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医療者のための 成功するメンタリングガイド

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著名な指導医であるDr.Chopra、 Dr.Saintらによる成功するメンタリングの始めかた。理想的なメンター/メンティーの選び方は? メンティーがメンターシップから最大の成果を手に入れるには? 世代や性別などの多様性を超越するメンタリングとは? まったく新しいメンタリングの入門書ができました。臨床医教育で名高い群星沖縄臨床研修センターの指導医が翻訳を担当。すべての医療者のための、後輩ができたら読む本。

監訳 徳田 安春
発行 2020年12月判型:A5頁:168
ISBN 978-4-260-04311-3
定価 2,750円 (本体2,500円+税)

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監訳の序

 メンタリングの語源はメンターから来ている.ギリシャ時代の王の助言者やその子どもの王子の師を務めた「賢者メントール」の名が語源となっている.特に,王子にとってメントールは指導者・理解者・支援者としての役割を果たした.メンティーの良き話し相手となって理解し,適切に指導し,そして具体的に支援もしてくれるのがメンターということになる.研修医や専攻医,若手医師には,メンターが必要であり,後輩ができたら今度はメンターになる必要が出てくる.

 このように,医療者の中でも医師における典型的なメンタリング関係には研修医と指導医がある.しかし,医療者の共通因子はプロフェッショナルとしての成長を期待されることだ.看護師,技師,助手,事務員,すべての職種の全員で,メンターとメンティーの関係が必要だ.医療現場に登場する人々は全員メンタリングに関わるべきなのだ.本書を読むことで医療現場でのメンタリングが促進すれば,日本の医療の質,安全,雰囲気が良くなるだろう.

 メンターまたはメンティーは割り当てられることがある.もちろん,組織で割り当てられた相手をメンターとするのはよい.メンティーにとっては,組織が認めたメンターだから,遠慮なくいろいろ相談しやすいだろう.組織メンターをぜひ活用してほしい.また,メンターにとってはメンタリングの機会を与えてくれるのだからこれを活用しない手はない.

 しかし,人間同士の出会いの機会をフルに活かして,メンタリングの相手を積極的に開拓するのを勧める.複数のメンターがいると可能性が広がる.いわば「偶然と必然」だ.ジャック・モノーによると,これが生物の進化の本質だという.進化の原則は人と人の出会いでも成立するのであり,人が進化してきた社会的必然だ.メンターとメンティーのメンタリング関係も含み,人が成長する最大要因になる.

本書を読み,実践することで,あなたも良いメンティーになって成長し,その結果良いメンターとなれるだろう.高度なメンタリングスキルをフルに生かし,プロフェッショナル医療者としての理想を実現できる日本人医療者が増えることが,まさに日本語版作成メンバーの望みである.

 2020年8月
 沖縄県浦添市にて
 徳田安春

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原書推薦の序/原書の序/謝辞/原著者紹介

メンターへ FOR MENTORS
 Chapter 1 メンターになる前におさえておきたい3つの基本
 Chapter 2 自らの役割を知ろう
 Chapter 3 マインドフル・メンタリングのための6つのルール

メンティーへ FOR METTEES
 Chapter 4 メンティーのためのクイック・スタート・ガイド
 Chapter 5 卓越したメンティーが行う9つのこと
 Chapter 6 メンティーの地雷に注意せよ
 Chapter 7 メンターとの決別

メンター&メンティーへ FOR BOTH
 Chapter 8 世代を超えたメンタリング:合意点を見つける
 Chapter 9 多様性を超えたメンタリング:焦点を女性に当てて
 Chapter 10 前に進みながら振り返ること

APPENDIX 付録
 参照文献(注釈付き)とその他の関連文献

参考文献

COLUMN(日本語版オリジナル)
 メンティーに期待を込めて
 与えられたら与えたくなる
 医師になったばかりの頃
 経験談?―打ちのめされて,助けられて―
 私と群星沖縄のメンタリング状況
 メンタリングは気づきの宝庫,成長の触媒
 あるメンターに言われたこと
 日常生活とメンタリング

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医療にかかわる全ての人に必読の書
書評者:内海 桃絵(阪大大学院准教授・総合ヘルスプロモーション科学)

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メンタリングに興味はあるけれど,日本の医療文化になじまないのではないか,異動も多いのに長期的な関係をどう築けばよいのか……そんな疑問を持っていた方々に待望のメンタリングガイドが出版された。メンタリングは,プロフェッショナリズムの育成,安全文化の醸成に効果がある。これまでの実践を踏襲しただけでは対処が難しい状況が発生している今こそ,手に取っていただきたい一冊である。

