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プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版

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実在感と清潔感を合わせもつ高品質の解剖図は世界中に大きな衝撃を与えた――“2004年 ドイツの最も美しい本”に選ばれ、9か国で翻訳された『プロメテウス解剖学アトラス』が第2版となって再登場した。見開き構成のなかで視認性に優れた解剖図とテキストをバランスよく配置し、学習内容の重要度に応じて内容が選択されているという特徴は今版でも活かされている。CT・MRI画像と解剖図との比較、疾患解説など臨床的な項目の追加により、初版より40ページ増となった。
*「プロメテウス/PROMETHEUS/プロメテウス解剖学」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ プロメテウス解剖学
監訳 坂井 建雄 / 松村 讓兒
発行 2011年03月判型:A4変頁:616
ISBN 978-4-260-01068-9
定価 13,200円 (本体12,000円+税)
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第2版訳者序

 『プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第2版』をここにお届けする.原書の初版は,ドイツ語原書として2004年から2006年にかけて全3巻として出版され,熟練した画家の筆による精細な原画の数々にコンピューターによる画像処理を駆使して実現した,実在感と清潔感を合わせもつ高品質の解剖図は,世界中に大きな衝撃を与えた.日本語版としては2007年から2009年にかけて出版され,わが国の読者に広く迎えられたことは,訳者の大きな喜びとするところである.

 特に第1巻は,四肢を中心として運動器に重点をおいたこれまでにない解剖学書として,注目を集めている.さらに内容においても,単に運動器の解剖を記述と図解により提示するだけでなく,運動機能に関する解説がきわめて充実している.医学生および臨床医だけでなく,理学療法士・作業療法士などリハビリテーションに携わる医療職の人たちからも大きな関心を集め,教科書や参考書として広く利用していただいている.

 すぐれた解剖図は解剖学書の生命線であり,まさに解剖図の革新が新しい解剖学書を作り出してきたと言える.近代解剖学の出発点と目されるヴェサリウスの『ファブリカ』は,精緻な芸術的な木版画により生命を与えられ,17世紀から18世紀にかけての銅版画による繊細な表現は,ビドローやアルビヌスによる傑出した解剖図譜を生み出してきた.19世紀の木口木版画によりもたらされた解剖図と本文を一体化した編集は,解剖学書に新たな生命を吹き込み,20世紀の写真製版の技術は,解剖図の新たな表現に無限ともいえる可能性を生み出してきた.『プロメテウス解剖学アトラス』の解剖図は,人間の手で描かれたものでありながら,人工のわざとらしさを感じさせない,まさに人智を尽くして自然を再現した21世紀という時代が生み出した解剖図の最高傑作である.

 原書の第2版は2007年から2009年にかけて出版されたが,大幅な改訂増補がなされている.第1巻については,「解剖学総論/運動器系」という同じサブタイトルで,1割を超える増頁で600頁という大冊になっている.第2巻と第3巻については,全体としての増頁だけでなく,大幅な内容の組み替えが行われている.頸部の解剖が,初版で第2巻に含まれていたものが,第2版では第3巻に移されたといった大きな変更がある.初版から3年という短期間での大幅な改訂であるが,これにより医学生に必要な事項を読者にわかりやすい形で提供するというコンセプトはさらに強化された.『プロメテウス解剖学アトラス』は,これまでの解剖学書にないすぐれた特徴を有している.見開き構成の中で視認性に優れた解剖図と文字情報を伝えるテキストをバランスよく有機的に配置すること,系統解剖学や臨床解剖学といった伝統的な枠組みに依拠せず学習内容の重要度に応じて内容を選択したことなど,まさに新しい視点からの解剖学が実現されている.第2版においてはこれらの特徴をよりよく生かす改訂がなされている.

 本書「解剖学総論/運動器系」の翻訳にあたっては,初版ではドイツ語版の他に英語版を参照することができた.これは翻訳を効率的に行うにあたっては有利な事情であったが,ドイツ語版と英語版の食い違いも少なからずあり,ドイツ系の解剖学と英語系の解剖学が異なる伝統を有することも,改めて知らされることとなった.この第2版では英語版が刊行されていないために,もっぱらドイツ語版に依拠することとなった.翻訳にあたっては,初版の訳者のお一人でドイツ語に堪能な足立和隆先生に増頁部分の翻訳に加えて,初版と共通する頁についても変更の有無を点検していただき,できあがった原稿を初版を担当した各訳者が確認するという段取りをとり,最終的な調整を監訳者が行った.訳語については,原則として日本解剖学会監修『解剖学用語 改訂13版』に準じるとともに,初版との整合性を可能な限り重視した.日本語訳にあたっては瑕疵のないように最善の努力をしたつもりではあるが,至らぬところは監訳者の責である.

