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イラストレイテッド外科手術 第3版
膜の解剖からみた術式のポイント

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外科を志す研修医の必読書・定本となった手術アトラスの全面改訂。膜の解剖から剥離層の理解まで合理的で安全・正確な手術手順とテクニックを提示して、多くの読者から支持を獲得。オリジナルの新イラストはより説得性に富み、知りたいことを的確に示し、プロセスの精緻なシミュレーションとして、すべての臨床外科医に成功する手術への道筋を示す。食道癌手術とラパ胆を加え、さらに内容充実。
篠原 尚 / 水野 惠文 / 牧野 尚彦
発行 2010年04月判型:A4頁:500
ISBN 978-4-260-01023-8
定価 11,000円 (本体10,000円+税)
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  • 序文
  • 目次
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第3版の序

 16年前に発表した初版以来,本書は医学書として異例のロングセラーを続けていると聞きます。その第2版の序文の中で私どもの共通の師である牧野尚彦先生が,「再び彼(篠原君)が臨床外科に復帰し,多くのスケッチやメモを書き貯めたのちのことになるだろう」と予告した第3版が完成しました。この間に進歩した手術手技と新しい知見を基に図版をすべて描き直し,また旧版にはなかった食道癌手術や腹腔鏡下胆嚢摘出術を加えたことによって,本書の利用価値は一層高まったと思われます。
 類書にない本書の特徴は,「膜の解剖からみた術式」を術者の視点から描いた“実体験からの図化”にありますが,今回の改訂ではその趣旨を踏襲しつつ,これまでの腹膜(peritoneum)からさらに下層の筋膜(fascia)レベルにまで踏み込んだ,より詳細な解剖を図説しています。これは拡大視効果を生かした腹腔鏡手術が普及し,筋膜を意識した精度の高い層々分離が行われるようになったことへの対応でもあります。
 ただ,そうは言っても,膜の層構造は複雑な重なりやねじれ,癒合からなり,その表面から透けて見える血管や臓器まで描き入れながら簡潔,明快に伝えるのは至難の業です。本書では各論に先立ち,胃(1,2章),直腸(8章),鼠径管(19章)の3領域において,筋膜解剖に力点を置いたいくつかの模式図が提示されています。腹膜や筋膜,結合組織などが,共通した太さの線と網掛けで巧妙に描き分けられていて,読者自身が再構築しやすいように工夫されています。これらの模式図は各術式の工程の途中でタイミングよく登場し,ポイントとなる操作の解説を補完する役目を果たします。これまでもやもやとした気持ちで手術をしていた皆さんは,霧がすっと晴れていくような感覚を味わいながら読み進められるのではないでしょうか。なかでも1章「胃をめぐる解剖」は,胃周りの複雑な構造が胎内で次第に完成していく過程を紙上で再現した,著者入魂の力作です。外科医の視点から見た,斬新で分かりやすい発生学が展開されていますので,是非,自分が胎児に戻ったつもりになって体感してみてください。
 本書のイラストは,術者の息遣いや手術室の緊張感さえも伝わってきそうな臨場感あふれるものばかりですが,その演出に一役買っているのは今にも動き出しそうな手や手術器械の絵です。昨今,腹腔鏡手術の比重が高まる中で,第3版も開腹手術中心の構成としたのは,開腹術野の方が解剖を説明しやすいという理由以外に,そういった“絵の味わい”を大事にしたいという意図もあってのことです。もちろんアプローチが違っても解剖が変わるわけはなく,むしろ2次元画面を見ながら行う腹腔鏡手術だからこそ,本書の立体的なイラストを用いたイメージ・シミュレーションが役立つに違いありません。今後,外科学がどんなに進化しようとも,本書は手術の上達に貪欲な新進外科医の皆さんにとって,いつまでも絶好の伴侶であり続けると確信しています。

 2010年3月
 水野惠文

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1章 胃をめぐる解剖 その1
2章 胃をめぐる解剖 その2
3章 幽門側胃切除術
4章 胃全摘術
5章 食道癌根治術
6章 結腸右半切除術
7章 虫垂切除術
8章 直腸をめぐる解剖
9章 S状結腸切除術
10章 直腸低位前方切除術
11章 腹会陰式直腸切断術
12章 直腸脱根治術:Altemeier法
13章 痔核根治術
14章 肝右葉切除術
15章 肝外側区域切除術
16章 腹腔鏡下胆嚢摘出術
17章 開腹による胆嚢摘出術
18章 膵頭十二指腸切除術
19章 鼠径管をめぐる解剖
20章 鼠径ヘルニア根治術:メッシュ・プラグ法

 オーベンのポイントMEMO
  「胃切除術」
  「虫垂切除術」
  「S状結腸切除術」
  「腹会陰式直腸切断術」
  「肝右葉切除術」
  「肝外側区域切除術」
  「開腹による胆嚢摘出術」
  「膵頭十二指腸切除術」
  「鼠径ヘルニア根治術」
  「オーベンから最後に一言」

