総合診療 Vol.31 No.1
2021年 01月号

ISSN 2188-8051
定価 2,750円 (本体2,500円+税)

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コロナ禍を上からではなく俯瞰する

藤沼 康樹(医療福祉生協連 家庭医療学開発センター)

 今回、共同編集をお願いした青木眞先生と親しくなったのは、わりあい最近のことです。実は、青木先生が日本の臨床感染症学に多大なインパクトを与えてきた医師であることを、それまではあまり認識していませんでした。しかし、だからこそ、バイアスのかからない出会いになったような気もします。
 青木先生とは、日本におけるこれからの「総合診療」をどのように発展させるべきか、というディスカッションをすることが多いのですが、初めから印象的だったことは、「それはつまりどういうことですか?」「もう少しそこをくわしく教えてください!」「それはおもしろいですね!」「そういう患者さんをどんなふうに診察するんですか?」といった好奇心旺盛な質問でした。curiosity(好奇心)をとても尊ぶ態度が印象的だったのです。

 年を重ね、経験も蓄積され、社会的評価も高くなると、人はしばしば「教えてあげようか」「そんなことは知ってるよ」といった上から目線の態度をとりがちですが、私はそういう人と接すると「ああ、すでに引退してるんだな…」と感じます。しかし、興味関心が尽きず、自分は社会にどんな貢献ができるだろうか、と考え続けている人には「現役」感があります。この「現役」感は年齢とは関係がない、と経験上思います。

 本特集の臨床医学以外の著者は私が今一番話を聞いてみたいと思った方たちをピックアップすることができました。刺激的で思考を喚起する特集になっていると思います。


青木 眞(感染症コンサルタント)

 本特集は、基本的に藤沼先生のご企画・お仕事であり、私は少しお手伝い申し上げたにすぎません。今般のコロナ禍でも、診療の第一線には直接関与しておらず、最前線で働く友人・同僚・教え子たちの安全と健康を祈るだけの者です。

 ただ、傍観者としてより全体像を見やすい立場に置いていただいた結果、それがホスピタリストであっても家庭医であっても、コロナ禍にあって、いかに本格的な「総合診療マインド」(p.33)がわが国で必要であるかを見せていただいたと思います。総合診療マインドこそが、パンデミックであっても社会の高齢化であっても、変化し続ける医療環境に最も柔軟に対応できる“安全装置”なのです。私たちが多くの人々の健康や生命、そしてつながりを破壊するコロナ禍を通過する代償として、本特集が、わが国の医療をより「総合診療マインド」を備えた安全なもの、「パンデミックready」な社会(p.84)に変える機会となることを願っています。

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医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。

■I章 COVID-19診療の基本:総合診療医が今知っておくべきこと
COVID-19の診断推論  コモンな臨床経過とピットフォール
山本舜悟

COVID-19の治療  現時点での「治療薬」のエビデンス
忽那賢志

COVID-19の感染予防対策  院内・施設内に持ち込ませない! 広げない!
川村隆之│岡 秀昭

“感染症災害”下でのメンタルヘルスケア  患者から医療者まで
太刀川弘和

■II章 実践報告:パンデミックにおける「総合診療」の役割
【座談会】  パンデミックが照らした「総合診療」の強み  その実践と今後の役割
青木 眞│池田啓浩│小坂鎮太郎│中山久仁子

【病院】  「遠隔医療」と「院内外連携」で乗り越えるパンデミック
小坂鎮太郎

【病院】  COVID-19との“長いたたかい”に備えて
尾形和泰

【病院】  ICTも最大活用した総合診療医による「コミュニティホスピタル」の感染対策
近藤敬太

【病院】  永寿総合病院「院内アウトブレイク」における総合診療の役割を振り返る
池田啓浩

【診療所】  「何でも相談」と「情報発信」で“コロナ禍の生活”を支える家庭医療
中山久仁子

【診療所】  「“コロナ”」と「COVID-19」を診る
佐藤只空

【在宅・介護施設】  COVID-19対応の“最前線”における“防衛線”
佐々木 淳

【へき地・離島】  離島でのCOVID-19感染対策
本村和久

■III章 「ヘルスケアシステム」や「社会」は構造的にどう変わったか、変わっていくか
「文学」の視点から  “ソラリス”としての新型コロナウイルス
福嶋亮大

「文化人類学」の視点から  医療施設の「面会制限」は何を守っているのか?  
出会いと交流の空間試論
磯野真穂

「コミュニティヘルス」の視点から  場づくり・まちづくりの“New Normal”  
 「不安」を受けとめ、「分断」を超えるつながりをつくるには
広石拓司

■IV章 未来を展望する:新型コロナウイルスと共存する「社会」「医療」「人」のあり方
【シン春特別座談会】  今こそ医療を「開疎」せよ! “シン・ニホン”と“ウィズ・コロナ”
安宅和人│尾藤誠司│藤沼康樹

今月のQuestions


●Editorial
コロナ禍を上からではなく俯瞰する
藤沼康樹|青木 眞

●研修医Issy & Dr.Sudoのとびだせフィジカル! 聴診音付|1
甲状腺のフィジカル
石井大太|須藤 博

●What’s your diagnosis?|217
需要に応じられないので
池田宜央|酒見英太

●オール沖縄!カンファレンスVer.2.0|レジデントの対応と指導医の考え|49
その発熱、ただのウイルス感染…?
上原裕子|橋本頼和|仲里信彦|徳田安春(監修)

●Dr.上田剛士のエビデンス実践レクチャー!|医学と日常の狭間で|患者さんからの素朴な質問にどう答える?|10
欠伸は伝播する?
上田剛士

●臨床小説|後悔しない医者|あの日できなかった決断|10
安心させられる医者
國松淳和

●投稿 Empirical EYE
関係性のなかで変容する自己意思の尊重
医療介護の現場に求められる多様性と柔軟性とは
八巻孝之

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