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外来で目をまわさない
めまい診療シンプルアプローチ

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ありふれた症候でありながら、苦手意識を持つ医師が多い「めまい」。本書は、脳卒中の専門家である著者が、危ないめまいを見逃さないためのフローチャートを用いた簡単・便利なアプローチ法を伝授。めまいの鑑別診断からその対応まで、やさしい語り口でコンサイスに解説。さらにQRコードによる動画配信で眼振や治療法の理解がいっそう深まること間違いなし。研修医から内科医、開業医まで、これ1冊でもう対応に迷わない!
城倉 健
発行 2013年11月判型:B5頁:152
ISBN 978-4-260-01833-3
定価 4,950円 (本体4,500円+税)

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推薦の序(肥塚 泉)/(城倉 健)

推薦の序
 城倉健先生の著書『外来で目をまわさない めまい診療シンプルアプローチ』が完成して上梓されることになった.城倉健先生は脳卒中などの脳の疾患はもちろん,“めまい”についても造詣が深い貴重な神経内科医である.患者さんはもちろんのこと,診察にあたる医師も「怖い」と感じている中枢性めまいを,効率よくかつ科学的に診断する手法を考案され,これを啓蒙しておられる.本書のねらいは,「誰でも、とくに初学者でも簡単にめまい診療ができるようになること」で,これを実践するために必要なノウハウが,随所にちりばめられている。
 本書は2部構成になっている.第1部では,めまいという症候に対する,わかりやすいアプローチ法が述べられている.中枢性めまいには,ほぼ間違いなく眼球運動障害や構音障害,四肢の運動障害や感覚障害のどれかが伴っているのに対し,末梢性めまいはめまいのみ,あるいは聴力低下とめまいのみしか症状がないこと.中枢性めまいはいくらがんばっても体のバランスを保てなくなるが,末梢性めまいはがんばればなんとかバランスを保てることなど,シンプルかつ有用なpointが具体的に述べられている.また末梢性めまいと中枢性めまいの頻度,末梢性めまいで認められる特徴的な眼振所見からの鑑別法など、読者が正しい診断をするうえで,有用な情報が具体的に示されている.またフローチャートを用いて,患者さんの症状や所見をもとに段階的に診断に至らせる工夫など,初学者のめまいに対する,“食べず嫌い”を防ぐような“仕掛け”が随所にみられる.
 第2部では,代表的な末梢性めまい疾患の診断に際して有用な情報源となる、特徴的な眼振の動画が示されている.良性発作性頭位めまい症の治療に用いられる浮遊耳石置換法の動画も示されている.中枢性めまいについては,急性めまいの原因になる脳幹や小脳の脳卒中について,その支配血管による病態の違いについて,中枢前庭機構の生理学的な違いをもとに,詳細にかつわかりやすく述べられている.最後に末梢性めまいとの鑑別が困難な中枢性めまいや特殊な脳血管障害による中枢性めまいなどの診断についても,詳細に述べられ,まさに,“かゆいところに手が届く”書物となっている.
 城倉健先生は,本書の読者層を,「誰でも,とくに初学者」としておられるようだが,今現在,めまい診療に携わっておられるすべての先生方にも,知識の再確認ならびに整理整頓をするうえで,ぜひとも本書を読んでいただきたいと考え,本書を推薦させていただく.

 聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科 肥塚 泉



 私は神経内科医なのでもともと脳卒中などの脳の疾患が専門ですが,めまいも専門にしています.「え? めまいって耳鼻科が診るんじゃないの?」という声が聞こえてきそうですが,脳の専門家によるめまい診療は,実はわりと社会的ニーズが高いのです.
 確かにめまいの多くは耳(正確には耳の奥の末梢前庭)に原因がありますので,耳の専門家である耳鼻咽喉科の先生がめまいを診療することに,まったく異議はありません.でも皆さんが突然めまいを感じたら,まず何の病気を心配しますか?
 めまいのことをよく知らない一般の人は,突然めまいがすると,まっさきに自分が脳の病気,特に脳卒中になったのではないかと思い,パニックに陥ります.めまいについてある程度知っている医療関係者でも,突然激しいめまいと嘔吐が生じたら,やはり脳卒中を心配するでしょう.そして多くのめまい患者は,最初に神経内科や脳外科,脳卒中センターなどの脳の専門施設に受診しようと考えます.
 こうした社会的ニーズに対応しているせいか,脳を専門とする神経内科医で,しかもめまいも専門にしている私の外来には,年間700人以上のめまい患者が受診,あるいは搬送されてきます.
 めまい患者が脳ばかり心配するせいか,これまでのめまいの教科書は,「脳が原因で生じた中枢性めまいを見逃したらとんでもないことになる」という点が強調されすぎていたような気がします.中枢性めまいはすべて記載しておかなければいけないとばかりに,脳の専門家でもめったに出会うことのないような特殊な中枢性めまいの鑑別が,ずらっと並べられていたりします.到底覚えきれないような,病巣と神経症候の複雑な組み合わせも数多く出てきます.まるで,「怖い」中枢性めまいを見逃さないためには,ややこしい小脳や脳幹の神経機構を完璧に把握しておかなければならないかのようです.
 多くの医師にとって小脳や脳幹の神経機構は専門外なので,これではめまい診療に対して苦手意識をもってしまうのも当然と言えます.そして苦手になってしまった結果,見逃しても命にかかわることが少ない末梢性めまいの診断も,なんとなく敬遠してしまうようになっていきます.このような悪循環が,めまい診療に対してアレルギーのある医師が増える一因になっているのです.
 実際の中枢性めまいは,「片麻痺」などの極めて単純でわかりやすい神経症候から,多くの場合もっと簡単に診断がつきます.細かい神経症候の組み合わせを覚えないと診断できない,なんてことはまったくありません.いくつかの必要最低限の特徴を把握しておくだけで,すぐに中枢性めまいは診断できてしまうのです.
 こうした中枢性めまいの特徴を,脳の専門家としての立場でわかりやすく整理することで,医師も患者も最も心配している中枢性めまいを,とりあえず簡単に見分けられるようになろう,というのが本書のねらいです.もちろん中枢性めまいをきちんと診断するためには,頻度の圧倒的に高い末梢性めまいも知っておく必要があります.ところが,中枢性めまいとの対比から末梢性めまいの特徴を整理すると,これまた驚くほど簡単にまとまってしまいます.神経耳科学的な特殊検査は,実はプライマリケアの段階ではほとんど必要ないのです.
 中枢性めまいにいち早く気づくことができれば,血栓溶解などの超急性期でないとできない治療を選択できる可能性が高くなります.末梢性めまいを気軽に診断できるようになれば,実はめまい患者の半数以上が診察室で直ちに診断がつき,おまけに薬なんか使わなくてもその場ですぐに治してしまうことが可能な「良性発作性頭位めまい症」であることにも気づくはずです.
 本書により,めまいをプライマリケアの段階で積極的に診断し,治療まで行える医師が増えることを,期待しています.

 2013年10月
 城倉 健

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推薦の序

QRコードによる動画配信について

第1部 診察室ですぐに使えるめまい患者へのアプローチ法
 1.1 イントロダクション——めまいの診療は難しい?
  なぜめまいに苦手意識をもってしまうのか?
  簡単で便利なアプローチ法を身につけよう!
 1.2 末梢性めまいと中枢性めまいの違い
  平衡維持に関する耳と脳の2つの基本的特徴
 1.3 中枢性めまいの頻度
  末梢性めまいが多いわけ
  中枢性めまいが多いとするデータのカラクリ
 1.4 末梢性めまいの特徴——中枢性めまいを鑑別するために知っておこう
  良性発作性頭位めまい症
  良性発作性頭位めまい症以外の末梢性めまい
 1.5 中枢性めまいの特徴
  脳幹の障害
  小脳の障害
 1.6 実際の診察法——めまい診断フローチャートを用いた診察の流れ
 1.7 例外の存在
 1.8 画像検査のタイミング
 1.9 第1部のまとめ