 訳者を代表して 坂井建雄,松村讓兒
 2011年2月1日

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解剖学総論
 1 系統発生と個体発生
 2 人体の概観
 3 体表解剖,目印,基準線
 4 骨,骨の連結
 5 筋
 6 血管
 7 リンパ系とリンパ節
 8 神経解剖学総論
体幹
 1 骨,関節,靱帯
 2 筋:機能による区分
 3 筋:局所解剖
 4 神経と脈管:形態と位置
 5 神経と脈管:局所解剖
上肢
 1 骨,関節,靱帯
 2 筋:機能による区分
 3 筋:局所解剖
 4 神経と脈管:形態と位置
 5 神経と脈管:局所解剖
下肢
 1 骨,関節,靱帯
 2 筋:機能による区分
 3 筋:局所解剖
 4 神経と脈管:形態と位置
 5 神経と脈管:局所解剖
付録
 文献
 索引

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解剖図版と臨床応用事項の兼ね合いが絶妙,研究のヒントの宝庫でもある
書評者: 佐藤 達夫 (東京有明医療大学長/東京医歯大名誉教授)
 Vesaliusの『人体構造論(ファブリカ)』(1543)は,それを境として医学史が二つに分けられるほどの偉大な図書といわれる。自分の眼で確かめた所見に基づく詳細な記載はもとより素晴らしいが,芸術的価値も高い約300の見事な図版が含まれていなかったら,それほど喧〈けん〉伝されることもなかったのではなかろうか。

 これ以後,正確で美しい解剖アトラスを提供することが,解剖学者の重要な役目となったのである。その極致として,木版画ではToldtの『人体解剖学アトラス』(初版1897-1900),そして近代的なカラー印刷図譜ではPernkopfの『臨床局所解剖学アトラス』(初版1963-/日本語版医学書院,『人体局所解剖学』全4巻7分冊[1937-1960]から図版を抜粋して編集)を挙げることができよう。この2点は共に,ウィーン大学解剖学教授の企画・指導により,ドイツで印刷された作物である。解剖学アトラスに関する限り,ドイツ語圏への信頼はゆるぎないものであった。

 しかし,1914年,第一次世界大戦が勃発してドイツから多数の米国留学生が帰国の途についたことと呼応して,ドイツ医学の衰退がはじまったと解釈することもできよう。Toldtはドイツ解剖学の爛熟の極点,Pernkopfは偉大なる残光とでもいえようか。ともかく20世紀前半の30年余りの間に,2度の世界大戦により継続性が断たれたことが大きい。世紀後半は,過去の遺産の図版を,手を変え品を変えて新企画のなかに巧みに取り入れて糊塗してきたという感が強く,歯がゆい時期がだいぶ続いた。

 そこへ,このアトラスの発刊である。ドイツ解剖学のアトラス製作の伝統が連綿として生き続けて,突如として大輪として復活したことを心から喜びたい。

 それにしても“プロメテウス”とは,穏やかでない。この神話名から派生して「先に考える男」という意味があると聞く。ここで思い出すのは,ドイツ解剖学が前世紀はじめに機能解剖学をいち早くとり入れ,Braus(初版1924)やBenninghoff(初版1939)が魅力的でいささか理屈っぽい教科書を製作してきたことである。これらはまさに当時の先駆けであった。今度の先駆けはどんな意義を持つのだろう,書名が単なるAtlas der Anatomie(解剖学アトラス)ではなく,Lernatlas(学習アトラス)とうたっているところに表されていると思う。上述のPernkopfの大著には副題として『局所層序的剖出アトラス』とあり,実際に一層ずつ丹念に剖出を繰り返し忠実に描写した記録の集成である。このような場合,その特定の解剖体の所見に依拠する程度が高くなるから,必ずしも標準的とは称しがたいこともありうる。“プロメテウス”の図版は伝統に立脚しながらも近年のコンピューター支援の成果も巧みにとり入れ,典型的・標準的かつ割り切りのいい美しい図版に仕上げられており,学生にとっても理解しやすいのではないか。

