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ここで差がつく “背景疾患別”理学療法Q&A

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姉妹本 『“臨床思考”が身につく 運動療法Q&A』 で運動療法の必須10項目を押さえたあとは、本書で患者の背景疾患別の理学療法の実施・評価方法をマスターしよう。根拠や禁忌をきちんと押さえた理学療法で、患者や同僚、他職種にも「説明できる」理学療法士に。「脳血管障害」や「心機能の低下」「腎機能の低下」などに着目した理学療法を各分野のエキスパートがQ&A形式で丁寧に解説。
*「理学療法NAVI」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 理学療法NAVI
高橋 哲也
発行 2016年09月判型:A5頁:200
ISBN 978-4-260-02796-0
定価 2,970円 (本体2,700円+税)

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シリーズ刊行にあたって 「理学療法NAVIシリーズ」のねらい(網本 和)/はじめに(高橋哲也)

シリーズ刊行にあたって
「理学療法NAVIシリーズ」のねらい

New Approach for Various Issues)
 今日,多くの理学療法課程を学ぶ学生が存在し,新人理学療法士もまた急増している.一人ひとりの学生や新人にとってみれば,学ぶべき医学的事項は飛躍的に増加し,膨大化する情報は錯綜している.このような状況においては,真に必要で価値のある基本的な知識と新しい技術の修得が求められる.ここでのNAVIはナビゲーション(航海術)を表しており,情報の大海のなかで座礁することなく海路を拓いてゆくための方略である.
 本「理学療法NAVIシリーズ」は,理学療法,リハビリテーション医療において,きわめて基本的で不可欠な情報を厳選して示すことで,この世界に踏み出そうとするフロンティアのための水先案内人となることを志向している.

 2016年9月
 首都大学東京・教授 網本 和


はじめに
 「理学療法NAVI」シリーズ「ここで差がつく“背景疾患別”理学療法Q&A」は,臨床の魅力や怖さもわかってきた若手理学療法士の臨床力のブラッシュアップを目的に企画されました.
 理学療法士として臨床を3年ほど務めると,自身の行っている理学療法が本当によいことなのか,もっとよい方法はないのかなど,目の前の患者さんに対して最善最良の方法を追い求めるようになります.しかし,専門書を開いても読み解くことは難しく,なかなか理解が進まないことも少なくありません.
 本書は,「理学療法NAVI」シリーズ「“臨床思考”が身につく 運動療法Q&A」の姉妹本で,理学療法士としてのロジカルな臨床思考を磨くための「思考のトレーニング」も兼ねたQ&A形式を採用しています.本書の執筆には,いずれも臨床での指導に長けた理学療法のエキスパートにあたっていただきました.各エキスパートが多くの症例から経験し,長い時間をかけて専門書を読んで修得した内容をわかりやすく自分の言葉として書き下ろした本書を通読することで,もっと自分の力を伸ばしたいと切望している若手理学療法士にとっては,エキスパートの臨床思考過程に触れる絶好の機会となります.
 特に本書ではアドバンス編として,患者さんに付帯する症状や兆候,特徴的なサインなどに対して理学療法士がどのような配慮・評価をすべきかを修得することを目的としています.超高齢社会に突入し,担当する患者さんがもつ疾患や障害も1つではないことが増えてきています.理学療法士として,患者さんの背景にあるものを確かに把握し,評価と実践をすることで患者さんの状態の改善に寄与し,またリハビリテーションチームの仲間にも信頼されることにつながります.
 本書が若手理学療法士の臨床での疑問を解くカギとなり,さらなる臨床力のブラッシュアップにつながるきっかけとなることを期待しています.「理学療法NAVI」シリーズは,理学療法士としてのロジカルな臨床思考を身につけ,真に臨床力のある理学療法士に近づくためのバイブルです.さらなるシリーズの展開にご期待ください.

 2016年9月
 高橋哲也

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1 脳血管障害(急性期)についてのQ&A
 Q1 脳血管障害の急性期で,早期離床が重要視される理由を教えてください
 Q2 脳血管障害の急性期のリスクマネジメントのポイントを教えてください.
    注意すべきことは何ですか?
 Q3 脳血管障害の急性期理学療法で,してはいけないことを教えてください
 Q4 脳血管障害の症例のCTやMRIの画像をみる際に,
    どのような点に注意することが重要ですか?
 Q5 急性期の目標設定に難渋します.急性期にできる予後予測法について教えてください
 Q6 早期離床以外には,急性期にどのような理学療法を行うとよいでしょうか?

2 脳血管障害(回復期)についてのQ&A
 Q1 課題指向型トレーニングとは何ですか?
    どのような評価に基づいて,何を何回すればよいですか?
 Q2 バイオフィードバック療法,機能的電気刺激(FES),促通反復療法,CI療法,
    ミラーセラピー,トレッドミル歩行,ボバースアプローチ,ロボティクスなど,
    介入方法は氾濫しているように思います.どう使い分ければよいですか?
 Q3 装具選択のコツを教えてください
 Q4 日本では動作獲得や姿勢などが重視され,全身持久力は軽視されているように
    思います.適切な身体活動量の設定方法を教えてください
 Q5 脳血管障害回復期の患者を担当する理学療法士は,
    どのような力を蓄えていけばよいでしょうか?

