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胃と腸アトラスⅡ 下部消化管 第2版

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刊行以来好評を博してきた美麗な症例写真による消化管疾患のアトラスが、装いも新たに全面改訂。今版では最新の知見・モダリティを盛り込んだことはもとより、咽頭から大腸まで、各臓器でみられる消化管病変を網羅した。豊富な症例と美麗な画像によってまとめあげられた消化管疾患アトラスの決定版であり、本邦の消化管形態診断学のマイルストーンとなる書。消化管疾患診療に携わるすべての医師へ。IIでは下部消化管病変を掲載。
監修 八尾 恒良
編集 「胃と腸」編集委員会
編集委員 小林 広幸 / 松田 圭二 / 岩下 明徳
発行 2014年05月判型:A4頁:368
ISBN 978-4-260-01747-3
定価 15,400円 (本体14,000円+税)

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第2版 監修の序第2版 序

第2版 監修の序
 何事もパソコンやスマートフォンで簡単に検索できる時代であるが,診療に従事する医師は,多くの知識の獲得と臨床対応を求められ,慌ただしい日常を過ごしている.
 「十年一昔」というが,『胃と腸アトラス』は初版の刊行から13年の歳月が経過した.この間,消化管の検索方法は著しい進歩を遂げた.また,日常遭遇する消化管疾患自体も時の流れとともに変貌している.
 時代の変化に伴って「診断学」も進化を遂げる必要がある.「胃と腸」グループは新しい診断方法を取り入れながら,病変の見つけ出し診断にとどまらず,診断根拠となる画像所見と病理組織構築の対比に多大の時間とエネルギーを費やし,世界に冠たる消化管画像診断学のトップリーダーとしての地位を確立し続けている.
 このエネルギーを是非とも“形”にしないと,“もったいない”という発想が『胃と腸アトラス』改訂のきっかけとなった.

 『胃と腸アトラス』第2版は,芳野純治先生が雑誌「胃と腸」の編集委員長の頃に出版が企画され,編集委員会で承認され,私は監修の役を仰せつかった.その後,東日本大震災の影響で編集作業が暫く中断されたことや,一部の原稿の遅れなどの影響で随分予定を過ぎてしまったが,やっと上梓に至った.
 いち早く原稿を書いて頂いた諸先生にお詫びを申し上げるとともに,日常的に1例1例を大切にして診療されている執筆者に敬意を表したい.また,「早期胃癌研究会」の運営委員,「胃と腸」の編集委員,そして,査読に時間と労力を費やして頂いた本書の編集委員,さらに私と本書の編集委員の我侭を素直に受け止めて,具体的な編集に努めて頂いた医学書院飯村祐二氏に深謝したい.

 優れた画像診断には検査者の技術,経験とともに,病態に関する識見が必要である.しかし,個人の経験や知識は限られている.
 大判の写真をふんだんに使い綺麗に仕上がっている本書は,インターネットに向き合うより気楽で疲れない.診療の糧として頂くのはもちろん,暇なときに漫画の代わりに気楽に開いて頂けると,読者の“経験・知識”の一端を担えることになると信じている.そして,最終的には,われわれ臨床家のすべての根源でもある患者さんの診療に生かされることを祈っている.
 1~2回の飲み会の費用を節約して本書を購入して頂くと幸甚である.

