理学療法ジャーナル Vol.55 No.12
2021年 12月号

ISSN 0915-0552
定価 1,980円 (本体1,800円+税)

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大腿骨近位部骨折up to date

 高齢者三大骨折の1つである大腿骨近位部骨折は理学療法士が遭遇する頻度が高い疾患であり,治療法も日々進歩している.そこで本企画では,その疫学とともに外科的治療,理学療法評価,運動療法に関する最新の知見を特集する.

大腿骨近位部骨折の疫学と発生機序 森田 伸
 大腿骨近位部骨折の発生数は高齢化の進行とともに,増加の一途をたどっている.受傷により日常生活活動や生活の質を低下させるだけでなく,生命予後にも影響を及ぼすとされている.その好発年齢,発生数,受傷機転などの疫学調査,さらに発生機序を理解することは,一次的あるいは二次的な発生予防対策を構築するうえでも不可欠である.

大腿骨近位部骨折に対する外科的治療 草場 敦,他
 成人の大腿骨近位部骨折に対する手術方法には観血的整復固定術(ORIF)・人工骨頭置換術(HHA)・人工股関節置換術(THA)がある.頸部骨折の高齢例非転位型にはORIF・転位型にはHHAが,若年例の非転位型にはORIF・転位型にはORIFまたはTHAが行われる.侵襲はTHA,HHA,ORIFの順に大きい.転子部骨折に対する手術方法にはORIF・HHAまたはTHAがある.転子部骨折に対するHHA,THAは早期荷重が可能である一方,侵襲が大きく手術の難度はやや高い.近位部骨折の手術法はそれぞれ一長一短である.近位部骨折後の骨性合併症に対しては,年齢と内容に応じてHHAあるいはTHAが行われる.

大腿骨近位部骨折の周術期リハビリテーション――理学療法士が知っておきたい画像の診かたと解釈 髙井一志
 大腿骨近位部骨折は,高齢者における骨折のなかで受傷しやすい骨折の1つであり,理学療法士が携わる機会の多い疾患である.本稿では,大腿骨頸部骨折と大腿骨転子部骨折に対する周術期と回復期のリハビリテーションにおいて理学療法士が知っておくべき画像の診かたや臨床症状について述べる.

大腿骨近位部骨折と筋力――既存概念の再考と実働筋力の向上をめざして 青戸啓二
 最新版のガイドラインで筋力増強のエビデンスが示されない状況を打開するために,筋の構造と機能,過負荷の原則,特異性の原則を再考した.高齢者の筋は受傷前からのマッスルインバランスなどの問題に加え,損傷や循環障害などにより硬化する.筋本来の状態の回復と単関節運動により向上した筋力を患者の姿勢や動作時の実働筋力に結実させるための運動学習を踏まえた筋コーディネーションアプローチの構築が必要である.

大腿骨近位部骨折と歩行 安藤将孝,他
 大腿骨近位部骨折術後の歩行に関連した問題点として,歩行の自立度の低下,歩行速度の低下,歩幅の短縮,Trendelenburg徴候やDuchenne徴候などが挙げられる.術側股関節外転筋群の筋力増強,荷重位における筋収縮機能の改善やバランストレーニングが歩行能力の改善に有効であると考えられる.

大腿骨近位部骨折の予後と不良因子 田中暢一
 高齢者に発生する大腿骨近位部骨折は歩行などの日常生活活動を著しく制限し,健康寿命に多大な影響を及ぼす.したがって,本骨折後の日常生活活動の改善は重要であり,理学療法士の役割は非常に大きい.リハビリテーションを円滑に実施するうえで,運動機能の予後に影響を及ぼす因子を把握することは重要なポイントとなる.そこで本稿では本骨折の術後の歩行能力に影響を及ぼす術前・術後の因子について解説する.

大腿骨近位部骨折と転倒予防 松本浩実,他
 大腿骨近位部骨折の予防と再発予防に必要なのは骨粗鬆症に対する治療と転倒予防である.本骨折後患者の再転倒予防のためのエビデンスのある運動療法のプロトコルはないものの,術後早期の離床やバランス練習は移動能力の改善に有効である可能性がある.骨粗鬆症リエゾンサービスにおいて理学療法士には本骨折後患者の再転倒・再骨折予防のための転倒リスク評価や運動指導が期待される.

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大腿骨近位部骨折の疫学と発生機序
森田 伸

大腿骨近位部骨折に対する外科的治療
草場 敦,他

大腿骨近位部骨折の周術期リハビリテーション――理学療法士が知っておきたい画像の診かたと解釈
髙井一志

大腿骨近位部骨折と筋力――既存概念の再考と実働筋力の向上をめざして
青戸啓二

大腿骨近位部骨折と歩行
安藤将孝,他

大腿骨近位部骨折の予後と不良因子
田中暢一

大腿骨近位部骨折と転倒予防
松本浩実,他


■Close-up 2040年問題と高等教育改革
2040年に向けた高等教育――その方向性と改革 新型コロナウイルスパンデミックを奇貨とした高等教育改革に向けて
永田恭介

2040年に向けた医療者教育――その方向性と改革
福島 統

2040年に向けたオンライン・デジタル教育改革
 1.初年次教育――オンラインでつながる場作りを
 澤田忠幸

 2.20年後の医学教育――オンライン教育を含めた教育のあり方を再考する
 淺田義和


●とびら
育てることと信じること
鈴木里砂

●再考します 臨床の素朴な疑問 最終回
腰椎椎間板ヘルニアに対する運動療法の効果とその機序は?
石田和宏,他

●診療参加型臨床実習 最終回
卒後研修・生涯学習からみた診療参加型臨床実習の展望
斉藤秀之

●国試から読み解く 最終回
呼吸循環代謝指標を理解する
正保 哲

舞う臨床実習サブノート 診療参加型臨床実習――「ただ見ているだけ」にならないように!
慢性閉塞性肺疾患
杉谷竜司,他

●私のターニングポイント
人との出会いとつながりを大切に
福富利之

●症例報告
慢性疼痛患者に対する認知行動療法的介入の経過――理学療法士のかかわりを中心に
佐藤雅恭,他

●紹介
ゲーミング・シミュレーションの手法を用いた災害リハビリテーション 教育ツールの開発と検証
佐藤 亮

●ひろば
理学療法の本質とアート
藤澤宏幸

●臨床のコツ・私の裏ワザ
足部アーチのエクササイズのコツークラシックバレエダンサーの一例
矢部信明

●文献抄録
中村絵美,髙橋容子,津島桃花,宮原孝行
 

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