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トワイクロス先生の

がん患者の症状マネジメント


(第2版)

著:Robert Twycross /Andrew Wilcock /Claire Stark Toller 
監訳:武田 文和

  • 判型 A5
  • 頁 528
  • 発行 2010年09月
  • 定価 4,104円 (本体3,800円+税8%)
  • ISBN978-4-260-01073-3
末期がん、進行がん患者の諸症状管理のためのバイブル
初版刊行後、トワイクロス先生はその原著をWEBで公開。全世界の専門家からコメントが寄せられ、その叡智は、本書の刷新と充実に注ぎ込まれた。
末期がんや進行がんに限らず、がんによる痛みや諸症状、さらには心の苦しみにまで手をさしのべた本書は、すべてのがん患者にとっての「福音の書」として、さらなる発展を遂げた。新設章「最期の日々」が加わった。
序 文
監訳者序(武田文和)/はじめに(Robert G Twycross, Andrew Wilcock, Clair Sterk Toller)

監訳者序
 本書は2003年出版の日本語版『トワイクロス先生のがん患者の症状マネジメント』の改訂版である.改...
監訳者序(武田文和)/はじめに(Robert G Twycross, Andrew Wilcock, Clair Sterk Toller)

監訳者序
 本書は2003年出版の日本語版『トワイクロス先生のがん患者の症状マネジメント』の改訂版である.改訂版準備中のトワイクロス先生(Dr. Robert. G Twycross)は1年以上前から改訂素案を監訳者に送り始め,とくに「最期の日々」の章はイギリスで2005年に制定された法律との関連で書かれたことから,日本の読者にとっての有用性について監訳者に意見を求めてきた.日本の医療界での討議推進に非常に役立つと伝えたところ,それを反映した原文改訂まであった.こうした意見交換をしながらの監訳であった.

 改訂版では全章にわたり,ことごとくアップデートされ,トワイクロス先生の学びへの継続的な努力が反映されており,読者のがん患者ケアの水準を大いに向上させる内容となっている.しかも,本書への第一歩となった『末期癌患者の診療マニュアル(医学書院,1985)』以来の著者の高い倫理感,人類愛,学術性を維持している.近代ホスピス運動の創始者Dame Cicely Saundersがもっとも信頼していた後継者であり,Oxford大学医学部緩和ケア講座を開設して初代主任教授を務め,WHO指定研究協力センターである国際教育センターを同地のSir Michael Sobell House(ホスピス)に設置して,世界各地の緩和ケア指導者育成にも努めたトワイクロス先生であるからこその実践啓発の書である.本書の分担翻訳者には,Oxfordでのトワイクロス先生の直弟子である本家好文氏が加わっている.

 イギリスのMental Capacity Act 2005(意思決定能力後見代理法2005と呼ぶべき内容の法律)の制定を契機に新たに執筆された「最期の日々」の章は,がん患者が,人生の終末をまもなく迎えると感じるようになった時期の体験に基づいて起こる諸問題への対応法を示し,日本の国全体での討議促進に有用な内容である.

 トワイクロス先生は,患者の病気を治すための努力と患者を痛みや苦しみから解放するための努力の2つを等しく重視することは,社会一般と医療の間の約束ごとだと明言している.日本の医療現場には後者の努力を軽視する傾向がいまだにあり,「もうあなたにできることはない」との傲慢な言葉に遭遇する患者が今でもいる.こんな言葉は真実ではなく,患者の病状が重篤で,現病の悪化が死因となるとしても,患者は死の瞬間まで生きており,心身両面の苦しさに襲われている.医師がなすべきことは必ずある.また,がんが治る見込みがある患者も心身両面につらい問題を抱えているのである.これらの苦しさ,つらさ,痛みを救うために医療が行うべき具体策を示すのが本書である.本書からの学びが,一人でも多くのがん患者のクオリティ・オブ・ライフの改善に役立つことを願っている.