第2部 めまい診療の実際
 2.1 末梢性めまい
 2.2 良性発作性頭位めまい症
  後半規管型良性発作性頭位めまい症
  外側半規管型良性発作性頭位めまい症
  市中病院で経験する良性発作性頭位めまい症
  良性発作性頭位めまい症の治療
 2.3 前庭神経炎
  前庭神経炎の治療
 2.4 メニエール病,突発性難聴
  メニエール病
  突発性難聴
 2.5 その他の急性末梢前庭障害
  末梢性めまいに伴う眼振
  ハント症候群
  中耳炎によるめまい
 2.6 中枢性めまい
 2.7 脳卒中による急性めまい
  中脳病変
  橋病変
  延髄病変
  小脳病変
 2.8 眼振に注目した中枢性めまいの鑑別
  中枢性めまいでしかみられない眼振
  末梢性めまいと紛らわしい中枢性めまいの眼振
 2.9 特殊な脳血管障害によるめまい
  椎骨脳底動脈循環不全
  脳底動脈閉塞症
  鎖骨下動脈盗血現象
  bow hunter syndrome
 2.10 脳卒中以外の原因による中枢性めまい
  腫瘍性疾患
  脱髄性疾患や炎症性疾患
  代謝性脳症や中毒性脳症
  変性疾患
 2.11 原因不明の慢性めまい
  “遷延性”,“不顕性”,“くすぶり型”の良性発作性頭位めまい症
  post-stroke dizziness
  その他の原因不明のめまい患者へのアプローチ法

あとがき
索引

Column
めまいは病歴から診断できる?
Frenzel眼鏡がないときは?
眼振の向き—その1
眼振の向き—その2
パタカ???
めまい患者に水平性眼振がみられた場合
蝸牛症状
良性発作性頭位めまい症の左右差
後半規管型クプラ結石症? 後半規管short arm型?
Epley法の耳石の動きのイメージ
理学療法に付いている人の名前
耳石置換後の浮遊感
良性発作性頭位めまい症に対する薬物療法
前庭神経炎の頭位による眼振の変化
メニエール病と水分
一側性の眼瞼下垂とめまい
核間性眼筋麻痺(MLF症候群)
AICA症候群とハント症候群
終末位眼振
「生理的」垂直性眼振
小脳の血管障害での眼振の頻度
いわゆる「脳動脈硬化症」との混同
頭痛を伴うめまい
核間性眼筋麻痺の原因
アルコール眼振
薬剤によるめまい?
原因不明の反復性前庭障害
片頭痛性めまい? 前庭型メニエール病?
失神性のめまい
血圧低下とめまい
血圧上昇とめまい
乗り物酔い

Advanced study
小脳虫部の血管障害による方向固定性水平性眼振と方向交代性上向性眼振の機序
小脳虫部障害によるpseudo-vestibular neuritisと末梢性の前庭神経炎の鑑別
小脳虫部の血管障害による方向固定性水平性眼振(pseudo-vestibular neuritis)と
 方向交代性上向性眼振(CPPV)の違い

QR動画一覧
VTR1 右後半規管型良性発作性頭位めまい症の眼振(1)
VTR2 右後半規管型良性発作性頭位めまい症の眼振(2)
VTR3 右外側半規管型良性発作性頭位めまい症(半規管結石症)の眼振
VTR4 右外側半規管型良性発作性頭位めまい症(クプラ結石症)の眼振
VTR5 左外側半規管型良性発作性頭位めまい症(クプラ結石症)の眼振
VTR6 右後半規管型良性発作性頭位めまい症に対するEpley法
VTR7 右後半規管型良性発作性頭位めまい症に対するSemont法
VTR8 右外側半規管型良性発作性頭位めまい症に対するLempert法
VTR9 良性発作性頭位めまい症に対するBrandt-Daroff法
VTR10 右前庭神経炎の眼振
VTR11 右メニエール病の眼振
VTR12 右小脳出血による方向固定性水平性眼振(pseudo-vestibular neuritis)
VTR13 両側後下小脳動脈領域の梗塞による方向交代性上向性眼振
     (central paroxysmal positional vertigo)
VTR14 ocular flutter

