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基礎から学ぶ楽しい学会発表・論文執筆 第2版

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若手医療関係者や医療系学生に向けて、学会発表や論文執筆のコツを具体的に解説。学会選び、抄録・スライド・ポスターの作成、口演とポスター発表の違い、投稿雑誌選び、投稿規定の重要さ、編集委員会とのやりとり、やってはいけない「べからず集」など、実践的な情報が満載。「基礎から学ぶ」シリーズ第2作。隠れファンの多い脚注も一読の価値あり。新常態(ニューノーマル)となったオンライン学会に関する記載も拡充。

中村 好一
発行 2021年06月判型:A5頁:240
ISBN 978-4-260-04651-0
定価 3,080円 (本体2,800円+税)

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第2版 序

 昨年(2020年)に改訂した『基礎から学ぶ楽しい疫学 第4版』(通称:「黄色い本」,医学書院)の「序」では,疫学の基本的な部分はさほど大きく変わってはいないが,少しずつ変化しており,「体力のあるうちに改訂」と書いた.その後,医学書院の担当から,「本書はどうしますか」という照会があった.こちらは刊行後の7年の間に状況が様変わりして,さらに2020年からの新型コロナウイルス感染症大流行がこの変化に追い打ちをかけた.学会への演題申し込みや論文投稿(その後のやりとりも含めて)がインターネット経由になっただけでなく,学会自体もウェブ開催が進んでいる.「黄色い本(疫学)」の改訂作業で体力を使い果たした爺さんは絶版も考えた.
 「よし,改訂版を出そう」と決心した理由は,自分でもよくわからない.前述のような状況の中で,「黄色い本(疫学)」よりも改訂作業が大変であることはわかっていたにもかかわらず,である.ただ,背景には,学術誌の状況が悪いほうに走り(あくまでも筆者の考えで,このような状況を歓迎している人達も大勢いるはずである),学術誌に掲載された「学術論文」とインターネット上での個人の意見提示との境目がなくなってきたことがある.さらに,インパクト・ファクター重視などの「自分で物事を判断することの放棄」が目に余るようになった.そこで,このような状況で自分の見解を提示できる古典的な媒体(インターネットに比べれば極めて権威がある「書籍」)をもっていることは大切にしなければならない,と考えたのも事実である.
 ならば,「大々的に改訂」ということで,削るべき部分はバッサリと削り,記載しなければならないこと(=今,言いたいこと)はきちんと記述したつもりである.全体の構成も大幅に変更した.学会発表と論文執筆の共通部分を総論として前半にもってきて,後半にそれぞれを各論のように配置した.多少はスッキリした構成になったと思う.初版では他人の論文を俎上に載せ,日本語の問題点を指摘していたが,今版では削除した.これはおそらく筆者が年齢をとったせいであろう.加えて,初版では国際学会での発表や英文論文も視野に入れていたが,本書では国内学会と日本語論文に特化した.特に現場の方々の学会発表や論文執筆を促進し,保健科学の発展の一助にしたいという願いがある.
 乱筆気味であった本書の執筆を上手に取り仕切ってくれた西村僚一氏をはじめとして医学書院の関係の皆様に,この場をお借りして改めて感謝の念を記します.

 新型コロナウイルス禍2年目(2021年)3月
 中村好一

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第0部 プロローグ
 第1章 はじめに
  1 ごあいさつ/2 筆者の過去/3 本書のねらい(ターゲット)/4 本章の終わりに

第1部 研究の進め方
 第2章 なぜ,研究を行うのか
  1 まずは指導者を/2 そして準備/3 Research question/4 研究計画/
  5 回収率/参加率/6 倫理的配慮/7 研究の実行/8 学会発表/論文執筆と投稿/
  9 そして,次の研究/10 なぜ,学会発表/論文公表が必要なのか
 第3章 研究を始める前に(日本語の修練と文献検索)
  1 日本語を鍛える/2 学会発表や論文に使う日本語/3 見本とする文章/
  4 日本語での論文執筆のお約束/5 明快な文章のコツ/6 役に立つ文献など/
  7 文献検索,そもそもは……/8 日本語の文献検索/9 英語の文献検索/
  10 究極の文献検索(芋づる式)/11 文献検索のコツ/12 書籍の検索/
  13 インターネットのサイトは引用文献にできるか?/14 これだけは,やってはいけない
 第4章 研究の進め方
  1 倫理的配慮/2 研究の登録/3 利益相反(COI)/4 本章の終わりに

