• HOME
  • 書籍
  • トワイクロス先生のがん緩和ケア処方薬


トワイクロス先生のがん緩和ケア処方薬
薬効・薬理と薬の使い方

もっと見る

緩和ケアに用いられる薬剤を薬効別に解説した情報集。疼痛緩和に用いられる薬剤のほか、治療に伴う合併症・随伴症状に用いられる薬剤まで多数掲載。薬理作用から使用方法、注意まで、臨床で役立つ情報が満載。緩和医療の第一人者であるトワイクロス先生が贈る実践的情報集。
編集 Robert Twycross / Andrew Wilcock / Mervyn Dean / Bruce Kennedy
監訳 武田 文和 / 鈴木 勉
発行 2013年03月判型:A5頁:752
ISBN 978-4-260-01521-9
定価 6,050円 (本体5,500円+税)
  • 販売終了

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 序文
  • 目次
  • 書評

開く

監訳者序原書まえがき

監訳者序
 本書は,『トワイクロス先生のがん患者の症状マネジメント』(医学書院)の姉妹書,Palliatve Care Formulary(Canadian Edition)の日本語版である.和訳中にも新たな情報が原著者から寄せられ,原書に先んじた改訂版としての発刊となった.
 トワイクロス先生はオックスフォード大学の緩和ケア講座の初代主任教授であった.長年にわたり真摯な臨床経験に基づく緩和ケアの知識を世界各地へ普及させることにも尽力されてきた.わが国初のアカデミックな緩和ケア実践書『末期癌患者の診療マニュアル』(1985年,医学書院),その後継書『トワイクロス先生のがん患者の症状マネジメント』(2003年,2010年,医学書院)は,わが国の緩和ケアの向上に貢献した.退官後のトワイクロス先生は,緩和ケアにおける薬の使い方を独立させて「薬効・薬理」に焦点をあてて本書を刊行した.わが国の現状に精通しているトワイクロス先生は,わが国にはカナダ版が適していると,自らの来日時に原書を持参された.そしてわが国のがん医療の臨床で患者の苦悩と闘っている医療担当者の味方となり,患者さんの諸症状の一掃に役立つと捉えてくれたわが国を代表する24名の薬剤師が本書を分担翻訳した.
 オックスフォード大学卒業後のトワイクロス先生は,神経内科医の道を歩まれた.その真摯な臨床研究への取り組みがDame Cicely Saundersに注目され,近代ホスピス運動のメッカであるSt. Christopher’s Hospiceの研究所長に招かれ,がんの痛みとオピオイド鎮痛薬の臨床研究に深くかかわり,4時間ごとの経口モルヒネ投与法の確立に貢献した.オックスフォードに戻ると,Sir Michael Sobell House(ホスピス)の所長となり,ブロンプトンカクテルのコカインに意義がないこと,モルヒネ徐放錠の着想提案,WHOがん疼痛救済プログラムのFounding member,WHO方式がん疼痛治療法の作成者の一員を務め,Sobell Houseに緩和ケアのInternational Schoolを併設し,世界各地の緩和ケア担当医療職を育成した.そして母校の緩和ケア講座の初代教授にも就任し,熱心で温厚な臨床医学への取り組み,人間愛に満ちた患者対応は,世界中から教えを乞うて集まった人々に受け継がれている.
 トワイクロス先生は薬についても深く学ばれ,その集大成が本書にまとめられている.本書が,わが国で緩和ケアに携わる医師,薬剤師,看護師に広く有効活用され,緩和ケア実践の向上に貢献すると期待している.また,薬の適応外使用の記載もあるが,その薬についてよく学び,同僚専門医に意見を求め,自己責任のもとに応用していただきたい.
 監訳者の意見を受け入れつつ,力を合わせて共に翻訳してくださった分担翻訳者の方々,多岐にわたる分担翻訳原稿の統一化に努力をした医学書院医学書籍編集部に感謝を捧げる.