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めまいに関連する神経症候を正確に診る
書評者: 田中 章景 (横浜市大大学院主任教授・神経内科学・脳卒中医学)
 神経症候学は,19世紀の神経学者ジャン-マルタン・シャルコー(Jean-Martin Charcot)らが活躍した時代に,神経症候を神経病理所見と対比することで症候に特異的な責任病巣を明らかにするという手法により確立した。この当時の知見は現代に至るまで脈々と受け継がれてきている。そして,現代においても神経症候学が色あせないのは,神経学の分野では,患者を問診し診察で神経症候を明らかにするというスタイルが,最先端の診断機器と比較しても遜色ないほど多くの情報をもたらすことに起因している。

 しかし,一方でMRIをはじめとする診断機器は客観的かつ正確に責任病巣を描出し得るし,遺伝子検査により100%確実な診断を下せる病気もある。このように患者から情報を得るツールが増え,その精度が飛躍的に向上するにつれ,古典的な神経症候学の相対的地位は低下してきているといわざるを得ない。

 本書『めまい診療シンプルアプローチ』の著者である城倉健氏は,神経症候学を自らの専門分野の一つに挙げるほど,神経症候学に対する強い情熱を持っている。特に眼振をはじめとする眼球運動と生理機能・画像検査所見を対比する数多くの研究を通じ,めまいを主訴とする患者を神経症候の把握によって的確に診断する能力において群を抜いている。

 本書は,そのような著者が,これまでのめまい診療・研究を通じて生み出してきた知見,技術のエッセンスを見事に集約した一冊となっている。めまい診療は,文字通りの「目がまわる」だけでなく,「ふわふわする」「ふらつく」など患者の多種多様な訴えからスタートする。めまいの診断には,眼球運動を中心に全身の神経症候を正確に把握することが最も重要であり,神経疾患の中では先進的診断技術の有用性が相対的に低いといえよう。本書には,独自のフローチャートをはじめ,わかりやすいイラスト,さらには眼振の動画などが掲載されており,初学者や神経学を専門としない医師にも神経症候の診かたからその意義付けまでが容易に理解できる構成となっている。

 本書を通じて著者が読者に訴えたいことは,めまいに関連する神経症候を正確に診る技術を修得し,その診療効果を実感することで,神経症候学の面白さ,重要性を再発見してもらいたいということであろう。さまざまな先進的診断機器が利用できるようになった現代は,神経症候の意義付けが19世紀に比べればはるかに正確にできるようになっている。この点で,現代こそ,新たな視点で神経症候学を見直すことで,問診と診察だけで,責任病巣を予想し的確な診断を下しやすい時代になっているのではないかと思われる。本書がそのような神経症候学リビジットのきっかけとなれば著者にとってもこの上ない喜びであろう。
「めまい」の鑑別診断が楽しくなる
書評者: 寺山 靖夫 (岩手医大教授・神経内科・老年内科学)
 「めまい」はありふれた症候であるが,他人には伝わらない主観的な症候である。それゆえ,医師にも患者さんの思いが伝わらず,時にはコミュニケーショントラブルの原因となり敬遠されがちな症候である。

 本書は「めまい」のメカニズムをわかりやすく解説した上で,さまざまな原因で起こる「めまい」という症候のポイントを,症例を介して示してくれている。

 第1部「診察室ですぐに使えるめまい患者へのアプローチ法」では,病態に基づくめまいの症候学がわかりやすく解説されている。まず,1.1「イントロダクション——めまいの診療は難しい?」では,「めまい」患者はあらゆる診療科に存在し,その実数はかなりなものであるのに,なぜ対応する医師は苦手意識を持つのか? という問い掛けから始まり,その理由を明らかにした上で,苦手克服のための方法を示してくれる。そして,1.6「実際の診察法——めまい診断フローチャートを用いた診察の流れ」では,内科外来に携わる医師なら必須の「めまい」のしくみと診断のポイントが記されており,今さら誰にも聞けないような「めまい」の基本が面白いように身について,第2部がとても楽しみに思えてくる。

