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はじめての心電図 第2版増補版

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初学者がつまずくポイントを熟知した著者による、長年の心電図教育のノウハウを盛り込んだ心電図入門書の決定版。簡潔かつ明快な解説は、はじめの一歩から医師として到達すべき水準まで無理なく導く。増補版刊行にあたり本文・図の記載を丁寧に改め、巻末の<セルフアセスメント>を拡充、精選された必修レベルの問題70題を収載した。心電図を読む力が着実に身につく1冊。
兼本 成斌
発行 2014年06月判型:B5頁:360
ISBN 978-4-260-02024-4
定価 4,950円 (本体4,500円+税)

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第2版増補版序

 第2版の大改訂以来,十数年が過ぎました。今回は小改訂ではありますが,文章をより洗練し,より読みやすくするよう書き換えました。さらに,一部の記述は大幅に変えています。それは,心電計が全自動になり特殊な場合を除いて記録者が介入する余地がほとんどなくなったこと,ホルター心電図や人工心臓ペースメーカーなどの機器が大きく変わったことが要因です。また機器の進展だけでなく,この間の医学の進歩も反映しています。“たこつぼ心筋症”も病態がかなり明らかになってきました。
 しかし,どのような機器が開発され,またいかに医学が進歩しても,心電図を正確に解読する意義は,いささかも変わっていません。むしろ“診断の手掛かりとしての重要性”が以前に比べ増しています。
 循環器疾患は,(1)病歴を詳細に聴取すること,(2)患者さんの身体所見をしっかり捉えること,(3)心電図をしっかり記録して正確に診断(心臓の電気的現象の把握)すること,(4)心エコー図を詳細に観察(心臓の機械的現象の把握)すること,(5)必要があれば胸部X線写真を撮影することで,90%以上は診断可能です。それ以上の諸検査はその診断を確認し,重症度を判定し,さらに治療方法を詳細に考察するために行われます。
 筆者が循環器専門医として臨床に携わって以来,心電図を正確に診断することの重要性を日々の診療で実感しています。心電図を正確に診断できるか否かは,スタート時点で,その実力に100歩以上の差がつきます。大学の先生方とお話をすると,循環器専門医であっても心電計の自動診断をもとに心電図診断を流している現状に対し,危惧を抱いている方が多いようです。自動診断機能が付属していても,捉えているのはほんの一部に過ぎません。
 筆者は学4と卒業後の1年間,心電図を徹底的に学びました。この経験から,とくに心電図は,他の“目で見てわかる画像診断”と異なり,学生時代を含めて若い時期にしっかりと時間をかけて勉強しないと後から取り戻すことが非常に厳しいと感じています。若いときにしっかり学んでください。ある程度以上の実力を身につけると,心電図診断の有用性を真に実感するときが必ず訪れます。それからは毎日の診療で心電図所見を治療の役に立てることができるようになります。本書でその第一歩を踏み出してください。
 末筆ですが,今回も編集や構成にご尽力いただいた編集部の林裕氏に心からお礼申し上げます。

 2014年5月
 著者

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I 心電図の基本を学ぶ
 1.正しい心電図のとりかた
  心電図のとりかた
  きれいな心電図をとるための注意
 2.心電波形のよびかた
 3.心電図の誘導法
 4.心筋の興奮と心電曲線
  心電図の基礎
  心筋の興奮と心電曲線
  心室の興奮と心電波形
  胸部誘導心電図
  心電波形の意味は?
 5.正常心電図
 6.P波
  右房負荷
  左房負荷
  両房負荷
  陰性P波
 7.左室肥大
 8.右室肥大
  圧負荷(求心性)による右室肥大
  容量負荷(遠心性)による右室肥大
 9.両室肥大
 10.低電位(差)
 11.ST-T波とQT間隔の異常
  ST上昇
  ST下降
  T波の異常
  QT間隔の異常
 12.U波

II 心筋梗塞と心電図
 13.心筋梗塞

III 電解質・薬剤の影響を理解する
 14.電解質の異常
  低カリウム血症
  高カリウム血症
  低および高カルシウム血症
 15.ジギタリス中毒

IV 不整脈心電図を読む
 16.不整脈総論
 17.洞調律の異常
 18.上室調律
 19.洞房ブロックと洞停止
  洞房ブロック
  洞停止
 20.洞不全症候群
 21.早期収縮(期外収縮)
  上室早期収縮
  心室早期収縮
 22.心房細動・心房粗動
  心房細動
  心房粗動
 23.発作性上室頻拍
 24.発作性心室頻拍
 25.遅い頻拍
 26.補充収縮・補充調律
 27.房室ブロック
 28.心室内伝導障害
  完全右脚ブロック
  完全左脚ブロック
  左脚前枝ブロック
  左脚後枝ブロック
  脚ブロックの組み合わせ
  非特異的心室内伝導障害
 29.WPW症候群
  WPW症候群
  非定型的WPW症候群
 30.危険な不整脈
 31.不整脈の治療

