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整形靴と足部疾患

オーソペディ・シューテクニック

原著:René Baumgartner /Michael Möller /Hartmut Stinus 
監訳:日本整形靴技術協会 IVO JAPAN
訳:島村 雅徳

  • 判型 A4
  • 頁 368
  • 発行 2017年05月
  • 定価 14,040円 (本体13,000円+税8%)
  • ISBN978-4-260-03010-6
整形靴技術の全体像を総合的に取り上げ製作技術を詳しく紹介、他に類を見ない成書
足部疾患の医学的側面だけでなく、整形靴技術の全体像について総合的に取り上げ、製作技術を詳しく紹介した他に類を見ない成書。バイオメカニクス、姿勢、歩行分析、機能解剖から、整形外科的な診断・評価、手術手技、切断術、理学療法、糖尿病足症候群へのフットケア、そして足底装具、整形靴、短下肢装具など、極めて包括的に述べられている。
序 文
推薦のことば(澤村誠志)/

推薦のことば

 足部の整形外科技術と整形靴製作技術は,ドイツを中心とする専門職養成マイスター教育制度の発展とともに,両技術間の連携協働による教育講演コースが連続して行われる中で,著しい進歩を遂げてきた.この講演内容を...
推薦のことば(澤村誠志)/

推薦のことば

 足部の整形外科技術と整形靴製作技術は,ドイツを中心とする専門職養成マイスター教育制度の発展とともに,両技術間の連携協働による教育講演コースが連続して行われる中で,著しい進歩を遂げてきた.この講演内容をRené BaumgartnerとHartmut Stinusが中心となって,1972年にThieme社より『Die orthopädietechnische Versorgung des Fußes』として出版した.その後1995年に改訂がなされ,2002年に日本語版『足と靴-その整形外科的技術処置法』(フスウントシューインスティテュート)として出版され,整形靴に関する多くの情報を得る一歩となった.
 当時,わが国の整形靴製作技術者の教育制度は皆無に近かった.そこで日本義肢装具学会に整形外科靴委員会(東京大学・加倉井周一委員長,1991~1992年)を設置し,整形靴(靴型装具)のあり方,靴型装具製作技術者の教育制度について検討を重ねた.そして,医師,義肢装具士に対する整形靴の短期講習とともに,整形靴の製作技術を持つ整形靴技術者に対しては長期コース2年,さらに技能検定の必要性が示された.この委員会からの厚生省(当時)への要請を受けて,1994年に国立身体障害者リハビリテーションセンター(当時)で整形靴マイスターのEduard Herbstを講師として靴型装具講習会が開かれた.しかし,わが国に整形靴製作に関わる教科書がなかったこともあり,整形靴製作技術者に対する専門教育は進まず,神戸医療福祉専門学校三田校に1999年整形靴科が設置されるまでは皆無に等しかったといえる.
 一方,国際的な動向として,国際義肢装具協会(ISPO)が1970年に発足し,WHOと国際整形靴技術協会(IVO)との協力のなかで,義肢装具士の国際的な教育レベルのカテゴリーについての検討がなされ,各国で義肢装具教育機関のカテゴリー認証が進んでいる.3年ごとに開催されるISPO世界会議の中で,1983年ISPOロンドン世界会議にて本書の編集者であるBaumgartnerと私が新理事として選出された.Baumgartnerが当時勤務していたドイツ・ミュンスター大学は,Hepp,Kuhnなど歴代の教授により,KBM(Kondylen Bettung Münster)下腿義足やミュンスター前腕義手ソケットなど,多くの義肢装具の研究開発が行われていた名門大学である.