第2部 主要4部分の書き方,まとめ方
 第5章 「緒言」
  1 まずは学会発表や論文の構成から/2 「緒言」に何を書く(話す)か/
  3 では,具体的には/4 Research question/5 「緒言」べからず集/
  6 「考察」との関係
 第6章 「方法」
  1 科学と非科学を分けるもの:再現性/2 では,どのように書くか/3 具体的には/
  4 When/5 Where/6 Who/7 What/8 Why/9 How/10 PECO/
  11 計測単位/12 倫理問題/13 研究の登録/14 省略形/15 「方法」べからず集/
  16 本章の終わりに
 第7章 「結果」
  1 投稿規定では/2 では,何を書くのか/3 まずは参加率から/4 次に対象者の属性/
  5 大きなところから詳細部分へ/6 「結果」べからず集/7 本章の終わりに
 第8章 「考察」
  1 例によって投稿規定では/2 出だしはどうするか/3 次は,どうする?/
  4 「考察」べからず集/5 「考察」を書くために研究を行う?/6 本章の終わりに
 第9章 図表の作成
  1 どこで使うか/2 図か表か/3 表の作成/4 図の作成/
  5 Figure legends(図の説明文)/6 図表についての注意事項/
  7 本章(本書)の図表について

第3部 学会発表
 第10章 発表する学会を選ぶ
  1 学会とは/2 学会に参加しよう/3 発表する学会を選ぶ大原則/
  4 その他,配慮すべき事項/5 ウェブ開催/6 必要なハードウェアについての補足
 第11章 学会発表演題申し込み(抄録作成)
  1 演題募集に関する情報入手/2 演題申し込みの実際/3 共同演者を決める/
  4 演題名を決める/5 抄録を書く
 第12章 スライドの作成
  1 スライドというけれど……/2 まずは,枚数/3 スタイル/4 使用するフォント/
  5 全体の構成/6 抄録を書いたときと状況が変わっていたら/
  7 細かな留意点(しかし,重要)/8 究極の文字化け対策/9 動画付きスライド/
  10 音声付きスライド
 第13章 ポスターの作成
  1 内容よりもまず……/2 口演との大きな違い/3 ポスターに盛り込む内容/
  4 ポスターだからこそ,できること/5 音声付き「ポスター」/6 本章の終わりに
 第14章 発表原稿
  1 その前に考えなければならないこと/2 原稿の量/3 文体/4 スライドとのリンク/
  5 口演にメリハリをつけるために/6 口演のスタートは/7 ストーリー(流れ)/
  8 原稿ができあがったら,予行演習会/9 余裕をもって
 第15章 学会発表当日(前後を含めて)
  1 会場の都市まで/2 発表当日の学会場まで/3 受付/4 発表前/
  5 発表(口演の場合)/6 発表(ポスターの場合)/7 質疑応答/8 発表の後で/
  9 ポスターの貼り逃げ/10 学会がウェブ開催の場合/11 座長を依頼されたら

第4部 論文執筆・刊行
 第16章 さて,論文執筆(投稿雑誌を選ぶ)
  1 なぜ,論文公表か?/2 論文公表の方法/3 では,投稿先としてどの雑誌を選ぶか/
  4 インパクト・ファクター(IF)/5 本章の終わりに
 第17章 論文執筆の前に(投稿規定を読む)
  1 投稿規定の入手/2 投稿規定は掟/3 特に注意するべきこと(重要な点から順に)/
  4 投稿規定以外の有用な情報
 第18章 論文の構成
  1 論文の構成/2 表題/3 短い表題(running title)/4 著者/5 連絡著者と連絡先/
  6 抄録/7 キーワード/8 主要4部分(本文)/9 謝辞/10 利益相反(COI)開示/
  11 引用文献/12 図の説明/13 本章の終わりに
 第19章 編集委員会とのやりとり
  1 投稿された論文の大まかな流れ/2 まず,投稿/3 投稿受領通知の受け取り/
  4 第1回投稿に対する編集委員会の方針連絡受領/5 「掲載不能」だったら/
  6 「意見に沿った修正原稿を再検討」/
  7 「意見に沿った修正原稿を再検討」でも再投稿しない場合/8 査読の実情/
  9 再投稿/10 初回査読で指摘されなかったことを指摘されたら/11 気持ちの問題/
  12 採用通知/13 掲載料/14 著作権の譲渡/15 著者校正/16 別刷の申し込み
 第20章 論文刊行の後
  1 別刷の請求/2 共同研究の提案など/3 「編集委員会への手紙」への対応/
  4 誤りに気づいたら/5 査読を依頼されたら/6 査読を引き受けたら/
  7 ネット時代の査読/8 再査読/9 査読意見に対する編集委員会の修正/
  10 「査読」べからず集

