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アスリートを救え
スポーツ外傷・障害の画像診断 完全攻略

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スポーツ外傷・障害の診断は、ひとつ間違えれば選手生命にもかかわるもの。あの外来でのやりとりで、果たしてアスリートを救えたのか。本書は、外来で誤りやすいケースを中心に解説し、画像を読むスキルと考える力をアップさせる。大好評連載「成長期スポーツ外傷・障害と落とし穴」(「臨床整形外科」誌)を大幅に加筆し、描き下ろしを加えて書籍化。百戦錬磨のスポーツドクターがおくるスポーツ外傷・障害画像診断の決定版。
編集 帖佐 悦男
発行 2015年11月判型:B5頁:228
ISBN 978-4-260-02195-1
定価 8,800円 (本体8,000円+税)

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 本書は,「臨床整形外科」誌に45巻11号(平成22年)から48巻11号(平成25年)まで連載した「成長期のスポーツ外傷・障害と落とし穴」を再構成し,大幅に加筆してまとめています.編集の契機は,私が日本整形外科学会学術総会においてスポーツ外傷・障害の画像診断について講演した際,それらの症例を連載するようご指示いただいたことにはじまります.発刊にあたりまして,連載の機会を与えていただきました同誌編集委員の菊地臣一先生(福島県立医科大学理事長兼学長)をはじめ編集委員ならびに関係各位に御礼申し上げます.

 今日,宮崎大学医学部整形外科学教室では関連病院を含め多くのスポーツドクターが診療を行っています.また,同大附属病院は地方の600床規模の病院ですが,整形外科の外来数も比較的多く,スポーツ外傷・障害をはじめとした運動器疾患のさまざまな手術を行っています.年間約1,300件以上行っている年度もあるので,それは本当に多様な疾患に遭遇します.多くの症例を経験すると診断に難渋する症例にも遭遇しますが,診断する医師にとっても患者さんにとっても早期診断・早期治療が重要です.特にアスリートにとっては,早期診断・早期治療により1日でも早いスポーツ復帰が可能になります.診断する側では,「後医は名医」と言われるように,後出しじゃんけんで診断し治療することは容易ですが,実臨床の第一線の現場で診療にあたっておられる医師は,診断に難渋することも多いと思います.さらにMRIなど画像機器の目覚しい進歩により診断技術が向上しているため,医療面接や身体所見を十分とらずに診断し,主病因の診断を誤る結果に陥るケースもあります.
 そこで,少しでも先生方の初診時画像診断に役立つことを目的に,成長期を中心に画像診断の大切さをコンセプトにまとめました.医師のみでなく,メディカルスタッフにとっても,画像診断は客観的に知識・情報を得ることで「落とし穴」に陥る可能性を少なくすることができます.もちろん診断に際しては,医療面接(問診)や診察(身体所見)が最も大切なことは自明であり,そこである程度疾患は予測できますが,確定診断,鑑別診断,治療方針の決定や治療後の評価に画像診断は必要不可欠です.
 また本書では,実臨床で役立つようスポーツ外傷・障害の診療に必要なことを若手医師の意見を踏まえ構成しました.診察に際しての注意点を「肝」として記載し,さらに診療に際し患者(選手),保護者や指導者などからよく質問を受けることを「アドバイス」として記載することで,日常診療で役立つ書となるよう次のように編集しました.
 項目として,第I章ではスポーツ診療の基本として,「スポーツ外傷・障害 みかた・考え方」として,スポーツ外傷・障害の診療をする際に必要な画像診断の基本と,競技特性や年代別の画像上の特徴や注意点について記載しました.第II章では画像の基本的な撮影法として,モダリティや撮影法の特徴,TipsやPitfallに陥らないためのポイントを記載しました.第III章は,患者が受診した際の主訴を部位ごとに分け代表的疾患や見逃しやすい疾患について,鑑別疾患,画像検査や画像所見についてポイントを記載しました.第IV章は,代表的なスポーツ外傷・障害を取り上げ,第V章は,さまざまなケースを提示することで読者が一緒に診断できるようにしました.ただ,頁の制約上,取り上げることのできなかった疾患があることをご容赦ください.
 本書は整形外科医のみならずスポーツ診療に携わる医師やメディカルスタッフを含めた医療関係者すべてに役立つものと考えています.
 最後に,本書の執筆は当教室でこの連載を担当した医師を中心に行いました.編集作業を担当した田島卓也医師や山口奈美医師をはじめ,執筆に尽力してくれた教室員に深く感謝いたします.また,医学書院の石井美香氏に深謝いたします.
 本書が常に診療の傍らに置かれ,読者の皆様方の臨床に即役立つことを祈念し,序の挨拶といたします. 