本書は全10章の三部構成となっており,最初の3章は「メンターへ」,次の4章は「メンティーへ」,そして最後の3章は「メンター&メンティーへ」と題し,それぞれの役割の心構え,担うべきこと,気を付けるべきことなどが,読みやすい文章で書かれている。

まず驚いたのが,チームメンターシップがスタンダードだと述べている点である。それにより,メンティーはより幅広い視野を持つようになり,メンター一人当たりの作業負荷が減る。そして,チームを組むことがメンティー,メンター双方にとってのセーフティ・ネットになるとしている。責任を抱えすぎて消耗しているメンターには朗報である。

また,ぜひ読んでいただきたいのは,「メンティーへ」の章である。大きな口を開けていればメンターが親鳥のように餌を与えてくれると勘違いしているひな鳥メンティーがいる。しかし,本書では「メンタリングでは,メンターが主な責任を負うと思う人もいるかもしれないが,実際はまったく違う」,「リーダーシップの良し悪しは,ついていく人の姿勢にかかっている」と指摘している。そして,「良い関係のためには,自分も全力を尽くす必要がある」と述べ,具体的に何をすればよいのかが書かれている。

さらに,世代を超えたメンタリングの章ではミレニアル世代に焦点を当て,その特徴を解説しているのが興味深かった。監訳の徳田安春先生はじめ訳者の先生方のコラムも面白い。反面教師のような上司のことやメンター・メンティーの基礎となっている先輩研修医からの言葉など,先生方のメンタリング経験談を楽しめる。これからメンタリングを実践する私たちの背中を押してくれるようなページになっている。

そして最後に,本書には豪華な付録が付いている。なんと関連文献38件が注釈付きで掲載されているのだ。「メンターが犯しがちな12の誤り」や「メンティーがメンタリング関係から最大限の利益を得るための7つの方法」,「メンターシップにおいて陥りやすい5つの誤り」などがまとめられている。折々で見返し,自身のメンター,メンティーとしての在り方を振り返るのに役立つだろう。新人,中堅,エキスパート,管理者など立場にかかわらず医療にかかわる全ての人に必読の書である。


関係性の内で垣間見る学びの姿
書評者:青島 周一(医療法人社団徳仁会中野病院薬局)

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僕は書店が好きだ。書棚にずらりと並ぶ本の背表紙を眺めているだけで,新しい世界との出会いの予感に胸が躍る。装丁に惹かれた書籍を実際に手に取って,ゆっくりとページをめくってみると,紙面に並ぶ言葉たちを通じて自分の知らない景色を垣間見ることができる。手に伝わってくる本の重量は,それが大きなものであれ,小さなものであれ,重さを超えた概念の質量を宿している。

一冊の本との出会いは,物の見方や考え方を大きく変えることがある。その変化の過程に能動性,あるいは主体性というような意識や感覚はなく,ただ自分と本との関係性だけが世界を編み変えていく。このような経験こそが質の高い学びを駆動する一つのきっかけなのかもしれない。

誰かから「勉強しなさい」と言われても,必ずしも主体的に勉強をするようになるわけではない。もちろん,それがきっかけで継続的な学びにつながることもある。しかし他方で,誰に言われるでもなく無我夢中で勉強してしまうこともあるだろう。能動的あるいは主体的な学びと言ったとき,それは学習者の意志の強さというよりはむしろ,学びを欲することに対する自身の応答なのかもしれない。少なくとも,主体的な学びは指導者の一方的な教えの中にあるのではなく,指導者と学習者の関係性の内にあるように思える。

本書は人材育成指導法の一つであるメンタリングについて,医療者に向けに書かれた実践書である。メンターは指導する(能動的な)立場,メンティーは指導される(受動的な)立場というイメージが一般的かもしれない。しかし,メンタリングの具体的な方法論についてあらためて考えたとき,その行為が能動/受動という概念では収まりきらないことに気付く。学びは指導者と学習者の関係性なしでは成り立ちようがないからだ。だからこそ,メンタリングの大切さを理解していたとしても,自分がどうあるべきなのか,あるいは具体的にどのような仕方でメンタリングを行えばよいのか,当惑してしまうことも少なくない。

