ゆっくり歩く
新ケア論、母の遅さで。
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6歳で英語の話せない母と姉とで1年半のカリフォルニア留学、12歳でケンタッキーに単身渡米、高校2年にイギリス留学、そしてケンブリッジ大学に合格──。“直立人”の道をまっすぐ歩んできた娘は、病を得た母と一緒にゆっくり歩かざるを得なくなった。そのときどんな光景が目に入り、どんな声が聞こえてきたか。ウルフ、ギリガンなど文学を通じて縦横無尽にケアを語ってきた著者が、母に導かれて到達した新境地!
| シリーズ | シリーズ ケアをひらく |
|---|---|
| 著 | 小川 公代 |
| 発行 | 2025年10月判型:A5頁:296 |
| ISBN | 978-4-260-06283-1 |
| 定価 | 2,200円 (本体2,000円+税) |
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本書の紹介
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母が難病にかかった。
生きる気力が萎えていく母を前に、娘の頭をある小説の断片がかすめる。
「そういえば、ボルヘスっていう作家がね……」。
以来娘は、母の魂が渇望する物語を探しながら、言葉に救いを求めつづけてきた──。
本書は生と死のはざまで揺れる母や祖母について思いをめぐらせたエッセイであり、娘と母の「言葉のやりとり」を大きく取り上げたドキュメントです。
ときに抱腹絶倒、ときにしみじみと物語の感想を語り合う和歌山弁のおしゃべりからは、言葉を介してつながろうとする人たちの姿が浮かび上がってきます。
【本文より】
「お母さん、これに乗るで。これ乗れやんかったら、遅刻かもしれへんからな」
「よっしゃ。きみちゃんについていくで〜」
母はそれまで以上に杖をせわしなく動かし始めた。その瞬間、二人の息がぴったり合い、スピードがぐんぐん上がる。
一人は二人分の荷物を持ってあたふたしており、もう一人は老婆で杖をついて四苦八苦して歩いている。
それでも二人は競歩の選手のように真剣な表情を浮かべて電車に向かっていくのだから、側目にはたいそうおかしかったに違いない。
目次
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第一章 歩調を合わせる
1 なんでこんなことになるん?
2 母と歩くわたし
3 「その気持ち分かるよ」なんて言えない
4 ルース・ベイダー・ギンズバーグの筋トレ
5 「ケア・フォー」と「ケア・アバウト」
6 ボルヘスのおかげ
第二章 ケアされる
1 「聞く」ことに失敗する
2 もうひとつの声
3 ぶっとんだ「父親」たち
4 編み物とフルーツケーキ
5 茶色い弁当がケア
第三章 とつぜん落ちる
1 エスカレーター事件
2 母の喪の仕事
3 命をいつくしむ
4 迷惑をかけること
5 母との宝探し
6 ケアの力を信じて
第四章 実地で学ぶ
1 民主主義の国へ
2 「傷」への回路
3 非暴力の教育
4 二元論を拒絶する物語
第五章 移動する
1 ゆっくりでいいですよ
2 親密圏だから「愛」が困難
3 コンプライアンスの難しさ
4 ブロンテ姉妹の交通手段
5 『不思議の国のアリス』の伸び縮みする体
6 同じ水鏡を「分有」する
第六章 ボールで遊ぶ
1 冬の日に公園で
2 「ボール遊び」をもとめて
3 弱さアピールをせずとも
4 やっちまったよぉ
5 『変身』とスリー・ビルボード的逸走
6 アメリカでのパワフル母ちゃん
7 ケアはめぐる
第七章 ツタがからまる
1 占い師と“ツタ”力
2 母の“ツタ”力
3 コモンズ体験
4 オープンダイアローグを体験する
5 回復のためのプロセス
第八章 ゆっくり歩く
1 稀代のストーリーテラー
2 ちちんぷいぷい
3 常識をうたがう
4 おばあちゃん、イギリスについてくってよ
注
あとがき