 翻訳にあたり,薬や器具の名称は一般名で表わし,読者の便のために翻訳担当者が使い慣れている商品名を1つ併記するように心がけた.日本で入手できない薬や器具には*をつけて原語のまま紹介した.著者が指摘しているように,薬の適応外使用については同僚専門家の助言を求め,自らもその薬の性状に熟知して活用する慎重さが求められる.どの国の製薬業界にも薬の適応追加申請の気配がないからである.また,本文中にデキサメタゾン(デカドロン®)があげられているが,日本で使用している施設が多いベタメタゾン(リンデロン®)と読み替えていただいてよい.また,著者の指示で英語改訂版(2009年版)原稿の内容よりさらにアップデートした改訂となった部分もあることを申し添えたい.

 分担翻訳者は初版とほぼ同じ医療専門家に加えて若い世代にも協力をお願いし,編集出版担当者は変わらず,医学書院の阪本稔,緒方美穂である.これらの人々と共同作業できたことに感謝したい.

 なお,1つだけ付言したい.本文中でPCF3として紹介されている姉妹書Palliative Care Formulary 3rd Editionは,医学書院から翻訳刊行される予定で作業が進められている.

 2010年初夏  さいたま市にて
 武田文和


はじめに
 本書には姉妹書「Palliative Care Formulary 3rd Edition(PCF3と略)」がある.本書で取り上げた薬についての詳細は,PCF3を参照していただきたい.またウェブサイトwww.palliativedrugs.comでも参照できる.

 本書の初期の頃の版は医師を対象に執筆したものであったが,今ではがん患者のケア,ことに緩和ケアを担当している看護師にとっても価値ある内容として執筆している.本書が示す知識の枠組みによって医師および看護師は,がん患者の症状マネジメントに組織だった科学的な取り組みができると思う.
 緩和ケアでは,薬の適応承認外使用が必要なことが多い.例えば,少数の薬しか持続皮下注入法での使用が承認されていないのに,多くの薬が持続皮下注入法で使用されている.こうした現実は改善しそうもない.適応承認申請に費用がかかるという理由によってである.本書では薬の適応承認外使用を臨床実践の日常的なこととしては取り扱っていない.適応承認による使用,適応承認外の使用の双方についての詳細は,PCF3を参照していただきたい.

 医師と社会との間には,医師は同じ立場にいる同僚と同じ専門的水準のスキルをもって,合理的な患者ケアを実践する義務を果たすという暗黙の約束ごとがある.したがって,承認外の使用をするとき,個々の医師は薬の作用機序や使用法,器具や製剤の性状について十分な知識を得たうえで実践しなければならない.

 本書は,将来の進展の余地への継続性を配慮して執筆した改訂版である.すべての章を全面的に見直し,「緊急事態のマネジメント」の章は,イギリス緩和医療学会の研修カリキュラムの緊急事態リストに準じて再構成した.新しく設けた章「最期の日々」では,とりわけ,イングランドとウエールズで制定されたMental Capacity Act 2005(意思決定能力後見代理法2005と呼ぶべき内容の法律;スコットランドと北アイルランドは判例法で対応している)の重要性について述べ,また人生の終焉が近づいた時期における患者ケア,とくに緩和目的の鎮静,その他の重要事項について考察した.

 多くの章にガイドラインの項を設けた.専門職として熟知しておくべき臨床上の助言をまとめたもので,各ガイドラインを1~2頁以内として使いやすくした.ガイドラインの項で述べた内容のさらなる確認が必要な場合は,各章の本文と文献欄にあげた原著を参照していただきたい.

 編集作業にあたったSusan WrightとKaren Issac,Susan Brownに感謝したい.

