臨床医のためのライフハック
「診療・研究・教育」がガラッと変わる時間術
「時間がない!」を味方につける戦略的仕事術
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臨床医の仕事は日常の診療だけにとどまらず、教育、研究、学会発表、事務作業、情報発信、さらには所属組織の運営などそのタスクは尽きることがない。そんな忙しい医師の限られた時間をいかに前向きに捉え、有効活用すればよいのか。本書は、忙しいなかでも目標を達成し、アウトプットを出し続けている著者の「ライフハック(仕事術)」を余すことなく紹介する。小さな習慣の積み重ねで、自身のキャリアを大きく変えるための1冊。
| 著 | 中島 啓 |
|---|---|
| 発行 | 2025年12月判型:A5頁:200 |
| ISBN | 978-4-260-06243-5 |
| 定価 | 3,850円 (本体3,500円+税) |
更新情報
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- 目次
- 書評
序文
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はじめに
診療も,研究も,教育も,すべて諦めない
目の前の患者さんの診療に一生懸命取り組む.その一方で,山積みの診断書,次々と更新される医学知識のキャッチアップ,若手への指導,そして数々の会議…….臨床医の毎日は,尽きることのないタスクとの戦いです.立場によっては,臨床研究や基礎研究という,さらなる責務も加わります.「時間とは有限な資源である」という現実を前に,教育や研究など,本当にやりたかったことを諦めかけている方々もいらっしゃるのではないでしょうか.本書は「臨床医としてやるべきこと,やりたいこと」のすべてを実現するための,私の20年間の試行錯誤から生まれたライフハック術・時間術を凝縮した1冊です.
医師となり約20年,私は臨床の現場一筋で走り続けてきました.亀田総合病院の呼吸器内科で後期研修医として本格的な臨床医としてのキャリアをスタートし,専門医,医長,部長代理,そして現在は主任部長・内科チェアマンとして,それぞれの立場で異なる壁に突き当たってきました.「どうすれば,この膨大な業務をこなしながら,質の高い診療を維持できるのか」「どうすれば,自分自身の成長の時間を確保できるのか」.本書で提示する1つひとつのライフハックは,かつての私が実際に悩み,もがき,そして乗り越えてきた具体的な課題に基づいています.雑誌『総合診療』(医学書院)において,そのエッセンスを連載させていただいた際にも,幸い多くのご好評をいただきましたが,本書ではさらに体系化し,新たな知見を加えています.普遍的な時間管理術から,生成AI活用法といった最新のテクニックまで,机上の空論ではない,明日からの臨床ですぐに実践できるものばかりだと自負しています.
本書は,未来の医療を担う医学生や研修医の先生方から,組織を牽引する専門医・管理職の先生方まで,すべてのステージの医療従事者に読んでいただけるよう執筆しました.特に,臨床研究や組織マネジメントの項目は,専門医以上の先生方により役立つ内容かもしれません.しかし,医学生や研修医の先生方も,いずれはリーダーとしてチームを率いる日が必ず来ます.ぜひ,未来の自分を想像しながらページをめくってみてください.どの立場であっても,必ずや新たな「気づき」が得られるはずです.
本書が,熱意ある臨床医の皆さまの手に渡り,日々の業務の質を高め,自身のキャリアをさらに充実させる一助となることを心から願っています.そして,自らの「やりたいこと」をすべて実現し,より輝かしい医師人生を歩まれることを,同じ臨床医として心より応援しています.
2025年10月
亀田総合病院呼吸器内科主任部長 兼 内科チェアマン 中島 啓
目次
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Chapter1 ビジョンとキャリア形成の基本
01 “ビジョン”と“時間管理”の原則
02 キャリア形成
Chapter2 自己管理
03 時間管理
04 習慣形成
05 ワーク・ライフ・バランス
06 メンタルヘルスマネジメント
Chapter3 学習方法
07 勉強法
08 英会話学習
Chapter4 業務効率化
09 事務作業
Chapter5 教育
10 教育
11 講演・レクチャー
12 メンターとメンティー
Chapter6 ウェブ発信
13 ウェブ発信①
14 ウェブ発信②
Chapter7 学術
15 臨床研究①
16 臨床研究②
17 学術活動
Chapter8 執筆
18 執筆業務
Chapter9 問題解決
19 問題解決①
20 問題解決②
Chapter10 組織
21 会議
22 組織マネジメント①
23 組織マネジメント②
24 医師リクルート
25 医師の働き方改革
Chapter11 臨床医2.0
26 生成AIを仕事に活用する方法①
27 生成AIを仕事に活用する方法②
28 新時代のキャリアデザイン
あとがき
索引
書評
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限られた時間の再設計が医師のキャリアを加速させる
書評者:和足 孝之(京大病院総合臨床教育・研修センター准教授)
