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≪標準言語聴覚障害学≫

言語聴覚障害学概論


(第2版)

シリーズ監修:藤田 郁代
編集:藤田 郁代/北 義子/阿部 晶子

  • 判型 B5
  • 頁 320
  • 発行 2019年03月
  • 定価 5,500円 (本体5,000円+税10%)
  • ISBN978-4-260-03816-4
モデルコアカリキュラム「言語聴覚療法の基本」の学修内容に則り9年ぶりの大改訂
言語聴覚士を志す学生、初めて本分野に興味を持った人のために、言語聴覚障害学のエッセンスを網羅する教科書。初版から内容を一新し、言語聴覚療法の普遍的な価値観、理論、技術の具体的なイメージを抱きながら学べるよう事例紹介を多用、構成にも工夫を施した。近年の言語聴覚士をめぐる環境の変化や学問の進歩も反映。国試に臨む学生の受験対策、関連分野の方が言語聴覚障害とその臨床の全体像を理解するための格好の書。
*「標準言語聴覚障害学」は株式会社医学書院の登録商標です。
序 文
第2版の序

 言語聴覚障害の多くは目に見えない障害であり,コミュニケーションに必要な言語や聴覚の機能が低下するため本人が自分の問題をうまく訴えることができないという特徴をもつ.本書は,言語聴覚療法においてこのような障害およびそれに付随して生じる問題をいかに理解し,専門的対応をする...
第2版の序

 言語聴覚障害の多くは目に見えない障害であり,コミュニケーションに必要な言語や聴覚の機能が低下するため本人が自分の問題をうまく訴えることができないという特徴をもつ.本書は,言語聴覚療法においてこのような障害およびそれに付随して生じる問題をいかに理解し,専門的対応をするかについて,わかりやすく解説した言語聴覚障害学の入門書である.
 言語聴覚障害学を学ぶうえでは,各領域の障害に立ち入って学修する前に,すべての障害領域に共通する基本的な理論・技術や臨床理念などを理解することが重要である.これには言語・コミュニケーションや摂食嚥下の過程とその障害の特性,障害の種類と関連性,言語聴覚療法の理念,言語聴覚士の役割,本分野の成り立ちなどが含まれる.この学修によって培われる能力は,患者中心の言語聴覚療法を実践する基盤となるものである.また本分野の成り立ちについて学ぶことは専門職としてのアイデンティティーを認識し,その社会的役割について理解を深めることにつながる.本書は,これらについて,臨床・研究の経験が豊富な先生方に執筆していただいた.
 本書の内容は,2018年に(一社)日本言語聴覚士協会が発表した「言語聴覚士養成教育ガイドライン」のモデル・コア・カリキュラムにおける「言語聴覚療法の基本」の学修内容にほぼ相当する.同ガイドラインは,「この学修は言語聴覚障害を総合的に捉え,患者中心の言語聴覚療法を身に付ける基本となるものであり,各種言語聴覚障害を導入する以前に学ぶことが望まれる」と述べている.
 本書の初版は2010年3月であり,それから約9年が経過した.この間,医療,福祉,教育の環境変化が進み,言語聴覚療法の理論・技術にも進歩がみられる.第2版は,このような環境の変化や学問の進歩を反映するよう内容を更新している.それと同時に,言語聴覚療法の普遍的な価値観,理論,技術を具体的なイメージを抱きながら学べるよう,臨床事例を多く紹介するなど編集に工夫を加えた.したがって,本書は初版とは内容と構成を一新している.
 第1章「言語聴覚障害と言語聴覚士の役割」では,言語聴覚障害への専門的対応について臨床事例をあげて解説し,言語聴覚士の役割と臨床業務の多面性が具体的に理解できるようにした.また第2章「言語聴覚障害学とは」では,固有の学問分野としての成り立ちと言語聴覚士教育について概説した.
 第3章「言語とコミュニケーション」と第4章「言語・コミュニケーションとその生物学的基盤」では,健常なコミュニケーション・摂食嚥下の過程とその解剖・生理学的基盤について説明し,それを踏まえて第5章の「言語聴覚障害の種類」の学修に進むことができるようにした.第5章では,各種の障害を並列的に取り上げるのではなく,4つの系にまとめて取り上げ,相互の関連性と体系性を把握できるようにした.
 第6章の「言語聴覚療法」では,すべての障害領域に共通した臨床理念,臨床の進め方,関連職種との連携等について解説し,第7章の「言語聴覚士の職務」において専門職として備えるべき倫理性や業務能力,資格の法的基盤などについて説明した.
 第8章の「言語聴覚障害分野がたどってきた道」では,本分野の歴史の主要事項を概説し,「4. 歴史のトピックス」においてわが国の言語聴覚分野の開祖である笹沼澄子先生にご自分の足跡についてまとめていただいた.この章はすべての言語聴覚士および言語聴覚士を志す学生に一読していただきたい内容となっている.
 本書は,言語聴覚士を志す学生や初めて本分野に興味をもった方々が理解しやすいように,わかりやすい解説を心掛けた.また,本書では言語聴覚障害学のエッセンスが網羅されているので,言語聴覚士国家試験に臨む学生にとっては受験対策に活用できると思われる.さらに,関連分野の方々にとっては,言語聴覚障害とその臨床の全体像を理解する格好の書であると思われる.
 最後に,言語聴覚臨床への科学的な眼差しと熱い思いをもってご執筆いただいた先生方に心から感謝申し上げる.並びに,本書の刊行にご尽力いただいた医学書院編集部の皆様に深謝申し上げる.

