BRAIN and NERVE Vol.75 No.7
2023年 07月号

ISSN 1881-6096
定価 2,970円 (本体2,700円+税)

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前号「Part1 中枢編」に続いて“自己抗体の今”を取り上げる。鼎談ではアクアポリン4抗体やガングリオシド抗体発見の経緯から,自己抗体測定法の進歩,測定結果を解釈するうえでの注意点まで,示唆に富む議論が交わされた。各論文では,それぞれの疾患で現在明らかになっている自己抗体や臨床的特徴,抗体の病原性,治療法などを網羅的に解説している。「中枢編」と合わせて読むことで,自己抗体に関する知見をいっそう確かなものとし,患者さんへの治療に還元してほしい。

【鼎談】Antibody Update 10年—自己抗体は脳神経内科の臨床をどのように変えたか
藤原 一男 , 海田 賢一 , 神田 隆            

ギラン・バレー症候群—日常診療での自己抗体の意義  古賀 道明
自己抗体の測定は,ギラン・バレー症候群(Guillain-Barré Syndrome:GBS)やフィッシャー症候群の診療に欠かせない検査となった。しかし,実際に測定される抗体は種類が非常に多く,感度や特異度は必ずしも十分ではない。さらに検出される抗体の意義は抗体ごとに異なっている。特に脱髄型GBSでは診断マーカーとして確立した自己抗体は未同定であり,検査の限界を理解していないと,検査結果が診断をミスリードしかねないことに留意すべきである。

慢性自己免疫性脱髄性ニューロパチー  緒方 英紀
過去10年でランヴィエ絞輪部,傍絞輪部に局在する膜蛋白に対する自己抗体の存在が明らかとなり,自己免疫性ノドパチーの概念が提唱された。免疫グロブリンM(immunoglobulin M:IgM)単クローン血症に伴うミエリン関連糖蛋白質抗体は難治性脱髄性ニューロパチーを引き起こす。ジシアロシル基を有するガングリオシドに対するIgM自己抗体,IgM GM1抗体,IgG LM1抗体も各種慢性自己免疫性脱髄性ニューロパチーの診断・治療方針決定に役立つ。             

自己免疫性自律神経節障害—「10の課題」を解くために  中根 俊成
自己免疫性自律神経節障害(autoimmune autonomic ganglionopathy:AAG)患者血清からはニコチン性自律神経節アセチルコリン受容体(ganglionic acetylcholine receptor:gAChR)に対する自己抗体が検出される。gAChR抗体は病原性を有し,自律神経節におけるシナプス伝達を障害することから自律神経障害を引き起こすことが知られている。近年,AAGの臨床像に関する報告のほか,1)新しいgAChR抗体測定法,2)免疫治療の有用性,3)新規動物モデル,4)新型コロナウイルス感染症とそのワクチン接種と自律神経障害の関連,5)がん治療における免疫チェックポイント阻害薬の免疫関連副作用として自律神経障害,などが注目されている。筆者らは以前にAAGの病態や実際の診療上の問題を理解していくための臨床と研究における「10の課題」を設定した。本論では最近5年間の研究の動向を織り込みつつ,「10の課題」の1つひとつに関する研究の現況を解説する。 

重症筋無力症と自己抗体  鵜沢 顕之
重症筋無力症は自己抗体が病態の中心にある代表的な自己抗体介在性免疫疾患である。重症筋無力症の病原性自己抗体としてAChR抗体,MuSK抗体,Lrp4抗体が知られているが,Lrp抗体に関しては疾患特異性などの観点から病原性自己抗体として十分確立しているとは言えない。これら自己抗体の神経筋接合部における標的,抗体陽性の意義,臨床像と治療,予後の差異などに関して概説する。​​​​​​​             

