眼形成手術
眼瞼から涙器まで

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眼科診療のエキスパートを目指すための好評シリーズの1冊。眼瞼・眼窩・涙器の形成手術を幅広く取り上げ、手技の実際を多数の写真・シェーマを用いて詳細に解説。手術適応、初診時の診察、術前検査、合併症対策、術後管理など、眼形成手術に関する情報を網羅した。患者説明や専門医への紹介に役立つ「一般眼科医へのアドバイス」を各項目に掲載。すべての眼科医が知っておきたい眼形成手術の最新知識をまとめた、待望の成書。
シリーズ 眼科臨床エキスパート
シリーズ編集 𠮷村 長久 / 後藤 浩 / 谷原 秀信
編集 高比良 雅之 / 後藤 浩
発行 2016年11月判型:B5頁:480
ISBN 978-4-260-02811-0
定価 19,800円 (本体18,000円+税)

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 このたび,「眼科臨床エキスパート」シリーズの一冊として『眼形成手術-眼瞼から涙器まで』をお届けする運びとなりました.多くの眼科の先生方にとっては,「眼形成手術」は少々とっつきにくい分野かもしれません.その理由の1つには,白内障手術などの通常の内眼手術では馴染みの少ない特殊な手術機器や手技を必要とすることが挙げられるでしょう.また,その結果に美容的な要素が大きくかかわるような症例では手術に臨む敷居が自ずと高まることでしょう.「眼形成手術」を専ら形成外科や脳外科,耳鼻科などの他科が行っている施設も少なくありません.しかし,本書が扱う多くの疾患において,最も重要な手術の目的は損なわれた視機能の改善とその維持にあり,その評価のうえでも,やはり眼科医がそれらの診療に携わることの意義を強調したいと思います.近年の全国規模の眼科学術集会に出席して感じる印象では,眼形成手術の分野の講演会場はいつも盛況でその関心は高まっているようであり,今後も益々この分野に携わる眼科医が増加することを期待します.
 本書の「各論」では,眼形成の分野で行われる術式を網羅すべく,それぞれの術式のエキスパートの先生方に詳細に解説していただきました.個々の手術手技の解説にあたっては図や写真が多く使われていますので,手術におけるイメージも描きやすいと思います.そこからは,それぞれの筆者のその疾患に対する「こだわり」も伝わってくるようであり,そういった手術の「こつ」は実際の手術に大いに役立つことでしょう.
 一方で,この眼科臨床エキスパートシリーズの特徴として,それぞれの疾患を総括・概観する目的で,「総説」と「総論」の章も設定されています.これから眼形成の診療,手術を始めようと思われる眼科の先生方には,是非これらの章にも目を通していただきたいと思います.これらと各論を含めた3つの章では当然ながら内容が重複する部分もあり,くどい印象をもたれる読者もおられるかも知れません.またその重複する部分では各々の筆者の手技や考え方が異なる点も見つかることでしょう.しかし,そこには筆者の独りよがりの意見に偏らない意図も含まれており,むしろ読者の先生方にはその相違点にこそ注目していただき,今後の診療に役立てていただければ幸いです.
 最後に,本書の分担執筆をいただきました眼科,形成外科の先生方,ならびに編集と制作にご尽力いただきました医学書院の方々に深謝いたします.

 2016年9月
 編集 高比良雅之,後藤 浩

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第1章 総説
 眼形成手術の診療概論
    I.眼形成手術の目標
    II.眼瞼・眼窩・涙道の解剖・機能と病態
    III.検査法と手術適応の評価
    IV.麻酔,手術器機や材料,手術の基本手技
    V.代表的な疾患における術式の種類とその選択
    VI.術後の経過観察