3 運動器疾患に対する理学療法についてのQ&A
 Q1 基本動作や歩行時に代償運動が認められました.
    代償運動があると何がいけないのでしょうか?
 Q2 代償運動が認められる場合,代償が出現しないように調整することを優先して
    動作練習すべきでしょうか? それとも,代償の原因となる,例えば痛みや筋力低下を
    改善することを優先すべきでしょうか?
 Q3 テーピングやサポーター,装具の効果のメカニズムと
    効果的な使用法について教えてください
 Q4 関節に過剰なストレスをかけないようにするために,
    筋力トレーニングや動作練習中に注意することはありますか?
 Q5 運動療法として筋力トレーニングは,どのように行うのが効果的でしょうか?

4 心機能が低下している患者についてのQ&A
 Q1 ペースメーカ挿入患者の理学療法では何に注意したらよいですか?
 Q2 特別な機器がない施設での運動処方はどうしたらよいですか?
 Q3 不整脈のある患者にはどのように対応したらよいですか?
 Q4 動くとすぐ息が切れる患者の場合,どのようにリスクマネジメントしたらよいですか?
 Q5 脳卒中,運動器疾患,呼吸器疾患を合併した心疾患患者には
    どのように対応すればよいですか?

5 腎機能が低下している患者についてのQ&A
 Q1 腎機能が低下していることと理学療法の実施の有無は関係していますか?
    理学療法で腎機能が悪くなるのですか?
 Q2 腎機能悪化は,何の指標を用いて評価すればよいですか?
 Q3 運動療法によって腎機能は改善しますか? 腎臓疾患患者の予後はよくなりますか?
 Q4 血液透析患者において,血清クレアチニン値は何を示す指標ですか?

6 呼吸機能が低下している患者についてのQ&A
 Q1 呼吸困難感が強い患者さんに対して,どのように対応したらよいですか?
 Q2 胸郭の柔らかさがなぜ必要なのかをわかりやすく教えてください
 Q3 酸素飽和度が低下すると,何がどのようにいけないのでしょうか?
 Q4 呼吸器疾患患者における身体活動量の意味を教えてください

7 糖尿病に対する運動療法についてのQ&A
 Q1 運動療法でなぜ血糖コントロールがよくなるのですか? わかりやすく教えてください
 Q2 運動で血糖が高くなる人もいます.なぜですか?
 Q3 運動による低血糖を早期発見するコツと,対処方法を教えてください
 Q4 レジスタンス運動と有酸素運動,どちらを先に行えばよいですか?
 Q5 糖尿病合併症がある場合の運動の適否について教えてください
 Q6 まとまった運動の時間がとれない人の場合,どのような指導を行えばよいでしょうか?

8 フレイルに対する理学療法についてのQ&A
 Q1 フレイルはサルコペニアや廃用症候群と何が違うのでしょうか?
 Q2 フレイルの評価について教えてください.最も重要な評価は何でしょうか?
 Q3 身体的フレイル以外の精神心理的フレイル,社会的フレイルとは何ですか?
 Q4 年をとればみんな弱くなります.フレイルでは何がいけないのでしょうか?
 Q5 フレイルの対象者に対して理学療法士は
    どのようにアプローチすればよいのでしょうか?

9 誤嚥・嚥下障害に対する理学療法についてのQ&A
 Q1 誤嚥の種類と,対応する各予防法について教えてください
 Q2 理学療法士にできる誤嚥・嚥下障害の評価方法を教えてください
 Q3 理学療法士にできる嚥下障害に対する運動療法と,その適応を教えてください
 Q4 嚥下トレーニングは何回,どのくらいの期間行えば効果がありますか?
 Q5 嚥下トレーニングを行う前や行っている最中に注意すべきことは何ですか?
    発生しやすい事故についても教えてください
 Q6 誤嚥性肺炎予防のための指導は,どのようにしたらよいですか?

10 在宅での理学療法についてのQ&A
 Q1 在宅に行く場合,何を持って行けばよいですか? 七つ道具を教えてください
 Q2 患者が通院している病院からは,どのような情報をもらってきてもらうことが
    有効ですか? また,通院病院からの情報の活かし方について教えてください
 Q3 在宅での血圧管理や体重管理など全身管理の方法・コツを教えてください
 Q4 在宅で手軽にできる有効な運動を教えてください
 Q5 在宅で必須のフィジカルアセスメントについて教えてください
 Q6 在宅で実施する運動機能評価を教えてください

索引

コラム
 なぜICUで早期離床が必要なのでしょうか?
 「コアトレーニング」について,わかりやすく教えてください
 視覚障害者に対する運動指導の注意点を教えてください
 抑うつ状態にある対象者への運動指導における注意点を教えてください
 「運動学習」についてわかりやすく教えてください.
  「運動学習」と,「身体で覚える」ことは同じですか?

