個人授業 心電図・不整脈
ホルター心電図でひもとく循環器診療

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「12誘導心電図でも不安なのに、複雑な不整脈はもうお手上げ!」と思っているあなたのために。ホルター心電図は手軽にオーダーでき、かつ有用な情報が得られるスグレモノです。さらに情報解釈が12誘導心電図や病棟モニター心電図にも応用できるので、不整脈学習の入門書としても最適です。ホルター心電図を題材に、不整脈・虚血性心疾患などの心電図を学びましょう。 『個人授業 心臓ペースメーカー―適応判断から手術・術後の管理まで』姉妹本。
監修 永井 良三
執筆 杉山 裕章
執筆協力 今井 靖 / 前田 恵理子
発行 2011年04月判型:B5頁:344
ISBN 978-4-260-01335-2
定価 4,400円 (本体4,000円+税)

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監修の序(永井良三)/(今井 靖)

監修の序
 高齢社会が進行するなかで,心臓病患者が急速に増加している.一定の年齢になれば,ほとんどの国民が心臓病を抱える時代となった.一方で,心臓病の診療やケアの改善も著しい.薬物療法だけでなく,さまざまな医療器械やデバイスも大きく進歩し,個々の患者に最適な医療を実践できるようになった.ホルター心電計も軽量・小型化されただけでなく,最近は12誘導の記録も可能になった.さらに自動解析器の性能も改善され,循環器診療への貢献はきわめて大きい.
 医学は科学によって裏づけられるが,医療の実践は経験に依存する.これはホルター心電図についても同様である.標準12誘導心電図とは異なるいくつもの注意点があり,専門家による報告書を鵜呑みにしてばかりいると,判読力は身につかない.当初は自分の眼で実記録を確認してトレーニングを積むべきである.このため実践に即したわかりやすいテキストが望まれていた.
 臨床医学のテキストは学術体系を俯瞰するだけでなく,現場の視点に立った記述が必要である.本書は多忙な業務の中でホルター心電図を勉強しようという若手医師向けに企画された.執筆と編集は東大病院循環器内科の心電図グループに属する若手医師が担当した.心電図の基本的な測定法から不整脈診断,さらに波形診断まで,初学者でも直ちに理解できるように,多くの図を用いて丁寧に執筆されている.ホルター心電図の入り口に立った医師や医学生,そしてあらゆる医療職の方々にお役に立つことを期待している.

 2011年3月
 東京大学大学院医学系研究科循環器内科教授 永井良三



 循環器疾患を捉えるにあたって心電図は必要不可欠な基本的検査であり日々多く実施されています.安価で簡単でありながらさまざまな情報をそこから得ることができます.心電図診断は「波形診断」と「調律診断」からなりますが,特に後者の調律診断は不整脈診断そのものであり,循環器を専門にされる方はもちろんのこと,その他のさまざまな分野においても必須と考えられます.この本ではホルター心電図を主なテーマとしてとり上げておりますが,ホルター心電図の2つの誘導から得られる情報の解釈の仕方は一般の12誘導心電図やモニター心電図を判読するのと基本的には同じですので,この本を通じてホルター心電図の読み方のみならず,心電図全般にわたる読み方・解釈について理解できるものと思います.またその心電図から想定される循環器疾患に実際どう取り組むべきか,診断・治療といった側面についてもわりやすく記載しており,心臓電気生理検査,カテーテルアブレーションといった専門的な話題を含め不整脈診療全般を概観できるようになっています.
 本書は2010年3月に出版された永井良三監・杉山裕章,今井靖著『個人授業 心臓ペースメーカー─適応判断から手術・術後の管理まで─』に続く入門書の第二弾として企画されたものです.今回,第一弾の執筆者でもある杉山裕章先生が責任執筆者として日々の臨床症例のデータ・臨床情報を丹念に蓄積し,出版に向けて編集・加筆したものです.日々の忙しい臨床の中で通り過ぎていく数多くの症例を教材として形として残すのは意外に難しく地道な努力が必要だと思いますが,それがここに結実したといえます.本書でも第一弾のペースメーカー入門書と同様,専門医と若手ドクターとの問答形式で進められ,なにげない会話のように特に構えることなく短時間で読み通せるような構成としています.また,さらに詳しく学びたい方のために「アドバンス」として専門に踏み込んだ話題も掲載されております.その中で虚血性心疾患のみならず器質的心疾患の診断に多用される心臓CTに関して,杉山先生の同期で放射線科の画像診断の専門家である前田恵理子先生にわかりやすく解説を加えていただきましたので,虚血性心疾患の心電図判読とともに理解を深めていただきたいと思います.少し専門的で診療から離れる話になりますが,不整脈の遺伝子に関する話題について私,今井が簡単な解説を加えさせていただきました.本書がこれから内科・循環器科で学ぶ若手医師,医学生の方,さらには心電図に関わる看護師,臨床検査技師,臨床工学技士など多くの医療関係者の方の入門書としてお役立ていただければ幸いに存じます.
 本書の発刊にあたり当科教授の永井良三先生にはご多忙の中,監修の労をおとりいただきました.ここに厚く御礼申し上げます.またこの本が執筆できましたのも循環器内科の永井良三先生,平田恭信先生をはじめとしてすべての先生の日々の診療におけるご指導ご支援の賜物であり,深く感謝申し上げます.特に不整脈グループの同僚である藤生克仁先生,小島敏弥先生,鈴木健樹先生には本書の直接の題材となる不整脈診療で日々お世話になっており,執筆内容につきましてもさまざまなアドバイスを頂き本当に有難うございました.また私共をこれまでもご指導くださり,今もさまざまな形でご支援をいただいております心臓血管研究所の山下武志先生,相良耕一先生,JR東京総合病院の安喰恒輔先生にこの場を借りまして厚く御礼申し上げます.またフクダ電子東京販売田中清一様には画像データ・生理検査データの取得・編集におきまして大変御世話になりました.最後になりましたが本書の企画・出版に際しましてご尽力を頂いた医学書院中根冬貴氏に感謝いたします.

