医学界新聞

【鼎談】

クリティカル・パス-その導入へ向けて
カレン・ザンダー氏(クリティカル・パスの創始者)とともに

阿部俊子
(司会/東京医科歯科大
・保健衛生学科)
カレン・ザンダー
(Center for Case Management・米)
山崎 絆
(東京都済生会中央病院
・看護担当副院長)


 「クリティカル・パス」が日本の病院で導入されつつある。その背景には,医療費高騰による医療制度改革の動きがある。特に患者の入院日数短縮化は医療費抑制策の大きな目玉とされているが,その中で「クリティカル・パス」は,医療の質を保証しつつコスト削減が図れるとして注目されている。
 そのような中,「クリティカル・パス」の創始者であるカレン・ザンダー(Karen Zander)氏が,さる2月に初来日。同月18-20日に,大阪と東京で講演会を開催(主催:国際治療教育研究所,本紙9面参照)した。同講演会には,アメリカのクリティカル・パスをいち早く紹介(『週刊医学界新聞』1994年11月21日付第2118号,「アメリカ医療レポート(7)「クリティカル・パトとクオリティ・アシュアランス」)した阿部俊子氏と,日本で最初にクリティカル・パスの導入を試みた東京都済生会中央病院の山崎絆氏も演者として登壇した。本紙では,クリティカル・パス導入に関して日本が抱える問題などについて,後者の2氏がザンダー氏に質問をしながら話しをうかがうという形での鼎談を企画。その模様を伝える。


クリティカル・パスの成果

クリティカル・パスが求められた理由

阿部 日本は,かつてない高齢者人口の増加に伴い,医療費の増大が予想されることから,その抑制策を中心とした医療制度の抜本的改革を余儀なくされています。アメリカ同様に,在院日数の短縮が強く望まれていることなどから,現在,日本の看護職や医療職の間ではクリティカル・パス(以下,パス)への関心が高まっています。今日は,アメリカでこのパスを病院の看護マネジャーの時に開発され,現在は「ケアマップ」として登録商標化し,コンサルタント会社を設立(1989年),その管理普及活動をされていますザンダーさんをお迎えいたしました。また,国内ではいち早く4年前からパスを導入されました東京都済生会中央病院の山崎さんと一緒に,日本でよく受けるパスについての質問を中心にザンダーさんにお尋ねし,導入に向けてはどのようなことをしたらよいかなど,お話しを進めていきたいと思います。
ザンダー 日本では本当にパスへの関心が強まっていますね。私のマサチューセッツ州のセンター(Center for Case Management)にも日本からの問い合わせが急増していますし,直接訪問される方も増えました。今回は,初めての日本訪問で直接パスの講義ができ,とても嬉しく思っています。また,山崎さんの講演を聞かせていただきましたが,日本でも正しい方向でパスは使用されていることがわかって大変喜ばしいことです。
山崎 ありがとうございます。
 パスを済生会中央病院で使用し始めて4年目になりますが,病院経営側からはコストコントロールとしての側面だけを強調されがちです。私としてはケアの質の向上につながると考え,パスの導入を行ないました。そのあたりはどうなのでしょうか。
ザンダー コストコントロールという面だけでしたら,パスはアメリカの病院で使い続けられることはなかったでしょう。パスがアメリカで注目されたきっかけは,DRG/PPS(診断群別支払い方式)の導入に伴い,病院の課題として医療費の削減が求められたことにあります。在院日数の短縮が図られましたが,あまりに早く退院させられることで,アウトカム(期待される成果;パスでの退院に向けた設定目標)が達成できないのではないかという危惧がありました。それゆえに,同時にケアの質も向上させなくてはなりませんでした。それはすなわち病院としての評価につながります。特にJCAHO(Joint Commission on Accreditation of Healthcare Organaization:医療施設認定委員会;アメリカ・シカゴに本部のある民間組織。日本の場合,「日本医療機能評価機構」にあたる)の査定では,ケアの質の向上をデータで示すことが求められていますから,それも同時に達成しなくてはいけません。
阿部 アメリカではCQM(Continuous Quality Management;継続的質管理)としてのパスの機能を文献でよくみますが,それはJCAHOの監査のためなのですね。
ザンダー そうです。JCAHOでは,施設におけるケアの質の向上はデータを用いて行なうよう指導しています。ですから,パスを用いた時に,そのバリアンス(変化要因;パスに示された標準ケアから逸脱したケア介入)としてのデータをケアの質の向上の指標にしていきます。導入した病院では,その効果として入院日数の短縮は無論ですが,1件あたりのコストが大幅に下がりました。また,重複していたケアが1本化でき,ケアのプロセスを標準化できたこと,測定可能になったことが大きな成果です。CQMは10年前にはなかったものですが,ケアの内容を他職種のものを含めて紙の上で同時にみられることも成果と言えますし,さらにスタッフの合意確認もでき,患者さんの満足度も高くなりました。

