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QOLを高める

認知症リハビリテーションハンドブック


編集:今村 徹/能登 真一

  • 判型 B5
  • 頁 200
  • 発行 2020年06月
  • 定価 4,180円 (本体3,800円+税10%)
  • ISBN978-4-260-04162-1
対象者の気持ちに寄り添うために、いまリハビリテーションができること。
認知症のリハビリテーションとはなにか。本書は、認知症という病気を医学ベースで整理したうえで、効果的なリハビリテーション評価および治療の方法を学ぶことができる。臨床において実用性の高い評価スケールを厳選して紹介。治療については手段や戦略、またその効果に至るまで具体的に言及。臨床現場での活用をイメージできる症例も収載。目の前の対象者に寄り添い、家族を含めたQOLを高めるためのエッセンスをまとめた1冊。
序 文


 世界一の高齢化が進むわが国では,今後認知症になる高齢者の益々の増加が予測されている.そのため,認知症に対する治療法の開発や社会の環境整備が喫緊の課題となっている.
 認知症は脳の病気によって起こる症状の総称である.その特徴は,原因疾患の多くが進行性で悪くなること,そしてそ...


 世界一の高齢化が進むわが国では,今後認知症になる高齢者の益々の増加が予測されている.そのため,認知症に対する治療法の開発や社会の環境整備が喫緊の課題となっている.
 認知症は脳の病気によって起こる症状の総称である.その特徴は,原因疾患の多くが進行性で悪くなること,そしてそれらに対する根治的な治療法が見つかっていないことに集約される.それでもわれわれ医療や介護の専門職は誰よりも先にできるだけよい治療を提供し,認知症の症状の進行を遅らせなければならない.それは目の前にいる認知症の対象者のQOLを少しでも高め,家族の気持ちに少しでも寄り添いたいと思うからである.
 それではわれわれは,どのようにして症状の進行を遅らせたらよいのか,そもそも症状をどのようにとらえたらよいのであろうか.
 本書はこのような素朴な疑問に答えたいという思いから,日常の臨床現場で認知症の対象者に向き合っている専門職とこれから認知症のリハビリテーションを学ぼうとする学生のみなさんに向けて,今必要とされている情報をできるだけコンパクトにまとめたものである.通読することで,認知症という病気の症状の基礎をもう一度整理し,症状をさまざまな角度と手段から評価し,より効果が得られる治療を学べるようになっている.すなわち,本書のタイトルにもなっているようにハンドブックとしての役割,つまり病気の診断から評価,治療に至る一連の過程を網羅し,実践例を参考にしながら臨床で用いることができるような機能を有している.決してマニュアルではなく,現時点における最良のリハビリテーションハンドブックであり,認知症の対象者を実際に担当し,試行錯誤を繰り返してきた研究と実践が集約されたものになっていることこそが本書の特徴といえる.
 とはいえ,よりよい治療を提供するためには,まずは目の前の対象者に向き合うことが大切である.対象者の声に耳を傾け,対象者のことを理解しようと努力することがすべての治療の前提としてあるべきであろう.その意味で,自らが認知症になったその道の権威が語っていた内容がとても参考になる.その権威によると,認知症のやっかいなところは自身で「心配になる気づきがない」ことだという.これは病識が得にくいことを表しているが,その一方で,「認知症になったとしても見える景色は変わらない」とも述べている.この言葉は認知症になる前の自分自身を失っていないことの証であろう.そうであるなら,そのことに気づくことのできるわれわれ専門職が対象者や家族の心配を取り除き,見えている景色が決して消えることのないように寄り添っていくしかない.
 このようなわれわれの願いに思いを馳せて,本書を手に取っていただけると幸いである.

 2020年4月
 今村 徹,能登真一
目 次
第1章 認知症の基礎知識
 1 定義と症状
  1 認知症とは
  2 認知症の診断
  3 症状の各論
 2 疾患の特徴
  1 アルツハイマー病
  2 レビー小体型認知症
  3 前頭側頭型認知症
  4 軽度認知障害
  5 脳血管性認知症
 3 治療の方法
  1 薬物療法
  2 非薬物療法
 4 国の認知症対策
  1 意思決定支援
  2 認知症初期集中支援チーム
  3 認知症カフェ
  4 認知症ケアパス

第2章 リハビリテーション評価
 1 評価の手順と考えかた
  1 評価の枠組み
  2 評価の手順
  3 評価の役割,位置づけ
 2 認知機能評価
  1 認知機能評価のポイント
  2 認知機能評価の注意点
 3 行動面,ADL・IADLの評価
  1 行動面,ADL・IADLの評価のポイント
  2 観察評価
  3 介護者など(informant)へのインタビュー評価
  4 行動・心理面(BPSD)の評価
  5 ADL・IADL評価
  6 QOL評価
 4 家族・介護者の問題の評価
  1 介護負担感

第3章 リハビリテーションアプローチ
 1 治療の枠組みとセラピストの役割
 2 非薬物療法とそのエビデンス
 3 心身機能
  1 認知リハビリテーション
  2 学習療法
  3 運動療法(筋力トレーニング,有酸素運動)
  4 言語リハビリテーション
 4 活動と参加
  1 アクティビティ
  2 日常生活活動(ADL),手段的日常生活活動(IADL)
  3 コミュニケーション支援
  4 回想法
  5 レクリエーション
  6 芸術・刺激療法
 5 環境因子
  1 家族介護者への指導および支援(エンパワメント)
  2 チームアプローチ
  3 ピアサポート(患者家族会)
  4 制度の利用(成年後見制度)

第4章 QOLが向上した症例紹介
 1 アルツハイマー病①
     趣味や性格を生かしたかかわりにより,徘徊や入浴拒否が軽減し,
     自分の居場所ができた症例
 2 アルツハイマー病②
     本人が希望する生活行為をデイサービスでも継続できるよう連携した症例
 3 アルツハイマー病③
     メモリーブックを使ったグループでの介入により,
     言語機能,対人交流,意欲に変化のみられた症例
 4 脳血管性認知症
     状態の変動と意欲低下にアプローチした症例
 5 レビー小体型認知症
     認知機能変動のdown状態時に,非常に強い妄想症状を呈していた症例
 6 前頭側頭型認知症
     常同行動を活用して活動量低下・意欲低下に介入した症例

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