 2009年3月
 Robert G Twycross
 Andrew Wilcock
 Clair Sterk Toller
目 次
1.基本原則
 生理・心理・社会的ケア/倫理的考察/諸症状のマネジメント
2.痛みのマネジメント
 痛み/診断(評価)/説明/マネジメント/非オピオイド鎮痛薬/
 弱オピオイド鎮痛薬/強オピオイド鎮痛薬/オピオイド誘発性痛覚過敏/
 鎮痛補助薬/様々な投与法/付録1:国際疼痛学会(IASP)による痛みの定義/
 付録2:痛みの定義の補足
3.消化器の症状のマネジメント
 口臭/口内乾燥/流涎(よだれ)/口内炎/口腔内カンジダ症/味覚の異常/
 筋の消耗(筋の欠乏)と栄養失調/食欲不振/悪液質/脱水/嚥下困難/
 食道ステント/胃食道逆流症/胃もたれ/胃内容の停滞/胃からの排出障害/
 嘔気・嘔吐/ガイドライン 嘔気・嘔吐のマネジメント/消化管閉塞/便秘/
 ガイドライン オピオイドによる便秘/宿便/下痢/肛門からの分泌/腹水/
 ガイドライン がん患者における「ブラインド(盲目的)な」腹水穿刺
4.呼吸器の症状のマネジメント
 息切れ/チェーン─ストークス呼吸/咳/気管支漏/胸水/
 ガイドライン 治療目的の胸腔穿刺/がん性リンパ管症/しゃっくり(吃逆)
5.精神症状のマネジメント
 喪失反応/家族の問題/その他の問題/怒り/不安/パニック障害/
 適応障害/抑うつ/ガイドライン 抑うつのマネジメント/
 引きこもり患者/対応がむずかしい患者/不眠/2次的精神障害/せん妄
6.生化学的症候群のマネジメント
 高カルシウム血症/糖尿病/抗利尿ホルモン分泌異常症
7.血液学的な症状のマネジメント
 がんにおける血液学的変化/慢性疾患に伴う貧血/出血/体表の出血/
 鼻出血/喀血/吐血と下血/直腸や腟からの出血/血尿/重篤な出血/
 静脈血栓・塞栓症/播種性血管内凝固症候群
8.神経学的な症状のマネジメント
 筋力低下/ステロイドミオパチー/腫瘍随伴症候群による神経障害/
 Lambert-Eaton筋無力症様症候群(LEMS)/脊髄圧迫/
 ガイドライン 対麻痺と四肢麻痺における腸管のマネジメント/有痛性筋攣縮/
 痙縮/ミオクローヌス/全身のけいれん発作/無けいれん性てんかん重積症/
 耳管開放症/頭蓋内腫瘍患者でのデキサメタゾン投与中止法
9.尿路の症状のマネジメント
 定義/膀胱の神経支配/頻尿と切迫性尿失禁/膀胱けいれん/排尿困難
10.進行がん患者の浮腫のマネジメント
 浮腫/リンパ浮腫/臨床像/診断(評価)/説明/マネジメント/
 ガイドライン リンパ浮腫を伴う乾燥した皮膚/
 ガイドライン 間欠的空気圧迫療法/合併症のマネジメント/
 ガイドライン リンパ浮腫における蜂窩織炎/急性炎症性変化(AIEs)/
 リンパ液の排液
11.皮膚の症状のマネジメント
 かゆみ/乾燥した皮膚/湿潤した皮膚/放射線照射中の皮膚のケア/
 ガイドライン 皮膚のケアについての放射線照射中の患者に対する助言/
 発汗/ストーマ/瘻孔/潰瘍を形成した体表のがん/
 ガイドライン 潰瘍を形成した体表のがん(インドで用いられているものから引用)/
 褥瘡潰瘍
12.緊急事態のマネジメント
 アナフィラキシー/呼吸器の症状/心血管系の症状/急性腎不全/
 急性尿閉/低血糖/痛み/精神症状/薬の過量使用/薬の離脱症状/
 薬の副作用/治療による合併症
13.最期の日々
 事前ケア計画/心肺蘇生/ケアの継続性/
 延命目的の医学的処置の開始の回避ないし中止/水分と栄養の人工補給/
 患者の意思による食べものと水分の拒否/「死に機会を与える」/
 自宅で最期を迎える/死が差し迫っていると診断すること/
 死が差し迫っている患者用のリバプール・ケア・パス/
 症状からの解放/耐えがたい苦悩/緩和目的の鎮静/
 生きることの(スピリチュアルな面の)癒しがたい苦悩/
 すべてが伝えられ,すべてが行われたとき

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