 2014年晩春
 八尾恒良


第2版 序
 本書『胃と腸アトラス』の初版は,「胃と腸」誌に掲載された症例を中心に全消化管疾患を網羅した集大成の症例集として2001年に発刊されました.初版は,故・村上忠重先生や故・白壁彦夫先生らが築き上げた消化管診断学に従い,きれいなX線と内視鏡画像を中心に,必要に応じ超音波,CT,MRIも加え,可能な限り画像所見とマクロ・ミクロを対比させることにより,各疾患のX線・内視鏡所見の成り立ちとその形態的特徴が一目でわかる,当時としては画期的な書籍であったことは間違いありません.当然ながら今日においても,この本邦独自の消化管診断学の王道,すなわち良質な画像により正確で緻密な診断を行い,病理所見と対比して論理的・系統的に診断学を身につけるという本質に変わりはありません.しかしながら,初版発刊以降の消化管医学,特に画像機器の進歩はめざましく,新しいX線診療機器(デジタル画像,フラットパネル,三次元消化管CTなど),内視鏡診療機器(拡大内視鏡,NBI内視鏡,カプセル内視鏡,バルーン小腸内視鏡など)が続々と開発され,今日ではこれらの消化管機器が日常臨床でルーチンに使用されています.これに伴って,画像診断学も多様化するとともに飛躍的な進歩を遂げ,初版では取り上げられなかった多くの小腸疾患の鮮明な内視鏡所見が得られることとなりました.また初版に掲載した既存の小腸・大腸疾患においても,新たな診療機器による特徴的な画像所見,特に内視鏡所見が次々と明らかとなり,もはや初版は時代遅れの症例集と言わざるを得なくなってしまいました.このような状況から,本書は初版の監修から多大なご助力をいただいている八尾恒良先生立案のもと,数年間の準備期間を経て,満を持してその内容を刷新した改訂版『胃と腸アトラス』として発刊する運びとなりました.

 本書では初版発刊以降に「胃と腸」編集委員(初版当時とは編集委員もほとんど一新されています)の施設にて新たに経験された症例を中心に,厳選されたきれいな画像を提供していただきました.また,カプセル内視鏡・バルーン内視鏡の登場により新知見の多い小腸疾患に関しては初版の2倍以上の項目数を設けて内視鏡画像を中心に掲載し,大腸疾患では既出疾患に新たに拡大内視鏡画像などが豊富に盛り込まれており,ほとんどすべての下部消化管疾患が網羅されています.さらに,上部消化管にまたがって病変が存在するような疾患(Crohn病など)に関しては,臓器別に項目立てして症例を呈示し,同一疾患の他臓器項目も検索しやすい工夫がされています.何よりも,厳選されたきれいな画像と病理所見が一体となった最高の書籍を編集できたものと自負しています.ぜひともお手元に置き,お気軽に,呈示されている美しい画像を繰り返し眺めていただければ,若手からベテランの消化器医に至るまで診断のお役に立つ一冊になるものと確信しています.

 最後に,大変ご多忙のなか,貴重な症例を呈示いただいた諸先生方に厚く御礼申し上げるとともに,項目立案から校正までのすべてにわたって多大な協力をいただいた医学書院医学書籍編集部の飯村祐二氏に深謝いたします.

 2014年4月
 「II 下部消化管」編集委員
 小林広幸
 松田圭二
 岩下明徳

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小腸
1 先天性異常,解剖学的異常
   1 小腸憩室
   2 Meckel憩室
   3 Meckel憩室内翻症と腸管重複症
2 炎症(感染性)
   1 Whipple病
   2 糞線虫症
   3 アニサキス症
   4 回虫症
   5 条虫症(日本海裂頭条虫症)
   6 旋尾線虫type X幼虫移行症
   7 イソスポーラ症
   8 サイトメガロウイルス腸炎
   9 エルシニア腸炎
   10 腸チフス,パラチフス
   11 結核
3 炎症(非感染性)
   1 NSAIDs起因性小腸病変
   2 セリアック病
   3 好酸球性胃腸炎
   4 Crohn病
   5 Behçet病・単純性潰瘍
   6 非特異性多発性小腸潰瘍症
   7 放射線性腸炎
   8 虚血性小腸炎
4 脈管性病変
   1 血管拡張症
   2 Osler-Weber-Rendu症候群
   3 blue rubber bleb nevus syndrome
   4 動静脈奇形
   5 門脈圧亢進症性腸症
   6 血管炎
   7 Dieulafoy病変
   8 リンパ管拡張症
5 全身性疾患に伴う小腸病変
   1 アミロイドーシス
   2 全身性強皮症
   3 全身性エリテマトーデス
   4 里吉症候群
   5 成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)
   6 HIV感染症/AIDS
   7 移植片対宿主病(GVHD)
6 その他の小腸病変
   1 異所性膵組織
   2 腸管嚢腫状気腫
   3 腸管子宮内膜症
7 腫瘍・腫瘍様病変
 1 上皮性腫瘍・腫瘍様病変
   1 過誤腫
   2 小腸腺腫
   3 muco-submucosal elongated polyp(MSEP)
   4 小腸癌
   5 カルチノイド
 2 非上皮性腫瘍・腫瘍様病変
   1 脈管性病変
   2 脂肪腫
   3 炎症性線維状ポリープ
   4 GIST
   5 神経系腫瘍
   6 悪性リンパ腫
   7 悪性黒色腫
   8 転移性腫瘍・直接浸潤
 3 ポリポーシス症候群の小腸病変
   1 家族性大腸腺腫症
   2 Peutz-Jeghers症候群
   3 multiple lymphomatous polyposis(MLP)
   4 Cowden病
   5 Cronkhite-Canada症候群
   6 von Recklinghausen病
   7 リンパ濾胞性ポリポーシス

