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誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた[Web動画付]

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皮疹をみたときに皮膚科医は何を考えているのか――その思考過程を惜しみなく披露する。本書では、皮疹の表面性状に注目し、病変の存在部位から皮疹が生じた原因を推測して鑑別診断を考える。診断のプロセスはフローチャートでわかりやすく示した。各章末には症例問題を掲載し、実際の症例で診断のプロセスをおさらいできる構成となっている。付録として症例問題を解説したWeb動画を収載!

松田 光弘
発行 2022年01月判型:A5頁:264
ISBN 978-4-260-04679-4
定価 4,400円 (本体4,000円+税)

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  • 目次
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 書店の棚を眺めると皮膚科初学者向けの教科書は数多く出版されています.ですが図鑑のように疾患の写真が並べられているものが多く,根底にある診断の考え方を説いたものは意外と見当たりません.本書は「自分が研修医のときに欲しかった教科書」をコンセプトに,以下の読者を想定して執筆しました.

・皮膚科診断は症例写真を丸暗記するものだという誤解をもっている人
・皮膚科の勉強をしてみたが細かい用語の説明ばかりで挫折した人
・皮膚科医の診断プロセス(診断推論)が知りたい人

 本書では多くの人に皮疹のみかたを理解してもらうため,私が普段何を考えて,どうやって診断しているのかをできるだけ丁寧にフローチャートを用いて解説しています.また見た目だけではわからないことについて詳しく記載しました.「見た目で一発診断」を謳った教科書は多いですが,臨床現場では見た目では判断できないことも多いからです.扱っている症例数は多くはなく,一部では専門的な内容まで踏み込んでいますが,そのぶん広く応用が利く内容になっていると思います.
 本書を執筆するきっかけになったのは10年ほど前に,野口善令先生と福原俊一先生の著書『誰も教えてくれなかった診断学』(医学書院)と出会ったことです.鑑別診断の羅列ではなく,診断の考え方(診断推論)が解説されており,私の診断学のイメージが根本から覆されました.しかし皮膚科の分野では診断の考え方を解説した教科書はほとんどなく,いつか自分で執筆してみたいとずっと考えていました.
 今回幸いにも執筆の機会をいただき,いままでにない切り口の本になったと自負しています.しかしたった一人の臨床医が自分の経験に基づいて書いたものなので,内容に不正確な部分があったり,わかりやすさを目指すあまり幾分強引さがあったりするかもしれません.もし修正すべきところがありましたら,ぜひ著者のブログ(皮膚科の豆知識ブログhttps://www.derma-derma.net/)よりご指摘いただければ幸いです.皆様のご意見をもとにさらによいコンテンツを作成できればと思っています.

 2021年11月
 松田 光弘

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章1章 初心者のための皮膚科診断学――表面の性状から考える紅斑のみかた
 1 皮膚科診断が難しい理由―――まず紅斑を考えよう
 2 皮疹の表面の性状に注目しよう

章2章 表面がザラザラの紅斑(表皮の病変)
 1 表皮の病変の診断フローチャート
 2 湿疹とは何なのか?
 3 真菌症を鑑別しよう
 4 湿疹と似ている悪性腫瘍
 5 湿疹が治らないときに考えるべきこと
 6 その他の炎症性皮膚疾患
 7 2章のまとめ

章3章 表面がツルツルの紅斑(真皮の病変)
 1 真皮の病変の診断フローチャート
 2 蕁麻疹を鑑別しよう
 3 中毒疹の鑑別をはじめる前に
 4 薬疹と中毒疹
 5 中毒疹の診断フローチャート
 6 その他の中毒疹
 7 3章のまとめ

章4章 その他の紅斑(皮下組織の病変)と紫斑
 1 皮下組織の病変と紫斑
 2 皮下組織の病変の診断フローチャート
 3 皮下組織の病変①(細菌感染症)
 4 皮下組織の病変②(循環障害)
 5 皮下組織の病変③(自己免疫疾患)
 6 紫斑
 7 4章のまとめ

章5章 皮膚科の診断推論Advance
 1 マクロに捉える診断学
 2 診断推論step1 仮説の形成
 3 皮膚科での仮説形成プロセス
 4 診断推論step2 仮説の検証
 5 皮膚科診断力を上げる方法

COLUMN
 表面がザラザラ=鱗屑とは何なのか?
 アドヒアランスと外用指導の工夫
 ウイルス感染症の診断は難しい
 見逃されやすい中毒疹(梅毒と水疱性類天疱瘡)
 皮膚生検の限界
 速読法と精読法と診断学

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良い本。買ったほうがいい。
書評者:國松 淳和(医療法人社団永生会南多摩病院総合内科・膠原病内科部長)

