理学療法ジャーナル Vol.56 No.1
2022年 01月号

ISSN 0915-0552
定価 1,980円 (本体1,800円+税)

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機能解剖と理学療法

 動的組織が有する身体運動との関連性については理学療法そのものと密接に関係する.屈筋や伸筋という分類がされていても,実際はそれ以外の思わぬ作用を有すること,習慣的な姿勢や運動がもたらす身体変化は予測を超えていることなどは,実際の患者とのやりとりのなかでしか把握できないものである.定型的な評価も考え抜かれた治療もすべての礎は機能解剖であるといえる.身体が運動する瞬間の機能的役割については把握が不十分な点もある.本特集によって機能解剖をさらに深く理解し,考察するきっかけとしたい.

解剖学からみる運動器の特徴と理学療法とのかかわり 坂井建雄
 理学療法はADLの改善とQOLの向上を目的として行われる.ADLの主体となるのは運動器であり,骨格・関節・筋肉の構造を扱う解剖学の知識は理学療法士にとって必須といえる.本稿では骨格筋の解剖学についてその歴史をひもときながら基本を概観するとともに,臨床に役立たせるためのベースとなる知識を解説する.骨格筋の解剖学には長い歴史があるが,筋の内部構築などこれから明らかにすべきことがまだ数多くある.

頸部の機能解剖と理学療法 中村幸之進
 頸椎は可動性と安定性が同時に要求される部位である.課題・作業環境に応じて,頸椎の表層と深層の筋群が協調して働くことで,安定性を提供しながら頭部を動かすことを可能としている.動きの評価・エクササイズの実施にあたって,筋機能や関節機能などの機能解剖の知識は指標となる.本稿では,頸椎の伸展,頸部伸筋群に焦点を当て,頸椎の機能解剖,頸椎伸展動作の評価,頸部伸筋群のエクササイズについて述べる.

肩関節の機能解剖と理学療法 春名匡史,他
 腱板機能テストは側臥位での肩関節挙上運動が有用と考えている.この運動時に評価すべき点は肩甲骨下方回旋運動である.肩甲骨下方回旋運動が腱板機能低下により生じている場合,肩甲骨下方回旋運動を抑制すると疼痛および筋力発揮困難が生じる.腱板機能の改善が期待できる場合,肩甲骨下方回旋運動は抑制すべき運動であるが,腱板機能の改善が期待できない腱板大断裂保存症例などでは獲得すべき運動である.

肘関節の機能解剖と理学療法 川崎卓也,他
 肘関節は手関節と肩関節の中間に位置することから,双方の影響を受けやすい.また上肢帯と連結する体幹の影響も受けやすい.そのため肘関節の機能障害に対する理学療法を行う場合,肘関節への直接的なアプローチだけでなく,手関節・肩関節・体幹との関係性を考慮した間接的なアプローチも重要になる.そこで本稿では,肘関節の機能障害に対して,筆者が実践している直接的・間接的なアプローチについて紹介する.

胸部の機能解剖と理学療法 多々良大輔
 胸部は多くの関節から構成されているが,胸部そのものに症状を有することは少なく,二次的に他領域に影響を及ぼしていることが少なくない.本稿では胸部の機能解剖について述べるとともに,頸部,腰部へ及ぼす影響について,細かな理学検査によって主要な機能障害を抽出する手続きについて紹介する.

腰部の機能解剖と理学療法 荒木秀明
 胸腰筋膜の構造とその周辺解剖,胸腰筋膜を中心にした後部靱帯系の生体力学と臨床的効果について論述する.胸腰筋膜周囲の他動的結合組織と能動的筋組織の統合性を検討し,腰痛や骨盤帯痛に関連する病態をレビューした.その病態に対して,胸腰筋膜に関連する腹筋,背筋,下肢筋の筋群と腱膜モデルを提示して,胸腰椎から骨盤帯の安定化に対する実際の運動療法を提案した.

