第2421号 2001年1月22日


第13回日本内視鏡外科学会開催


 

 第13回日本内視鏡外科学会総会が,谷村 弘会長(和歌山医大教授)のもと,昨(2000)年12月14-15日,大阪市の大阪国際会議場において開催された。
 設立当初は,腹腔鏡を中心とした「研究会」として発足した同学会だが,10年余の短い歴史にもかかわらず飛躍的な発展を遂げ,現在は会員数4000余名を擁する学会に成長した。
 今回は,Jacques Marescaux氏(European Institute of Telesurgery-International School of Surgical Oncology, France)による「Telesurgery in Europe」,および和田努氏(医療ジャーナリスト)による「患者の立場からみた理想の内視鏡外科」の2題の特別講演,特別企画「わが国におけるRobotic Surgeryの現況」,シンポジウム「21世紀の内視鏡外科に求められるもの」,同「内視鏡外科手術における安全対策」,サテライトシンポジウム「内視鏡周辺機器の管理と手術介助の問題」の他,パネルディスカッション7題,ワークショップ10題,650題を超える一般演題が企画された。


21世紀の内視鏡外科に求められるもの

 周知のように,内視鏡外科手術は1987年,フランスのMouret博士によって行なわれた「腹腔鏡下胆嚢摘出術」を嚆矢(こうし)とし,いち早くわが国でも1989年には初の手術が施行され,その後,短期間に飛躍的な普及がみられている。
 シンポジウム「21世紀の内視鏡外科に求められるもの」(司会=埼玉医大 出月康夫氏,九大 杉町圭蔵氏)では,それを証明するように,8名の演者がそれぞれ次のような領域・部位・術式に関して発表した。
 (1)「脳神経外科領域における神経内視鏡手術」(東京女子医大 上川秀士氏)
 (2)「Master-slave型内視鏡下手術装置の現状と課題」(慶大 古川俊治氏)
 (3)「細径内視鏡・鉗子を導入した内視鏡下手術」(独協大 多賀谷信美氏)
 (4)「食道アカラシアに対する腹腔鏡下手術」(日大 山形基夫氏)
 (5)「腹腔鏡補助下幽門側胃切除術」(大分医大 安達洋祐氏)
 (6)「胃癌に対する腹腔鏡下補助遠立側胃切除術」(今給黎総合病院 植村勝男氏)
 (7)「肝細胞癌の内視鏡外科手術」(熊本大 別府 透氏)
 (8)「胸部交感神経遮断術におけるneedlescopic surgeryの導入」(神戸大 山本英博氏)

Master-slave型内視鏡下手術装置の現状と課題

 その中で,「Master-slave型内視鏡下手術装置の現状と課題」を口演した古川氏は,da Vinciシステム(参照)の拡大3次元視野とmasterの動きの縮尺変換に着目し,手指の入り込めない微小術野でのmicrosurgeryへの応用可能性を検討。
 「臨床例では,全24例(胃食道逆流症根治術9例,食道アカラシア根治術4例,胆嚢摘出術9例,総胆管結石載石術1例,再発性鼠径ヘルニア根治術1例)に腹腔鏡下外科手術を行ない,全例で安全な手術が完遂された」と報告した古川氏は,「現状と課題」として,次の3点を指摘した。
 (1)基礎的検討では,術者の動作解析により操作性向上が確認され,内腔1mmのtubeの9-0縫合糸による縫合が可能である。
 (2)臨床例では,胆嚢摘出術ではグリップを残さない胆嚢管・胆嚢動脈の結紮・切離や胆嚢摘出後の腹膜欠損部の修復が可能となり,食道手術では横隔膜脚縫縮や胃皺壁形成が容易となる,などの利点があった。反面,ポートの術創がやや大きくなり,手術時間が延長した。アート相互の干渉を避けるため,装置の計画的設定が重要である。
 (3)Master-slave型内視鏡下手術支援装置は,現状では臨床的利点は少数に留まる。装置の小型化,鉗子の開発と種類の増加,内視鏡の広角化,触覚の伝達,保守整備の簡略化など多くの解決すべき問題があるが,今後の改良が重ねられることにより,内視鏡下手術の操作性向上に役立つものと考えられる。

肝細胞癌の内視鏡外科手術

 一方別府氏は,「肝細胞癌(HCC)の内視鏡外科手術」で,EHR(内視鏡下肝部分切除法),EAT(マイクロ波やラジオ波などの内視鏡下凝固法)と,開腹・開胸による肝部分切除(HR)を行なった症例を比較検討し,その結果を次のように報告した。
 (1)EHR例では術中出血量60g,手術時間3.5時間,術後在院日数8日で,出血量と在院日数はHRと比較して有意に低値
 (2)EHR例では,MAP輸血やFFP投与を必要とした症例はない
 (3)EAT例では,平均11mmのsurgical marginの確保が可能
 (4)EAT例では,5年累積生存率は66%で,肝機能不良例が多いにもかかわらずHRと同等
 (5)出血量は平均50gと極少量
 別府氏はさらに,開腹・開胸手術への移行例は皆無であり,重篤な合併症はなかったことを指摘した上で,「内視鏡外科手術を行なったHCC症例の長期予後は,従来の肝部分切除例とほぼ同等で,低侵襲で癌再発の観点も含めて安全性にも問題がないことから,内視鏡外科手術をHCCの治療体系に積極的に組み込むことが推奨される」と強調した。

21世紀に求められるもの

 「21世紀の内視鏡外科に求められるもの」として,いずれの演者にも共通する以下の指摘は,同時に「内視鏡外科」そのものの特徴とも言えよう。
 つまり,患者に対しては「優しい医療」であり,一方,医師側にとっては「安全かつ簡便な術式」である。さらに後者に関しては,(1)手術機器の改良・開発,(2)手術手技の確立・教育・トレーニング,(3)適応疾患の拡大,(4)保険制度の充実,(5)医療費の削減,(6)遠隔手術指導,などが指摘されている。