当時既に欧州で足部の疾患・障害に対する包括ケアのリーダーであったBaumgartnerはそこで素晴らしい活動をしており,スイス義肢装具作業部会(APO),そしてドイツ整形外科協会の専門委員として,足部整形外科と整形外科靴製作技術の連携功績から最高の名誉整形靴マイスターの称号を受けている.また,大の日本の温泉好きであり,交流を重ねているうちに,義肢装具サービスの多職種協働のチームアプローチの重要性について意気投合し,公私ともに長年にわたる心の友として,1989年のISPO世界会議神戸でも大役を担っていただいた.また,私がISPOの会長を務めていたころには本書編集者のStinusの父上がIVOの会長を務めており,理事会で何度かお会いしている旧知の仲である.
 本書は,このミュンスター大学医療センターを主舞台として,足部障害に対する整形外科,整形靴の連携など総合的なアプローチの実践を通して生まれたものである.足部の整形外科と整形靴技術を担当されたBaumgartnerと,Welsch社で整形靴技術者として訓練を受けた後に整形外科医となり,ミュンスター大学リハビリテーション科でBaumgartnerから学んだStinusが中心となったことは上述した『足と靴』と同様であるが,この両氏に加えて新しく整形靴マイスターのMichael Möllerが参加したことにより,整形外科技術と整形靴製作技術間の連携の重要性が改めて認識される結果となった.Möllerはミュンスター工業団地に整形靴製作会社を設立し,ミュンスター技術専門学校の整形靴科で学生の整形靴技術の実習訓練を担当しており,Leonardo賞を受賞している.このMöllerの参加によって本書のはじめの章に靴機能,工具と材料,記録,製作技術,採寸,靴の補正,足底装具,カスタムメイド整形靴,小児靴,フットケアなど広い範囲で整形靴製作技術に関する情報が広く詳しく紹介されている.
 本書は,上記3氏により『Orthopädie-Schuhtecknik』として出版され,英訳された『Pedorthics:Foot Disorder-Foot Orthoses-Footwear』を日本語に翻訳したものである.従来の本は,足部疾患・障害に対する医学的な面を重視したものであった.本書はこれに加えて,整形靴技術の全体像について総合的に取り上げ,靴製作技術を詳しく紹介した他に類を見ない優れた書となっている.足部疾患・障害に対して,バイオメカニクス,姿勢,歩行分析,機能解剖から,整形外科診断,評価,手術,切断,理学療法,フットケア,そして整形靴,短下肢装具,膝装具など,従来の書籍に比較して,極めて包括的に述べられているのが特徴である.さらに,足部の外傷・先天的欠損や外反・内反・扁平などの変形,糖尿病足症候群,関節リウマチ,小児脳性麻痺などあらゆる足部の障害に対する最新の足装具療法を紹介するために,上記の3氏以外にも多くの各専門職種の方々が参加されたために,より内容が深まった書となっている.
 本書は,義肢装具士,整形靴技術者の教育はもとより,足部障害者のケアにチームアプローチの中で診療に従事されている靴医学会やフットケア学会の会員,整形外科医,リハビリテーション専門医,義肢装具士,整形靴技術者,理学療法士,看護師,リハビリテーションエンジニアなど関係専門職の方々の役に立てる情報があふれていると信じている.ぜひとも手元に置いていただき,少しでも多くの障害のある人々の笑顔を作っていただきたい.
 最後に,本書出版の企画をされた日本整形靴技術協会関係者(寺本雅映元会長)をはじめ,医学学術関連部会,整形靴関連部会,義肢装具関連部会の皆様に敬意を表したい.特に,翻訳を担当された島村雅徳氏のご苦労は,私の想像を絶するものであり,心から謝意を表したい.彼が神戸医療福祉専門学校三田校時代に整形靴マイスター Eduard Herbstとの協働によって得られた整形靴技術者の教育経験が,この大きな果実を生む結果となったとすれば嬉しい限りである.

