COPD(慢性閉塞性肺疾患)のすべてがわかる読み物的な要素の詰まったテキスト。COPDは、日本でも500万人以上が罹患していると言われている呼吸器疾患のcommon disease。本書はCOPDに携わる医療従事者向けに、新進気鋭の呼吸器専門医の視点からできる限りわかりやすく、かつ楽しく読み進められるようにまとめられている。また、治療に重きが置かれ、COPD診療はこの1冊で完結できる。
序
「楽しく読めるCOPDの本って,ないですかね?」
私が本書を執筆する動機になったのは,とある学会で偶然再会したクリニックを経営している知り合いの医師からのそんな一言でした。私も呼吸器内科医を10年近くやっていますが,持っているCOPDの本は分厚い辞書みたいな本ばかり...
序
「楽しく読めるCOPDの本って,ないですかね?」
私が本書を執筆する動機になったのは,とある学会で偶然再会したクリニックを経営している知り合いの医師からのそんな一言でした。私も呼吸器内科医を10年近くやっていますが,持っているCOPDの本は分厚い辞書みたいな本ばかり。読み物として書かれた本は記憶にありませんでした。モグモグと弁当を食べながら,「じゃあ自分で書いてみようかな」と頭の中に思い描いたのが2015年の春のことでした。
それからというもの,車を運転しているときもCOPDのことを考えるくらい猛烈に勉強しました。子どもと遊んでいるときにもCOPDのことが頭から離れず,吸入薬の見本を持って帰っては子どもに遊ばせたり…。しまいには,夢にもCOPDが出てきました。いかん,このままではCOPD中毒になってしまう! そう思い始めた矢先,漸く本書の原稿を書き終えることができました。
皆さんご存じのとおり,COPDは呼吸器疾患で最も多いcommon diseaseです。「たばこによって起こった病気なんだから自業自得でしょ」なんて厳しいご意見もあるかもしれません。しかし,COPDには根本的な治療法はなく,不可逆性のとてもつらい病気です。目の前で「呼吸が苦しい」と言っている患者さんに対して,何かできないかと考え続けることに,私は呼吸器内科医としての生きがいを感じます。
代表的な慢性呼吸器疾患であるCOPDの書籍を出版することができ,呼吸器内科医として心から幸せに思います。日本全国のCOPD診療のボトムアップに,この書籍が少しでも貢献できますように。
本書の刊行にあたり,監修を引き受けてくださった当院院長の林清二先生に心より御礼申し上げます。また,出版に尽力いただいた医学書院の北條立人氏,在宅酸素療法全般の執筆にあたり,ご協力いただいた帝人在宅医療株式会社の乾昌靖氏に深く感謝申し上げます。そしてたくさんの質問に答えてくれた,私の外来に通院しているCOPD患者の皆さん,ありがとうございました。明日からの皆さんの外来に還元できるよう,日々精進します。毎晩私のための時間を作ってくれる妻の実佳子,長男の直人,次男の恵太にも感謝しています。