メンターとして,そしてメンティーとして,双方がどのような仕方で関係性を構築し,またその関係性の中で何を学び,成長の糧としていけば良いのか,本書はメンタリングの具体的なフレームワークを論じている。数々の実践可能なアドバイスは,メンタリングを円滑に進める上で有益な指針となってくれるだろう。さらに,巻末には豊富な参考文献や図書の紹介が収載されており,メンタリングのアウトカムが実り豊かになることを必ずや助けてくれるはずだ。


皆さんにメンターはいますか? ではメンティーはいますか?
書評者:和足 孝之(島根大病院卒後臨床研修センター)

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むさぼるように読んでしまった。一言で言うと,本気で悔しい。書籍を読んで悔しいと感じることはそうそうないが,今回ばかりは,今までの医師人生で苦労して,本気で悩んだことや,嬉しいこと悲しいこと,研修医や医学生が急激に成長して部分的に自分を超えた瞬間のアノ複雑な心境までも,これまで時間をかけてようやく感得してきた経験値(誰にも言わずにこっそり隠し持っていたもの)を完全に勝手に暴露された気がした。

メンターが行うべき実践手法や考え方,そのいちいち全てが,自分が優れたメンターを観察して苦労して学んだこと,数多くのメンティー達と接したときに生じた悩みや,研修医や医学生が抱えていることが多い相談内容にぴったりとフィットしているのだ。何を隠そう,大学教員である自分は一時期やる気がない(ように見える?)医学生や研修医に対してすごく悩んだ。若さゆえの過ちというやつか,誰にでも公平にできるだけ丁寧な良い教育を!! と鼻息荒く取り組んでいた。結果的に,うまくいかず苦しかった。しかしある日,作者のDr. Chopra & Dr. Saintが発表した「メンターが心得るべき6つの事」という論文を読んで自分の考えは完全に間違っていたと悟った。その答えは本書の中にあるので,ぜひ手に取って読んでほしい。

そう「メンターはメンティーを選んで良い」のである。そして,「メンティーもメンターを選ばなければならない」のだ。お互いの適切な選び方,効果的な関係性を維持する方法,お互いに離れるべきポイントなど本書の全てがいちいち実体験にマッチしており悔しいのだ。

最後になるが,自分は医師5年目のある日,監訳者である徳田安春先生に誘われ東京ドームのムーミン谷のパン屋さんでメンターメンティーの契り? を結んだ(気がする)。この日は人生の劇的な転換点となった。メンターとメンティーの関係は,プロとしての一人の医師人生を大きく左右する最重要課題である。しかしながら,これまでその技術的なエッセンス,ノウハウを鋭く突いた本はなかった。この本はベテランも若手も学生も必携必読の医師人生指南の教科書である。


全医療人必読! 徳田安春&オール沖縄Presents,メンタリングの金字塔
書評者:志水 太郎(獨協医大教授・総合診療医学)

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まず,本書評を書かせていただくにあたって触れるべきこと。それは何をかくそう,評者(私)の最強メンターは本書の監訳者,徳田安春先生であるということである。徳田先生はどのようなメンターであったか? それを語るには,本書で個人的に最重要章と感じる,Chapter 3をお読みいただきたい。同章の骨格となるポイント,すなわち「メンターでなく,メンティー自身の成長に有益なタスクを与えよ」「動き続けよ」「難しい対話に備えよ」「いつでもつながれるようにする」(詳細は本書をお読みください)などは,まさに往年の徳田(メンター)―志水(メンティー)の関係そのものを言語化したものである。徳田先生と出会ったのは2005年11月,東京都立墨東病院での徳田先生の講演で,自分はそのシャープかつ俯瞰的な指導に魅了され,徳田先生の行く先々に追随し,オンライン・オフライン問わず,バスの中で,飛行機の隣で,新幹線の往復で,フレッシュひたちの中で,貴重な教えをスポンジのように学んだ。宝物のような時間だった。それは自分が米国に滞在した中でも後も継続したのである。「ジャーナルではレビューとエディトリアルを毎週フォローしてください」「私が診ます,といえば丸く収まるのです」「スピードと集中がカギです」など枚挙にいとまがないが,全てメンティーの自分がメンターとして拡散すべき“グレート・アントニオ”徳田の教えである。

いきなりChapter 3にフォーカスしたが,ここで本書の構成を紹介したい。本書は全10chapterからなり,メンターへ(Chapter 1-3),メンティーへ(Chap ter 4-7),そしてメンター&メンティーへ(Chapter 8-10),という3部構成に分けられている(さらに巻末に約50ページにわたるメンタリングの参考文献の数々の紹介もうれしい)。とはいえ,メンターはメンティーの章を,またメンティーはメンターの章を読むことで,相手の立場をおもんぱかることができる。その結果,全ての読者は本書の全ページから重要な学びを得られるだろう。