ランバート・イートン筋無力症候群—病原性自己抗体の臨床的意義  本村 政勝 , 入岡 隆
ランバート・イートン筋無力症候群(Lambert-Eaton myasthenic syndrome:LEMS)の約90%はP/Q型電位依存性カルシウムチャネル(P/Q-VGCCs)抗体が陽性で,小細胞肺がんなどのがんを合併する傍腫瘍性と非傍腫瘍性に分類される。本邦の診断基準では,筋力低下に加えて電気生理の異常が必須である。一方,自己抗体は病因診断に有用であり,治療方針を左右する。われわれは,重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン2022に基づいて網羅的にレビューし,さらに,P/Q-VGCCs抗体が陽性であったPCD without LEMSの1症例を提示し,自己抗体の臨床的意義を検討した。​​​​​​   

筋炎関連自己抗体(1)—皮膚筋炎  藤本 学
皮膚筋炎は多様な疾患であり,その診療にはより均質なサブセットに分けて考えることが必要である。自己抗体は臨床所見と強く相関するため,このようなサブセットに分類するうえで有用なツールとなる。皮膚筋炎では,これまでに5つの自己抗体が特異的自己抗体としてその臨床的意義が確立している。その他にも,さまざまな自己抗体が報告されており,病因や病態を考えるうえでも興味深いものがある。​​​​​​​             

筋炎関連自己抗体(2)—免疫介在性壊死性ミオパチー  冨滿 弘之
免疫介在性壊死性ミオパチー(immune-mediated necrotizing myopathy:IMNM)は筋病理学的な根拠から2004年に多発筋炎から独立した疾患群である。典型例では亜急性に進行する近位筋優位の筋力低下と,筋線維壊死を反映した血清クレアチンキナーゼの著明な上昇を認める。さまざまな病態が原因と考えられるが,SRP抗体あるいはHMGCR抗体を伴う症例が多く,これらの抗体が病態に関与していることが証明されてきている。筋炎同様に免疫治療を行うものの,ステロイド治療抵抗性の症例も多く,集約的な治療を必要とすることが多い。​​​​​​​ 

筋炎関連自己抗体(3)—抗合成酵素症候群関連筋炎  漆葉 章典
抗合成酵素症候群関連筋炎は自己免疫性筋炎の主要病型の1つで,抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体の存在により定義される。骨格筋に加えて肺,関節,皮膚などが障害される。抗体のサブタイプにより症状の程度に違いがあり,抗OJ抗体では筋症状が重篤化しやすい。筋病理では筋束辺縁部壊死など筋束辺縁部から筋周鞘にかけての変化が目立つ。同部では形質細胞に有利な微小環境が生じており,病態理解のうえで注目される。​​​​​​​ 

筋炎関連自己抗体(4)—封入体筋炎  山下 賢
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封入体筋炎は,嚥下障害や手指・手関節屈筋群,大腿四頭筋の筋力低下と筋萎縮が緩徐に進行する難治性筋疾患である。診断には侵襲を伴う筋生検が不可欠である。約半数の患者血中に細胞質5'-ヌクレオチダーゼ1A抗体が検出されるが,本抗体の診断的意義については肯定的な意見がある一方,有用性には限界があるとの見解もある。病因的意義を支持する能動免疫の結果が示されているが,今後より詳細な検証が必要である。

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特集 Antibody Update 2023 Part 2 末梢編

【鼎談】Antibody Update 10年──自己抗体は脳神経内科の臨床をどのように変えたか
藤原一男×海田賢一×神田 隆

ギラン・バレー症候群──日常診療での自己抗体の意義
古賀道明

慢性自己免疫性脱髄性ニューロパチー
緒方英紀

自己免疫性自律神経節障害──「10の課題」を解くために
中根俊成

重症筋無力症と自己抗体
鵜沢顕之

ランバート・イートン筋無力症候群──病原性自己抗体の臨床的意義
本村政勝,入岡 隆

筋炎関連自己抗体──(1)皮膚筋炎
藤本 学

筋炎関連自己抗体──(2)免疫介在性壊死性ミオパチー
冨滿弘之

筋炎関連自己抗体──(3)抗合成酵素症候群関連筋炎
漆葉章典

筋炎関連自己抗体──(4)封入体筋炎
山下 賢


■総説
組織学的アプローチからのALS診断バイオマーカー──筋病理と筋内神経束へのリン酸化TDP-43発現
倉重毅志


●医師国家試験から語る精神・神経疾患
第7回 双極性障害を診わける
澤田恭助

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