第2章 総論
 I 眼瞼
  A 対象となる疾患概説
  B 眼瞼の解剖
    I.眼瞼表面の解剖
    II.眼瞼の手術に必要な解剖
  C 初診時の外来診察-どう診てどう考えるか
    I.初診時の診察のポイント
    II.眼瞼下垂
    III.睫毛内反,睫毛乱生と睫毛重生,眼瞼内反
    IV.眼瞼外反
    V.内眼角贅皮
    VI.兎眼症
  D 診断・治療に必要な検査
    I.視診と触診
    II.下眼瞼弛緩の評価
    III.眼球の位置
    IV.眼位と眼球運動
    V.写真撮影
    VI.追加の検査
  E 眼瞼の形成手術概説
    I.眼瞼形成手術の基本手技
    II.眼瞼形成手術に必要な器具
    III.眼瞼疾患
 II 眼窩
  A 対象となる疾患概説
    I.眼窩腫瘍
    II.甲状腺眼症
    III.外傷
  B 眼窩の解剖
    I.眼窩骨
    II.眼窩の血管系
    III.眼窩の神経
    IV.眼窩隔膜と眼窩骨膜
    V.外眼筋と眼窩脂肪とconnective tissue septa
  C 初診時の外来診察-どう診てどう考えるか
    I.頻度
    II.年齢・性差
    III.問診
    IV.異常所見の解釈と鑑別疾患
  D 診断・治療に必要な検査
    I.眼科一般検査
    II.眼球運動検査
    III.瞳孔検査
    IV.画像検査
    V.バイオマーカー検査
  E 眼窩の形成手術概説
    I.眼窩の手術機器,手術材料
    II.眼窩手術の麻酔
    III.眼窩解剖と眼窩手術の手術合併症
    IV.眼窩手術における主なアプローチ法
    V.経皮アプローチにおけるデザイン・切開
    VI.主な眼窩手術術式のアプローチ法
 III 涙道
  A 対象となる疾患概説
    I.涙点閉鎖
    II.涙嚢皮膚瘻
    III.涙小管狭窄・閉塞
    IV.涙小管炎
    V.外傷性涙小管断裂
    VI.鼻涙管閉塞
    VII.先天鼻涙管閉塞
    VIII.先天涙嚢ヘルニア
  B 涙道の解剖
    I.涙点から内総涙点
    II.涙嚢
    III.鼻涙管
  C 初診時の外来診察-どう診てどう考えるか
    I.成人の流涙症
    II.小児の流涙症
  D 診断・治療に必要な検査
    I.問診
    II.視診
    III.細隙灯顕微鏡検査
    IV.触診
    V.色素消失試験
    VI.Schirmer試験
    VII.涙管通水検査
    VIII.涙道造影検査
    IX.涙道内視鏡検査
    X.鼻内視鏡検査
    XI.CT,MRI
    XII.涙液量測定検査
  E 涙道の形成手術概説
    I.術前評価と準備が重要
    II.手術機器と材料
    III.麻酔法の選択と局所麻酔の方法
    IV.鼻涙管閉塞に対する術式,アプローチ法およびその特徴
    V.涙小管閉塞および涙小管炎に対する術式およびその特徴
  Topics
   眼窩壁骨折に用いる留置物
   抗がん剤の涙小管閉塞
   睫毛内反,睫毛乱生に対する表層U字縫合

第3章 各論
 I 眼瞼の形成手術
  A 先天眼瞼下垂:吊り上げ術
  B 先天眼瞼下垂:挙筋短縮術
  C 退行性眼瞼下垂:挙筋群短縮術
  D 退行性眼瞼下垂:Müller Tuck法(西條原法)
  E 退行性眼瞼下垂:挙筋短縮術
  F 先天睫毛内反:通糸法
  G 先天睫毛内反:皮膚切開法
  H 退行性眼瞼内反:Jones法,柿崎法
  I 退行性眼瞼内反:Wheeler-Hisatomi法
  J 睫毛乱生,睫毛重生
  K 内眼角贅皮
  L 眼瞼外反症:KS法,LTS
  M 眼瞼後退
  N 眼瞼裂傷
  O 上眼瞼皮膚弛緩:瞼縁切開
  P 眼瞼皮膚弛緩:眉毛下皮膚切除
  Q 顔面神経麻痺(眉毛下垂と眼瞼外反)
  R 悪性腫瘍切除後の眼瞼再建
  S Baggy eyelid
  T 涙腺脱臼の整復
 II 眼窩の形成手術
  A 下壁骨折:再建術
  B 下壁骨折:バルーニング法
  C 内壁骨折:皮膚切開法
  D 顔面骨折(頬骨骨折)
  E 眼窩内容除去と再建
  F 義眼床形成術
  G 甲状腺眼症に対する眼窩減圧術
  H 眼窩膿瘍
  I デルモリポーマ
  J 眼窩脂肪ヘルニア
  K 視神経管骨折
  L リンパ管腫
  M 眼球摘出
 III 涙道の形成手術
  A 先天鼻涙管閉塞に対するプロービング
  B 涙嚢摘出
  C 涙小管閉塞および鼻涙管閉塞に対する涙管チューブ挿入術
  D 涙嚢鼻腔吻合術鼻外法
  E 涙嚢鼻腔吻合術鼻内法
  F 涙小管断裂に対する涙小管形成手術
  G 結膜涙嚢鼻腔吻合術(Jonesチューブ留置術)
  H 涙小管炎
  I 涙点切開術

和文索引
欧文索引

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一般眼科医にも広くお薦めしたい名著
書評者: 高橋 寛二 (関西医科大主任教授・眼科学)
 《眼科臨床エキスパート》シリーズの最新巻として,『眼形成手術――眼瞼から涙器まで』が上梓された。このシリーズの中でも最も厚みがある,力のこもった眼形成の手術書の誕生である。