 2012年末 さいたま市にて
 監訳者を代表して 武田 文和


原書まえがき
 このたびPalliative Care Formulary(PCF)カナダ版を出版する運びとなった.本書は主としてがん患者への適用を前提として執筆されたものであるが,進行性疾患の終末期に起こりうるあらゆる症状に対しても広く適応することができる.したがって,COPDや糖尿病といった一般的な医学的テーマについて記載されたセクションは本書の中でも重要な部分である.
 PCFには多くの臨床的なガイドラインを掲載している.実践で使いやすくするため,各ガイドラインは2頁以内でまとめ,参考文献を付けていない.これに関して読者の方々の意見をいただきたいと思う.またウェブサイトにはわれわれのガイドライン以外も掲示し,無償で提供している(問い合わせ先:hq@palliativedrugs.com).
 PCFカナダ版は,カナダの実情に合わせて修正された国別版の1つである.PCFの原著はイギリスで作られ,アメリカでHospice and Palliative Care Formulary(HPCFUSA)として出版された.他に,ドイツ,イタリア,ポーランドにおいても国別版が出版されている.いずれの版においても対象とする読者は同じで,医師,薬剤師,その他緩和ケアに携わる医療従事者としている.
 読者は,本書に記された情報を実践する前に,患者個々への適用の妥当性について常に確認すべきである.本書ではたびたび適応外使用についても言及している.適応外使用は処方医の裁量によるものである.これに関してはxxiv頁に記述した.

 編集長
 2010年3月

開く

  原書まえがき
  謝辞
  ウェブサイトについて
  他国で利用できる項目について
  PCFを最大限に活用するために
  医薬品の承認適応外を目的とした使用について
  薬剤名について
  省略語の一覧

I編 薬剤情報
 1 消化管系
  制酸薬
   アルギン酸製剤/ジメチコン
  抗ムスカリン薬
   ブチルスコポラミン臭化物
  蠕動促進薬
  ヒスタミンH2受容体拮抗薬
  ミソプロストール
  プロトンポンプ阻害薬
  ロペラミド
  緩下薬
   シリアム・ハスク(オオバコ種子殻)/接触性(刺激性)緩下薬/
   ドクセートナトリウム/ラクツロース/ポリエチレングリコール(マクロゴール)/
   マグネシウム塩
  直腸内投与用の緩下薬製剤
  痔疾に用いる薬
  パンクレアチン
 ガイドライン
  死前喘鳴のマネジメント
  オピオイドによる便秘のマネジメント
  対麻痺と四肢麻痺における腸管のマネジメント
 2 心臓血管系
  フロセミド
  スピロノラクトン
  局所麻酔薬の全身投与
   *フレカイニド/*メキシレチン
  *クロニジン
  ニトログリセリン
  ニフェジピン
  低分子ヘパリン(LMWH)
   ダルテパリン/エノキサパリン
  トラネキサム酸
 3 呼吸器系
  気管支拡張薬
   イプラトロピウム臭化物/チオトロピウム/サルブタモール/
   長時間作用型のβ2アドレナリン受容体刺激薬(LABAs)の吸入/
   テオフィリン
  コルチコステロイドの吸入
  酸素
  咳の治療薬
   グアイフェネシン/アセチルシステイン/鎮咳薬
 4 中枢神経系
  向精神薬
  ベンゾジアゼピン系の薬
   ジアゼパム/ミダゾラム/クロナゼパム/ロラゼパム
  抗精神病薬
   ハロペリドール/レボメプロマジン/プロクロルペラジン/
   オランザピン/リスペリドン
  抗うつ薬
   アミトリプチリン/ノルトリプチリン/デシプラミン/
   セルトラリン/*ベンラファキシン/ミルタザピン/トラゾドン
  精神刺激薬
   *メチルフェニデート
  カンナビノイド
   *ナビロン/*ドロナビノール/医療用マリファナ
  制吐薬
   メトクロプラミド/ドンペリドン/抗ヒスタミン性抗ムスカリン性制吐薬/
   5HT3受容体拮抗薬
  スコポラミン臭化水素酸塩
  抗てんかん薬
   バルプロ酸/抗てんかん薬としてのナトリウムチャネル拮抗薬(膜安定化薬)/
   カルバマゼピン/オクスカルバゼピン/
   シナプス前性カルシウムチャネル遮断型抗てんかん薬/ガバペンチン/
   プレガバリン/フェノバルビタール
 ガイドライン
  抑うつ
  生命予後の短い抑うつ患者への精神刺激薬
  嘔気・嘔吐のマネジメント
 5 鎮痛薬
  鎮痛薬の使用原則
  鎮痛補助薬
  アセトアミノフェン
  非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
   ジクロフェナク/イブプロフェン/*ケトロラク トロメタミン/
   メロキシカム/ナプロキセン/ナブメトン
  弱オピオイド鎮痛薬
   コデインリン酸塩/プロポキシフェン/トラマドール
  強オピオイド鎮痛薬
   モルヒネ/*アルフェンタニル/フェンタニル/
   経粘膜吸収性フェンタニル製剤/ヒドロモルホン/*メサドン/オキシコドン
  オピオイド拮抗薬
   ナロキソン/ナルトレキソン
 ガイドライン
  手術・医療処置関連の痛みのマネジメント
  がん患者の痛みに対するメサドンの使用法
 簡明ガイド
  フェンタニル貼付剤の使用法
 6 感染症
  緩和ケアにおける抗菌薬
  口腔・咽頭のカンジダ症
  メトロニダゾール
  尿路感染症
  四肢のリンパ浮腫における急性炎症性変化(AIEs)
  上行性胆管炎
  クロストリジウム・ディフィシル感染症
  ヘリコバクター・ピロリによる胃炎
 ガイドライン
  四肢のリンパ浮腫における急性炎症性変化(AIEs)
 7 内分泌系と免疫系
  ビスホスホネート
   ゾレドロン酸
  コルチコステロイドの全身投与
  デスモプレシン
  糖尿病治療薬
  *オクトレオチド
  プロゲスチン(黄体ホルモン類)
  ダナゾール
  *サリドマイド
 8 尿路系
  タムスロシン
  オキシブチニン
  メテナミン(ヘキサミン)とニトロフラントイン
  クランベリージュース
  カテーテル閉塞解除液(膀胱洗浄液)
  尿の変色
 9 栄養と血液
  貧血
   硫酸鉄
  アスコルビン酸(ビタミンC)
  フィトナジオン(ビタミンK1
  カリウム
  マグネシウム
 10 筋・骨格および関節疾患
  持効性コルチコステロイド注射剤
  引赤薬およびその他の外用剤
  骨格筋弛緩薬
   バクロフェン/ダントロレンナトリウム/チザニジン/キニーネ
 11 耳・鼻・咽喉
  口腔内洗浄薬
  人工唾液
  ピロカルピン
  口腔内炎症・潰瘍治療薬
  耳垢水
 12 皮膚
  皮膚軟化薬
  局所塗布用のかゆみ止め薬(鎮痒薬)
  皮膚保護薬
 13 麻酔薬
  グリコピロニウム
  *ケタミン
  *プロポフォール