 2011年2月 執筆陣を代表して
 東京大学大学院医学系研究科特任講師 今井 靖

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§1
 ○Introduction-“めざせ頂点”プロジェクト始動
  アドバンス1 秘伝! 心拍数計算法-“マス”と“目盛り”を最大限活用しよう
§2
 ○Information-判読前に“情報収集”からはじめよう
§3
 ○Time-記録時間あれこれ
§4
 ○Rate-数字からアタリをつけよう
  アドバンス2 心房細動での至適心拍数とは?-心拍数コントロール指標
§5
 ○Rhythm-基本調律から高らかに宣言しよう
  アドバンス3 目で見る洞調律-美しき不整脈画像の世界
§6
 ①Extrasystole(1)-期外収縮のキホン中のキ・ホ・ン
  アドバンス4 心房期外収縮の3パターン-“コビトのすべり台モデル”で理解する
 ②Extrasystole(2)-自動解析結果から効率良く情報を引き出す
 ③Extrasystole(3)-本当に退治すべき“敵”か?
  アドバンス5 心房細動のカテーテルアブレ-ション-“最後の難敵”は攻略可能?
§7
 ①Arrhythmia(1)-不整脈の世界へようこそ
 ②Arrhythmia(2)-不整脈の診断と治療の基本
 ③Arrhythmia(3)-拾い上げをキッチリと
 ④Arrhythmia(4)-洞機能不全:命には関係ないとは言うけれど
  アドバンス6 洞不全症候群は大病?-洞結節アブレーションに思う
 ⑤Arrhythmia(5)-房室ブロック:“つながり”でとらえる
 ⑥Arrhythmia(6)-徐脈性心房細動の診断と対処法
  アドバンス7 2度房室ブロック鑑別法-とっておきの方法を伝授!
 ⑦Arrhythmia(7)-Narrow QRS tachycardia識別法“ASAPメソッド”
  アドバンス8 発作性上室性頻拍あれこれ-“谷間の宝探し”よりも治療を優先しよう
§8
 ①Coronary Heart Disease(1)-ST変化を論じる前に
  アドバンス9 胸痛患者の初期評価-ホルター心電図だけで本当に大丈夫?
  アドバンス10 心臓の形態評価-何でも見える!? 心臓CT
 ②Coronary Heart Disease(2)-ST低下:いくつかの“割り切り”がタイセツ
  アドバンス11 STを測る(応用編)-既存の変化の扱い方
 ③Coronary Heart Disease(3)-ST上昇:頻度は少いけれど重要
  アドバンス12 ブルガダ症候群-働き盛りの男性を襲う“ぽっくり病”
  アドバンス13 不整脈の領域におけるゲノム解析の意義
§9
 ○Event/Symptom-自覚症状を考える
  アドバンス14 ザ・動悸学-ドキドキの謎に迫る!
§10
 ○Treatment/Overview/Propose-いよいよファイナル

索引

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さまざまな魅力の詰まったフトコロの深い名著
書評者: 村川 裕二 (帝京大附属溝口病院教授・第四内科)
 つまらない本の書評を書くときは,披露宴で「人並みでもない新郎」を秀才と褒めるのと同じ努力を求められる。本書のかわいい表紙を眺めて,そんなことを思った。ベテラン医師が新米医師とやりとりして何かを学ぶ,よくあるタイプの本だ。

 ところが,二人の「ボケと突っ込み」は肩の力が抜けて,引き込む魅力がある。「なるほど,なるほど」などと相づちを繰り返すところなど笑える。書評を書くだけならパラパラめくれば話は済むだろうに,うっかり最初から最後まで読んでしまった。ムム,お見それしました。以下にそのワケを述べる。