V その他の心電図検査・人工心臓ペースメーカー
 32.運動負荷試験
 33.Holter心電図
 34.人工心臓ペースメーカー

用語解説
セルフアセスメント70題
セルフアセスメント70題-解答・解説

索引

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セルフアセスメント問題とセルフチェックで力がつく心電図入門書
書評者: 福田 恵一 (慶大教授・循環器内科学)
 心電図を初めて勉強する者は,心臓の電気活動がどのように心電図の波形になるのか,なかなか理解し難いものである。また,心電図学の入門書は多く,どの本を勉強すべきであるのかわからない。結局は心電図の本を読破できずに,何となく苦手としている者が多いのではないだろうか?

 本書はわれわれの研究室の大先輩である兼本成斌先生が,多くの臨床経験と長年の学生教育を通して書き上げたロングセラーとなる心電図学入門のための名著である。このため,心電図の取り方から始まり,心電図波形の呼び方,誘導法,心筋の興奮と心電曲線という基礎中の基礎から容易に学べる特徴を有している。本書を読んでいるうちに心電図の波形がどのように構成され,その波形の異常がどのような疾患と結びついているのか,自然と頭に入る仕組みとなっている。読者は「心電図は難しい」などの意識を持つ前に本書を通読することができるので,心筋梗塞や不整脈の心電図を容易に理解できるようになっている。心筋梗塞の部位と心電図の対応も初学者には頭を悩ませるものであるが,本書を読めば心臓の解剖学的位置と3本の冠動脈の走行,心電図の電極の位置が理解できるようになり,むしろクイズのように判読するのが楽しくなる。

 不整脈も心臓の解剖と電気的興奮の旋回の仕組みがわかるまではなかなか慣れ親しむことができないが,ひとたび理解してしまうと後は頭の体操となる。そのために,兼本先生は随所にセルフチェックを設けている。このセルフチェックを上手に利用してもらえば,一歩一歩理解の範囲を広げることができ,いつの間にか力がつくように構成されている。また,本書の特徴にセルフアセスメント問題が付いていることが挙げられる。この問題を解きながら,わからない部分は本書に戻って読み直し,また問題を解くというように進めてもらえれば,必ず心電図の読影は上達する。国家試験の問題はもちろんのこと,通常の日常臨床で遭遇するほとんどの心電図はできるようになるであろう。

 本書は初版から25年の月日が経つが,その間に心電図学が進歩し,新たな疾患概念も登場した。この間,兼本先生は一貫して遺伝性QT延長症候群,Brugada症候群,カテコラミン誘発性多形性心室頻拍,QT短縮症候群,不整脈源性右室心筋症などの新しい概念に関しても,常に加筆・修正され,本書が新たな学問的進歩を取り込んだ時代に即応した最新の教科書に徐々に変化してきている。ペースメーカーの領域の進歩も目覚ましいものがあるが,これに対しても多くの内容が追記されている。これは,兼本先生が常に本書を入門書であると同時に,最新のものを届けたいという熱意の表れと思っている。

 兼本先生が現職で教鞭を執られているときには厳格な先生であったと伺っているが,本書は何事にも几帳面な先生の性格を反映し,隅から隅まで細々とした配慮がなされている。この細かな配慮が本書をロングセラーとして多くの読者を惹きつけた理由であると考えている。これまでも多くの先生方がこの本を読んで優れた医師に育っていった。私は次世代の医学を担う医学生,初期臨床研修医に一人でも多く本書を利用することにより,ぜひ心電図を得意の領域にするよう利用してもらいたいと願っている。
これから心電図を学ぶ方々に自信を持ってお薦めする入門書
書評者: 大内 尉義 (虎の門病院院長)
 このたび,兼本成斌先生の著された『はじめての心電図』(第2版増補版)が上梓された。第2版の出版が2002年であるから12年ぶりの改訂となる。ちなみに初版が発行されたのが1990年であり,本書は実に四半世紀にわたる歴史を有する心電図の入門書である。