第5部 エピローグ
 第21章 おわりに
  1 まずは指導者を(再度)/2 なぜ研究や発表が必要なのか(まとめ)/
  3 論文執筆の参考書籍

学会発表・論文執筆デッドセクション
 所変われば……
 書き言葉だけでなく
 「国際公衆衛生学会」
 調査研究支援研修
 論文を書く順序
 学会
 隔世の感
 利益相反の例
 座長は大変
 ハゲタカジャーナルの指標
 投稿規定は結構面白い!
 人名の表記
 編集委員会も結構大変(だった)
 著作権の新しいルール
 統計手法:どれを使うか
 循環器病予防セミナー

索引

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保健師活動をまとめたい人に最適な本です
書評者:村嶋 幸代(大分県立看護科学大理事長・学長)

 読みやすく,楽しく,ためになる本である。著者の意欲と熱意,そして,適度な遊び心が伝わってくる好著である。学会発表から論文執筆に至る必要な事項とコツが具体的に解説されている。ソフトな語り口で,しかし,抑えておくべきポイントや忠告はしっかりと書いてある。保健活動を科学的なものにし,かつ知見を蓄積して効果的に実施していけるようにすべきだという著者の「想い」が伝わってくるような本である。

 例えば,「第1部 研究の進め方」では,「なぜ,研究を行うのか」という基本的な問いから始まり,「指導者を得ることの重要性」が述べられている。同時に,倫理的配慮と「なぜ,学会発表/論文公表が必要なのか」が,納得のいくように記載されている。「第2部 主要4部分の書き方,まとめ方」では,緒言・方法・結果・考察の4部分と図表の作成について,書き方の順番,図表の効果的な活用方法,さらに「べからず集」もあり,著者の持つノウハウが豊富に提示されている。「第3部 学会発表」では,学会選び,抄録・スライド・ポスターの作成,口演とポスター発表の違い,発表原稿の作り方などが,また「第4部 論文執筆・刊行」では,投稿雑誌の選び方,投稿規定を読む重要性,編集委員会とのやりとり,さらに査読を依頼された場合の心得など,基本的で実用的な情報が満載である。「第5部 エピローグ」では,論文執筆の参考書籍も掲載され,有用である。時々に挟みこまれる「デッドセクション」では,著者のエスプリが表れている。楽しく読みながら,ポイントを学べ,実用にもなる本である。

 この本は,元々は,雑誌『公衆衛生』(医学書院)に連載された「保健活動のtry! 学会で発表しよう 論文を執筆しよう」が基盤になった初版の改訂版である。初版からの8年間で,世界は大きく様変わりした。COVID-19により,学会やセミナーの運営や参加の仕方も様変わりした。また,発表の中で,COI(利益相反)を表明すること,さらに,研究開始前に研究倫理審査を受けることが当たり前となり,研究者には研究倫理の教育が義務付けられる時代である。著者の中村好一氏は,そのような時代の変化を見事に取り込み,本書に盛り込んだ。改訂作業は大変だっただろうと思うが時代にマッチした本に仕上がっている。

 著者の元々の意図は,「保健活動の現場にいる人が,自分で自分たちの実践成果を検証し,世の中に問うことが必要であり,その手助けをしたい」という点にある。その意味で,現実に保健・医療・福祉分野で活動に従事している方々,将来保健活動に参画したいと学んでいる学生・院生諸氏,そして実際に,現場の保健活動をまとめて見える化したいと努力している方々に,ぜひとも手にとって読んでいただきたい本である。


これから研究を始める人が最初に読む本として薦めたい
書評者:佐伯 圭吾(奈良医大教授・疫学・予防医学)

 本書は主に,保健活動に従事するコメディカルスタッフや学生を含む初学者が,日本語での学会・論文発表をめざす際の指南書として書かれたもので,疫学書では最も人気がある中村好一氏による『基礎から学ぶ 楽しい疫学』の姉妹書である。