 2019年2月
 藤田郁代
目 次
第1章 言語聴覚障害と言語聴覚士の役割
 1 言語聴覚障害とは
 2 言語聴覚士とは
 3 言語聴覚士の役割
 4 多彩な障害への対応を理解する
   A 言語聴覚士の臨床を見てみよう
   B 失語症
   C 言語発達障害
   D 聴覚障害
   E 音声障害
   F 吃音・流暢性障害
   G 摂食嚥下障害
   H 高次脳機能障害(記憶障害)
 5 言語聴覚士に求められる基本的な資質と能力

第2章 言語聴覚障害学とは
 1 学問分野
 2 言語聴覚士の教育

第3章 言語とコミュニケーション
 1 人間の言語とコミュニケーションの特徴
 2 コミュニケーションの成り立ち
 3 言語によるコミュニケーションの過程
 4 言語聴覚障害の種類

第4章 言語・コミュニケーションとその生物学的基礎
 1 言語音と産出機構
 2 飲み込みと摂食嚥下機構
 3 聴こえと聴覚機構
 4 言語と脳

第5章 言語聴覚障害の種類
 1 言語・認知系
  [1 失語症]
   A 基本概念
   B 原因と発生のメカニズム
   C 症状と失語症候群
   D 評価・診断
   E 訓練・指導・援助
  [2 言語発達障害]
   A 基本概念
   B 言語発達障害の定義
   C 対人的コミュニケーションの障害
   D 知的障害に伴う言語発達障害
   E 学習障害と言語発達
   F 原因と発生のメカニズム
   G 症状
   H 評価・診断
   I 訓練・指導・支援
   J 社会参加
  [3 高次脳機能障害に伴うコミュニケーション障害]
   A 高次脳機能障害とは
   B 背景症状
   C 記憶障害
   D 行為・動作の障害
   E 認知の障害(失認)
   F 視空間障害
   G 注意障害
   H 実行機能障害
   I 脳梁離断症候群
   J 脳外傷の高次脳機能
   K 認知症によって起こる障害
 2 発声発語系
  [1 音声障害]
   A 声の出るしくみ
   B 声の特性
   C 音声障害の定義
   D 音声障害の疫学
   E 音声障害の評価と診断
   F 音声障害の分類
   G 音声障害の治療
   H 音声治療の頻度と介入
   I 無喉頭音声
   J 気管切開とコミュニケーション
   K 音声障害患者の社会復帰に言語聴覚士が果たす役割
  [2 発話障害]
   A 器質性構音障害
   B 機能性構音障害
   C 運動障害性構音障害
  [3 吃音・流暢性障害]
 3 摂食嚥下系
   A 摂食嚥下障害の疫学
   B 摂食嚥下障害発症のメカニズム
   C 摂食嚥下障害の検査・評価
   D 治療・訓練
 4 聴覚系
   A 聴覚障害とは
   B 聴覚の機能とその障害
   C 耳の仕組み
   D 難聴の種類と原因疾患
   E 難聴の程度
   F 発症時期による分類
   G 聴覚障害の出現率
   H 難聴の症状
   I コミュニケーション・モード
   J 新生児聴覚スクリーニング
   K 乳幼児期以降の聴覚スクリーニング
   L 補聴器の装用
   M 人工内耳の適応
   N 小児聴覚障害の評価と指導
   O 成人聴覚障害の評価と指導
   P 日常生活を支援する機器
   Q おわりに