II編 基本知識
 14 緩和ケアにおける処方ガイダンス
 15 オピオイドの効力換算比
 16 オピオイド依存症の患者における手術後の痛みのマネジメント
 17 鎮痛薬と自動車の運転適性
 18 皮下持続注入法
 19 脊髄鎮痛法
 20 経腸栄養チューブ経由の薬の投与
 21 ネブライザーによる薬の投与
 22 緩和ケアにおけるQT間隔の延長
 23 チトクロムP450
 24 薬による運動障害
 25 アナフィラキシー

付録
 A1 薬物動態データの概要
 A2 緩和ケアにおける救急薬セット
 A3 規制薬およびその処方薬の国外旅行時の持ち出し(携帯輸出入)
 A4 適合性(配合変化)チャート

  薬剤索引
  事項索引

開く

緩和ケア薬物療法の“バイブル”
書評者: 恒藤 暁 (阪大大学院教授・緩和医療学)
 わが国の緩和ケアは21世紀になって著しく広がってきた。緩和ケアチームのある医療機関は600を超え,緩和ケア病棟のある医療機関は280になった。基本的緩和ケアを学ぶ研修会が全国各地で開催されており,今後,専門的緩和ケアの教育・研修の重要課題となっている。このような中で,『トワイクロス先生のがん緩和ケア処方薬』が発刊されたことは,まさに時宜にかなっているといえる。

 トワイクロス先生は英国オックスフォード大卒業後,近代的ホスピス運動の発祥の地となったセント・クリストファー・ホスピスの研究所長となり,オピオイドの臨床研究にかかわり,経口モルヒネ投与法を確立された。WHO方式がん疼痛治療法の作成者の一員を務め,普及活動に大きく貢献された。さらにオックスフォード大緩和医療学の初代教授に就任し,臨床と教育に取り組まれた世界の緩和ケアの指導者の一人である。本書の発行により,トワイクロス先生のこれまでの経験と知識が集大成された最新のものを日本語で読むことができるようになったことに感激する次第である。

