BRAIN and NERVE Vol.74 No.3
2022年 03月号

ISSN 1881-6096
定価 2,970円 (本体2,700円+税)

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特集 中枢性自律神経障害update

 自律神経障害は,さまざまな神経疾患に伴う病態であり,治療対象となるばかりでなく鑑別診断を行う際の1つの根拠ともなり得る。本特集では中枢性に絞り,自律神経そのものの解剖や機能に加え,脳血管障害,神経変性疾患,頭痛,てんかん,睡眠障害における自律神経障害の病理,鑑別診断,治療をまとめた。中枢性自律神経障害の最新情報をアップデートし,また,俯瞰的に捉えることで,本病態に対する診療をブラッシュアップしていただきたい。

中枢自律神経線維網の形態と機能に関する最近の知見 山元敏正
 近年の脳機能画像研究により,中枢自律神経線維網(CAN)を構成する領域は大脳皮質から脊髄まで広範囲でかつ機能的連絡が強く,またCANが自律神経機能を包括的に制御していることが明らかになってきた。そしてCANの機能は自律神経機能検査により評価することが可能である。CANの機能を明らかにすることは,急性脳血管疾患や神経変性疾患だけでなく,精神的脆弱性を伴う体位性頻脈症候群や一部の精神疾患の病態を理解するうえでも重要である。

脳血管障害と自律神経障害 伊藤義彰
 脳血管には自律神経として交感神経と副交感神経が分布しており,三叉神経による逆行性伝導とともに脳血流を調整している。脳血管の神経性調節は,脳機能が活性化した際に血流増加をもたらすカップリング機構,血圧変動に対する血流の自動調節能など生理機能に関わる。また血管狭窄病変の末梢で生じる血管の拡張,血行再建時の過灌流,可逆性脳血管攣縮症候群,片頭痛など,さまざまな疾患の病態に関わる。

純粋自律神経不全症の病理 村山繁雄,齊藤祐子
 純粋自律神経不全症は,レビー小体病の一型で,末梢自律神経系を病変の首座とする。診断には,多系統萎縮症,アミロイドーシスを中心とする末梢神経障害の除外が必要で,前者にはMRI,後者には神経伝導速度検査,腓腹神経生検が有用である。MIBG心筋シンチグラフィ陽性,発汗障害をもとに行った皮膚生検でレビー小体病理を高率に認めた。長期経過においては認知症状が加わることが多く,小阪憲司博士が提唱したびまん性レビー小体病の病理像に合致する。末梢性の要素に加え,中枢性要素との複合が特徴的であり,進行が緩徐であるため両者への配慮が必要である点において,脳神経内科の関与が重要な疾患領域である。

レヴィ小体病の自律神経障害 中村友彦
 レヴィ小体病はパーキンソン病,レヴィ小体型認知症,レヴィ小体を伴う純粋自律神経不全症を含む概念であり,いずれもさまざまな自律神経障害をきたすことが特徴である。動物実験でαシヌクレインの自律神経を介した末梢から中枢への進展が証明され,自律神経はレヴィ小体病研究において重要な役割を果たしている。本論では代表的な自律神経障害について,その病態,特徴,治療を概説する。

多系統萎縮症と自律神経障害 榊原隆次
 シャイ・ドレーガー症候群は1960年に報告され,その後,線条体黒質変性症およびオリーブ橋小脳萎縮症と病理学的に同一の疾患であることがわかり,1997年から多系統萎縮症(MSA)と呼ばれるようになった。MSAは,さまざまな自律神経障害と運動障害を呈する難病であり,その症状の多様さから診療科を越えた連携が重要である。本論では,主にMSAの自律神経障害の鑑別点について詳述する。

タウオパチーにおける自律神経障害の捉え方 古賀俊輔,饗場郁子
 進行性核上性麻痺(PSP)と大脳皮質基底核変性症(CBD)は非定型パーキンソン症状を呈するタウオパチーである。PSPでは排尿障害や便秘は頻繁に認められ,生命予後に影響することが明らかになった。一方,起立性低血圧はPSPでは稀で,多系統萎縮症やレビー小体病との鑑別に有用である。CBDでも排尿障害が頻繁に見られ,尿失禁はCBDの臨床病型であるPSP症候群の診断基準に含まれているものの,さらなる検証が必要である。

三叉神経・自律神経性頭痛 古和久典
 三叉神経・自律神経性頭痛(TACs)の特徴は,一側性であることと,頭痛と同側に顕著な頭部副交感神経系の自律神経症状を呈することである。『頭痛の診療ガイドライン2021』が診断,治療の一助となる。TACsの病態において,視床下部の活性化,三叉神経-自律神経反射の活性化,内頸動脈拡張やニューロペプチドのいずれもが相応に関与していると考えられているが,不明な点も多く今後のさらなる検討がまたれる。

てんかんと自律神経 川合謙介
 てんかん発作では,自律神経中枢へのてんかん活動の波及によりさまざまな自律神経症状が出現する。一部の症状はてんかん焦点の部位や左右側の同定の助けとなる。自律神経は大脳活動を調節しており,迷走神経刺激はさまざまな精神神経疾患の治療として注目されている。てんかん治療に用いられる迷走神経刺激療法は,上行性伝導により脳幹から視床を経て大脳皮質を広汎に安定化し異常興奮性を抑制すると想定される。

睡眠障害と自律神経障害 角 幸頼,角谷 寛
 ノンレム睡眠中は副交感神経が優位となり,レム睡眠中は交感神経が優位となる。自律神経系のバランスの変化により,ノンレム睡眠中は心拍数と血圧が低下し,レム睡眠および覚醒中には上昇する。非侵襲的な自律神経解析手法である心拍変動解析は,閉塞性睡眠時無呼吸のスクリーニングや,レム睡眠行動障害に合併する自律神経障害により生じる起立性低血圧の予測において,有用である可能性がある。

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特集 中枢性自律神経障害update

中枢自律神経線維網の形態と機能に関する最近の知見
山元敏正

脳血管障害と自律神経障害
伊藤義彰

純粋自律神経不全症の病理
村山繁雄,齊藤祐子

レヴィ小体病の自律神経障害
中村友彦

多系統萎縮症と自律神経障害
榊原隆次

タウオパチーにおける自律神経障害の捉え方
古賀俊輔,饗場郁子

三叉神経・自律神経性頭痛
古和久典

てんかんと自律神経
川合謙介

睡眠障害と自律神経障害
角 幸頼,角谷 寛


■総説
国際脳ヒト脳MRI研究プロジェクトによる精神疾患の病態解明
小池進介,他

■Case Report
Gastric Ulcer Caused by Contact with a Bumper Type Gastrostomy Tube in Amyotrophic Lateral Sclerosis: A Case Report
Kenjiro Kunieda, et al.


●脳神経内科領域における医学教育の展望――Post/withコロナ時代を見据えて
第7回 オンライン臨床推論指導
鋪野紀好,他

●スペシャリストが薦める読んでおくべき名著――ニューロサイエンスを志す人のために
第4回 神経心理学を志す人に薦めたい名著――平山惠造著『神経症候学』
河村 満

●臨床神経学プロムナード――60余年を顧みて
第13回 脊髄性進行性筋萎縮症(SPMA)〔成人,非遺伝性〕と脊髄性筋萎縮症(SMA)〔小児・青年,遺伝性〕の歴史的プロムナード:呼称の類似が誤解を産む
平山惠造

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