 眼科のさまざまな領域にあって,眼形成の領域は,整容面や視機能の改善はもとより,場合によっては悪性腫瘍を取り扱うことから,生命予後にも直結することもある重要な一領域である。その反面,「好きこそものの上手なれ」の領域であるとも言える。眼形成に携わっておられる先生方は,手術が大好きで,しかもご自分の手術に強いポリシー,すなわち「こだわり」と「こつ」を持って日頃手術に臨まれている。本書の執筆陣は45人に及ぶが,一般形成外科を専門としておられる専門家(形成外科医)は7人のみで,他は眼科の中にあって形成手術をサブスペシャリティとして熱心に勉強された上で活躍しておられる先生ばかりである。このような眼形成の専門家は,日本眼形成再建外科学会をはじめ,日本眼窩疾患シンポジウム,日本涙道・涙液学会,日本眼腫瘍学会などのさまざまな学会や研究会において,常に熱く語り合いながら,手術の考え方,手術適応や手技について切磋琢磨しておられる先生方が多く,誠に頭の下がる思いである。

 まず本書の特徴として,一般眼科医にとっても非常に丁寧でわかりやすい実践的な編集がなされていることが挙げられる。編者の一人である金沢大学の高比良雅之先生が眼形成手術の基本的な考え方,解剖,手技を解説されている第1章「総説」に始まり,第2章の「総論」では,眼瞼,眼窩,涙道の眼形成三大領域について,疾患の概説と手術に必要な解剖,初診時の外来診察(どう診てどう考えるか),診断・治療に必要な検査,手術の概説が列記されている。第3章の各論のパートに入ると,筆者のポリシーを交えて各疾患に対する具体的な手術方法が写真やシェーマを多用して詳しく述べられている。第3章の各術式の記載の最後には,「一般眼科医へのアドバイス」というコラムがあり,一般眼科医が患者説明や眼形成専門医に患者を紹介する際に役立つひと言が記されている。

 本書を通読される一般眼科医や眼形成初心者の先生方には,まず「総説」で眼形成手術の精神と概念を学び,「総論」で手術が必要な疾患の正確な診断と治療方針がわかるようになっている。さらに,各論では実際にさまざまなレベルの術者に役立つ手術手順が,手に取るような細かい記載と視覚に訴える図譜で表わされている。もちろん本書は,実際に多数の眼形成手術を行っておられる先生方にとっても,新しい手術への挑戦,各術式における手術前の細かい手技の再確認,そして目前に迫った手術のイメージトレーニングを行うためにも大いに役立つ専門的かつ辞書的な手術書でもある。

 なお本書では,眼瞼,眼窩,涙器の領域別に総論と各論を合わせると,眼瞼では約80ページ,眼窩では約140ページ,そして涙器では約90ページが割かれている。同じ事項についての記載が複数の著者から行われている箇所もあるが,これは,いくつもの教科書を合わせた「おトク」な教科書であると考えればよい。本書は,日頃眼形成手術に意欲的に取り組んでおられる先生方ばかりでなく,眼形成に興味のある初心者や一般眼科医にも広くお薦めしたい名著である。
眼形成をサブスペシャリティにする上で必読の書
書評者: 三村 治 (兵庫医科大特任教授・神経眼科治療学)
 手術関係の学会に行くと今や「眼科医総白内障surgeon時代」または「眼科医総硝子体surgeon時代」が到来したかの印象がある。確かに手術器械や手術手技が劇的に進化し,これまでよりはるかに低侵襲で,短時間で確実に手術が終了する時代になっている。しかし,内眼手術はあくまで眼科手術の一部であり,いくら白内障手術や硝子体手術が短時間で終了できてもそれが全てではない。これからの眼科専門医は白内障手術や硝子体手術以外の分野で,もう一つのサブスペシャリティを持つ必要がある。その中で眼科医にとって大きな割合を占めるものは緑内障や眼表面疾患,メディカルレチナの分野であるが,患者側からのニーズの割にサブスペシャリティとして選ばれていないのが眼形成の分野である。高齢者になると加齢性眼瞼下垂や上眼瞼皮膚弛緩症は必発と言ってよいほど高率にみられる。また,涙器の異常や眼窩の異常は年齢を問わず出現してくる。しかもこれらの患者は眼科専門医なら当然診療ができるはずとの認識で,まず眼科医を受診する。これらの患者に対応するためにも,眼形成手術の対象,基本的な手術手技,専門医へ送る基準などを知っておくことは極めて重要である。

