理学療法ジャーナル Vol.55 No.2
2021年 02月号

ISSN 0915-0552
定価 1,980円 (本体1,800円+税)

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関節可動域評価のABC――治療計画につなぐ応用的解釈まで

 関節可動域測定は,理学療法士にとって極めて身近な評価であり,不可欠な情報である.しかし標準的手技による可動域測定値は基本情報に過ぎない.それは可動域測定の対象運動のほとんどが関節複合運動であることによる.測定後の治療には「病態解釈」と「角度情報と制限因子とを関連づけた考察」が不可欠である.
 A:当該関節に多くみられる病態を例に,関節可動域評価の注意点と制限因子の考察例
 B:可動域測定と並行し留意すべき痛みの評価と多関節連携
 C:身体運動と関連づけた可動域制限の応用的解釈
 本特集では,基本となる可動域測定手技と測定結果に理学療法士の運動学的考察・問題点の推察を合わせた応用解釈までを「関節可動域評価」と捉え,その基本を関節ごとの特性と合わせて整理する.

肩関節の可動域評価のABC 宮坂淳介
 肩関節は人体のなかで最大の関節可動域を有する一方,骨性の支持性に乏しい関節であり,関節安定性は主として軟部組織が担っている.他動可動域には主に関節包・靱帯が,自動可動域には筋が機能することで骨頭の逸脱を防いでいる.関節可動域が狭小化する場合,主として筋あるいは関節包・靱帯が制限因子となる.可動域評価とは,制限因子が筋なのか,関節包・靱帯なのか,どの部分の短縮なのかと絞り込んでいくことである.

関節可動域評価のABC 谷口匡史,他
 関節可動域(range of motion:ROM)測定値は,標準参考ROMと比較して制限の有無を把握することができるが,必ずしも問題点となる情報を提供するものではなく,測定値の解釈と問題点に乖離が生じてしまう.ROM評価において重視すべきは制限因子を特定することであり,真の問題点を抽出することにある.最終域感(エンドフィール)や筋短縮テスト,痛みを考慮し,ROM制限因子を特定することが重要である.

足関節の可動域評価のABC 伊藤浩充
 足関節の関節運動は,距腿関節・脛腓関節・距骨下関節の複合体関節運動と捉えることができ,それゆえ,骨折や脱臼によって生じる足関節可動域障害は距腿関節のみの障害ではない.足関節可動域制限因子を特定するときに,各関節の制限されている滑り方向を判断し,それを制動している靱帯・筋腱・神経・皮膚を触診して判断する必要がある.距腿関節の可動域制限は隣接する関節の代償運動を引き起こし,それが隣接関節の過可動性を引き起こす.さらには距腿関節だけでなく隣接関節の疼痛も生じさせることになる.距腿関節の可動域制限に伴う代償運動と多関節運動連鎖は立ち上がり動作と歩行動作で認めることが多々あり,背屈制限が生じやすい距腿関節では典型的な多関節運動連鎖がある.

体幹の可動域評価のABC 柿崎藤泰,他
 体幹の機能評価において,角度でみる可動域の量的評価は問題解決につながる理学療法プログラム立案のための十分な情報になるとは言い切れない.問題解決に到達するための考察には,体幹運動の質的評価を加味する必要がある.胸郭の機能評価結果に基づき体幹運動を捉えると,その病態が理解しやすい.胸郭に生じるアライメントや運動にはある一定のパターンが存在することがその理由となる.

股関節の可動域評価のABC 熊谷匡晃,他
 股関節を最大屈曲したときの角度は,腰椎・骨盤を含めた股関節複合体の可動域と股関節固有の可動域とを合算したものである.可動域制限の責任部位がそのどちらにあるのかを明確化し,複数の情報から可動域制限の病態を明らかにすることは,的確な治療方針と適切な治療方法の選択につながる.本稿では,股関節の可動域測定における留意点と制限因子の推察方法,動作困難と可動域制限の関連について解説する.

膝関節の可動域評価のABC 田中繁治
 膝関節の関節可動域においては,膝関節の解剖学的知識を理解し,制限因子となり得る要因を整理しておく必要がある.また,臨床現場では信頼性を高める努力をしなければならない.膝関節の関節可動域制限が生じている場合,疼痛を伴っていることが少なくない.この疼痛に対する詳細な評価を行うことが,よりよい治療プログラムの立案につながる.そして,根拠に基づいた理学療法を実践するためには科学的知見を活用する必要がある.

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関節可動域評価のABC
谷口匡史,他

肩関節の可動域評価のABC
宮坂淳介

体幹の可動域評価のABC
柿崎藤泰,他

股関節の可動域評価のABC
熊谷匡晃,他

膝関節の可動域評価のABC
田中繁治

足関節の可動域評価のABC
伊藤浩充


■Close-up 訪問理学療法のおもしろさ
複雑な状況を見極めながら
大森 豊,他

在宅領域で必要な訪問理学療法の“力”――多種多様な対象者や他職種の背景を的確に捉えて
光村(新井)実香

呼吸を極めて効果的に
中田隆文


●とびら
学び直しと心理学
小林 修

●目で見てわかる 今日から生かせる感染対策・7
触れてしまうところを想像してみましょう
高橋哲也,他

●再考します 臨床の素朴な疑問・2
筋緊張低下,筋力低下と支持性低下.これらの違いと重なるところは? 
髙見彰淑

●診療参加型臨床実習・2
入職時に必ず備えておいてほしい能力
診療参加型臨床実習の到達目標
伊藤義広

●臨床実習サブノート 運動器疾患の術後評価のポイント――これだけは押さえておこう!・11
多発外傷
山田耕平

●国試から読み解く・14
臨床的評価指標から予後予測をしよう!
藤田裕子

●私のターニングポイント
脳卒中から理学療法士をめざせた1つの出会い
小林純也

●原著
リハビリテーション部門におけるトランザクティブメモリーシステムや組織風土は職員満足度に影響を及ぼすか
八木麻衣子,他

●学会印象記
第36回日本義肢装具学会学術大会
新しい技術を学ぶ,新しい形で学ぶ
田中慎也

●臨床のコツ 私の裏ワザ
関節リウマチ患者の体幹運動制御に対するハンドリングのコツ
小林春樹

動脈血ガス分析を深く読むコツ――神経筋疾患症例から学ぶ
加藤太郎

●文献抄録
宮森隆行・藤野雄次・松﨑英章・大石優利亜

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