「問い」を見つけ,解き明かす方法を解説した初学者に最適の書
書評者:島袋 香子(北里大教授・生涯発達看護学/看護キャリア開発・研究センター長)
臨床現場には多くの「問い」が存在する。本書は,その「問い」を見つけ出し,解き明かす方法をわかりやすく説明してくれる。
本書は,1991年に初版が刊行されて以来,多くの看護職の研究を導いてきた『看護研究の進め方 論文の書き方』の改訂版である。看護研究はこの20年間で著しく進歩しており,EBN...
「問い」を見つけ,解き明かす方法を解説した初学者に最適の書
書評者:島袋 香子(北里大教授・生涯発達看護学/看護キャリア開発・研究センター長)
臨床現場には多くの「問い」が存在する。本書は,その「問い」を見つけ出し,解き明かす方法をわかりやすく説明してくれる。
本書は,1991年に初版が刊行されて以来,多くの看護職の研究を導いてきた『看護研究の進め方 論文の書き方』の改訂版である。看護研究はこの20年間で著しく進歩しており,EBN(Evidence-Based Nursing)の普及とともに,臨床現場に根付いてきたと感じる。
しかし,研究に取り組む臨床現場の看護職の思いは異なるようだ。
当センターには,看護研究にチャレンジする多くの研修生が訪れる。研究に不慣れなため,その道程は容易ではない。それでも研究成果を発表するころには,研究の大切さを実感していく。しかし,中には途中でくじけそうになり,嫌気が差し,やらされ感に陥る人も出てくる。看護研究には多くのエネルギーが必要となるため,忙しい看護職にとって看護研究は,大切ではあるが,気の重い,面倒な課題ととらえられている。
本書はその思いを払拭してくれる。看護研究のプロセスをわかりやすく説明しており,説明に添って研究を進めるうちに,研究の楽しさが見えてくるに違いない。特に,研究を始める初学者への入門書として最適である。
看護研究を進めるには,研究の核となる研究者自身の思いが重要である。初学者にとっては,身近な疑問や課題から,自分が研究したい「問い」を探し出すこと自体,骨の折れる作業である。さらに,その「問い」を基に,設計図である研究計画書を作成することが大きな壁となって立ちはだかる。
本書は,この最初の壁を乗り越えることにも重点が置かれている。リサーチクエスチョン(研究上の問い)の立て方において,研究上の「問い」とはみなせない疑問や課題を先に提示し,効率よく「問い」を見つけ出す方法や絞り込む方法を説明している。また,面倒だと思われている研究計画書を書くときの要点をわかりやすく説明している。さらに,研究の実際となるデータ収集から論文作成までの要点を具体的に説明しており,初学者の研究を最後まで導いてくれる。
すでに看護研究に取り組んでいる先輩たちには,本書を活用し,リサーチクエスチョンに立ち戻ることをお薦めしたい。自分が取り組んでいる研究は,何のために行うのか,それは,自分たちの看護にどのように役立てることができるのか。そのために何を明らかにしたいと考えたのか。見失っていたかもしれない看護研究の目的を取り戻すことができる。
本書は,単なる研究方法を伝えるハウツウ本ではない。看護研究を行う意義について随所に説明がなされており,研究指導を行う者にとっても,指導しなければいけないこと,伝えなければいけないことを教えてくれる一冊である。
本書の第2章第2節には研究を始める際の心構えが書かれている。「『答えを見つけたい』と思う問いをあなたが持っていないのならば,本書を読んで研究について学ぶ必要もないことになります」。筆者たちの看護研究に対する思いが伝わってくる。この思いを読み解きながら,研究することの喜びを実感してもらいたい。