 第2部「めまい診療の実際」では,日常診療で遭遇するいろいろな「めまい」を呈する疾患の診断から検査・治療の実際が具体的に示されている。第1部の基礎知識があれば,誰でも楽しく読み進めることができ,「末梢性めまい」と「中枢性めまい」の鑑別を完全に自分のものとすることができるだろう。「めまい」の鑑別診断が楽しくなること請け合いである。

 さらに本書では,スマートフォンやタブレット型パソコンでQRコードを読み取ることにより,実際の「めまい」患者の診断において重要なさまざまな眼振を動画で閲覧することができる。眼振を動画で認識できることは「めまい」を理解する上で非常に大切であり,本書の特筆すべき点である。

 本書は,初学者のみならず,日々「めまい」を診ているすべての医師にとって必携の書である。
神経耳科にも精通した神経内科医による貴重な臨床書
書評者: 河野 道宏 (東京医大主任教授・脳神経外科学)
 本書は,城倉健先生が,めまいの診療を一般医家向けにわかりやすく解説した臨床的な教科書である。城倉先生は,神経内科医でありながら,神経耳科の勉強や研究も十分に積み重ねられた,わが国というよりも世界的にも貴重な医師である。耳鼻咽喉科医でめまい・平衡障害を専門とする医師は少数派ながら存在するが,末梢性めまいには詳しくても中枢性めまいとなると途端に臨床経験が不十分で自信を持っていないことが多い。その点,常に脳卒中を救急患者として実際に診ている神経内科医が,神経耳科にも精通していれば,最強のめまい診療医といえる。その城倉先生が満を持して,めまいの診かたをフローチャートや動画を用いて教えてくれている,この上ない貴重な臨床書なのである。

 脳神経外科におけるめまい診療において,最も頻度が高く,理解を深めておかなければならないのは,本書でも触れられているが,頸筋の異常緊張による頸性めまいである。緊張型頭痛(筋収縮性頭痛)を伴いやすく,その原因としてストレスが強調されやすいが,実際には姿勢の悪さに起因することがほとんどである。背筋の通った,気持ちの良い姿勢の青少年を見る機会が減ってしまった昨今,頸筋の異常緊張による頭痛やめまいは本当に多い。診療の際には,患者の背中に回って両肩の凝りの程度をじかに触って確認し,ツボでいうところの「風池」の圧痛点が陽性であれば,首凝りが強いと判断してよい。また,本書では,頭部回旋に伴うめまい(椎骨脳底動脈循環不全,vertebrobasilar insufficiency ; VBI)として,bow hunter’s strokeとPowers’ syndromeが解説されているが,これに補うとすれば,頸椎症性(spondylotic)VBIがあり,椎骨動脈を圧迫している骨棘(lateral spur)を削除する手術の対象となることがある。bow hunter’s strokeが患側と反対側に頭部回旋させる時にめまいや気が遠くなることが多いのに対して,頸椎症性VBIは患側に回旋時に起こりやすい。ともに対側の椎骨動脈は低形成か閉塞しており,両側の後交通動脈の発達が不良であることがほとんどである。また,私が専門的に手術している聴神経腫瘍では,めまいやふらつきなどの前庭神経症状は,初発症状としては約15%,手術する時点では約45%のケースで認められる症状である。聴力低下とともに認められることがほとんどであるため,メニエール病や突発性難聴と誤診されて発見が遅れることも決して珍しくない。ぜひ,若い患者の耳鳴り・難聴を伴うめまいやふらつきに対しては,MRIによる評価をしてもらうことを切望する。

 本書は,プライマリ・ケアにかかわる多くの医師の福音として必携の書であり,整然とまとめられている解説の奥には,城倉先生の臨床に対する魂を見ることができる。昼夜を問わず救急診療の現場で活躍中の,臨床医の生の声にぜひ耳を傾けてもらいたい。必ずや,実力が身に付き,自信を持ってめまい診療にあたっていただけるものと確信する。

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