大腸
1 先天性異常,解剖学的異常
   1 腸管重複症
2 機能異常
   1 segmental hypoganglionosis
3 炎症(感染性)
   1 感染性腸炎
   2 アメーバ赤痢
   3 サイトメガロウイルス腸炎
   4 放線菌症
   5 クラミジア直腸炎
   6 結核
4 炎症(非感染性)
   1 NSAIDs起因性大腸病変
   2 薬剤起因性出血性大腸炎
   3 cap polyposis
   4 直腸粘膜脱症候群
   5 collagenous colitis,lymphocytic colitis
   6 腸間膜静脈硬化症
   7 腸間膜脂肪織炎
   8 虚血性大腸炎
   9 憩室炎,憩室出血
   10 Crohn病
   11 潰瘍性大腸炎
   12 Behçet病・単純性潰瘍
   13 好酸球性胃腸炎
   14 放射線性腸炎
   15 リンパ濾胞性直腸炎
   16 急性出血性直腸潰瘍
5 脈管性病変
   1 血管拡張症
   2 blue rubber bleb nevus syndrome
   3 動静脈奇形
   4 門脈圧亢進症性腸症
   5 血管炎
   6 直腸Dieulafoy潰瘍
6 全身性疾患に伴う大腸病変
   1 アミロイドーシス
   2 全身性エリテマトーデス
   3 成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)
   4 HIV感染症/AIDS
   5 移植片対宿主病(GVHD)
7 その他の大腸病変
   1 大腸マラコプラキア
   2 腸管嚢腫状気腫
   3 腸管子宮内膜症
8 腫瘍・腫瘍様病変
 1 上皮性腫瘍・腫瘍様病変
   1 過形成性ポリープ
   2 通常型大腸腺腫
   3 鋸歯状病変(TSA, SSA/P)
   4 側方発育型大腸腫瘍(LST)
   5 若年性ポリープ
   6 Peutz-Jeghers型ポリープ
   7 colonic muco-submucosal elongated polyp(CMSEP)
   8 大腸癌
   9 カルチノイド
   10 杯細胞カルチノイド
 2 非上皮性腫瘍・腫瘍様病変
   1 脈管性腫瘍
   2 脂肪腫
   3 炎症性線維状ポリープ
   4 形質細胞腫
   5 GIST
   6 神経系腫瘍
   7 虫垂粘液嚢腫
   8 直腸良性リンパ濾胞性ポリープ
   9 悪性リンパ腫
   10 転移性腫瘍・直接浸潤
 3 ポリポーシス症候群の大腸病変
   1 家族性大腸腺腫症
   2 Peutz-Jeghers症候群
   3 若年性ポリポーシス
   4 Cronkhite-Canada症候群
   5 Cowden病
9 肛門部病変
   1 肛門管尖圭コンジローマ
   2 肛門管癌
   3 悪性黒色腫
   4 Crohn病合併肛門病変