 本書は眼形成手術のそれぞれの分野のエキスパートが,豊富な臨床経験に基づいてさまざまな手術手技の解説を行うものであるが,まず総説と総論とで140ページを費やし「解剖」や「初診時にどう診てどう考えるか」「診断・治療に必要な検査」「形成手術概説」を「眼瞼」「眼窩」「涙道」それぞれについて解説している。もちろん対象患者が受診した際に,本書の「各論」を疾患ごとに読むのも一つの読み方であるが,ぜひ時間があるときには「総論」をお読みいただきたい。これを読むだけでも十分本書を購入された価値がある。

 このシリーズの中でも本書の最大の特徴は「各論」の項目の中で,特に患者数が多く,手術手技が多く施行されている眼瞼疾患や眼窩疾患では,複数の執筆者が自身で熟達している手技ごとに解説していることがある。特に一般眼科医が最も身近に感じる退行性眼瞼下垂では嬉しいことに3名のエキスパートがそれぞれ「挙筋群短縮術」「Müller Tuck法」「挙筋短縮術」を執筆しておられる。多くの眼科医は複数の手技があっても実際には得意な1つの手技しか使っていないことも多いはずであり,本書はその欠点をカバーしてくれる。さらに各項の最後にはこのシリーズの定番となった「一般眼科医へのアドバイス」で各執筆者からの診療の注意やコツが記載されている。

 繰り返しになるが,加齢性眼瞼下垂などは眼科医であれば必ず毎日のように診察しているはずである。適切な検査を行い,患者のQOLを改善するためにも眼形成の知識・手技を修得する必要がある。本書は眼形成をサブスペシャリティにする上でまさに必読の書である。
眼形成手術は特殊な手術ではない
書評者: 平野 耕治 (藤田保健衛生大坂文種報徳會病院教授・眼科)
 眼形成手術と言えば,特殊な手術機器や手技を要し,手術の結果に美容的な要素が絡んでくることもあって,私たち一般の眼科医にとっては敷居を感じさせる分野である。しかし,本書で採り上げられている「眼瞼」「眼窩」「涙道」は,整容の目的だけでなく視機能の改善と維持に密接に関わってくる部位である。本書では眼瞼下垂,眼瞼内反症,眼窩壁骨折,甲状腺眼症,鼻涙管閉塞など,眼科での外科的治療が期待される疾患について,わが国の第一人者の先生方が解説されている。

 本書は「総説」「総論」「各論」の3章で構成されており,第1章の総説では,編集者の一人である高比良先生が,眼形成手術の目標,眼瞼・眼窩・涙道の解剖と病態,検査法と手術適応,麻酔・手術器具・基本手技,そして代表的な疾患の治療について,18ページの短いスペースにまとめておられる。ここで概念をつかんだ後,第2章の総論では,眼瞼・眼窩・涙道の解剖・生理,診断と治療について,さらに詳細に学び,第3章の各論に入っていく。特に基本的な検査についてはこの第2章にまとめて記載されているが,眼瞼下垂の検査など,特別な機器を用いることもなく簡便な方法で有用な情報が得られるのを知れば何だか得をした気分になる。

 第3章の各論では,眼形成手術の代表的な術式について43項目にわたって記載されている。執筆された先生それぞれの執刀された手術写真とともに,シェーマで単純化されて手術の概要が示されており,理解がしやすい。各論の各項目はほぼ全て,「Ⅰ.疾患概念と臨床上の特徴」「Ⅱ.診断ならびに鑑別診断と手術適応」「Ⅲ.手術手技の実際」「Ⅳ.術中・術後の合併症とその対処法」「Ⅴ.術後管理と経過観察」の5つの見出しで構成され,各々の術式について読者として知りたいポイントが網羅されている。専門でない者には,「診断ならびに鑑別診断と手術適応」は最も気になるところである。「眼形成手術」をテーマにした手術書でありながら,病態の的確な把握と鑑別診断の上で,保存的治療で済む場合についても記載されているのが興味深い。また,各項目の最後にコラムのように「一般眼科医へのアドバイス」が記されていて,専門外の者にとっては各術式を理解するための導入部分となっている。ここでは専門家に任せるべきかどうかのラインも示されており,実はこれが本書のエッセンスなのかもしれない。

 本書を通して読んでみて,眼形成手術は決して特殊な手術ではないのがわかる。外科系診療科の学ぶべき基本手技を眼瞼・眼窩・涙道に応用し,地道に,経験によって積み上げられてきた手技なのである。眼科医としてまだ発展途上の先生方だけでなく,他の分野の専門家の先生,あるいは形成外科,耳鼻咽喉科,脳神経外科,美容外科など近い領域にある先生方にも本書をお薦めしたい。また,「一般眼科医へのアドバイス」のように,本書には所々に「おもてなし」がちりばめられているので,それを感じてみるのも楽しい。

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