一言で言えば,本書は臨床医人生における極上のチートコードである。著者である中島啓先生とは,かつて呼吸器疾患の企画で対談する機会があった。その際に強く印象に残ったのは,誠実さを基盤に,知性と実行力が無理なく同居する佇まいである。360°死角がない,さらには優秀であることを誇示しない優秀さ――その正体は何なのかと,当時は言語化できずにいたが,医師経験を積み重ねた中,本書を読むことによってようやく腑に落ちた。この本は,指導医としてのHidden Curriculumを,わかりやすい言葉と構造に落とし込んでいるのである。
本書を読み終えたとき,胸の奥に説明しがたい感情のざわめきが生じた。強い共感,驚き,そして強い羨望が混じり合った感覚といったらよいだろうか。自分がこれまで臨床・研究・教育の現場で,半ば経験則としてひっそり抱えてきた思考法や時間の使い方,キャリアの設計思想が,本書では驚くほど率直に,しかも惜しみなく提示されている。まるで,自分だけが長い間秘密にしていた地図を,誰かが高精細なカラー印刷で出版してしまったような,そんな感覚に近い。そのように「やられた!」と,感じる指導医も少なくないはずだ。
人間として,そして医師として,多忙を極める生活の中で醸し出す「優秀さ」とは何か。この問いに,普遍的な定義は存在しない。例えば,学生時代に勉学よりサッカーに没頭していた医学生が,20年後に圧倒的な存在感を放つ臨床医になっていることは,臨床現場ではコモンだ。同様に,「優れた臨床医」の定義もまた,単一ではないだろう。しかし本書は,その不確実性を前提とした上で,多くの優れた指導医に共通する最大公約数――思考,習慣,時間の使い方,態度――を,極めて実践的な形で抽出している。確かに,苦労を経ないことには絶対に獲得できない深みが医師には存在する。しかし本書の随所からは,「自分が遠回りして得た知恵を,次の世代にはできるだけショートカットで手渡したい」という思いを感じる。つまるところ後進への愛なのである。もし小生が若い頃にこの一冊に出会っていたなら,自分が越えてきた壁のいくつかは,ずいぶん薄く小さいものに見えただろう。
本書が提供しているのは,よくある小手先の時間管理術ではない。小生が思うに,1万時間の試行錯誤を経て,ようやく身につく「型」を,優れたコーチがYouTubeの動画教材のように明快に示してくれる――そのような構造を持った一冊になっている。忙しい臨床医にとっての時間は常に不足しているが,本書はその限られた時間を「削るべきもの」ではなく,「再設計すべき資源」としてとらえ直す視点とノウハウを与えてくれる。
若手医師が読むべき一冊であることは間違いない。しかし同時に,部門を率いる立場にあるベテラン医師こそ,リスキリングという観点から本書を手に取る価値がある。静かで,誠実に,しかし確実に医師人生の速度を変えてしまう。そういう本である。
著者の豊富な経験値による究極のナラティブレビュー
書評者:山本 健人(京大病院消化管外科)
この書評を書くにあたり,最初に断っておきたいことがある。
タイトルにある「ライフハック」という,一見ありきたりなワーディングに決して騙されてはいけない。よく見るライフハック本とは一線を画し,仕事の時短術や生活の知恵,裏技のような単なるテクニック集とは程遠い高みにある。本書の正体は,著者の圧倒的なインプットに裏付けられた,究極のナラティブレビューである。書店の話題書コーナーでよく見かけるビジネス書や自己啓発本の「医師向けバージョン」だと侮ってはいけない。
「ナラティブレビュー」と書いたのは,それが医師にとって,一つの発信の形態を表すなじみ深い言葉だと思うからである。というのも本書では,キャリア論や学習法,発信,教育,組織論と多岐にわたるテーマにおいて,全39冊もの書籍が紹介され,それらを出典として引用しながら,医師に必要な知識が体系的に整理されている。著者はおそらくこの数十倍の書籍を読んでいるはずで,中でも選りすぐりの作品を選び,大事なエッセンスを抽出して展開しているのだろう。この本を読むことそのものが,各分野のオピニオンリーダーの脳内を「時短」的にのぞき見て,血肉にできるという点で紛れもない「ハック」である。
むろん本書は単なるレビューにとどまらず,39歳の若さでリーダーとなった著者の豊富な経験で絶妙に味付けされているために,唯一無二の作品となっている。誇張抜きに,「この類の」(とあえて書く)作品の中では,群を抜いて後輩に勧めたい書籍である。
また私が感じた本書の優れた点は,著者の豊かな人柄,多様性を重んじる寛大さが随所に表れていることである。一般的に「ハック」をうたうビジネス書は,ともすると著者の強い思想や揺るぎない信念が読者に「圧」となって迫るものが多い。この種の本は得てして相性があり,「刺さる人には刺さる」一方,読者を選ぶ作品が多いと感じる。またその「圧」は一時的には読者の心を動かすのだが,その実,特段の行動変容につながらないケースも少なくない。
ところが本書は,「人によって合う合わないがあると思います」として読者に寄り添い,持論から導いた「ハック」を決して読者に押し付けない姿勢を貫いている。読者は,著者から与えられる豊富な情報から自分に合うものを選び取り,自身の人生を自分仕様に豊かにすればよい。そういう著者の優しさが心地よいのである。
なお本書は,医療界ではなじみの薄い用語を多種多様に紹介してくれる。バッチ処理,MECE,VUCA,グロースマインドセット。「知らない」と思った人は,必ず本書を読んだほうがいい。「言われてみればそうだ」と思えるような,日頃出合う困難やその解決策,うまく言語化しづらい感情や事象にも実は「名前がついている」と知り,そのタームを使えるだけでも思考は断然はかどるからである。私自身,「名付け」は問題解決の効率性を高めるツールだと日々感じているが,それが本書を読めばよく実感できると思う。
特に若手の医師は,キャリアの早いうちに本書を読み,人生設計に活かしてほしい。その上で引用元の書籍を読み,さらに関心を広げるのがお勧めである。