本書の優れたところは他にもたくさんある。ダイバーシティ(Chapter 9)やミレニアル世代(Chapter 8)にも配慮しているところは秀逸である。特に,世代間の違いでは,例えば評者が心酔する昭和プロレス式「プッシュアップとスクワット」でナンボ,はミレニアルには地雷(というかアウト)である。このような時代のギャップへの配慮も大事である。徳田先生の「年齢を重ねると時代にマッチした戦略を立案することが難しくなる(p.96)」はメンターにとって心すべき金言である。だからこそ,メンターとメンティーのお互いの振り返り(Chapter 10)と柔軟な心が必要ということになる。

序文にもある通り,メンタリングの関係は相互的であり,メンターはメンティーによって知の拡散を実現し,メンティーはメンターにより知へのガイドを得られる。しかしそれがWin-Win,Give and Takeのようなドライな関係で終わらないのは,本書では明言して強調こそされてはいないものの,その文底で語られる,師弟愛ともいうべき互いの信頼関係である。そう,究極的にはメンタリングとは愛だと思う。

本書はメンタリングという難しくとっつきにくいテーマを,米国を代表するSaint/Chopraという臨床教育2大巨頭がわかりやすく解説し,それが日本代表の臨床教育マイスター徳田安春&沖縄アソシエイツの手によって日本のあらゆる層にコモディティ化されたという,希代の名著ともいえる。2020年,いや,2020年台を通じたMust Buyといえるだろう。


生きた経験を未来につなげるための一冊
書評者:寺本 美欧(Teachers College, Columbia University修士課程)

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医療者に特化し,最新の海外文献が盛り込まれたメンタリングを解説した翻訳本はこれまでになかっただろう。かつ,従来の「メンター」に向けられた心得だけでなく,メンタリングを受ける側の「メンティー」に向けての心構えまでを網羅しており,『医療者のための成功するメンタリングガイド』というタイトルにも納得だ。先日,突然とある看護大学の学生さんから連絡が来た。将来看護師になりたい,留学もしたい,両方実現している私の話を聞きたい,とのことだ。早速オンライン上で話し,まっすぐな思いと情熱に心を動かされたと同時に,自分が提供できる情報もコネクションも,全て惜しみなく彼女に活用してもらいたいと思った。それが,私の中で初めて「メンター」の役割が芽生えた瞬間だ。メンティーからメンターへの転換期を迎えようとしている私にとって,絶妙なタイミングでの本書との出合いに感謝したい。

看護の世界でメンタリングという用語はあまりなじみがないかもしれない。プリセプターシップという一般的に病院で活用されている指導方法や,「指導者さん」と呼ばれる看護学生を指導する教育者など,看護の現場でなじみのある手法は多々あるが,メンタリングはそのどれとも異なる。本書を読了して感じた他との大きな違いは,メンタリングには互いに取捨選択できる権利があるということだ。著者によると,「メンターを引き受ける前に,メンティーになる人を慎重に吟味したほうがよい。その人物の成功の手助けをするということは,あなた自身の時間と個人的なエネルギーを犠牲にする,ということなのだ。だからこそ,軽々しく決断すべきでない」(Chapter1, p.6)とある。逆もまたしかりで,メンティーも誰にメンターを依頼すべきかを吟味する必要がある。一見すると全員のメンターを引き受けないのはやや冷たく感じるかもしれないが,本書を手に取ればこの言葉の意味が理解できる。メンターになるということは,責任を伴い,支え合うという契りを結ぶことでもある。安易にメンターにならない,というのは誠実の表れだと感じた。本書には,メンタリングとの誠実な向き合い方が随所にちりばめられている。この新しいメンタリングという関係性が看護にも取り入れられれば,看護師としての熟練した知識や技術を次世代につなげるだけでなく,看護師のキャリアや選択肢が開けてくるという無限の可能性が広がるのではないか。

メンターからメンティーへ,知識と生きた経験は次の世代へと受け継がれていく。そしてまた,メンティーからメンターへも学ぶ姿勢と真摯な気持ちが返される。この本では,メンターシップを「ある世代から次の世代へと引き継がれる聡明な英知を保障するもの」(原書の序)と位置付ける。看護という生きた経験を未来につなげるためにも,ぜひとも本書を手に取ってメンタリングの可能性を感じていただきたい。

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