心電図を見るとドキドキする人のための
モニター心電図レッスン

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この波形は緊急事態? 臨床で必要なのは、一瞬の判断。しかも臨床現場で出合う波形は、教科書に出てくる波形と同じとは限りません。だからドキドキするのです。でも大丈夫。緊急事態を判断する3つのルールを身に付ければ、どんな波形でも落ち着いて判断ができます。必要なのは、波形の読み方を身に付けること。疾患ごとに波形を覚える必要はありません。明日からドキドキしないために、モニター心電図レッスンを始めましょう!
大八木 秀和
発行 2012年11月判型:B5頁:112
ISBN 978-4-260-01617-9
定価 1,980円 (本体1,800円+税)

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はじめに
 
 患者さんの急変に,困った経験のないナースはいませんよね。実は私も,研修を始めてすぐに泣きそうになる経験をしました。モニター心電図計を見て病室に走るナース,「ハートコールお願いします」と叫ぶ別のナース。状況から患者さんが急変したんだと一瞬で理解できたものの,恥ずかしながらどの波形が問題なのか,すぐにはわかりませんでした(あとで打ち出した波形を見せてもらうとVf,つまり心室細動でした)。幸い周りのスタッフに助けられ患者さんは無事だったのですが,「どんなに知識があってもゆっくり考える時間はない,臨床現場は時間との闘いだ!」,そう実感しました。
 それから1年,内科当直を始めた頃,深夜に病棟から電話がありました。行ってみると,ナースが不安そうな顔をしながら,「これってVT(心室頻拍)ですか? すぐにキシロカイン®開始したほうがいいですか?」と。よく見ると,確かにVTに形は似ていますが,心拍数は80台。「これはSlow VTだから,様子を見ておいて」と言うと,「本当に大丈夫なんですね,よかった」と,不安そうな顔が笑顔に変わりました。
 心電図の急な変化に,ナースは強い緊張を強いられます。だからこそ心配のない波形だとわかった時には,心底ほっとするのでしょう。「そう言えば,研修を始めた頃は私も不安だったなあ」と,研修の時の経験を思い出しました。
 そんな「心電図にドキドキした」経験があるからこそ,私には心電図をうまく教える自信があります。この本の方法なら,新人ナースでも心電図を理解してくれるはずだと。
 『心電図を見るとドキドキする人のためのモニター心電図レッスン』,略して『ドキモニ』の特徴は,心電図の波形を疾患ごとに覚えさせるのではなく,波形の読み方のルールを解説していること。このルールを身に付ければ,臨床でどんな波形に出合っても,落ち着いて対応できます。最低限,緊急性の高い波形を見分けることができれば,心電図を見ても,それほどドキドキしなくなるはずです。
 そして『ドキモニ』の目標は,まったく心電図に自信のない初心者でも,中級から上級ちょっと手前まで一気に引き上げること。レッスンは大きく3つに分かれ,超初心者でもレッスン1だけ読めば,明日からすぐに役立ちます。そして,2度3度と読むうちにさらに知識が深まり,気付いた時にはもうベテランナースと同じくらいのレベルに! …なんてことも夢ではありません。各レッスンの練習問題で手応えを感じつつ,最後まで楽しみながら読んで下さい。
 もちろん,看護学生,研修医,理学療法士など,モニター心電図に関わる多くの職種の方にも,自信をもってオススメします。
 最後に,執筆の話が持ち上がってからの約1年半,私のわがままな訴えも真摯に受け止め,よきアドバイスを下さった医学書院の品田暁子さん,そしてこの本の解説と絶妙に絡んだ素晴らしいイラストを描いて下さったヨシタケシンスケさんに深く感謝します。
 それでは,これから一緒に心電図をマスターしていきましょう!
 
