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看護・介護現場のための

高齢者の飲んでいる薬がわかる本


著:秋下 雅弘/長瀬 亜岐

  • 判型 A5
  • 頁 208
  • 発行 2018年10月
  • 定価 2,376円 (本体2,200円+税8%)
  • ISBN978-4-260-03693-1
高齢者ケア現場にいるすべての人が知っておきたい“命と生活を守る”厳選13テーマ。
「風邪薬で尿閉?」「鎮痛薬で腸管穿孔?」「食べられていないのに薬がこんなに……多すぎない?」。 “フタを開けてみれば、なんと薬が原因だった”という高齢者ならではのアクシデント事例をベースに、「なぜこんなことに+どうすればいいか」をプラクティカルかつ平易に解説。高齢者ケア現場にいるすべての人が知っておきたい、“命と生活を守る”厳選13テーマ。
序 文
はじめに

 ポリファーマシー(多剤服用による害)に対して厚生労働省が旗振りをはじめ、高齢者の医薬品適正使用に関しての取り組みがなされるようになりました。
 入院してきた患者さん(高齢者)が飲んでいる薬を、薬剤師任せにしていませんか。訪問看護の利用者さんの服薬の確認、「多くて大変...
はじめに

 ポリファーマシー(多剤服用による害)に対して厚生労働省が旗振りをはじめ、高齢者の医薬品適正使用に関しての取り組みがなされるようになりました。
 入院してきた患者さん(高齢者)が飲んでいる薬を、薬剤師任せにしていませんか。訪問看護の利用者さんの服薬の確認、「多くて大変だな」と感じていませんか。介護施設で担当している方の「薬、本当にこれでいいのかな(でも主治医には聞きにくいな)」と心の中で思っていませんか。そして「とにかく薬だけは飲んでもらわないと」という使命感で、食事に混ぜたり、無理に飲んでもらうおうとしていないでしょうか。
 たくさんの薬を飲むことは患者さんにとっても一苦労で、「これ(薬)でおなかいっぱいになっちゃう」という方にも多く出会います(生活に影響する問題)。それ以上に、有害事象が出やすい高齢者の多剤服用を放っておくことは大変危険です(命にかかわる問題)。
 認知症ケアチームの一員として勤務していた病院で私はある日、せん妄がよくならない患者さんの相談を受けました。記録を読むと、持参薬の中にフランドルテープ225枚(!)という記載が。目を疑いましたが、病棟薬剤師に確認すると、他にも残薬がたくさんあることがわかりました。「この患者さんは慢性硬膜下血腫の緊急手術で入院したけど、誰と暮らしているの? 今までの薬剤管理は誰がしていたの? 介護認定は受けている? ケアマネさんはこの状況を把握している?」。疑問が次々に生じました。
 入院時はまさに多剤服用に介入できるチャンスです。しかしどんな場面であっても、このような問題に向き合い介入するためには、「なぜこの薬を飲んでいるのか?」と疑問を持てるだけの知識が求められます。本書では、その知識と視点、対応策を、ポリファーマシー対策の第一人者である秋下雅弘先生に解説していただいています(本書の読み方→p.viii)。事例は、私が相談を受けた多数の高齢者の症例から、薬が引き起こしたと考えられる典型的なものを厳選しました。
 もし、あなたの担当する患者さんの服用している薬のなかに、なぜ飲んでいるのか疑問に思ったものがあるときには、勇気を出して医師や薬剤師に相談しましょう。認知症ケアチームやさまざまなケアチームに相談するのも1つの手かもしれません。在宅での様子は、退院調整看護師が情報収集をしてくれます。自分たちで解決が困難なときは、院内外の専門家にお願いすると情報が一気に集まります―その第一歩に、きっと本書が役に立ちます。
 さて、私が相談を受けた前出の患者さん、実は物忘れが進行して困っているうえに、奥さんが入院してしまったという状況でした。訪問看護師は、以前からこの方が転倒しやすいことも含めて主治医に薬剤調整を依頼していましたが、「循環器の専門病院からの処方だから触れない(変更しにくい)」といった問題が生じていることがみえてきました。
 多職種が連携し、最終的に薬剤は17種類から6種類に減らすことができました。そして食後3回と寝る前(1日4回)だった内服を2回に減らすこともできました。「薬のコンプライアンスが悪い」と否定するのではなく、「服薬を遵守できるように処方を変えることへの支援」という、“その人の持てる力を発揮してもらう視点”も必要だったのです。
 これによって、身体面の安定のみならず、経済的にも薬価ベースで年間10万円以上を減らすことができました。
 慢性硬膜下血腫の原因となっていた“繰り返す転倒”も、薬剤性ということが考えられます。さらにこの方は、狭心症や心筋梗塞を繰り返していました。これも、服薬管理ができていなかった結果かもしれません。
 ケアする私たちが、高齢者の飲んでいる薬についての知識を持ち、医師の処方の意図を理解すること。そして薬についても患者さんの“生活の視点”から見直し、“その人にとっての最善は何か”を考えていくことがポリファーマシーへの介入につながります。ケア専門職に薬の知識は必要ない? そんなことはありませんね。ポリファーマシーへの介入をきっかけに、私たちにもできることがみえてくるはずです。