 もう1つの特徴は,臨床的関連事項を気の利いた模型図で表し,図版の周囲にサテライトよろしく配置させて,臨床に役立つ解剖学に仕立てたことであろう。これにより,Anson, Hollinshead, Moore等,米国の臨床解剖学書にくらべて影の薄かった状況が一挙に挽回されたと見ることができよう。ただし,「臨床に役立つ」は危なっかしい一面も持っていることに留意したい。改訂を重ねるたびに,臨床とテクノロジーの進歩を取り入れるサービス精神が豊かすぎて,大本の美しい解剖図版とのバランスが崩れがちな例に間々遭遇するものである。今回の改訂は解剖と応用面との兼ね合いが絶妙で上品な仕上がりである。今後のさらなる改訂では,あまり先駆け倒れしてほしくない。

 研究者・教師サイドからこのような大部の図書に求めるのは,いつでもある程度の緊張感を持ちながら戻ってくることのできる母艦的基本図書ではあるまいか。先述のToldtにしろPernkopfにしろ,時間的余裕があれば,随時われわれはひもとき眺めこんでは疑問点・問題点を探していた。つまり,これらの労作は研究のヒントの宝庫でもあった。その役割を今後は本書が担ってくれると期待している。

 三人の著者のファミリーネームのイニシャルはいずれもSである(Schünke, Schulte, Schumacher)。そのように,本書は,美しく(schön),力強く(stark),信頼に足る(sicher)標準的解剖学書に仕上がっている。この本を絶えず参照し,学びとっていきたいと考えている。
伝統と革新を兼ね備えた解剖学アトラス
書評者: 熊木 克治 (新潟大名誉教授)
 G. Thieme社といえば,古くからのドイツの名著,解剖学教科書Rauber/Kopschを出版している。一方,図と説明が見開きとなった新様式のTaschenatlas der Anatomieも発行し,伝統と革新を兼ね備えた信頼できる出版社である。

 本書の,LernAtlas der Anatomie(物事を知る,考える)という冠をつけて,的確なたくさんの説明がある点と,その努力と工夫を高く評価したい。書物を読まなくなった今の学生にも将来必ずや大きな糧になると確信している。このたび刊行となった第2版では,大きな改訂として臨床的重要テーマ(関節に関する疾患と画像診断,末梢神経障害とブロック,筋肉の作用と障害など)をいち早く追加した点は特筆に値する。

 “プロメテウス”解剖学アトラスという神秘的で重々しい書名も,読者の誇りとやる気を起こさせるものだ。プロメテウスが造り出してくれた“人”はその形だけではなく,火を手に入れて新しい知恵を創造していく素晴らしい能力を授かって進歩してきた。解剖学がたくさんの人体の名前を覚えるだけの暗記の学問ではなく,人体の神秘を発生学,比較解剖学,局所臨床解剖学などを通して,考える科学であることを象徴したものとしてピッタリである。名前だけでなく,それにふさわしい新しい創造の部分を備えた内容に,教えられることが多い。

 つい最近,芸術解剖学の巨匠R. B. Haleが人体の描き方のコツを説明する最終講義のビデオ解説を観る機会があった。足の描き方を説明するとき,ankle systemとheal systemという2つのねじれを分析している。このアトラスでも,科学的に分析するという基本が貫かれている点がノミナの羅列ではない大きな可能性を示している。

 理学療法士の友人の一人が,膝関節の腫脹について大腿四頭筋と神経支配様式を解析してその原因の手掛かりを探っている。その解剖学的研究にも,また患者さんへの治療や説明の現場でも,この“プロメテウス”が大いに役立ち,信頼されているという。

 上肢を局所解剖学的に示す図を見たとき,そのユニークなアングルに驚かされ,なるほどと膝を打つ思いだった。すなわち,上腕,前腕,手を通して観察するとき,屈側または伸側で示す解剖学的肢位を脱却し,前腕は内側にねじった回内位の自然の状態に配置して局所解剖学的に,骨,筋,神経などを連続的,総合的に説明している点が実に画期的で新鮮である。

 このアトラスは 『頸部/胸部/腹部・骨盤部』 『頭部/神経解剖』 『解剖学 コア アトラス』 『コンパクト版』 も訳本が出版されており,シリーズとして一層充実したものになっている。また,監訳者はわが国でも有数の解剖学者であり,誠に人を得た翻訳である。

 最後に,質問点もないではないが,伝統あるドイツの解剖学者,錚々たる日本の解剖学者,そして多くの読者が議論を練り上げてより充実したものに発展することを願うものである。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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