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臨地実習ガイダンス

看護学生が現場で輝く支援のために

編集:池西 靜江/石束 佳子

  • 判型 B5
  • 頁 176
  • 発行 2017年12月
  • 定価 2,916円 (本体2,700円+税8%)
  • ISBN978-4-260-03442-5
臨地実習指導と支援のための看護教員必携ガイド
看護師養成のために欠かせない「臨地実習」が危機にある。時間数削減や施設確保の困難、患者の権利擁護に伴う現場体験の制限や在院日数短縮などの逆風から、従来方式が成果をあげづらくなって久しい。本書は、「臨地実習が学生を飛躍的に成長させる場面を幾度となく見てきた」諦めないベテラン教員と施設の指導者がともに何を志向しどのように連携して学生の指導・支援をアップデートしているか、その実際をまとめたガイドブック。
序 文
はじめに

 学生が看護師になることを支援する看護基礎教育において、最も効果的な授業形態は「臨地実習」であると、筆者は確信しています。学生によっては、あるいは学生のおかれる状況によっては、実習がなかなかうまくいかず、空回りする場合もあります。その空回りにはたくさんの要因が重なるもの...
はじめに

 学生が看護師になることを支援する看護基礎教育において、最も効果的な授業形態は「臨地実習」であると、筆者は確信しています。学生によっては、あるいは学生のおかれる状況によっては、実習がなかなかうまくいかず、空回りする場合もあります。その空回りにはたくさんの要因が重なるものですが、大きな要因に、臨地実習における学習環境があります。物理的環境、人的環境など、なかでも慣れない現場での学生の緊張を和らげ、進むべき方向を学生自らが見いだせるように関わってくださる教員・実習指導者の存在は何より大きなものです。

 40年を超える筆者の教員生活のなかで、臨地実習でこそ飛躍的に成長した学生に何人も出会いました。そのうちの一人は、学内の講義・演習時に課題はやって来ず、授業中には時々居眠りをして……なんとやる気のない学生かと筆者は思っていました。その学生が臨地実習で、終末期の患者さんを担当されたときのことです。「死を意識される方に、私は何ができるでしょうか」と不安そうに、日々緊張の面持ちで接していた学生が、ある日、患者さんから「髪を洗ってほしい」と依頼されました。自信なくとまどっていた学生でしたが、逃げようとはしませんでした。そこに実習指導者が「大丈夫。疼痛をコントロールできる麻薬が効いている時間帯を選び、こんな体位でやってみてごらん」と背中を押してくださり、その通り実施したところ、「なかなかうまいなあ、おかげでさっぱりしたわ」と感謝されたのです。はじめて患者さんへの本当のケアができたと納得できたようで、それからの学生は見違えるようでした。自ら進んで活き活きとケアをするようになり、多くの患者さんから頼りにされるようになったのです。
 限られた実習期間のなかで起きる、学生のこうした輝ける変化を目の当たりにするつど、教員が行うどんなにわかりやすい講義よりも、臨地での指導者の一言、そして患者さんの一言が、学生たち自身がめざす「看護師」に近づけてくれているのだと実感した思い出が、重なり合います。

 一方、少子、超高齢・多死社会を前に、日本の医療提供体制は変わらざるを得ない状況です。看護基礎教育においても変化が求められています。入院患者に高齢者が増え、成人を対象とした看護学実習は困難になり、病床機能の分化、在院日数の短縮などから、約3週間の実習期間のなかで、1人の学生が少なくても2~3人の患者さんを受け持たせていただくことになります。従来式のようにまず数日かけて情報を集め、問題を抽出し、看護計画を立てるまでに1週間近くかかっていたのではそれも机上の空論になり、目の前の患者さんの看護には役立たないものになります。もっと目の前の患者さんのニーズにタイムリーに応える看護を学ばなければなりません。また、社会のしくみ自体も変化しています。地域包括ケアシステム、多職種協働時代の臨地実習はどうあるべきか、今、そのあり方も問われています。
 臨地実習も変わらなければいけない時代になってきているのです。
 このような変化の時代にあって、臨地実習に引き続き看護師育成の柱としての教育効果を期待するなら、改めて実習指導とは何か、教員・実習指導者の役割は何か、効果的な実習指導の方法はどのようなものかという問いに、教える立場の我々こそ真摯に向き合う必要があります。
 教員・実習指導者の関わりが学生の変化を生み、学生の望ましい変化は指導者の喜びになります。教育はそのような双方向の関わりです。臨地実習の変化に伴う指導者のとまどい、あるいは看護の実践者から指導者へと立場が変わる困難感などを共有することで、一人ひとりの指導者が自信をもって実習指導に携わっていただきたいと願うものです。

 本書は、学生が現場で活き活きと輝く実習指導はどうあるべきか、指導者が自信をもって教育を行うにはどうすればよいかなどについて、支援者の目線から臨床および実習指導の経験知を多くもつ実務家教員や実習指導者に熱く述べていただきました。実習指導の経験の少ない人や、実習指導がどうすれば効果的になるか悩んでおられる人、これまでの実習指導の方法でよいのだろうかと自信がなくなりそうな人、これからの実習指導は今までのようではいけないと思っておられる人、そんな方々にぜひ手にとって読んでほしい書籍です。看護基礎教育に欠かせない価値を有すると筆者が信じる臨地実習にかかわってくださる多くの方々のガイダンスになればと願っています。

 本書刊行にあたり、ご協力いただいた(専)京都中央看護保健大学校の実習施設のみなさま、そして収載させていただいた実習評価表を作ってくださった鹿児島医療技術専門学校の濱川孝二先生、橋本ちよみ先生、鹿島三千代先生、山下京子先生、山角和美先生に心よりお礼を申し上げます。またお力添えいただきました医学書院編集部の青木大祐、制作部の川口純子両氏に深甚の謝意を表します。

 ともに未来の看護師を育てていきましょう。

 2017年10月
 編者・執筆者を代表して 池西靜江
目 次
第1部 教える人の準備
 1 臨地実習の意義 学生が飛躍する現場での教育
 2 臨地実習の現状と課題 時間数増加は望めず地域重視の時代に
 3 授業としての臨地実習 講義・演習と同じ「しかけ」を
 4 臨地実習指導に求められる能力 現場で生きる4つの力
 5 「看護過程」の本来を活かす実習指導 臨床判断につなげるために

第2部 施設との協働・運営
 1 実習施設との連携のあり方
 2 実習施設の受け入れ体制
 3 臨地実習指導の実際
 4 新人・若手教員の実習指導 どこにつまずくか
 5 経験豊かな教員の実習指導 なぜ焦らないか

第3部 実習指導者が心がけている学生の学び グループインタビュー

第4部 臨地実習の評価
 1 臨地実習評価の考え方と方法
 2 臨地実習評価 チェックリスト、ルーブリックの活用
 3 実習総括 教育実践の改善のために

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索引