 1つ星外科医のこぼれ話
  (1)洞窟探検
  (2)どこかで読んだ話
  (3)ヒヤリ・ハットがきっかけでした。
  (4)『Surgery, is beautiful !』
  (5)のび太の腹腔鏡下胆嚢摘出術
  (6)敗北じゃありません!
  (7)個人メドレーで鍛えてます。
  (8)負けない戦術

 COFFEE BREAK
  『ぶるざ おめんたーりす 再び…』
  『マーフィーの法則』
  『剥離手技』
  『腹壁縫合あれこれ』
  『筋膜の連続性』
  『インオペ』
  『指先の眼』

  主な参考文献

 あとがき
 索引

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さらに精度を上げた巧みなイラストで,間膜の考えから複雑な外科解剖を解きほぐす
書評者: 笹子 三津留 (兵庫医大主任教授・上部消化管外科学)
 手術を勉強中の外科医にはぜひお勧めしたい1冊です。私も手に入れて良かったと心より思っています。理由は以下の通りです。

 各時代に解剖にうるさい外科医はいましたが,その多くは癌の専門家で特定の臓器に関する造詣が深い人たちでした。その先人たちから私も多くを学びましたが,本書は中小規模の病院で,すべての分野の一般消化器外科患者の手術に携わらねばならない外科医にとって,必要と思われる術式がほぼ網羅されています。これだけの内容,そして数百の素晴らしい図をほとんど一人で手がけた書物は他に類を見ません。

 さて,内容を具体的に少し解説しますと,多くの消化器外科医がそうであったように,今でも胃癌の根治手術をマスターすることは上腹部の手術のみならず,小骨盤内の手術は別として腹部臓器の大半の手術に通じる解剖学的な内容の多くが学べるものです。本書も,胃癌手術に関する記載が全体の約1/4を占めています。

 本書の骨格は膜の解剖です。ヒトの臓器を最もスムーズに取り除く方法は,形作られてきたプロセスを元に戻していくことであり,言い換えれば発生時に癒合した膜をはがしていくことです。本書では手術を実際行っているときのイメージに合わせて発生学をわかりやすく説いています。そして一貫して流れている腸間膜に代表される間膜という考え方が,複雑そうな解剖をわかりやすくしてくれます。直腸癌手術における解説は今までにないもので,直腸の手術を久しくやらない私にとっても大変興味深いものでした。

 実際の手術場面を彷彿とさせる巧みな図がすべて篠原先生の描き下ろしで,前版より精度も上がり,よりわかりやすくなっています。このこなれた絵は正確な解剖の知識なしでは描き得ません。手術はまねから始まりますが,絵をまねて描いてみることも手術が上手になる方法の一つかもしれません。ぜひ試してみてください。

 この手術書を通読する方もいれば,手元に置いて近々行う手術のためにその都度該当する章を読む読者もいるでしょう。できればまず通読して,そして明日手術というときにおさらいをするのが良いでしょう。通読となると少々疲れますが,そういう状況も想定してか,ウイットに富んだ各章の前書きに誘われて,つい次の章へと突入してしまいます。また,所々に登場する篠原先生が教えを受けた牧野先生や研修医のショートコメントはエッセイ風で疲れた頭を休めてくれ,ほっと一息つかせてくれます。

 私自身数多くの手術を手がけてきた今でも,解剖に疑問を感じるときがあります。本書はそんな長年の疑問を解決できるヒントを与えてくれました。その内容は残念ながら今版には具体的に明記されていませんが,次の版では間違いなく明快に記載されるものと期待しています。いつまでたっても学びが多いのが手術です。購入をお勧めします。
驚愕の描画で外科解剖と確実な手技を説いた消化器外科医に贈る希代の名著
書評者: 北川 雄光 (慶大教授・外科学)
 私が,この『イラストレイテッド外科手術 第3版』を手にしたのは,著者である篠原 尚先生が,私が執刀する胸腔鏡下食道癌根治術を見学に来てくださったちょうど一週間後の日本外科学会総会(第110回;2010年4月)の会期中であった。第3版で新たに加えられた食道癌根治術を読み進めていくうちに私は顔面蒼白となった。これほどまでに外科解剖を理解し,手術手技の細部に至るまで習熟している著者に対して,何という「釈迦に説法」のごときことをしてしまったことか。専門家ぶって蘊蓄を傾ける私に,優しい笑顔で「勉強になりました」とおっしゃった著者のお人柄が胸にしみた。