第6章 言語聴覚療法
 1 言語聴覚療法の基本理念
 2 言語聴覚療法とICF
 3 言語聴覚療法の過程
 4 関連職種連携

第7章 言語聴覚士の職務
 1 言語聴覚士と倫理
 2 リスクマネジメント
 3 言語聴覚療法の法的基盤
   A 言語聴覚療法と法規
   B 社会保険関係法規
   C 福祉関係法規
   D 医事法規
   E 言語聴覚士法

第8章 言語聴覚障害分野がたどってきた道
 1 欧州における発展
 2 米国における発展
 3 わが国における発展
   A 草創期(戦前まで)
   B 導入・拡大期(戦後から1970年代まで)
   C 成長期(1980~1990年代までの20年間)
   D 発展期(2000年以降)
 4 歴史のトピックス
   A 筆者(笹沼澄子)と言語聴覚障害学の歩み

付録
 1.言語聴覚療法で使用する主な書式
  ・リハビリテーション処方箋
  ・リハビリテーション報告書
  ・リハビリテーション総合実施計画書
 2.言語聴覚士法(抄)

参考図書
索引

Topics一覧
 ・言語と脳の関係を読み解く画像(CT, MRI, トラクトグラフィなど)
 ・日本語と英語におけるディスレクシア
 ・ホッツ(Hotz)床
 ・発達性発語失行
 ・吃音の有病率と自然治癒

Side Memo一覧
 ・ノーマライゼーション
 ・ソーシャル・インクルージョン
 ・ウェルニッケ失語
 ・失語症の言語聴覚療法
 ・乳幼児健康診査
 ・多面的な発達の評価
 ・特別支援学級
 ・就学支援ノート
 ・特別支援教育コーディネーター
 ・気づかれにくい難聴
 ・難聴児における構音の問題
 ・デジタル方式補聴援助システム
 ・変声(声変わり)
 ・VHI(Voice Handicap Index)
 ・変声障害
 ・カイザーグーツマン法
 ・吃音の代表的な症状
 ・吃音検査法
 ・随伴症状
 ・環境調整法
 ・流暢性形成法
 ・くも膜下出血
 ・MSW(medical social worker):医療ソーシャルワーカー
 ・言語聴覚士の職業倫理
 ・日本言語聴覚士協会
 ・構音とは
 ・プロソディ
 ・「構音」「調音」「発音」
 ・スペクトル
 ・サウンドレベルメーターと周波数重み付け特性
 ・トノトピー
 ・人体の構造
 ・皮質もしくは灰白質(神経細胞)・白質(神経線維)
 ・右半球とコミュニケーション
 ・外シルヴィウス裂言語野
 ・皮質下と深部灰白質(大脳基底核),間脳(視床)
 ・標準化検査
 ・知的障害
 ・ダウン症
 ・平均発話長
 ・TEACCH
 ・マカトンサイン
 ・22q11.2欠失症候群
 ・スタティック(静的)パラトグラフィ
 ・友だちとの関係など
 ・遊戯療法
 ・聴覚スクリーニングの有効性
 ・母子保健法
 ・自覚的聴覚検査と他覚的聴覚検査
 ・科学的根拠に基づく言語聴覚療法(EBP)
 ・生活機能
 ・障害
 ・個人因子
 ・目標指向的アプローチ
 ・般化
 ・リスクメジメント
 ・日本における言語聴覚障害学のパイオニア,笹沼澄子先生
 ・言語聴覚障害学関連の国際学会
 ・発達障害支援法
 ・国外の研究者との交流
 ・認知神経心理学的情報処理モデルの効用