step1(動き)では「どう動かすと痛むのか」,step2(解剖学)では「どこが痛むのか」,step3(運動学)では「なぜ痛むのか」の一貫した3部構成で本書は構成されています。これも読者に配慮した粋な計らいであり,テンポよく読み進める助けとなっています。このようなエッセンスも,本書から読み取っていただきたいと思います。

 あまり褒めてばかりいると工藤先生たちのお尻がかゆくなるので,少しだけ私の意見を……。パッと読んで,初学者にはちょっと難しいかなと感じました。本書の読者対象は,臨床家に置かれているように思います。臨床を経験していない学生は,もっと先に学ぶべき基本事項を押さえた上で,本書を手に取るとよいでしょう。少し臨床を経験し,何かしらの壁にぶち当たった臨床家こそ,本書を手に取り,じっくりと自分の評価内容と対比してみてはどうでしょうか。そして,本書に記されていることにとらわれず,さらに多くの文献に触れ,自分なりに咀嚼し,最良の治療効果を患者に与えることが大切であり,それこそが理学療法の醍醐味です。

 本書を手にした多くの理学療法士が,患者の笑顔を見るために,努力を続けていただきたいと思います。
臨床的思考過程を効率良く伝え,成長させてくれる一冊
書評者: 鵜飼 建志 (中部学院大准教授・理学療法学)
 本書,『運動機能障害の「なぜ?」がわかる評価戦略』は,工藤慎太郎氏(森ノ宮医療大)が手がける《「なぜ?」がわかる》シリーズの第3弾である。

 運動器疾患における痛みや不調の原因は関節の運動機能障害であることが多く,正しく治療するためには正しい評価による原因の特定が不可欠である。運動器疾患の保存療法においては,早期に発症前のレベルまで改善することが十分期待できる。熟練したセラピストは,無意識に必要な知識・技術を選択し,患者を正しく評価・治療することで,患者を元のレベルやそれ以上に改善できる。しかしながら未熟なセラピストは,検査測定の方法論は知っていても,原因解明に至るまでの思考過程を理解していないため,正しい評価が難しい。これらの臨床的思考能力は,経験を積む中で自ら会得してもらいたいところであるが,それには多くの時間を要してしまう。本書は,そういった問題の改善が期待できる一冊である。

 最初に疾患名を挙げて,その解剖学的な解説や検査方法などを載せるような一般的なスタイルを,本書はとらない。まずは,「手部のしびれ」や「足関節後方の痛み」などの漠然とした症状からスタートする。運動器疾患に対する運動療法では,痛みやしびれなどの患者の主訴を聴くことから評価がスタートするために,その流れに沿っているのであろう。

 次に,臨床的思考過程を3つのステップで説明している。主訴の部位に対し,伸張・圧縮・摩擦の各ストレスが,どのようにかかっているかを確認することがステップ1である。そのストレスが,どの組織に損傷や炎症を引き起こすのかという解剖学的な要因をピックアップし,それぞれの要因に対する検査方法を解説しているのがステップ2である。その部位にストレスが集中する原因を選定し,それに応じた運動学的検査を紹介しているのがステップ3である。

 このように,原因を明確化していく過程を示しながら,病態や検査方法を紹介している。そのため,評価の手順がイメージしやすい上に,臨床上,必要な知識を全体的に網羅できる。また,フローチャートを用いることで,若いセラピストは順を追って評価を進めることができる。もし治療効果が得られない時には,フローチャートを見直し,別の原因の可能性を探ることも容易である。学生にもわかりやすいように,筋においては起始・停止・支配神経・作用を表でまとめてあり,解剖学や運動学の図が多く用いられている。普段の学習にはもちろん,実習においても役に立つであろう。

 本書は,発展途上にある経験の浅いセラピストや学生に,臨床的思考過程を効率良く伝え,成長を促してくれるだろう。
解剖学・運動学を基に,仮説検証を導く一冊
書評者: 森 英人 (河内総合病院 リハビリテーション部・技師長)
 『運動器疾患の「なぜ?」がわかる臨床解剖学』(医学書院,2012年)では,各病態を“解剖学を基に紐解くこと”を学んだ。

 『運動療法の「なぜ?」がわかる超音波解剖』(医学書院,2014年)では,“解剖学の奥深さと臨床への創造性”を学び,深部筋の動きをイメージしながら患者さんに向き合うようになった。

 そして,今回の『運動機能障害の「なぜ?」がわかる評価戦略』が手元に届くと,わくわくしながら誘導されるようにページをめくる自分に気付いた。

 まず,上肢帯・体幹・下肢帯の解剖・運動・構造・機能について,深く解説してある。また,部位ごとに,「どう動かすと痛むのか?」という力学的ストレス,「どこが痛むのか?」という解剖学的評価,「なぜ痛むのか?」という運動学的評価を基にして,仮説検証を導いている。これらの項目には病態例が記載されており,自然と患者さんを思い浮かべながら読むことができる。

(1)職員研修や実習など,現場での教育に携わる人に
 本書では,答えそのものではなく,「答えをどう論理的に導くか?」という仮説検証を学ぶことができる。臨床で出合う患者さんの病態は千差万別であるため,当院ではプロトコルよりも,「鑑別評価⇒仮説検証⇒アプローチ⇒再評価」のサイクルを重視する。これにより,さまざまな病態に最適なリハビリテーションを提供することをめざしている。よって,カンファレンスや職員研修,実習生への参考書として本書を活用している。

(2)解剖学や運動学が苦手な人に
 本書では,各部位の解剖学・運動学的特徴について学ぶことができる。例えば,「疼痛が発生する解剖学的要因」という項目がある。ここには,解剖学的役割や,周辺組織とのつながりから症状の発生までが記されている。また,各テストから導き出される所見の多くが,解剖学や運動学,触診を基に説明されている。本書を読み進めるうちに,それらを深く知ることがどれほど有益かを実感できる。

(3)目の前の患者さんに向き合う人に
 国家試験に合格し臨床に出たとき,患者さんを前に,多少なりとも無力感を感じることがあったと思う。上司や先輩に質問したくても,業務で慌ただしく,聞けないこともあるだろう。そんなときはぜひ本書を手に取ってほしい。まるで頼りがいのある先輩や上司のように,最適な方法を導いてくれる。
 そしてこの仮説検証を繰り返してほしい。日々繰り返すことで,触診や,所見を導く技術も少しずつ身についてくる。本書を携えて,一人ひとり異なる病態の患者さんに,真摯に向き合ってほしい。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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