 2015年9月
 宮崎大学教授・整形外科学
 帖佐悦男

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I スポーツ外傷・障害 みかた・考えかた
 スポーツ外傷・障害画像診断の基本
   まず何をすべきか/問診の次は/画像検査/
   スポーツ外傷・障害の画像診断のために
 スポーツ外傷・障害の競技特性
   ランニングを主体とした競技/ジャンプを主体とした競技/
   球技系スポーツ/コンタクトスポーツ
 年代別のスポーツ外傷・障害の画像診断
   小児/成長期/青年期~中・高年期

II スポーツ外傷・障害 画像の撮りかた
 画像検査の進めかた
 基本的な画像の撮りかた モダリティ別のポイント
   X線/CT/MRI/超音波

III スポーツ外傷・障害 患者の読みかた
 頚部の痛みを訴えたとき
 肩の痛みを訴えたとき
 肘の痛みを訴えたとき
 手・手関節の痛みを訴えたとき
 腰部の痛みを訴えたとき
 股関節周囲,大腿の痛みを訴えたとき
 膝の痛みを訴えたとき
 下腿の痛みを訴えたとき
 足部,足関節の痛みを訴えたとき

IV 絶対にはずしてはいけない7疾患 主な症例別 画像診断
 症例1 反復性肩関節脱臼
 症例2 上腕骨離断性骨軟骨炎
 症例3 腰椎分離症
 症例4 下前腸骨棘裂離骨折
 症例5 膝蓋骨脱臼
 症例6 脛骨疲労骨折
 症例7 有痛性外脛骨

V ケースでわかる画像診断
 肩関節亜脱臼後に疼痛が残存したラグビー選手
 腕の脱力感・しびれ感が続いたウエイトリフティング選手
 野球肘の改善後に野球肘検診で異常を指摘された野球選手
 投球時にロッキングを伴う肘痛が生じた野球選手
 遠投で肘痛が増悪した野球選手
 転落後に肘の痛みと腫脹が生じたバスケットボール選手
 柔道の試合中に技をかけようとして出現した肘関節痛
 練習中に手関節痛が生じた剣道選手
 転倒受傷後,持続する手関節痛を自覚したサッカー選手
 手をついた後に痛みを訴えたサッカー選手
 試合後に手環指の疼痛・屈曲障害が生じたラグビー選手
 肘外傷後に手指のしびれ・脱力が生じたレスリング選手
 マット運動後に痛みと斜頚が出現した小学生
 前頭部を強打後,頚部と上肢の痛みが継続する柔道選手
 腰痛が長びくサッカー選手
 腰痛と下肢痛が生じたサッカー選手
 片脚で踏ん張った際に殿部に疼痛をきたしたサッカー選手
 大腿部の痛みと腫瘤を認める野球選手
 ボールを蹴った瞬間に股関節痛が生じたサッカー選手
 タックル動作後に股関節痛が生じたラグビー選手
 歩行・ランニング時の鼡径部痛を訴える柔道選手
 ダッシュと急な方向転換後に膝痛が生じたハンドボール選手
 運動中に膝痛が生じたバスケットボール選手(1)
 長期の走り込み後に膝前面痛が生じたラグビー選手
 スライディングで膝を捻り受傷した野球選手
 運動中に膝痛が生じたバスケットボール選手(2)
 練習強度アップ後に膝痛が生じたバレーボール選手
 誘因なく下腿部痛が出現した短距離走選手
 練習後に誘因なく足部痛が生じたサッカー選手
 足部痛が徐々に増悪し走れなくなった短距離走選手
 足関節後方の痛みが続く野球選手
 誘因なく足部痛が生じたバスケットボール選手
 ハードル練習中に足関節内返し受傷した陸上選手
 運動中に足関節痛が生じた野球選手
 練習中に足関節内返し受傷したサッカー選手
 足底部の痛みが続く剣道選手

索引

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スポーツ医学の最前線・その集大成
書評者: 菊地 臣一 (福島県立医大理事長/学長・整形外科学)
 超高齢社会を迎えている今,国民の健康に対する関心が高まっている。EBM(evidence-based medicine)は,健康の獲得や維持に運動が深く関与していることを明らかにした。体を動かすことが,寿命,がん,認知症などの健康障害に良い影響を与えることが,関係者の地道な啓発活動により,国民の間にも浸透し始めている。

 一方,「体を動かす」ことの象徴としてスポーツ活動がある。近年のスポーツ科学の発達は,トレーニングをはじめ,スポーツのあり方にさまざまな変革をもたらしている。

 スポーツ愛好者や競技者への医療に対して,従来の医療は大きな問題を抱えていた。それは,スポーツの医療を,診療現場での医療と同じように対処していたことである。

 臨床の現場でも,いまだに「安静」が治療手段として用いられていることが少なくない。EBMでは,「結果」としての安静は別にして,「治療」としての安静には,有効性は認められていない。すなわち,現在の治療では「守りの医療」は,特別な理由がない限り意味を持たない。

 一方,スポーツ競技者の医療では,積極的な「攻めの医療」で対処する必要がある。選手に,「競技を休め」と言うのは,一歩間違えると,レギュラーの座からの転落や選手生命の終わりを意味する。スポーツ競技の人々が,代替医療に流れる大きな理由の一つがここにある。

 こんな世情の中,帖佐悦男先生を代表とする宮崎大学整形外科の方々によって本書が刊行された。宮崎大学整形外科学講座は,田島直也名誉教授が現役の時代からスポーツ医学に関心を持ち,現場と一体となってスポーツ医学の最前線に立って今に至っている。本書はその集大成でもある。

 本書は,スポーツ医学における近年の画像診断の劇的な進歩を積極的に紹介している。また,スポーツによる外傷や障害の診療上のポイントを本書の中で提示し,診療を受ける側への実際の対応も掲載している。

 もう一つの特徴は,詳細な症例提示を一つの章として構成している点である。豊富な経験を有している講座ならではの目次立てである。

 運動が健康に重要な役割を果たしていることが明らかになった今,本書は,スポーツ医学とその実践をこれから学ぶ人間には良き入門書として,専門家には自らのknow-howの確認と錬磨の書として推薦できる。

 8,000円は安くないが,その価値はある。

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