第2487号 2002年5月27日


OSCEなんてこわくない

-医学生・研修医のための診察教室
 監修:松岡 健(東京医科大学第5内科教授)


第11回 静脈採血

新井 盛夫(東京医科大学助教授・臨床検査医学講座)


2421号よりつづく

《静脈採血のポイント》

 採血に適した太く弾力性のある血管を選ぶことが最も大切である。採血ホルダーは利き手で保持し,針が静脈内に正しく入った後はそのまましっかりと固定する。針先が動くと途中で血流が止まってしまったり,患者さんに不安を与えることにもなる。

■手順

(1)正しい採血姿勢をとる
*患者さんは座位で採血者は対面に立つ
*手掌が上になるように片腕を肘枕にのせる
*患者さんの緊張を解く

(2)駆血帯を絞めて穿刺する静脈を選ぶ
*肘内側の皮静脈を選ぶ
*駆血帯を上腕の中間のところで締める
*駆血時間は3分以内を目安にする

(3)皮膚を消毒する
*アルコール綿で擦るように消毒

(4)穿刺し採血する
*針の切り口を上に向け,末梢側から約30度の角度で穿刺
*血管に入ったら針をねかせ3-4mm進めたたところで固定する
*真空採血管を採血ホルダーに差し入れ血液が流入するまで待つ

(5)駆血帯を緩めて針を抜く
*まず駆血帯を緩める
*穿刺部位にアルコール綿を軽く当てながらまっすぐに引き抜く

(6)穿刺部位を圧迫止血する
*直ちにアルコール綿で穿刺部を3分間圧迫止血
*止血後,ガーゼ付き絆創膏を貼付

(7)使用した針を廃棄する
*キャップをせずに専用容器に直接破棄する

■必要な物

  (1)真空採血用の採血ホルダー(あるいはディスポーザブル注射器),(2)20-22Gの注射針あるいは翼状針,(3)駆血帯,(4)消毒用アルコール綿,(5)採血管,(6)肘枕,(7)ガーゼ付き絆創膏,(8)テープ,(9)専用の針捨て容器。


■解説

(1)正しい採血姿勢をとる

 患者さんは座位で行なう。採血者は対面に立ち,患者さんの片腕を手掌が上になるように肘枕にのせていただく。患者さんには,今から採血を行なうことを告げ,なるべくにこやかに話しかけて緊張を解くようにすることが大切である。
 患者さんが緊張していると,針を刺したときに血管迷走神経反射vaso-vagal reflex(VVR)が起こり,気分不良,血圧低下,徐脈,意識消失をきたすことが稀にある。
(2)穿刺する静脈を選ぶ

 

 一般的には肘の内側の皮静脈(尺側正中皮静脈あるいは橈側皮静脈)を選ぶ。駆血帯を上腕の中間のところで締める。浮き上がってくる皮静脈を選び,利き手と逆の指示指の腹で血管の弾力性を確認し,深さを推測する。
 駆血時間は3分以内を目安にし,穿刺部位の選択に時間がかかったときにはいったん駆血帯を緩める。駆血帯は拡張期血圧より強く締めすぎると皮静脈の怒張が目立たなくなることがあるので注意する。
 肘内側の皮静脈がうまく確認できないときには手背の皮静脈から穿刺することがある。この際には駆血帯は前腕の中央部で締める。

(3)皮膚を消毒する

  再度,駆血帯を締めて,目標の皮静脈周囲をアルコール綿で擦るようにして消毒する。

(4)穿刺し採血する

   利き手で採血ホルダー(あるいは注射シリンジ)を上から持ち,針のキャップをはずして切り口を上に向け,末梢側から約30度の角度で穿刺する(写真A)。
 翼状針の場合には針の切り口が上になるように両翼を折り畳んで持ち,同様に穿刺する。
 血管の中に入ったら針の角度をねかせ(皮膚と平行に近くなるようにし)3-4mm先に進めたところでしっかり固定する(注射シリンジを用いた採血の場合には,針が血管に入った時には静脈圧に従って血液の逆流がみられる)。
 真空採血管を採血ホルダーに差し入れて,採血管の中に血液が流入し終わるまで待つ(写真B)。複数の採血管がある時には,針先が動かないように採血ホルダーをしっかり固定しながら採血管を順にホルダーに差し替える。
 抗凝固剤の入った採血管は採血後に静かに数回転倒させながら混和する。


(5)駆血帯を緩めて針を抜く

 採血が終わったらまず駆血帯を緩め,穿刺部位にアルコール綿を軽く当てながら針を静かにまっすぐ引き抜く。

(6)穿刺部位を圧迫止血する

   針を抜いたら直ちにアルコール綿で穿刺部を3分間圧迫して止血する。止血されたら,穿刺部位にガーゼ付き絆創膏を貼り付ける。


(7)使用した針を廃棄する

   針は,再度キャップをせずに専用の針捨て容器に直接廃棄する。
 針にキャップをする時に採血者自身の手指に針を誤刺することがあり,血液を介する感染症の危険性がある。



●連載再開のお知らせ

 2000年1月-2001年1月の間に掲載された連載「OSCEなんてこわくない」は,その後休載しておりましたが,読者の皆様からのご要望により,本号より再開いたしました。今後ともご愛読くださいますようお願い申し上げます。なお,過去の掲載記事は弊社ホームページ内のバックナンバーからご覧になれます。
(連載「第1回:OSCEなんてなぜこわくない?」

「週刊医学界新聞」編集室