クリティカル・パスにおけるバリアンス

山崎 バリアンス記録に関しては日本ではかなり迷っているところが多いようです。私は,バリアンス記録はすべてのパスの項目にする必要はないと説明していますが。
ザンダー その通りです。バリアンス分析は全項目に行なう必要はありません。必要なデータを集めていくことが大切です。それをクリニカル・インディケーター(clinical indicator)と称していますが,在院日数に大きく影響するもの,ケアの質に大きく影響するものを分類しておくのです。
阿部 導入の最初の段階からバリアンスを分析していくのは難しいのではないでしょうか。日本では,まだほとんどの施設でバリアンスを十分に分析できていません。パスを使用するには段階がありますね。
ザンダー そうですね。パスの導入には3段階あります(表1)。まず,現在の臨床でのケアを書いたパスがあって,第2段階はそれを標準化し,より改善されたパスです。さらに,第2段階のパスのバリアンスをデータとしてシステム改善をしていく過程が必要で,そのCQMとしての過程から第3段階のパスが可能となります。ただし,第1段階から第3段階まで至るには少なくとも2-3年はかかります。というのもシステム全体の改善が必要となるからです。
山崎 日本ではパスの導入で,特に看護記録の種類が整理されると言われています。ある病院では,8種類あった記録がパスの導入で 2種類まで削減できたという報告もあります。アメリカではいかがですか。
ザンダー 看護業務の中の記録時間が20%減少したという報告があります。財政面では,非効率なケアを削減して変動費を削減することができます。
阿部 日本で強調されているもう1つのメリットとして,インフォームドコンセントの充実も可能になるということがあります。済生会中央病院での,経営的な視点からの効果はいかがでしょうか。
山崎 在院日数は,17-18日に安定してきました。さらにCQMとしてのケアの質のコントロールができましたし,記録時間もやや減少しました。在院日数が減少したことから,ベッドの回転率はあがりはじめました。アメリカでは,パス使用の効果はどのように評価をされていますか。
ザンダー 在院日数はすでにかなりコントロールされていますから,やはり経済的な側面での効果と同時に,質のコントロールに対する評価です。特に,チーム医療の達成とケアの質としてのシステムの側面を改善するための効果は大きいですね。
阿部 日本では,パス導入の進んでいる病院ではもう数十のパスを使用していますが,アメリカでは全患者にパスを使用している場合もあるようですね。
ザンダー はい,全米7000の病院のうち100病院では,すべての患者にパスが使用されています。一般的な内科や外科,産科などでは大枠としてのパスが作成されています。患者全員にパスを使用するというのは,その規定のパスの応用となります。さらに「空白のパス」というものがあって,これはケアをしながらパスを作成していく方法です。これらの病院ではバリアンスの扱いも上手に行なっています(表2)。