股関節の機能解剖と運動療法 山﨑 敦
 上半身と下半身をリンクする骨盤と関節をなす股関節は,直立二足歩行を行うヒトにおいて機能解剖学的に重要である.多軸性関節であることから大きな可動性が存在する一方で,下部体幹と連動した安定性が不可欠となる.そのため,股関節の機能障害も多岐にわたり,重度な場合には手術療法が適応される.本稿では特定の疾患に特化せず,股関節周囲筋の機能異常を中心に捉えた運動療法を,機能解剖学的基礎知識と合わせて解説する.

膝関節の機能解剖と理学療法 福田奨悟,他
 変形性膝関節症の疼痛は,膝蓋下脂肪体,半膜様筋,内側側副靱帯由来が多い.膝蓋下脂肪体由来の疼痛に対する理学療法は,膝蓋下脂肪体の柔軟性を改善する.半膜様筋由来の疼痛に対する理学療法は,半膜様筋anterior armの脱臼を抑制して伸張性を改善させる.内側側副靱帯由来の疼痛に対する理学療法は,内側側副靱帯表層の滑走を改善させる.関節軟骨由来の疼痛は,Kellgren‒Lawrence分類grade IVで生じ,手術療法が適応となる.

足関節の機能解剖と理学療法 小林 匠
 足部・足関節には多くの骨・関節が存在し,これら一つひとつが正常に動き,正常に連鎖することで,正常な足関節運動が獲得される.荷重位での足関節底背屈運動には,距腿関節だけでなく,下腿内旋や距骨下関節・ショパール関節外がえし,足趾伸展など,多くの関節運動が関与する.そのため,足部・足関節の理学療法では,各関節運動と運動連鎖を丁寧に評価し,その評価結果に基づき治療を進めることが重要である.

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特集 機能解剖と理学療法

解剖学からみる運動器の特徴と理学療法とのかかわり
坂井建雄

頸部の機能解剖と理学療法
中村幸之進

肩関節の機能解剖と理学療法
春名匡史,他

肘関節の機能解剖と理学療法
川崎卓也,他

胸部の機能解剖と理学療法
多々良大輔

腰部の機能解剖と理学療法
荒木秀明

股関節の機能解剖と運動療法
山﨑 敦

膝関節の機能解剖と理学療法
福田奨悟,他

足関節の機能解剖と理学療法
小林 匠


■Close-up メカノセラピー メカノバイオロジーと理学療法
物理的外力のコントロール――メカノバイオロジー・メカノセラピーと理学療法
小川 令

メカノセラピーと理学療法
望月 久

メカニカルストレスの影響
森山英樹,他


●画像評価――何を読み取る? どう活かす?
一次性変形性股関節症
川端悠士

●とびら
会話や言葉に注意しながら
尾谷寛隆

●スポーツ外傷・障害の予防
前十字靱帯損傷
小柳磨毅,他

●理学療法のスタート――こうやってみよう,こう考えていこう
・「もうすぐ理学療法士,どうしよう?」「もうすぐ2年目! 早いなあ」でも大丈夫

・体に触れるよ 動きましょう 「合わせてともに」――介助・評価のコツ 
永冨史子

●臨床実習サブノート 診療参加型臨床実習――「ただ見ているだけ」にならないように・10!
集中治療室
西原浩真

●追悼
山田英司先生を偲んで
福井 勉

●報告
慢性閉塞性肺疾患患者に対する外来呼吸リハビリテーションの有用性――2年以上の継続が及ぼす影響
仙石敬史,他

●報告
荷重位での股関節内転可動域運動は人工股関節全置換術例の自覚的脚長差を即時的に改善させるか?――ランダム化クロスオーバーデザインを用いた検討
川端悠士,他

●症例報告
X線検査から腰部脊柱管狭窄症が疑われた絞扼性伏在神経障害患者
窪 浩治,他

●私のターニングポイント
心の中にあった課題
山本理恵子

●文献抄録
春山幸志郎・澤 龍一・秦 綾花・波平萌子

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