索引

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美しい写真がすべてを語る,素晴らしい書
書評者: 武藤 徹一郎 (がん研有明病院 名誉院長/メディカルディレクター)
 初版から13年,改訂決定から約4年の年月を経て『胃と腸アトラス』第2版(I・II)が完成した。誠に想像を超えた見事な出来栄えである。監修の八尾恒良博士,「胃と腸」編集委員会そして本書の編集委員の諸氏の多大な努力に,まず深く敬意を表したい。内視鏡像,X線像,病理組織像のいずれをとっても完璧で美しい。よくここまで質の高い多くの写真を集められたものと感嘆するばかりである。

 初版の序文において“本書は本邦独自の診断学を集成し,消化管診断学に従事している医師や研究者の臨床に役立てることを目的として「胃と腸」の編集委員会で企画され,編集された”とあるが,この第2版によってその目的はさらに高いレベルで達成されたといえる。扱っている疾患は,「I 上部消化管」:咽頭5項目,食道58項目,胃62項目,十二指腸48項目,「II 下部消化管」:小腸66項目,大腸78項目の合計317項目にのぼり,初版より大幅に増加している。見たこともないようなまれな疾患も数多く掲載されており,エンサイクロペディア的に活用することも可能であるが,折に触れてページを開いて美しい写真を眺めるだけでも心が癒される。項目ごとに症例についての簡潔な記述があり,各画像の簡単な説明があるだけで,美しい写真がすべてを語ってくれている。必要最小限の文献が各項目の終わりのページに記載されているのも,大変便利でしゃれている。

 とにかく一度手に取って眺めてもらいたい。その情報量の多さと質の高さに圧倒されるであろう。これは「胃と腸」を育ててきたわが国の消化管医だからこそ可能である偉業といえよう。八尾博士は「胃と腸」の誕生期から文字通り先頭を切って消化管学を引っ張ってきた。博士の存在なくしてはこの快挙は生まれなかったであろう。“消化管は野〈ヤ〉の学である。”という博士の言葉が今は遠くに聞こえてくる。できることなら英語版を出して欲しいと願うのは評者一人ではあるまい。しかし,海外に本書の質の高さを理解し愛でることができる人が何人いるかを考えると,これは夢だろうか。だが,わが国には本書の素晴らしさを理解できる消化管医は,数限りなくいるに違いない。本書を座右の書として,日常の臨床に活用されることをお薦めする。

(この書評は、胃と腸アトラスの「I 上部消化管」と「II 下部消化管」の2冊について書かれたものです)


美しい画像に息をのむ,消化管疾患アトラスの決定版
書評者: 田尻 久雄 (日本消化器内視鏡学会理事長/慈恵医大主任教授・消化器・肝臓内科)
 このたび,名著『胃と腸アトラス』が13年ぶりに全面改訂され,刊行となった。本書は,執筆者らが日常診療で遭遇するすべての症例を極めて丁寧に扱い,その経験の積み重ねにより成り立っていることが伝わってくる大著である。本書の最大の特徴はX線像や内視鏡像を中心にした臨床画像所見と病理学所見との対比に基づき,疾患解説が統合的になされていることである。取り上げられている疾患は,消化器診療に従事する上でその理解が必須とされる疾患から,発生頻度は少ないものの貴重な疾患まで多岐にわたるにもかかわらず,非常に質の高い画像で構成され,読者に理解しやすく解説されている。

 また第2版では,初版では取り上げられていなかった咽頭の項が追加され,食道・胃・十二指腸・小腸・大腸のいずれの項においても扱われている疾患数は大幅に増えており,消化管で見られる疾患が各臓器別にほぼ網羅されている。さらに画像強調内視鏡や小腸内視鏡,カプセル内視鏡などの新たなモダリティも組み込まれている。第2版の画像は初版に比べてその質が飛躍的に向上しており,その一端を担った画像診断機器の進歩に心をはせながら,美しい画像に息をのみ,厳選された疾患をX線像や内視鏡像などを基に読み進むと時間が過ぎるのを忘れるほどである。何よりもX線像や内視鏡像が鮮明かつ十分に大きく,また随所に執筆された先生の渾身のエネルギーと溢れんばかりの情熱がほとばしっており,ページをめくる度に読む者の心を惹きつけてやまない。本書は13年前に出版された初版がさらに洗練され,その間の消化器病学と消化器内視鏡学の進境が反映された書といえるであろう。