バリアンスの記録方法

阿部 パスの導入時によく質問されるのがバリアンスの記録の仕方です。フォーカスチャーティングで行なうのがよいのか,POS(SOAP)がよいのかということなのですが,ザンダーさんは,コンサルタントとしてどのように指導されていますか。
ザンダー 記録方法というのは,その病院が決めた方法なら何でもよいと思います。ですから,フォーカスチャーティングでもPOSでもよいわけです。ただし,昔のようなオープン方法で記入していくという記述式はできるだけ避けていきます。
阿部 オープン方法の記入とは,従来から行なわれている記入方法。つまり,看護記録の重複で,1度体温表に記入した内容を繰り返して記入したり,客観的データも看護行動もアセスメントも分類されていないものですね。山崎さんもパスの記録の仕方についてはいろいろと質問を受けているのではないかと思いますが,いかがですか。
山崎 そうですね。記録の仕方にはかなり迷いがあるようです。日本では「クリティカル・パス」という用語が先行して,POSですとか看護診断などと混同されて用いられているために,多少混乱しているように思います。それらとは,どのように整合性をとっていくのがよいのでしょうか。
ザンダー 例えば,バリアンス記録をPOSにするなら,そのバリアンスの生じたものだけPOSで記録していくのです。看護診断に関しては,対象疾患もしくは,対象患者がパスでは特定されていますので,それに対して共通に考えられる看護診断を挿入していくことが大切です。ただし,看護診断という名前は,チーム医療でパスを使用する時には使わないほうがよいかもしれません。「看護が何を診断するのか」という疑念があり,医師やコメディカルスタッフから「看護診断」という名前は嫌われます。チーム医療では,患者の問題点をチームで同意した言語であげることが原則です。そこに,看護だけが使用している言語(看護診断用語)を強制するわけにはいきません。チームでの共通言語としては,看護診断はふさわしいとは思えません。ただ,看護診断の思考プロセスは大切ですし,看護の基礎教育の現場では,看護診断を用いた教育をしていくことは必要です。
阿部 そのような他職種との協働という点での配慮が大切になりますね。それと,看護診断というのは看護における共通言語ですが,パスはチーム医療としての共通言語です。さらに,看護診断のすべてが看護の行動に直結しているわけではありません。一方では,看護介入というアイオワ大学のマクロスキー氏などの考え方もありますが,それがアウトカムと直結するまでにはおよそ10年かかると言われています。

クリティカル・パスの導入に向けて

クリティカル・パスの世界的動向

阿部 アメリカ以外でも,世界的にみてパスが使用されているところが増えているようですが,業務の整理をパスで解決しようという国も多いのでしょうか。
ザンダー そうですね。その国によって違いますね。
山崎 ザンダーさんは,どのような国のコンサルタントをされているのですか。
ザンダー 現在は,ドイツ,メキシコ,シンガポール,オーストラリアなどに関わっています。それ以前はカナダ,英国などもコンサルタントをしていました。
山崎 冒頭でも述べられましたが,日本の医療界はパスへの関心が高くなっています。その導入への追い風になっているのは医療費の定額制への変換だと思いますが,医療費削減の傾向は,日本だけでなく世界的なものということでしょうか。
ザンダー そうですね。ただコストコントロールとしての医療の効率は,行なわれている医療が適正であるという前提条件のもとで可能となるものです。それをなくしてはコストコントロールになりません。パスを使用する時の指標となるのは,第1に医療の適正,次に医療の効率,最後に医療の効果です。適正とは,このパスが適当であるか,効率では,医療効果が最小限の資源で行なうことができたかということです。
阿部 そのプロセスが,前にも話されたパスを用いたCQMということなのですね。
ザンダー そうです。パスのバリアンスを用いてデータを収集して,それに基づいてシステムを改善していくのです。
阿部 日本では医療費の抑制策,つまりDRG/PPSといった定額制の導入とは無関係にパスに火がついた感じもあります。それは,看護職は医療経済に興味のない人も多いために,医療費の定額制導入への危機感を持たない人も多く,その是非はともかくとして,質の保証,管理という意味でパスには興味を持ったという側面もありますね。アメリカでも,公的病院では導入が遅かったようですが。
ザンダー それは,公的な大学病院では経済的な締めつけが一般病院ほどになかったからです。また,大学病院では自分たちを特別視していますので,「ケアの標準化などは考えたことがない」という実情があります。ですから,大学病院ではガイドラインの取り入れは行なわれているのですが,パスの導入は難しいですね。
山崎 日本ではパスを導入したものの,壁に突き当たってしまい,あまり使用されていないという施設もあります。アメリカでもパスを作成する試みは90%以上でしたが,途中で使用を停止したという病院も多いと聞いています。
ザンダー パスを導入するというのは大変な仕事なのです。パスの作成に100%かかわっている人材が必要となります。さらに作成をするだけではなく,いつでもそれを改善していかなければいけないということもあります。先ほども言いましたが,パスの定着には少なくとも3年はかかります。ですから,短期的な結果だけを求めるには手間がかかりすぎます。そういう意味では,パスは統合的な組織の変革も必要となります。一方で,医療の法的規制にも適合しないといけませんし,他の記録との整合性もありますので,パスだけでは単独の運用はできません。その他にも,パスに精通したリーダーが病院を辞めたりして使用しなくなったりすることがあります。パスを使用する自信をつけてほしいのは婦長クラスです。パスの使用において,マネジャーの役割というのは大きいと思います。