 さて書評である。
 この本の書評は難しい。なぜならとても良い本だからだ。
 良い本。買ったほうがいい。本来これで終了である。

 この本は,ちゃんとした医学書である。
 その点が非常に重要である。
 各所で言ってしまっているかもしれないが,教科書というのはある事柄の「全体」を標準的(時に画一的)に扱うものであるが,ガイドラインなどと違い,具体的なことよりも抽象的なことを教えてくれるものだと私は認識している。
 ここ数年以上の「医学書」のトレンド・趨勢は,とにかく「図表が多く,わかりやすく,まとまっていて,すぐ役立つもの」である。そうでないと売れないからだ。ガイドラインというものも非常に汎用されている。まあ,なんというかわかりやすいからだろう。これらはつまり,標準的な「全体」をカバーし,かつ抽象ではなく具体を扱っている。
 この本は,「皮疹の診かた」というある程度の「全体」が扱われている。そしてちゃんとした教科書であり,解説内容も説きかたも堅実で,意味としては抽象を(著者もほぼ無意識に)扱っている本である。この本のやや特異な点は,「全体」と言いつつ,初期研修医などが学ぶべきこと全体からしたら「皮疹の診かた」というやや「個別」を扱っているという点だ。

 ここまでで私が何を言おうとしているかきっとわからないだろうが,私個人は自分で書いていて腑に落ちた。
 この本は「読ま」なければならない。参照して,重要なところだけ拾い読みする本ではない。これを省略すると,この本の真骨頂である,「皮膚科診療という“個別”から,真の意味で応用の効く抽象的な理解を得る」ことはできない。

 ……ああ,それってごく普通のことではないか。教科書から学ぶということにおいて,そんなことは普通。ただ,これをことさら言わねばならないことが問題だと思う。医者は本当に医書を読まない。読まずによく臨床ができるなと思う。どんどん出る新しい論文をフォローするだけで臨床スキルをアップデートしていける人は全体のごくわずか(オリンピアン:全人口比くらい?)だろう。

 少し脱線してしまったが,本書の解説に戻ろう。
 非専門医にとっての「皮膚科の本」といえば,各皮膚疾患が皮膚画像とともに解説がされてあって,読む側は「絵あわせ」的に参照して,今みている患者の皮膚を思い出してこれかな~のような関わり・使いかたになるであろう。
 この本は違う。そういう解説の仕方は一切していない。ロジックを重視。臨床的な「頻度」がしっかり意識されてある。読者を,明瞭に「初期研修医」に合わせてある。

 良い本。買ったほうがいい。これで終了である。


今までの教科書ではわからなかったことがわかる
書評者:野口 善令(豊田地域医療センター総合診療科・教育顧問)

 私は総合診療医ですが,体系的な皮膚科の教育を受けたことのない世代でもあり皮疹の診断は苦手です。
 皮疹の診断ができるといいと思いつつも,勉強してもなかなかすっきりわかるようになりませんでした。
 わからないから苦手意識が募りますが,そうかといって何でも皮膚科医に診てもらうわけにもいかない,という困ったジレンマに陥り,すっきりしないがとりあえず外用薬を出しておこうという診療になってしまいがちです。

 この理由の一つは,本書にもありますが,皮疹の現れ方は多種多彩なので典型的な皮疹をマスターしてそれを応用して診断するという戦略が取りにくいことにあります。つまり,教科書にある写真との「絵合わせ」では典型的な皮疹以外は診断ができるようにはなりません。
 さらに,皮膚科疾患の病名は内科に比べて桁違いに多いのも要因です。診断するためには,分類の基準となる疾患名の命名が必要ですが,これが皮膚科領域では錯綜しています。
 病名付けの軸となる視点が,原因物質,病因,部位,年齢,臨床像(見え方)など多数あるため,疾患名の数が膨大になります。同じモノに違う病名が付くことがあり,非専門医にとって混乱の原因になります。
 これも本書に書かれていますが,皮膚科医でもわからないものはわからないので(こう言い切ってもらえると安心します)とりあえず病名を付けるためにこうした命名体系になっているのだろうと思われます。
 これらの理由で非専門医には,システム1を形成して直感的に診断していくには無理があるのです。

 さて,そんな苦手な皮疹の診断ですが,この本で勉強すると頭の中に地図ができて大まかな方向性が見えてくるでしょう。本書が提案するのは,判別しやすい皮疹表面の性状に着目して組織学的病変と対比しながら区別していくという比較的シンプルな診断推論の戦略ですが,これをマスターすれば今までの教科書を読んでもわからなかったことがわかり,なぜわからなかったかも少し理解できるようになると思います。
 皮膚科領域の診断推論の地図を与えてくれる本書は,皮疹を診なければならない非専門医,プライマリケア医にこそお薦めの教科書です。

 最後になりますが,本書では,拙著『誰も教えてくれなかった診断学――患者の言葉から診断仮説をどう作るか』(医学書院,2008)に多大なる賛同をいただきました。この本で診断の思考プロセスを紹介して以降,「診断推論」の概念が臨床医に浸透し,いろいろな分野で発展,応用されているのは非常にうれしいことです。「診断推論」がさらに病に苦しむ人達の助けとなることを願って筆を置きます。

 

 

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