 本書は“Palliative Care Formulary”カナダ版の翻訳書である。薬剤情報編と基本知識編から構成され,薬剤情報として,消化管系,心臓血管系,呼吸器系,中枢神経系,鎮痛薬,感染症,内分泌系と免疫系,尿路系,栄養と血液,筋・骨格および関節疾患,耳・鼻・咽喉,皮膚,麻酔薬の緩和ケアにおける適応,使用上の注意などが解説されている。緩和ケアにおける非常に広範かつ重要な領域について,文献を基に最新の知見を紹介しながら,薬剤ごとに分類,適応,禁忌,薬理学,注意(警告),副作用,使用法・投与量などの順に記載され,すぐに実践できるようにまとめられている。また基本知識は,緩和ケアにおける処方ガイダンス,オピオイドの効力換算比,オピオイド依存症の患者における手術後の痛みのマネジメント,鎮痛薬と自動車の運転適性,皮下持続注入法,脊髄鎮痛法,経腸栄養チューブ経由の薬の投与,ネブライザーによる薬の投与,緩和ケアにおけるQT間隔の延長,チトクロムP450,薬による運動障害,アナフィラキシーの各章から構成されている。本書は,緩和ケア薬物療法の“バイブル”と言っても過言ではない。

 本書が緩和ケア従事者のみならず,がん診療に関わるすべての医療従事者によって十分に活用され,緩和ケアにおける症状マネジメントがさらに向上することを心から願うものである。
薬物療法の理解と実践に役に立つ書
書評者: 大石 了三 (九州大学名誉教授)
 トワイクロス先生はオックスフォード大学の緩和ケア講座の初代主任教授で,長年の臨床経験に基づく先生の著書は緩和ケアの実践書として緩和ケアにかかわるすべての医療従事者のバイブルとなっている。今回,緩和ケアの実践経験豊富な日本緩和医療薬学会の認定薬剤師を中心として翻訳委員会が組織され,武田文和先生と鈴木勉先生の監訳のもとに『トワイクロス先生のがん緩和ケア処方薬-薬効・薬理と薬の使い方』が出版された。『がん緩和ケア処方薬』というタイトルであるが,取り上げられている薬物は鎮痛薬や中枢神経作用薬にとどまらず,緩和ケアにおいて用いられるほとんどの薬剤について,薬効分類ごとに必要な情報が網羅されている。基本的な薬理作用や薬物動態,副作用に加えて,緩和ケアで用いられる目的に対する根拠(エビデンス)までもが詳細に説明されており,まさに『緩和ケア臨床薬理学』の初めての書籍といえる。さらに,必要な臨床ガイドラインが簡単にまとめられていたり,特殊な処方や投与法についての説明が加えられており,かゆいところにも手が届く便利な書籍となっている。

 がんの進行に伴うさまざまな症状に対する薬物療法では,治療に難渋するケースが極めて多く,経験的にあるいは症例報告などをもとにいろいろな薬物が適応外使用として使用されることが多い。また,その使用方法も添付文書の記載と異なることもある。しかし,そのような薬物の使い方についての書籍や総説はあまり見たことがない。それは,基礎および臨床のエビデンスの不十分さもあるが,適応外使用について責任をもって詳しく説明するのは躊躇されるという背景があるからであろう。本書では,緩和ケアで実践されている薬物治療について実によくまとめられており,これまで緩和ケアに専門的にかかわってきた人でも,改めてなるほどと納得させられる内容が数多く含まれていると思う。さらに,かなり細かいところまで触れてあり,緩和ケアにおけるさまざまな事態への対応を実践していくのに大いに参考になる書籍である。

 ホスピスや緩和病棟が増えてきたとはいえまだまだ十分でなく,一般の病棟で緩和ケアにかかわる医療従事者も非常に多い。そのような方に対して,本書は一見図表が少なくとっつきにくい印象を与えるかもしれないが,何かの薬について少し読んでいただければ,緩和ケアにおける薬物療法の理解と実践に本当に役に立つ書籍であることがすぐにわかるはずである。これまで緩和ケアに従事してきた医療従事者にも,一度じっくり読んでいただければ新たな知識の習得ができ,より良い患者ケアの実践につながることは間違いない。

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。