 2017年2月
 澤村 誠志
 元ISPO(国際義肢装具協会)会長
 兵庫県立リハビリテーション中央病院名誉院長
 神戸医療福祉専門学校三田校校長




 ドイツ語圏において足の整形外科と装具に関する書籍の歴史は長い.医師のWilhelm Thomsen,Carl H.R.Rabl,G.Regenspurgerの各氏によるそれぞれの著作のほか,Wolfgang Marquardtによる『The Theoretical Foundations of Pedorthics(足装具の理論的基礎)』,整形靴マイスターのEmil Krausによる靴製作の参考書などは,第二次世界大戦での経験をもとに作成され,確実に技術進歩が整形外科と足装具学にもたらされた.
 MarquardtとKrausによって書かれた足装具分野における2冊の基礎書籍は,雑誌「オーソペディ・シューテクニック(整形靴技術)」を発行しているC.Maurer社から出版された.かつてこの雑誌は小さい判型で茶色の封筒に入って配達されていた.それが今日では誌面は大きく,現代的で,カラーになり,人気も高く,専門領域以外でもよく知られた雑誌となっている.数年前には英語圏の読者向けに「foot & shoe」という姉妹誌も創刊された.
 新しい参考図書から得られる知識が少ないせいか,1965年に出版されたMarquardtの著作,1989年に出版されたKrausの著作にもいまだに需要がある.足装具学(pedorthics)の基本的な技術は,結局のところそれほど変化してはいない.つまり,これまでの書籍は古典に現代的な装いを施し一冊の本に統合することを目指すしかなかった.われわれはそのような編集方針で本書の執筆を始めたが,すぐにそのアプローチは時代遅れであると悟った.実は整形外科はこの間に大きく変化し,足装具学もそれに従って変化していたのである.
 整形外科的な手技は整形外科学の一分野であり,外傷外科とともに,まさに骨格筋系外科となったといってよい.古典的な整形外科学はこのような統合には不向きであったが,それでも発展する可能性はある.特殊化したそれぞれの整形外科学分野は歩み寄り,集結できる組織を設立する必要があった.国際義肢装具協会(ISPO)やスイス義肢装具協会(APO)のような団体は,まさにこの目的のために作られたといえ,義肢装具という分野が確立するきっかけとなったのだ.
 この書籍は,今日ある足装具学について包括的に紹介することに目的があり,そのために3人の専門家が集まった.ミュンスター出身の整形靴マイスター Michael Möllerと,この分野に単に学術的以上の興味を抱いている2人の整形外科医René Baumgartner,Hartmut Stinusである.そのうち1人は整形外科医となる前に整形靴について学び,もう1人は名誉整形靴マイスターである.両者は古典的な整形外科と整形外科的手技を統合するという意欲を抱いている.初版・1995年と第2版・2001年にThieme社から出版された『足と靴-その整形外科的技術処置法』で,彼らはまさにその統合を目指していた.
 本書は「理論的な基礎」の教科書となるのではなく,ふんだんにカラー写真を使用して実践的な製作法を描写し,足装具学の現場からのニーズにマッチさせた.
 本書では各領域の専門家の共同執筆により,各章を構成した.単に足装具に関わる義肢装具士だけでなく,整形外科の専門医にも強く関心を持ってもらうことに力を注いでいる.本書は大きくは3つのコンセプトでまとめている.最初のコンセプトは足装具学を中心に,加圧療法と足病学にも触れている.古典的な方法よりも現代的な方法を優先し,「第32章 切断と義肢」からは整形外科疾患への対応を解説している.
 2つ目のコンセプトは「基礎」に注目したが,常に足装具の視点に配慮している.「第17章 機能解剖」では足部から下肢,脊柱を概観している.「成長」に関する章(第18章など)の視点も同様である.「第19章 バイオメカニクス」では,足部と下肢に重点を置いている.Möllerと写真家のAnne Steioff-Doldの協力により,線画を用いる代わりに実在する患者の検査写真や治療法を示すことができた.「第26章 足の運動」「第27章 足部の理学療法」「第28章 キネシオテープ」の各章でも同様に写真を豊富に添付してある.
 3つ目のコンセプトは整形外科学と外傷学についてもきちんと取り上げたことである.この部分は整形外科手術の概説に始まり,義肢装具士が整形外科医や外傷外科医の関心事をよりよく理解できるよう配慮した.義肢装具士向けの技術的な書籍にどの程度医学的な内容を盛り込むべきかの判断は難しかったが,糖尿病足症候群のような疾患には重点を置き,稀な疾患は最小限とする方針をとった.
 本書の初版は大変に好評を博したため,出版からわずか2年で改訂第2版が刊行された.改訂にあたって,われわれは自身の知識に照らして詳細に内容を再検討し,包括的な改訂を行った.この日本語版は改訂第2版から翻訳されている.
 自身の専門領域の経験を惜しみなく捧げ,余暇の時間を割いて原稿をまとめてくれたすべての共著者にわれわれ編集者から感謝を申し上げたい.また,C.Maurer社とそのスタッフにも,素晴らしい支援とこの本を英語・日本語でも出版するという英断を下してくれたことに大きな感謝を捧げる.Gerda RaichleとBeate Schmidtの両氏には,正確なイラストを描いてくれたことに感謝する.
 最大の感謝は「foot & shoe」誌の編集長であるWolfgang Bestと,2人の英語版への翻訳者,Deborah A. LandryとJennifer Kalscheuerの各氏に捧げるべきあろう.彼らのおかげでこの本は単なる単語から単語への翻訳ではなく,この専門分野で働くすべての人にわかりやすいものとなった.彼らはできる限り,現場の医師や製作技術者が日々の臨床で使用し,理解している用語を見つけ出してくれた.巻末付録の専門用語についての用語集は,読者らの大きな助けとなるであろう.
 われわれの切なる願いは,足部疾患と足装具を用いた解決策について解説した本書の英語・日本語版が,ドイツ語版と同様に読者からの素晴らしい評価を得ることにある.