 さて,食道癌根治術を安全かつ確実に行うためには,大血管や気道系,神経系が複雑に交錯する縦隔解剖の理解が必須である。時として術野では見えない部分の解剖を頭の中に描きながら手術を進めなければならない。直接臓器を触知できない胸腔鏡下手術や,切除可能性が危ぶまれる化学放射線療法後のサルベージ手術の場合などは局所解剖の理解不足が重篤な臓器損傷に直結する。立体的な解剖をどう理解させるかは,食道癌根治術経験の少ない若手を指導する際には最も難しいところである。

 本書では,正常解剖を適切な角度から巧みに紹介した上で,必要な牽引,術野展開を加えた際の位置関係の変化を順次提示している。この手法が複雑な解剖を極めてわかりやすくしている大きな要因である。また,いつもながら最小限の描線で立体感,臨場感のあるイラストに仕上げる技術はまさに圧巻である。写実的なデッサンではなく明瞭なしかも一定のルールに基づいた線や点,色調の濃淡で立体解剖を巧みに描出する技術は驚愕に値する。

 また,膜の解剖,層の解剖は生体を扱う外科医のみが到達しうる究極の臨床解剖である。膜と層の正確な理解が,出血の少ない確実で安全な手術を可能にする。本書冒頭の胃をめぐる膜の解剖は,手術における基本戦略,応用力を養うために必須の知識でありながら,これを正確に理解習得することは容易でない。本書では,発生学的知識を交えながら明瞭に簡潔化,模式化した図を用いてこれをひもといている。

 本書は,第一線の外科医が一例一例を大切に,最も確実な手技を再現するために積み重ねた知識とイメージの集大成であり,記載された一挙手一投足から使用する手術器具に至るまでをそのまま再現することで,手術を完遂することができるたぐいまれな名著である。消化器外科をめざす研修医に贈りたい手術書としては,最適の一冊といえよう。今後さまざまな機器やシステムの変化によって外科手術がさらなる進歩を遂げ,それを取り入れた著者がさらなる洞察と経験を積むことで本書は版を重ねるごとに果てしなく進化していくことは間違いない。今から第4版に何が加わるのか,その登場が待ち遠しい。
洗練を極めたイラストと的確な解説による比類なき外科手術教科書
書評者: 坂井 義治 (京大大学院教授・消化管外科学)
 篠原尚先生・他著による『イラストレイテッド外科手術』第3版を手にした。第1版,第2版ともに購入したものの残念ながら既に私の手元にはない。研修医に貸したまま戻って来ないのである。彼らがボロボロになるまで毎日この本で手術の予習・復習をしている姿を見るにつけ,“自分で買えよ”とは言えず,そのままになってしまった。年代を越えてこれだけ愛読されている外科手術書が他にあるだろうか?

 あらためて第3版をめくる。時代の趨勢で器械吻合のイラストが増えているものの,胃癌手術の際の十二指腸切離・吻合や脾臓脱転操作のイラストを見ると,私自身も県尼(兵庫県立尼崎病院の略称)で指導を受けた牧野尚彦先生の手術操作が蘇る。それほどに著者篠原先生の感性がイラストに凝集,注入され,写真とは異なる“実際”を描写しているともいえる。

 デジタル技術の進歩と内視鏡手術の普及により,昨今の学会のビデオセッションは立ち見が出るほどの盛況である。しかし,ふと考えてしまう。これほど頻繁にビデオセッションが開催されているが果たしてどれほど参加者の技量向上に役立っているのだろうか? アニメを見るのと同様に他人のビデオを見ている時は,能動的な思考をする時間が許されない。目の前を美しい映像が流れていき,あたかも自分もできるような気持ちになるが,その場面の詳細を後で思い出すことは極めて困難である。もちろん記録されたDVDを繰り返し見ることで詳細なイメージを記憶にとどめることは可能ではあるが…。

 それに対して,鮮明な静止画は見る者に想像し思考する時間を与えてくれる。さらに恩師牧野先生が本書【初版の序】に記載されているように,“強調と省略とがほどよくミックスされて洗練されていった”イラストは臨場感とともに最も重要なポイントを明確に教示してくれる。そのイラストが的確な言葉による解説付きであるなら手技のエッセンスの把握はなおいっそう容易となる。的確な言葉を使うことは難しい。しかし,本書第1章の【プロローグ】の“筋膜fascia”の解説や“「AとBの間に筋膜は何枚あるか?」という議論は時として無意味である”との説明を読むと,著者が読者に具体的なイメージを形成してもらうために,どれほど慎重に“的確な言葉”を選択したかおもんぱかることができる。

 著者に天性の画才があることは周囲の誰もが認めている。しかし,それ以上に彼が費やした手術記録記載の時間,その反復推敲の時間と努力は想像を絶するものであろう。その努力にただただ敬服するのみである。外科研修医ばかりでなく,私も含めた“経験ある”外科医も今一度,外科手術教科書として比類なき本書を手に取り,外科手術教育を再考したいと思う。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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