医師の参加とクリティカル・パス

阿部 日本では,看護部門が最初にパスにとりかかった病院も多く,看護職だけでパスを使用している施設が多いのですが,本来はチーム医療として取り組むべきものだと思います。そのためには,まず医療チームのリーダーである医師の協力が不可欠だと思いますが,医師の参加を促す方法と秘訣は何でしょう。
ザンダー 医師の参加がないと導入,運用は難しいですね。医療のリーダーは医師ですから,参加してもらうという形ではなく,医師にリードしてもらうという方向でないと協力は得られないでしょう。パスを用いて得られる大きなメリットはチーム医療です。医療というのはオーケストラですから,医師という指揮者は必要です。医師の協力を得るのはどこの国でも難しいのですが,日本でもパスについて書かれている医師もいるのではないですか。
阿部 日本でのパスに関する医師の論文はまだ少ないのですが,「週刊医学界新聞」には,パスの導入をめぐる医師の考え方が掲載されましたね〔週刊医学界新聞2296号,1998年7月6日付「医師のためのクリティカル・パス(済生会山口総合病院 湧田幸雄)」〕。また,医学書院から今月『クリティカル・パス-わかりやすい導入と活用のヒント』(編集=立川幸治,阿部俊子)が発行されましたが,その中で医療経済の立場から立川幸治氏(ドクターズ・オピニオン代表)が詳しく説明しています。ただ,医師の参加というのは日本でも難しいようですね。
山崎 そうですね。医師がどれだけかかわってくれるかは,パスの成功につながる大きな要因になりますね。
阿部 済生会中央病院では,どのようにして医師の協力が得られたのでしょう。
山崎 チーム医療を達成するために,最初に病院長がパスを導入することを推進してくださいました。やはり病院のトップが導入の決定をしないと,医師に参加を求めるのは難しいところがあります。当院は,病院長が日帰り手術の導入に,パスを使用しようと決断されたのですが,その年の年頭の挨拶で「パスの導入」を表明されたことが大きかったですね。他の病院をみましても,病院長がパスの導入の方針を決めるとスムーズに進むようですが,協力的な医師と始めていくことが重要となります。済生会中央病院では,パスの導入に参加してくださる医師を募り,自発的なグループで開発をしていくことにしたのです。
阿部 早期の段階で,医師が参加したとしてもパスを作成する際につまずくこともあるようですが,そういった障害に対する克服の仕方などはあるのでしょうか。
ザンダー まず,パス作成時には医師の存在は欠かせません。医師を最初から巻き込むことが必要で,医師が不在の時にはパスを作成してはいけません。むしろ医師には,対象疾患患者はどういう疾患プロセスなのか,退院基準は何かを教えてもらうようにします。ですから,メンバーとして参加をと考えるより教育者としての役割をお願いしなくてはいけません。その退院基準から,コメディカルスタッフが,自分たちの専門職の立場から退院基準を追加していくようにするのです。
山崎 私どもも,パスの導入には医師を中心とした委員会方式をとり,指導をしていただくというようにしました。また,医師の都合に合わせた委員会の開催としましたし,意欲的にやろうとしている部署から始めましたので,そうトラブルがなくスタートできました。最初から一斉に進めたのではなく,段階的に進めていき,現在に至っているというところです。
阿部 パスを導入しても,医師の仕事量は増えないこと,医師に対する問い合わせは減少するということも,医師が関わっていく大切な要素ですね。もし,看護職だけでパスを使用し始めた場合,後から病院全体に普及させることは可能でしょうか。
ザンダー それは難しいですね。自分の子どもを相手に押しつけるようなものです。
阿部 では,最初から作成し直すというのならどうでしょうか。
ザンダー それなら可能ですね。