 2012年9月 大阪,豊中にて
 大八木秀和

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オリエンテーション 知らないと始まらない! 正常の波形と緊急事態の波形
 1 モニター心電図とは
 2 正常の波形とは
 3 超緊急事態の波形

レッスン1 3つのルールで危険な心電図を見分ける
 1 心電図を見分ける3つのルール
 2 ルールを理解するための基礎知識(1) 刺激伝導系って何だっけ?
 3 ルールを理解するための基礎知識(2) 心電図記録,メモリの読み方の基本
 4 ルールを理解するための基礎知識(3) 波形の幅と間隔の正常範囲
 5 ルールを理解するための基礎知識(4) 心拍数,臨床ではどこまで「正常」?
 6 ルールを理解するための基礎知識(5) 心拍数をすばやく知る方法
 7 ルールを理解するための基礎知識(6) QRS幅が狭い,広いってどういうこと?
 8 3つのルールを使って心電図を読んでみよう
  練習問題

レッスン2 4つのステップで瞬時に危険な心電図波形を見極める
 1 心電図を読むための4つのステップ
 2 ステップ1 リズム(RR間隔)を見る
 3 ステップ2 P波を見る
 4 ステップ3 QRS波を見る
 5 ステップ4 ST変化を見る
  練習問題

レッスン3 危険な心電図波形を緊急度別に覚え,瞬時に対応する
 1 心電図波形を緊急度別に覚えよう
 2 レベル3 超緊急事態の心電図
 3 レベル2 緊急事態の心電図
 4 レベル1 準緊急事態の心電図
 5 一時ペーシングが必要な心電図
  練習問題

特別レッスン1 12誘導心電図を有効に使おう
 1 12誘導心電図とモニター心電図の深い関係
 2 3点誘導の位置を換えてみよう

特別レッスン2 慣れれば簡単! 心電図の略語に強くなる
 1 心臓の解剖関連の略語
 2 循環器疾患関連の略語
  練習問題

INDEX


column
 心電図はどうやって生まれた?
 トルサード・ド・ポアンは,なぜ危険?
 心臓で大切なのは,右よりも左!
 心拍数と脈拍数の違い
 肺炎から不整脈?
 “R”がなくてもQRS波?
 基線は本当にまっすぐか?
 心房の震えは最初大きく,やがて小さく
 Lown分類は,グレード2からが要注意!
 12誘導心電図の電極は,すぐにはずさない!

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PTやOTにも役立つ,臨場感あふれる心電図本
書評者: 高橋 哲也 (東京工科大学教授・理学療法学)
 本書『心電図を見るとドキドキする人のためのモニター心電図レッスン』(以下,『モニター心電図レッスン』)では,波形の特徴からモニター心電図を極めてわかりやすく解説している。「この本はいい!」心電図を教えた経験がある者ならば,必ずや誰もが共感する内容である。私もこれまで,医療チームの一員としてこれだけは覚えてほしい(国家試験対策のためにも覚えるべき)内容を厳選し講義資料を作成していたが,この本にはそのすべてが完璧に網羅されている。特に,まさに覚えにくい所,理解しにくい所に,小気味よいコラムが挿入されていて知識の定着をサポートしてくれている。

 心電図(特に不整脈)については理学療法士(PT)や作業療法士(OT)の国家試験で必ず出題されるため,ほとんどのPTやOTは心電図については一通り勉強しているはずであるが,心電図を苦手とする者は少なくない。かくいう私も心電図を理解するため何冊参照しただろう。二十余年の臨床生活でPTとして必要な心電図の基本はマスターし(たつもりで),現在は大学で教鞭をとっているが,経験の乏しい学生に心電図を教えることほど難しいものはない。

 QRSの形が違ったら「心室性~」というようにと,ゆっくりかみ砕いて教えても,数分後にはPVCを「しん……ぼ,……う?」と自信なさげに小声で答える学生がいる。顔で笑っても心では「どう教えたらわかるんだ?」と教員を辞めたくなったのは一度ではない。

 正直,これまでの心電図の成書は,教科書的であったり,専門的すぎたり,一長一短であった。いきなり,Einthovenの三角形,電気的ベクトルが,と書き出されてもそれがどのように臨床に直結するか臨場感に乏しく,波形を暗記するように心電図が列挙されているだけでは,少し形が違う波形が出るだけでわからなくなってしまう。