2016年3月
近畿中央胸部疾患センター 内科
倉原 優
第I部 COPD概論
わかりやすいCOPDの本に
1 COPDのいろは
2 COPDの歴史 ~フレッチャー医師の貢献~
3 COPDの原因とBrinkman Index
4 ちょっと難しい2つの不均衡説
5 COPDに必要な検査 ~三種の神器~
6 COPDで最低限必要なスパイロの知識 ~逃げちゃダメだ!~
7 COPDの診断基準,言えますか
8 COPDの病期分類・重症度分類,言えますか
9 知っておきたいCOPD+αの病態 ~ACOS,CPFE~
10 COPDの症状
11 COPDの身体所見
12 COPDの画像所見はムズカシイ
13 COPDの予後は?
第II部 COPDの治療
A COPDの安定期治療
1 ガイドライン上の治療手順を知っておこう
2 禁煙と禁煙補助薬
3 吸入薬まとめ ~まずはどんな薬剤があるのか知っておこう~
4 吸入治療 ~長時間作用性抗コリン薬(LAMA)~
5 吸入治療 ~長時間作用性β
2 刺激薬(LABA)~
6 吸入治療 ~長時間作用性抗コリン薬/長時間作用性β
2 刺激薬(LAMA/LABA)~
7 吸入治療 ~吸入ステロイド薬(ICS)~
8 吸入治療 ~吸入ステロイド薬/長時間作用性β
2 刺激薬(ICS/LABA)~
9 吸入治療 トリプル吸入療法 ~長時間作用性抗コリン薬/
長時間作用性β
2 刺激薬/吸入ステロイド薬(LAMA/LABA/ICS)~
10 結局,COPDにはどの吸入薬を使っているのか ~筆者の個人的見解~
11 非吸入治療 ~テオフィリン,アミノフィリン~
12 非吸入治療 ~長時間作用性β
2 刺激薬貼付剤~
13 非吸入治療 ~去痰薬~
14 非吸入治療 ~マクロライド系抗菌薬~
15 COPDの外科治療 ~肺容量減量術~
16 オピオイド
17 呼吸リハビリテーション
18 栄養療法
19 ワクチン
20 新しいCOPD治療薬 ~ロフルミラスト~
B 在宅酸素療法
1 在宅酸素療法
2 在宅酸素療法の実際
3 在宅酸素療法の注意点
4 在宅酸素療法中のCOPD患者さんは飛行機旅行ができない?
C COPD急性増悪の治療
1 COPD急性増悪って何?
2 具体的な初期対応 ~エビデンスは後回し?~
3 短時間作用性β
2 刺激薬(SABA),短時間作用性抗コリン薬(SAMA)
4 COPD急性増悪に対する抗菌薬
5 COPD急性増悪に対する全身性ステロイド
6 COPD急性増悪に対する酸素療法 ~SpO
2 はどのくらいを目安に?~
7 COPD急性増悪に対する非侵襲的陽圧換気療法
第III部 ちょっと知りたいCOPDの実臨床
1 COPD急性増悪と喘息発作の鑑別をどうする?
2 在宅酸素療法が必要だが,禁煙できない
3 不整脈のあるCOPD患者さんにβ
2 刺激薬を処方してもよいか
4 COPDにβ遮断薬を処方してもよいか
5 自分で診るか,専門医に診てもらうか
6 高齢者の吸入療法がうまくいかない
7 COPDにおいて吸気流速は重要か
8 巨大気腫性肺嚢胞をどう扱うか
9 終末期について患者さんと話し合っておく
10 COPDにハイフロー酸素療法は禁忌?
11 前立腺肥大症のあるCOPD患者さんに吸入抗コリン薬は処方してよい?
ステップアップCOPD
・たばこ? タバコ?
・COPDにも可逆性はある?
・調理で起こるCOPD
・COPDの病態生理(補足)
・%FEV1とFEV1%
・慢性気管支炎や肺気腫のすべてがCOPDではない
・CATスコアとmMRC
・太極拳がCOPDに効果的?
・電子たばこで禁煙できる?
・息止めは5秒? 10秒?
・たばこの起源
・MABA,それはLAMAとLABAのハーフ
・免疫抑制状態の患者さんに対するICSはリスキー?
・SMART療法ってなぁに?
・GOLDってなぁに?
・COPDに対する肺移植
・呼吸同調器とは
・COPD急性増悪は冬に多い
・COPD急性増悪では便秘に注意?
・アルコール摂取によってCOPD急性増悪は増えるか
・テオフィリンや吸入ステロイド薬も不整脈のリスク?
・アドヒアランスとコンプライアンスの違いって?
・ブラとブレブ
・日々の外来でCOPD患者さんに笑いを
・緑内障のある患者さんはどうか?
索引
薬品名
臨床試験名