 これから研究を始める人が,最初に読む本としてお薦めしたい。「なぜ研究を行うか」「研究指導者をどのように求めるか」から始まって,研究の実施,分析,学会発表,論文執筆,投稿,査読の過程に区分され,それぞれのステップをどのように考え,どのように進めていくかが,ありありと目に浮かぶように書かれている。読者は,各ステップを思い浮かべて読み進めていくうちに,研究プロセスを俯瞰することができ,高く感じていたハードルが,いつの間にか取り組むべき具体的な課題に変わっていることに気付くのではないだろうか。

 論文に書かれるべき内容については,観察研究のSTROBE,無作為化比較試験のCONSORTといった国際ガイドラインに示されている。本書はこのような一般原則を,単に説明するのではなく,著者が経験した具体的事例を紹介しながら,どのように考えるかが述べられている。このシリーズの最も印象的な特徴は,脚注が多い点である。1ページに5~6つの脚注がみられる場合もめずらしくない。しかし脚注といっても引用文献の記載ではなく,ほとんどの場合が著者による本文の解説なのである。この独特のスタイルは意外にも読みやすく,同シリーズの人気の秘訣ではないかと思われる。また「べからず集」として,良くない例を挙げながら,視点を変えて解説するなどの工夫が凝らされている。

 本書は初学者に向けて書かれているが,科学研究の本質にかかわる議論を避けていない。論点は研究の倫理面の配慮,研究者間のコミュニケーションのあり方や科学の進歩などに及ぶ。医学研究者が,個人の意見や考え方を発信する場が少ない現在において,経験豊かな疫学者の考えに触れることは,多くの医学研究者にとっても有用だろう。

 分野の専門家による分担執筆書と違って,本書では最初から最後まで,著者の考えが貫かれている。「研究は,研究者のみがやればよいものではない。保健・医療の最前線で活躍する実務者が,現場の経験や課題を学会や論文発表によって共有し,その分野の進歩につなげてほしい」という著者の願いが詰まった一冊だと感じた。


一歩踏み出すのを後押ししてくれる指南書
書評者:池内 寛子(栃木県保健福祉部健康増進課健康長寿推進班主査)

 本書には,地域の保健従事者が学会発表や論文執筆に取り組むために必要となる基礎的な知識や技術が書き込まれています。第1章「はじめに」の中で「本書第2版のターゲットは,保健活動を念頭に置いた学会発表や論文発表を目指す保健従事者や医学/保健科学の初心者向けである」といった趣旨の記載があるように,保健科学の進展にかかわるめざすべき方向性や研究と保健事業との関連性がわかりやすく書かれています。地域の保健従事者には必読といえる内容です。

 書籍の前半は,研究を行う目的や研究を無駄にしない計画の立て方,研究の実施から結果をまとめるために必要な基礎知識や技術が記載されています。読み進めていくうちに読者自らの保健事業の課題を研究によって模索し解決したくなるような楽しさも伝わってきます。後半は,初めて学会発表や論文執筆を行うときに感じるちょっとした心配事に対する解説が一つひとつ丁寧に記載されています。

 最も魅力的な点は,学会発表や論文執筆の作成方法を通して,地域の保健事業にかかわる考え方や課題の抽出方法,解決方法,まとめ方などを学習するための手引きとしても活用できるところです。「計画→実行→評価→改善」のPDCAサイクルに基づく効果的な事業の実施には欠かせない内容であり,その効果として以下のようなものがあります。

・ 業務に対する視野が広がり,多方面から保健事業を考えることができる
・ 業務の進め方に関して,疑問を解決する糸口を見出せる
・ 科学的根拠に基づく業務の企画や実施を常に考えるようになるため,業務の見直しの方法がわかる
・ 対象者に対する効果的な技術支援の実践やその根拠をまとめる力が養われる
・ 事業の実施・評価を積み重ねていくスキルが身につくので,次の世代の保健活動の進展につながる
・ 保健活動の目的を理解し,信念をもって業務に取り組むことができる

 評者は2012年に栃木県内の精神科病院の管理栄養士と連携して県内の実態調査を実施し,翌年には本書初版を参考にしながら学会発表と論文報告を行いました。さらに2017年には2回目の調査と学会発表を行いました。当初,われわれは「学会発表や抄録作りなんて学者がやることだ」と思っていた素人集団でしたが,本書著者の厳しくも温かい指導により,現在も日々の業務改善を目的にメンバー一人ひとりが自ら学会発表や論文作成に取り組んでいます。

 「学会発表や論文発表をやってみたい」「日々の業務に何かしら疑問を感じ,改善をしたい」と考えている方は,ぜひこの書籍を手に取ってみてください。皆さんが一歩踏み出すのを後押ししてくれる指南書になるはずです。

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