 その1:今どきはやらぬ「ホルター心電図」という言葉を書名に入れて読者を油断させている。「ジミで退屈な雰囲気」を装いながら,トリックがある。副題の“ホルター心電図でひもとく循環器診療”が答えなのだが,ホルター心電図にこだわらず,何でもかんでも行き当たりばったりで,料理しまくっている。「思いつくまま書きました」という雰囲気が楽しい。

 CARTOシステムで描いたカラフルな三次元マッピングは,ホルター心電図のテキストにはたぶん初参入。さらに,トライアルのグラフ,カテーテル・アブレーションのときの透視像,肺静脈の病理とくれば欲張りにもほどがある。ともあれ,心電図そのものを勉強してもしようがない。心電図は最初に開くドアだが,ドアの勉強ばかりではつまらない。それはトステムに任せるべきだ。心電図波形に閉じ込もらないところが魅力の1。

 その2:AVRTとAVNRTの判別について,心拍数から“アタリをつける”といった表現は面白い。ホルター心電図と運動負荷試験の“虚血性心疾患検出の感度,特異度の比較”も興味深い。基本的な臨床情報を小難しいこと抜きでスパッとまとめている。そろそろ終わりかと思えば,ゲノム解析の意義にまで手を広げている。遺伝子多型の話をワルファリンの効果の個体差と関連付けているところまで読んで,「いったい何の本?」と思ってしまった。どういう情報が面白いか,ネタの選び方が魅力の2。

 その3:自分の頭でメッセージを考えている。自分の頭で考えることをやめて,ひたすら文献で武装した本が多い。ワクワクしないし,人間くさくなくて,寂しい。本書は誰も参考にすることのない文献を300個並べるなどというやぼなことはしていない。自分で考えて,自分でしゃべっている。ホルター心電図のレポートをどう書くか,どこまで書くか,初学者が引っかかるさまつなことまで,親切に教えてくれる。著者はしつこくも親切な性格なのだろうか。面倒見がよくて,後輩に教えるのが嫌いではないのだろう。かくして,懇切,親切が魅力の3。

 まとめ:天衣無縫に好きなことを書きまくったら,フトコロの深い本が出来上がった。外見と語り口はやさしくしてあるが,見た目より読者を選ぶ。他のホルター心電図の本が色あせて見える名著。
ホルター心電図を学ぶ教科書として適した一冊
書評者: 山下 武志 (心臓血管研究所長・付属病院長)
 数多くいる循環器専門医といえども,その中でホルター心電図が好きな,あるいは得意な医師は少ないはずだ。このように書く自分自身がそうだったのだから,このことには確信が持てる。若いころ,心電図や心内電位はよくても,ホルター心電図だけはどうにも避けたかった。ましてや報告書を書くことは苦痛以外の何物でもなかったことをよく覚えている。その後,良き指導者を得て,数年後には東京大学附属病院中央検査部で院内すべてのホルター心電図の報告書を書いていたのだから自分自身が驚いてしまう。ホルター心電図を読むということ,これには良い指導者に出会ってOJTで学ぶことが一番だ。

 とはいっても,指導者に恵まれないときにどうしよう。誰もが教科書を当たると思う。しかし,ホルター心電図の教科書はとても少ないのだ。アマゾンで調べてみると現在購入可能なホルター心電図の教科書はたったの4冊しかない(しかも,そのうち1冊は筆者の師匠が編集されている。世間は狭い!)。心電図に関する教科書が数えきれないぐらいあることとは極めて対照的だ。

 このような中,ホルター心電図に関する教科書のわが国5冊目となるのが本書である。著者は新進気鋭の若手,杉山裕章医師で,『個人授業 心臓ペースメーカー―適応判断から手術・術後の管理まで―』に続く入門書第二弾として書かれている。第一弾と同じように,先生と生徒の会話という形に工夫された記述であり,一気に通読できた。

 ホルター心電図を前にして,どのような順序であの大量の心電図を読むのか,その際にはどのような点に注意するのか,そしてどのような落とし穴があるか,おそらく著者自身の頭の中の読解順序で目次が構成されている。最終的には,ホルター心電図のレポート作成を目標としているのでレベルの高い教科書といえる。しかし,そのレベルの高い部分についてはアドバンスとして別項目でまとめられているので,初学者にはこの項目を飛ばすことができるようにも工夫されている。

 このシリーズの特徴は会話方式で心理的抵抗感を下げながら,レベルの高いところに挑戦するということにありそうである。その意味で,循環器内科専門医をめざす医師,そして生理機能検査室で働く技師に最も適している教科書だと思う。良い指導者に出会ってOJTでホルター心電図を学ぶ環境が提供されるだろう。ホルター心電図があまり好きでない(と書いたら怒られそうだが)筆者にとっては,もうちょっと薄い本であってほしかった(笑)。

 ホルター心電図に困ったとき,まずは書店でホルター心電図の教科書を探してみよう。数が少ないので,あなたに合った本はすぐに見つかるはずである。本書は現在そのような本のトップにならんとすることを予想している。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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