 2018年10月 長瀬亜岐
目 次
はじめに
本書の読みかた

1 ポリファーマシー(多剤服用による害)
   6種類以上、飲んでいませんか?
   ただし「処方されている薬=飲んでいる薬」とは限らない。
2 鎮痛薬の長期服用
   思わぬ有害事象で救急搬送!? 慢性疼痛をかかえる高齢者は多い。
3 せん妄の要因となる薬
   せん妄の対応に薬はNG。認知症との見分けも含め、リスクを把握したい。
4 睡眠薬の使い方
   機序を理解して、必要時だけうまく利用する。
   ベンゾジアゼピン系薬剤は避けたい。
   FAQ
5 抗コリン作用のある薬
   予期せぬところで全身の不調を招く。
   さまざまな領域の薬に抗コリン作用があることを知っておきたい。
6 循環器疾患に使われる薬
   病態に応じた利尿薬の調整が必要。若い人と同じようには考えられない。
7 腎排泄の薬
   高齢者は腎機能が低下しているため蓄積しやすい。
   有害事象は早期に察知したい。
   FAQ
8 糖尿病治療薬
   血糖コントロールは生活とのバランスが必須。
   薬物治療はシンプルにしたい。
   FAQ
9 嚥下にかかわる薬
   意識レベルと嚥下機能はかかわりが深い。
   呼吸・嚥下機能と「薬」を結び付けてケアしたい。
10 免疫抑制作用のある薬
   適応が増えてきている。感染予防を忘れずに。
11 漢方薬
   有害事象がないわけではない。
   生死にかかわる問題へと発展する有害事象を知っておきたい。
12 早すぎる薬剤評価に注意
   飲んですぐ効くとは限らない。効果の出方を予測し、
   処方意図を踏まえて観察したい。
13 環境の変化に注意
   季節、病床、住環境で薬の反応や役割は変わる。
   その人の最善を考え、チーム全員で薬を見直し、整理したい。

column
■ 薬物有害事象と薬の副作用の違い
■ 合剤の意義
■ 薬剤師って外来にいますか?
■ ちょっと待って! その薬、本当に使っても大丈夫?
■ ケア現場で共通の客観的指標を設けているか
■ ブロチゾラムの盲点
■ 転倒を減らすためのある病院の取り組み
■ 習慣性のあるベンゾジアゼピン系睡眠薬は変更しにくい
■ 高齢入院患者の有害作用発現率は6~15%
■ 物忘れ外来、まずは薬による影響を除外する
■ 心不全パンデミック!?
■ 高齢者の塩分制限
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