 評者は,兼本先生のこの『はじめての心電図』には大変長いお付き合いをさせていただいている。というのは,評者が東大在任中に,老年病科の講師として,医学科3年生(5年生)のBedside learningの担当となったのが1987年のことであるが,その中で「心電図の読み方」というショートレクチャーを行ったところ,これが大変好評で,学生諸君からの要望に応える格好で,1990年から課外講義として週1回,15~25名の有志学生を対象に,1年かけて心電図の読み方を教える「心電図セミナー」を始めた。前半はテキストを用いた解説,後半は実際の心電図を読んできてもらいそれを皆の前で発表,私が添削するという方式であった。そのときのテキストとして選んだのが本書である。当時,心電図の教科書はいくつか出版されていたが,いずれも初学者にはやや難しく,適当な心電図入門書があまりなかった時代であった。その中で,『はじめての心電図』は,心電図を読むために必要かつ十分な知識が,簡潔にわかりやすい形で提供されており,すぐさま,本書を私のセミナーの標準テキストとして採用した。心電図を勉強して最初につまずくのは,心臓の難しい電気生理学の解説であり,ここを乗り越えられずにつまずいた学生は私を含め多いのではないかと思われる。本書はここを割り切って,電気生理学の解説は心電図を理解するために必要最小限度にとどめ(p17~28),目標をプラクティカルな心電図解読においている。心電図所見は,「考え方のポイント」「診断のクライテリア」に分けて簡潔に箇条書きで記載されているし,また実際の心電図の解説もわかりやすい。さらに深い解説が必要な項目は,「ノート」として肩の凝らない読み物となっている点も好感が持てる。「セルフチェック」「セルフアセスメント」は自分の理解度を試す上で有用であろう。索引と用語の解説が充実しているのも,本書を使いやすいものにしている。

 書評からずれて恐縮であるが,私の心電図セミナーは先に述べたように1990年に始まって,定年退職の前の年2012年3月まで23年にわたって続いた。最初の頃の学生は,大学においては教授あるいは准教授として研究・教育に携わり,また第一線の医療を担う年齢になっている。本書はそういった意味で,私の大学の教員としての歴史そのものともいえる懐かしい書籍である。その後,心電図の入門書は数多く発行されたが,本書は心電図の入門書として第一級の本であり,これから心電図を学ぼうとする,学生,研修医の方々に自信を持ってお薦めしたい。ただ,教科書を読んだだけでは心電図が読めるようにはなかなかならない。本書をマスターした後,あるいはそれと並行して実際の心電図の解読に挑戦していただきたい。その途上においても本書の内容を繰り返し振り返ることが大切である。兼本先生にはぜひ,本書の姉妹編としてそのような御本を出していただければ,と願うのは評者ばかりであろうか。
臨床医学に必須の心電図読影をわかりやすく解説
書評者: 伊苅 裕二 (東海大教授・循環器内科学)
 Einthovenらによる心電図の実用化から1世紀が経過し,すでに心電図検査はどちらかと言えば古い検査法になった。ところが,その臨床における重要性は古臭いどころか,今でも極めて重要な多くの情報を与え,臨床医学において無くてはならない検査法の一つである。脈の乱れを示す不整脈の診断には,その時の心電図があればほぼ確定診断可能である。さらに虚血性心疾患の診断にも重要である。特に急性期死亡率の高いST上昇型心筋梗塞においては,症状と心電図と血液検査で診断をすることが標準となっているが,血液検査の異常値は,早くて発症2時間で出現し,発症2時間以内は正常値である。しかし心電図では発症後1分程度ですでに変化が出始めるため,超急性期診断には最も優れた診断法である。心筋梗塞に対する再灌流治療の発達はこの10年で目覚ましいものがある。最近では,「より早く再灌流を」という流れから,病院のドアをくぐってから冠動脈インターベンション(PCI)による治療完了まで90分以内で施行するべきとガイドラインでも決められている。これを達成できれば患者の死亡率は有意に減少するのである。すなわち,胸痛患者が来てから10分以内に心電図をとり,異常を認めれば心臓カテーテルを直ちに行わなければ90分以内にPCIを完了することはできない。これが現在の標準医療なのである。よって,心電図を早く行い早く診断する能力というのは,これまでになく臨床医学において重要視されている。さらに心疾患だけでなく,電解質異常やジギタリスによる薬物中毒などが診断できその応用範囲は幅が広い。したがって,循環器内科を専門的に志す医師だけでなく,いずれの専門性を志すにしても,総合的な診療をめざすにしても,基本的な心電図読影は臨床医学の必須の領域なのである。

 本書は,初学者のためにわかりやすく執筆された心電図の入門書である。図表を多用し,実例を多く示し,初学者にも理解しやすい内容となっている。さらに筆者の長年の心電図教育の理論と実践を反映し,循環器専門医が読んでも納得できる深い内容を含んでいる。

 心電図は初学者にとっては,とっつきにくく,苦手意識を持つ医学生が多い。本書を手に取って学ぶことで,実は心電図は非常に合理的かつ理論的な検査法であり,基本の習得とある一定のパターン認識により,かなり深い診断が可能となる領域であることがわかるであろう。

 私は現在東海大循環器内科教授という職務から,学生に心電図を教える立場であるが,私自身も学生の時には心電図を苦手としていた。卒業し臨床研修医として現場に出てから,患者さんの病態と心電図を比較し,その病状の反映に極めて鋭敏であることからその有効性をあらためて認識し,研修医時代に深く心電図を学んだものである。心電図が理解できる喜びをぜひ,多くの医学生と共有したいと考えている。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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