ケアの個別性とアウトカム

ケアの画一化とクリティカル・パス

阿部 パスを使用すると,医療ケアが画一化されてしまうのではないか,という懸念があります。これもよく質問を受けることです。ケアの標準化と画一化は異なるのですが,ここに誤解があるような気がします。
ザンダー 患者の個別性への対応は,最低限必要な医療ケアが行なわれてから,可能となることです。患者にとって共通する必要な事項をきちんと整理してあるのがパスですから,逆に個別性を出しやすくなるはずです。そのためには,パスには対象患者に共通する医療ケアの70%を挿入すべきなのです。それ以上に挿入してしまうと,バリアンスだらけになってしまいますし,患者の個別性が出なくなります。
阿部 パスの中に,合併症としての空白項目を挿入することも大切ですね。山崎さんのところではどのような工夫をされていますか。
山崎 まず,患者さんをみてからパスを使用するようにしています。さらに看護問題なども,個別性となるものは独自に挿入するようにしています。

アウトカムとクリティカル・パス

阿部 ザンダーさんは,パスを用いて,「アウトカム指向のケア業務を整理していく」ということを文献で書かれていますね。
ザンダー ええ,パスを用いてアウトカム指向の医療ケアが達成できます。アウトカムは医師の退院基準と考えてよいでしょう。何をアウトカムとして求めるのかが重要となりますが,入院時の最終アウトカム(到達目標)を明記し,それを達成するために必要なケア内容を記入していくのです。無論その評価というのも重要です。これらのことは,私どものセンターでは特に焦点をあてて指導をしています。
阿部 アウトカムは,医師の退院基準だけではなく,看護や他職種の退院基準にも必要ですね。例えば,疾患を理解すること,リハビリテーションや服薬の必要性を理解することなどは,コメディカルにとってもその役割上必要でしょう。
ザンダー その通りです。
山崎 日本では,アウトカムが入っているパスはまだ少ないのが現状ではないでしょうか。
ザンダー アウトカムは大切です。医療ケアで,何を達成しなければいけないのかを見極めることですが,アウトカムを用いて業務の内容の評価を行なうことができます。また,バリアンスを測定する時には,このアウトカムからの逸脱をみていくことが大切です。さらにアウトカムを明確にしないと,「どこに向かっているのかわからなければ,そこに向かう道の数はいくらでもありうる」からです。ケアとして正しいことを行なっていても,それがアウトカムに直結するとは限りません。
山崎 退院基準は,大目標としてのアウトカムと理解できますが,日々のアウトカムとはどのようなものと考えればよいのでしょうか。
ザンダー 退院基準を定められた日程期間内で達成するために,毎日どれだけ状態が改善されていかなければいけないのかという,指標として考えてください。

クリティカル・パスのフォーマット

山崎 先日,ザンダーさんのセンターをお訪ねした時にパスをみせていただいたのですが,それは1日分が1枚()になっているものでした。済生会中央病院もそうですが,多くは1週間,もしくは入院期間分がB4大の用紙1枚にまとめてあります。ザンダーさんが,1枚が1日分とした必要性はどのようなことからですか。
ザンダー パスにグラフを挿入したりする場合には1日1枚となります。
阿部 疾患経過を把握しやすいのは,疾患経過が1枚の用紙に全部まとめてあるほうだと思います。山崎さんがおっしゃいましたように,日本では全疾患過程が1枚になったものを多く見ます。
ザンダー まあ,目的次第ですね。全過程をわかりやすくするためには,確かに1枚に全過程が書かれたものが必要でしょう。もし,1日1枚の救急医療用のものがありましたなら,全体がわかるようになっているものが必要かどうかは,オプションとなりますでしょう。
阿部 今日は,いろいろと貴重なお話をありがとうございました。

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表1 クリティカル・パス3段階的導入
第1段階現在行なっている臨床ケアのまとめ
第2段階標準化して改善したクリティカル・パス
第3段階バリアンスをデータとしてシステム改善したクリティカル・パス
(数年かかる)


表2 全患者にクリティカル・パスを用いる方法
1.主な疾患へはクリティカル・パスを作成
2.一般外科・一般内科などの大枠のクリティカル・パスを作成する
3.空白のクリティカル・パスを用いて,患者によってクリティカル・パスを作成しながらケアを
  行なう