 René Baumgartner
 Michael Möller
 Hartmut Stinus
目 次
第1章 靴:機能と構造原理
    Footwear, Function and Construction Principles
第2章 小児靴 Children's Footwear
第3章 工具と材料 Tools and Materials
第4章 製作技術 Processing Techniques
第5章 衛生 Hygiene
第6章 採寸とサイズ Measuring and Sizing
第7章 靴の補正 Shoe Modifications
第8章 足底装具 Foot Orthoses
第9章 カスタムメイド整形靴(靴型装具) Custom Orthotic Footwear
第10章 靴内装具 In-shoe Orthoses
第11章 特殊既製靴 Specialized Footwear
第12章 スポーツと足底装具 Sports Treatments
第13章 短下肢装具 Ankle Foot Orthosis(AFO)
第14章 膝装具 Knee Orthotics
第15章 フットケア Professional Foot Care
第16章 医療用加圧ストッキングによる加圧治療
    Compression Therapy with Medical Compression Stockings
第17章 機能解剖 Functional Anatomy
第18章 小児の足の発達と成長 Development and Growth of Children's Feet
第19章 バイオメカニクス Biomechanics
第20章 姿勢と姿勢制御 Posture and Posture Control
第21章 歩行分析 Gait Analysis
第22章 トレッドミル分析と足底圧計測
    Treadmill Analysis and Foot Pressure Measurement
第23章 検査法 Examination Techniques
第24章 画像診断 Imaging Methods
第25章 所見の記録方法 Documentation of Findings
第26章 足の運動 Foot Exercises
第27章 足部の理学療法 Physiotherapy of the Foot
第28章 キネシオテープ Kinesio Tape
第29章 整形外科疾患 Orthopedic Conditions and Disorders
第30章 整形外科手術 Orthopedic Operations
第31章 足部の外傷 Traumatology of the Foot
第32章 切断と義肢 Amputation and Prosthetics
第33章 脳性麻痺 Cerebral Palsy
第34章 対麻痺 Paraplegia
第35章 踵骨外反扁平足,外反扁平足
    Pes Planovalgus Calcaneus, Pes Planovalgus
第36章 尖足 Pes Equinus
第37章 凹足,鉤足(歪曲足) Pes Cavus, Claw Foot
第38章 開張足 Pes Transversoplanus, Splay Foot
第39章 内反尖足,(先天性)内反足 Pes Equinovarus, Clubfoot
第40章 中足骨内反(内転中足症) Pes Metatarsus Varus(Metatarsus Adductus)
第41章 踵足 Pes Calcaneus
第42章 踵骨棘,足底腱膜炎 Heel Spur, Plantar Fasciitis
第43章 中足痛症 Metatarsalgia
第44章 外反母趾,強剛母趾,小趾変形
    Hallux Valgus and Rigidus, Little Toe Deformities
第45章 シリコン製足趾装具(オーテーゼ) Silicone Toe Orthoses
第46章 糖尿病足症候群 Diabetic Foot Syndrome(DFS)
第47章 足部の関節リウマチと装具
    Rheumatoid Arthritis of the Foot Orthotic Principles
第48章 脚長差 Leg Length Discrepancies
第49章 変形性足関節症 Ankle Joint Osteoarthritis
第50章 スポーツとストレス外傷-スポーツ用足底装具による原因治療
    Sports and Stress Injuries-Causal Therapy with Sports Foot Orthoses
第51章 先天性肢欠損 Congenital Limb Deficiencies
第52章 医療器具リストとサイズシステム Tables and Indexes

 参考文献
 用語集