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各エキスパートが培ってきた臨床思考を最新の情報とともに記載した一冊
書評者: 山田 英司 (回生病院関節外科センター附属理学療法部・部長)
 経験年数が少なく,臨床で苦しみ,もがいている理学療法士が待ち望んでいた《理学療法NAVI》シリーズがついに上梓された。近年,新人理学療法士が学ぶべきこと,臨床で患者を担当するために知っておくべきことが急増し,多くの医療関係者が本シリーズのように必要な情報が網羅された書籍を望んでいたことだろう。

 本書『《理学療法NAVI》ここで差がつく“背景疾患別”理学療法Q&A』は10章で構成され,それぞれのテーマにおいて,Q&Aの形式で,各エキスパートが長年の臨床経験で培った論理的な臨床思考の内容が,最新の情報とともに具体的に記載されている。また,その分野は運動器疾患,神経疾患,内部障害や近年着目されているフレイルや在宅まで幅広く網羅されている。特に着目したのは,第1章が始まる前に,略語一覧が掲載されている点である。臨床現場で用いられる略語は,医師や看護師との共通言語であり,医療の進歩に伴いどんどん増加するため,現場で勤務する理学療法士にとっては理解しておくことが必須である。また,頻回に用いられていた略語が,数年後にはなくなってしまうということも珍しくないほど,医療の変化は激しい。よって,略語のみでなく,常にフルスペルで医学用語を理解しておくことが重要であり,この略語一覧を用いることにより常々確認することができるであろう。

 本書にはリスク管理に関する記述も多いが,その判断基準となるガイドラインやシステマティックレビューは次々と更新されるため,最新の情報を知っておくことが重要である。しかし,単位に束縛され,山のような書類を書く必要がある臨床現場では,これらの情報を得る十分な時間は存在しない。本書に引用されている論文は最新のものが多く,現状,この内容を理解しておくことで十分臨床に生かすことが可能であるが,常に情報をアップデートする姿勢を忘れてはいけない。

 就職したばかりの理学療法士は,環境に慣れ,仕事をこなすことで精一杯であり,自分の理学療法を振り返る余裕はない。しかし,数年経過すると,自分の行っている理学療法が患者に貢献しているだろうか,対価として診療報酬をもらうに値するか,もっと効果的な理学療法はないだろうかなど,さまざまな疑問に際して悩むようになるだろう。本書のみでその悩みのすべてをたちどころに解決することは困難かもしれない。しかし本書はそのような臨床での悩みを解決するための糸口を提示しており,それにより理学療法士としてステップアップする第一歩となる書籍となるのではないだろうか。
臨床力のブラッシュアップにつながる良書
書評者: 野村 卓生 (関西福祉科学大教授・理学療法学)
 1966年(昭和41年)の第1回理学療法士国家試験合格者183名以降,社会の要請を踏まえた近年にみる急激な養成校の増加により,2016年3月現在,理学療法士国家試験合格者は139,214名となり,毎年約1万人の合格者が誕生するようになった。現在では,多くの施設で新人教育の充実化が図られ,先輩理学療法士のサポートにより,いわば受動型で理学療法士としての経験を積んでいける環境になりつつあると思う。一方で,一定の経験を積んでからは,多くは自己努力(能動型)で,より最善・最良の理学療法を提供する方法を追い求めなければならない。しかし,最近では以前と比べて理学療法にかかわる専門書が多くなったものの,臨床経験も十分でない若手理学療法士がそれを読み解き,内容を理解することは容易ではない。
 本書は《理学療法NAVI》シリーズ『“臨床思考”が身につく運動療法Q&A』』1) (医学書院,2016年)の姉妹本であり,各分野の理学療法に関するエキスパートの臨床思考過程に触れる機会を与える書籍である。
 脳血管障害(急性期および回復期),運動器疾患,心機能・腎機能・呼吸機能の低下した患者,糖尿病,フレイル,誤嚥・嚥下障害および在宅での理学療法に関して,52の質問が挙げられ,その質問に対する回答がおおよそ4~5ページで端的にまとめられている。
 まず,質問に対して2~3つのポイントが短文で述べられている。次いで,そのポイントに対する説明文が,冗長にならないように執筆者が多くの症例から得た経験と長い時間をかけて専門書を読んで修得した内容を示している。読者の内容の理解を助けるために適所に図表が挿入され,特に重要な内容に関しては色文字で区別され,わかりやすい。引用・推奨文献も必要最小限にとどめられ,「です・ます調」で記載されており,読みやすい。今さら聞きにくい内容(例えば「『運動学習』について教えてください」,p.180)についてもコラムとしてまとめていただいており,ありがたい。
 臨床経験を重ね,より最善で最良の理学療法を提供しようと考える若手理学療法士にとって,臨床での疑問を解くカギとなり,さらなる臨床力のブラッシュアップにつながる良書である。シリーズのさらなる展開に期待したい

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