 これから消化器病学ならびに消化器内視鏡学を志す若い医師の皆様にはぜひ本書を手元に置き,日常診療に生かすとともに今後の礎にしてほしい。すでに消化器診療に専心している医師の皆様にとっても,読み応えがあり,消化器疾患に対する理解をさらに深めるのに適した書であると考える。本書は,まさに“消化管領域におけるアトラスの決定版”であり,わが国の消化器病学ならびに消化器内視鏡学のさらなる進歩に大きく寄与するものと確信する。

 最後に監修の八尾恒良先生,編集に当たられた「胃と腸」編集委員会,編集委員の芳野純治先生,小山恒男先生,小林広幸先生,松田圭二先生,岩下明徳先生ならびに執筆者の先生方のご尽力に心から敬意を表します。

(この書評は、胃と腸アトラスの「I 上部消化管」と「II 下部消化管」の2冊について書かれたものです)


読んで,見て,とても楽しいアトラス
書評者: 千葉 勉 (京大教授・消化器内科学)
 初版以来十数年,待ちに待った「第2版」である。本書はとにかく,読んでいて,見ていて,「とても」楽しい。また疾患満載でとてもハンディである。しっかり見てもよいし,さっと見てもよいのが,本書の素晴らしいところである。

 本書の最大の特徴は,やはり画像が素晴らしい点である。初版もそうだったが,今回は拡大内視鏡,NBI,小腸内視鏡などが加わって,さらに充実した。私たちが以前から知っていた疾患が,拡大,NBIで見ると,「ああこんなふうに見えるのだ」というふうに,まるで新しい疾患を見たかのような錯覚に陥る。食道のクローン病などがよい例である。実は先日,食道の変な粘膜欠損の患者が来院したのであるが,本書を見て「これだ」と思って,内視鏡をしたら,まさしく食道クローン病であった。

 本書のもう一つの特徴は,重要な点が簡潔でありながら,細かく正確に記載,あるいは画像で明快に示されている点である。初版のときにも書評で書かせていただいたが,例えばAAアミロイドーシスとALアミロイドーシスのアミロイド蛋白の沈着部位の違い,GVHDの特徴的な画像,また自己免疫性胃炎の胃体部と幽門部粘膜の差,などが明快に画像や組織所見で示されている。

 さらに本書では,極めて多くの疾患が扱われており,辞書のように使えることがうれしい。例えば,天疱瘡の食道や,里吉症候群,セリアック病など,評者が見たことがない疾患もあり,さらにリンパ腫やポリポーシスなど腫瘍性疾患の記載も幅広い。

 本書の発行については,八尾恒良先生がすべての疾患に目を通されたそうだが,症例の選び方,構成の仕方など,やはり八尾先生の「するどい目」を随所に感じた次第である。

 最後になるが,本書の第3版はいつになるであろうか? 近年,例えば上部消化管疾患で言えば,H. pylori 感染率が低下してきたことによって,疾病構造の変化が生じ始めている。その結果,GNAS mutationに特徴付けられるH. pylori 陰性の体部癌やpyloric gland adenomaが注目されるようになってきた。また新しい疾患として,九大グループから報告されたfundic gland polyposisや,PLA2遺伝子異常を伴い,非特異性多発性小腸潰瘍との異同が注目されているCMUSE(cryptogenic multifocal ulcerous stenosing enteritis),若年性ポリポーシスとHHTの合併例など,新しい疾患,局面も集積しつつある。評者も来年退官だが,まだ先の話ながら,ぜひとも第3版を見たいもの,と心待ちする次第である。

(この書評は、胃と腸アトラスの「I 上部消化管」と「II 下部消化管」の2冊について書かれたものです)

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