 3つのレッスンと2つの特別レッスンの章で構成されている『モニター心電図レッスン』では,「心拍数をすばやく知る方法」,「心電図波形を見極める3つのルールと4つのステップ」,「不整脈の重症度の理解」,「ブロック波形」,「心電図の略語」など,大八木秀和先生の心電図を判読する際の目の動き(思考のプロセス)が,見事に表現されている。読み終えると,臨床家としてのスタートラインに立つ自信が湧いてくる。

 「心拍数をすばやく知る方法? 心拍数なんてモニター見ればわかるじゃん」と思うのは早計である。心拍数を読ませる心電図の問題は,PTやOTの国家試験では頻出し,これができないとみすみす1問落とすことになりかねない。

 本書には大八木先生の臨床経験に裏打ちされた知識と,看護師などへの指導経験から,何をどのように話したら理解してもらえるかというノウハウが詰まっている。聞けば大八木先生は薬剤師と医師の2つの国家資格をお持ちとのこと,ダブルライセンスだからこそ丁寧で現場感覚に溢れた内容になっている。

 何よりもタイムリーに挿入されているイラストが最高に微笑ましく,実は心電図の理解を定着させるための最後の一押しになり,苦手な心電図がイラストとともに忘れられないものとなるだろう。

 看護師を主な読者対象として作成されたようであるが,現職のPTやOTをはじめ心電図に苦手意識を持つすべての方のお薦めの逸書である。特に,国家試験を控えた学生には,必ず読むことをお薦めする。
心電図を読む上で最も大切なことに応える一冊
書評者: 生天目 安英 (福島第一病院・循環器内科)
◆心電図はどこから見る? 読む?

 「心電図がわからない!」と言われる看護師さんに「心電図はどこから見ますか?」と質問すると,みなさん,フリーズしてしまいます。

 心電図がわかる方は,自分なりの心電図を見る順序が決まっています。実際は,心電図を読んでいくのに決まった方法はありません。見落としさえなければいいのです。

 心電図の波形を一生懸命覚えても,心電図が読めない一番の理由は,この順序にあります。本書では,心電図を3つのルールと4つのステップから,レッスン形式で読み解きます。

《3つのルール》
 ルール1:心拍数を見る
 ルール2:QRS幅を見る
 ルール3:症状を知る

《4つのステップ》
 ステップ1:リズム(RR間隔)を見る
 ステップ2:P波を見る
 ステップ3:QRS波を見る
 ステップ4:ST変化を見る

 初めの《3つのルール》は,ルールに基づいて,“心電図が正常か? 異常か? を判断できるようになる”ことを目的としています。

 そして心電図と臨床症状と合わせ,緊急度,危険度を即座に判断させることで,心電図波形に特化した,今までのモニター心電図の本とは趣を異にしています。このため,特に夜勤中に心電図の判読を迫られたときに判断に困らないような,看護サイドに立った解説になっています。

 さらに,ルールを理解するための基礎知識についても,かみ砕いた表現で説明されており,“QRS幅が狭い,広いってどういうこと?”といった,超初心者の疑問もわかりやすく解説してあります。

 次の《4つのステップ》では,心電図を“決められた手順で読む癖をつける”ことを目的としています。初めに述べた心電図はどこから見るのか,そして見落としのない読み方について,ステップを通して習得していきます。

 (リズムは?)⇒(P波は?)⇒(QRS波は?)⇒(ST変化は?),常にこの手順を踏む癖をつけるのがねらいです。リズムを“音”でとらえる点は,視覚だけではなく,聴覚を動員して心電図を読むという点で,なるほどと気付かされました。

◆心電図を読む上で最も大切なことは?

 私が本書にとても感銘を受けた点は,臨床を最大限に重視しているところです。臨床医,看護師,医療従事者にとって,心電図が読めることはとても大切なことなのでしょうが,著者がルール3で“症状を知る”と示しているように,まず,患者さんをみることが,最も大切なことだと思います。そしてこれこそが,心電図を習得していく近道なのです。

 波形と症状から,大丈夫な心電図か,緊急を要する心電図かを身体で覚え,“瞬時に危険な心電図波形を見極め,瞬時に対応する”ことが本書の最終目標です。

 本書は心電図に対応する解説がまとまっているため,行間が空いて見やすくなっています。またレッスンごとのイラストが絶妙で場面をイメージしやすいため,一気に読み進められる一冊です。

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