理学療法ジャーナル Vol.57 No.1
2023年 01月号

ISSN 0915-0552
定価 1,980円 (本体1,800円+税)

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特集 多様化する急性期理学療法

 2014年6月に成立した「医療介護総合確保推進法」(地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備に関する法律)によって制度化された「地域医療構想」は,将来人口推計をもとに2025年に必要となる病床数を4つの医療機能ごとに推計し,病床の機能分化と連携を進め,効率的な医療提供体制を実現する取り組みである.4つの医療機能の1つである高度急性期では早期リハビリテーションの推進が期待されており,急性期理学療法においても新たな役割や扱うべき新しい課題が誕生している.本特集では,急性期病院での理学療法士の役割が広がるなかで,変化の著しい急性期理学療法の多様化についてまとめた.

救命救急集中治療室における早期離床・リハビリテーション 松嶋真哉
 2022年度の診療報酬改定によって,早期離床・リハビリテーション加算の算定要件が拡大され,集中治療領域での早期離床・リハビリテーションは,患者の長期的予後を改善のための重要な治療手段の一つとして位置づけられるようになってきた.救命救急集中治療室をはじめとする集中治療室での変化をまとめ,早期離床・リハビリテーション加算を算定するうえでの問題点や,今後の課題について述べる.

小児集中治療室(PICU)における早期離床・リハビリテーション 熊丸めぐみ
 重症小児に対する早期リハビリテーションの取り組みは年々増加している.重症小児に対する早期リハビリテーションの効果については知見に乏しいが,小児集中治療室(pediatric intensive care unit:PICU)退室後の生活を考慮しながら,個々の成長発達段階に合わせたリハビリテーションをチームの一員となって提供していくことが理学療法士に求められる役割となっている.

熱傷センターにおける早期離床・リハビリテーション 久保貴嗣,他
 熱傷,気道熱傷では,単なる皮膚損傷ではなく全身疾患に発展し多様な症状を呈する.リハビリテーション介入においては病態,病期を十分に理解する必要がある.また,熱傷患者は皮膚バリアー機能がなくなり易感染状態となるため十分な感染対策を行ったうえでの介入が重要となる.日本熱傷学会から発表された「熱傷診療ガイドライン改訂第3版」にはリハビリテーションの項目が収載され,質の高い診療が求められる.

プレハビリテーション──がんの外科領域 井上順一朗
 がんに対する胸腹部手術ではさまざまな術後合併症が生じるリスクが高く,特に高齢がん患者ではそのリスクはさらに増大する.そのため,術前より患者の全身状態を把握し,必要であれば積極的にプレハビリテーションを行い,身体・精神機能やADLを維持・改善させるだけでなく,術後合併症の予防や生存期間の延長,入院期間の短縮や再入院率の低下,医療費の抑制などに努めることが重要である.

プレハビリテーション──整形外科領域 和田 治,他
 人工膝関節全置換術患者を対象としたプレハビリテーションは術前エクササイズ(preoperative exercise)と術前教育(preoperative education)から構成され,術後回復の促進や入院期間を短縮する可能性を有することなどを理由に推奨されている.本稿では,術前エクササイズと術前教育に関して,ガイドラインを参照してエビデンスをまとめた後に,それらのエビデンスに基づき当院で行っている取り組みを述べる.また,今後の課題としてスマートフォンアプリのプレハビリテーションへの使用も紹介する.

プレハビリテーション──心臓外科術 阿部隆宏
 わが国では,高齢化や低侵襲集手術の普及などにより高齢心臓外科患者が増加している.高齢患者はフレイルを高率に合併することや高齢者特有のさまざまな問題をもっていることが多く,多面的な介入が必要になる.特に術前から身体機能が低下していると術後合併症発生率が高くなることや在院日数が延長すること,身体機能の改善に退院後も長期間を要することから,術前から身体機能の向上を図るプレハビリテーションが注目されている.

急性期遠隔理学療法 青山大輝,他
 新型コロナウイルス感染症の流行を契機に,遠隔リハビリテーションが再注目されている.不動が引き起こす廃用症候群の予防や血栓症予防として,感染伝播リスクを考慮した遠隔理学療法を急性期から導入し,一定の活動量を確保する方策を講じることが重要である.急性期における遠隔理学療法の効果や有効性は,少しずつ示され始めており,リハビリテーション領域の新たな発展に貢献することが期待できる.

急性期病院での労務管理・メンタルヘルス・ハラスメント対策 平田和彦
 急性期病院では,患者の高齢化や疾患の重症化,多疾患併存の患者が増加している.一方で在院日数の短縮が求められており,早期リハビリテーション治療によるpatient flow managementの改善が期待されている.これらを実行していくためには,根拠のある運営戦略と人材育成計画,さらにはメンタルヘルス・ハラスメント対策など労務管理が重要である.本稿では広島大学病当院で実際に行っている対策について解説する.

Topics 急性期病院でのゲーミフィケーション応用の可能性 澤 龍一,他
 ゲーミフィケーションとは「モチベーション向上」と「継続性の促進」を促すデザイン手法の一つである.アクティブビデオゲームを活用した運動療法の有用性の検証が研究ベースで進んでいる.急性期における課題である入院関連能力低下を予防するために,リスクを考慮したうえで身体活動を促す必要があり,アクティブビデオゲームを急性期理学療法に応用できる可能性が模索されている.

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特集 多様化する急性期理学療法

エディトリアル 多様化する急性期理学療法
高橋哲也

救命救急集中治療室における早期離床・リハビリテーション
松嶋真哉

小児集中治療室(PICU)における早期離床・リハビリテーション
熊丸めぐみ

熱傷センターにおける早期離床・リハビリテーション
久保貴嗣,他

プレハビリテーション──がんの外科領域
井上順一朗

プレハビリテーション──整形外科領域
和田 治,他

プレハビリテーション──心臓外科術
阿部隆宏

急性期遠隔理学療法
青山大輝,他

急性期病院での労務管理・メンタルヘルス・ハラスメント対策
平田和彦

─Topics─ 急性期病院でのゲーミフィケーション応用の可能性
澤 龍一,他


■Close-up パラリンピックブレイン
パラアスリートの脳研究
中澤公孝

パラアスリートにみるヒト脳の適応可能性──理学療法士の立場で考える
中西智也


●とびら
一人の人間としての自分が理学療法士であるということ
三浦正徳

●「経営者」の視線 新連載
私が中・大規模病院の理学療法科のトップに任命されたら──組織マネジメント,経営の定石を起点に
山根一人

●臨床研究のススメ──エビデンスを創ろう 新連載
臨床研究の誕生
山科俊輔

●臨床に役立つアプリケーション活用術  新連載
動作分析アプリKinovea
多米一矢

●臨床実習サブノート
退院後から振り返るゴール設定──推論を事実と照合して学ぶ 8
在宅復帰 歩行外出自立
古川美緒子,他

●報告
腰痛患者のドローイン動作における腹横筋と内腹斜筋の筋厚変化率
池田俊史,他

●症例報告
回復期脳卒中患者に対する末梢神経電気刺激とGame-Based Exercisesの併用がバランス能力に与える影響──ABABデザインを用いた1症例での検証
奥野博史,他

●紹介
結核に対する理学療法の紹介
垣内優芳,他

●私のターニングポイント
出会いと体験によるパラダイムシフト
唐木大輔

●My Current Favorite 10
行動経済学でスタッフ・患者が能動的に動ける環境づくり
久川裕美子

●臨床のコツ・私の裏ワザ
テニス肘に対する他関節からの運動療法
岡村 俊

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