東大医学部生が受けているダイバーシティ&インクルージョンの授業
「建前」から「納得」へ【11人の講義動画付き】
東大医学部でなぜ必修授業に?
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D&Iを考えることは、人間の「脆弱性」を前提とした社会のあり方に思いをめぐらすことだ。過度な能力主義や優生思想が広がりを見せる現代において、医療者や支援者が、自分や患者の命を守るために立ち返るべき原点を示してくれる。意外性に満ちた論理展開が読者の知的好奇心を刺激。「~すべき」D&Iから、「わくわくする」D&Iへと導く。11人の講義動画付きで、医療倫理・哲学のすぐれた教育教材としても活用できる。
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- D&Iの授業のねらい
- 目次
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D&Iの授業のねらい
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目次
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第1講 「なぜ医療者・支援者にD&Iが必要なのか」がわかる講義動画
講義1 依存、依存症から見るDEI(Diversity,Equity & Inclusion)
補講 「優生思想」と「生産性重視」に我々はどう対抗できるか
第2講 「D&Iを実装するための基礎」がわかる講義動画
講義2 共同創造(コ・プロダクション)が必要な理由──精神障害に関するスティグマを事例として
講義3 共同創造(コ・プロダクション)の実践的説明
講義4 共同創造(コ・プロダクション)とピアサポート
講義5 学校精神保健の観点から学校でのDEIを考える
講義6 トラウマインフォームドケア
第3講 「当事者のナラティブ」を通してD&Iを考える講義動画
講義7 自閉症者の立場からジェンダーを考える
講義8 ダルク女性ハウス(依存症の自助グループ)と回復のナラティブ
講義9 長崎ダルク(依存症の自助グループ)と回復のナラティブ
講義10 女性にとっての自助グループとは
講義11 ディスカッション──「誰が社会的に排除されているか」「専門家との付き合い方について」
第4講 「D&Iをすでに実装している現場」がわかる講義動画
講義12 Nothing about Us Without Us──共同創造、当事者研究、ユーザーリサーチャー
講義13 科学の多様性について──障害のある研究者の参加
[提案:DEIを体験的に学ぶためのグループワーク]
「発言しづらさ」を、場の側からとらえ直すワーク
おわりに──東大医学部でなぜD&Iを必修授業に?
書評
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この大事な「居心地の悪さ」
書評者:寺岡 征太郎(帝京大教授・精神看護学)
ダイバーシティやインクルージョンという言葉自体は,ずいぶん身近なものになったように感じる。一方で,その意味を深く理解し,適切に使えている感覚は持てずにいた。そんな中で本書に出会った。
私が担当する精神看護学の授業では,精神障害のある当事者の方々をゲストスピーカーとしてお招きし,学生との対話や交流の機会をつくってきた。リアクションペーパーからは,多くの学生が自分の中の偏見を再認識したり,当事者からのメッセージに励まされたりする様子が読み取れた。協力してくださる当事者の方々からも,語ることで自身のリカバリーを感じたという感想を聞く。この授業の展開には意味があると思ってきたし,今もそれを否定するつもりはない。ところが本書を読み進めるうちに,この授業のことが何度も頭に浮かび,思い出すたびに少し居心地が悪くなった。
山口創生氏の講義(本書には二次元コードを読み取って東大医学部必修授業の動画を視聴できる仕掛けがある)では,当事者との接触体験がスティグマ低減に有効である一方,それだけで解決するわけではないと語られる。効果的な方法を探す中で,そのヒントは共同創造にあるかもしれないと山口氏はいう。この話は,これまでの授業を肯定してくれるようでもあり,その先を問われているようにも感じた。「共同創造」とは実際にはどういうことなのだろう。教員と当事者,専門職と当事者の間にある非対称性を自覚しながら,「共に創る」ことをどう展開していけるのだろうか。
障害者運動で掲げられてきた「Nothing About Us Without Us(私たちのことを,私たち抜きに決めないで)」を冠した熊谷晋一郎氏の講義に触れたとき,「当事者について教える」「当事者から学ぶ」「当事者と共に教育をつくる」……似ているようでまったく異なる3つのかかわり方が頭に浮かんだ。自分が今どの立場にいるのか,そもそも「立場」を考えること自体どうなのか,と繰り返し考えさせられた。
当事者のナラティブは,私自身のこれまでの看護実践も呼び戻した。あのとき自分がよい支援だと思ってやっていたことの中に,専門職としての価値観を「本人のため」という言葉で押しつけていた部分はなかったか。当時の自分なりに考えて動いていたことを,ほんの少し後ろめたさを覚えながら読み進めたのも事実である。
本書から受けた刺激を,今後の授業につなげていきたいと思う。本書には二次元コードで見られる講義動画だけでなく,「やってみようグループワーク」というコーナーもある。正解を教える教材としてではなく,学生が自分の中の思い込みや引っかかりに気づき,それを誰かと言葉にしてみるきっかけになる授業づくりのヒントとして魅力的である。
本書を読んで残ったのは,D&Iについて詳しく理解できてよかったという安心感ではない。自分事として考える必要性を知りながらも,どこかで自分自身をその問いの外側に置いていたのかもしれない。そう気付かされた居心地の悪さを,これからも手放さずにいたいと思う。




